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クリスタルタワーの魔将軍 ~最凶の魔物の復讐劇~  作者: 鹿竜天世
第三章 主なき番人と世界の守護者
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変貌

 グランは構えた剣を振り上げて一直線に走り出した。


 愚直な攻撃だが、ヘイトと同等の体格を持ち、その武器もまた同程度の大きさだ。


 これまでは明確だった力の差が、今回はないかもしれない。


 ヘイトはいつも以上に警戒心を強めた。


「はあッ!」


 最初の一撃で分かった。


 彼女には戦う意思がない。


 ヘイトはスッと身をかがめて体をスライドさせ、攻撃を避けながら懐に潜り込み、剣を持った右手でグランの腹部を殴りつけた。


 軽く呻いてよろめくグラン。


 鎧越しの拳だが、衝撃は確実に伝わるはずだ。


「はああッ!!」


 今度は切っ先をこちらに向けて突進してきたグランの剣を、ヘイトはケラプディスで払いのけた。


 まるで張り合いのない戦い。いや、そもそも戦いとすら呼べないような状況に、ヘイトは戸惑った。


「ああ、もう! なにトロトロやってんだよ!」


 キャルルが怒りの声を上げる。


「戦う気がないってんなら、どうなっても知らねぇぞ、オラ!」


 そう叱咤されても、グランの様子に変化はない。


 もはや瞳から生気は失せ、ただの人形同然の姿だ。


「キャルル。これ以上やっても無意味だ。そもそもこっちは戦いを望んでない」


 ヘイトは眉間にしわを寄せるキャルルを見上げた。


「ああん? だからなんだってんだよ」


「もう、やめにしないか?」


 キャルルの額の血管が浮き出るのが目に見えるようだ。彼女の怒りは収まらない。


「だから・・・、いい加減にしろよ・・・、お前ら・・・」


 食いしばった歯の隙間から、振り絞ったような低い声を出すキャルル。


「いったい、誰のせいで、こんなことに、なったと思ってんだ・・・?」


「ここにいる誰のせいでもない。お前は何か勘違いしてる」


「いいや、してない。あたしは、守らなきゃなんないんだよ。あんたらがぶっ壊した世界を・・・!!」


「ヘイト様!!」


 かつてないスピードで接近するグランの攻撃を、ヘイトは間一髪のところで防御した。


シルバに言われなければ気が付かなかった。


 あの短い時間の間に何があったんだ・・・?


 鍔迫り合いになったヘイトとグランは、剣越しに視線をぶつけ合った。


 彼女の瞳には相変わらず生気を感じられないが、さっきとは目の色が違う。異様なほど殺気立っている。


「どうなってる・・・!?」


「わかりません・・・!」


 困惑する二人をよそに、グランは次の攻勢へと転じた。


 ヘイトの剣を弾き返し、体を大きく仰け反らせて頭突きを繰り出す。


 極至近距離では、シルバの防壁も間に合わない。


 脳天に衝撃が走り、軽い脳震盪がヘイトを襲う。


「しっかりしてください!」


 次の剣による攻撃はシルバの防壁が凌いだものの、一撃が重すぎて形状を保つことすらままならない。


 そればかりか、シルバがダメージを受けていることが伝わってきた。


 ――クソッ、あの剣・・・!


 まったく呼吸を乱すことなく、グランは剣を振るう。


「きゃあっ!」


 シルバの悲鳴とともに、銀色の防壁が切り裂かれた。


 グランの凶刃は勢いこそ弱められたものの、ヘイトの鎧にまで到達した。


 衝撃で後退するヘイト。


 グランの猛攻を、ヘイトはただ受けることしかできなかった。


 ぼやける視界に、切っ先をこちらに突き立てようとするグランの姿が映る。


 体を動かそうにも、頭が眩んで力が入らない。


 ヘイトは、終わりを悟った。

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