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7話 さらなる魔法の修行

目を覚ませば、そこは見慣れた天井だった。


体の至るところが痛い。


ズキズキと筋肉痛を更に酷くしたような感覚だ。


薄暗い。もしかして夜なのだろうか。


耳を澄ますと、密かに吐息が聴こえた。


痛む首を動かし視線を吐息の方に向けると、ママ様とパパ様が僕のベットの縁で眠っていた。


もしや、ずっと看病してたのか。


申し訳なさと、嬉しさで胸が満たされる。


ああ。こうやって心配してくれる人がいるのは、何と贅沢なんだろうか。


ふと、前世の両親を思い出す。


そっか。


僕が気が付かないだけで、前世での両親も僕を愛してくれたんだな。


無性に会いたくなってくる。


所謂故郷に対する哀愁と言うやつだろうか。


親不孝者でごめんね。


もう会えないけど、元気にやってたら嬉しいです。


僕は死んだけど、生まれ変わって素敵な人生を送ってるよ?


だから泣かないでお母さんお父さん。


何故か涙が溢れ出した。


見えない筈の両親が僕の亡骸にしがみついて泣きじゃくる光景が浮かぶ。


切なく苦しい。


そして僕は、今世での両親にも同じ思いを味わせるところだったのか。


ああ。なんて親不孝者だ。


「ごめんなさい…………ごめんなさい…………ごめんなさい」


気が付けば、謝ってた。


涙が止まらなくなる。


「レインちゃん…………」


「僕達は君のそばに居るよ」


いつの間にか目を覚ました両親に、両サイドから抱きしめられる。


暖かい。


心に生まれた穴を塞いでくれる。


大丈夫。


もう苦しくない。悲しくない。


嘘。ちょっびり悲しいです。


でも、幸せです。







「魔法を教えて欲しいだと?」


「はい!」


目を覚まして、両親の過保護な看病から解放された僕は真っ直ぐにアレックおじ様の元へと向かった。


ちなみにロリショタ達とカーソン氏は元気だ。


看病にも来てくれた。


まあ。カーソン氏は顔が腫れてたけどね。


猟師のお父さんにコテンパンに搾られたのだろう。


ロリショタ達とカーソン氏からだけでなく、そのお父さんとお母さんにも、ありがとうを言われた。


照れますな。


でも、どれほど感謝されても、自分の無力感だけは忘れない。


魔法やら剣やらあるファンタジー世界で、狼1匹に殺されかけるとか、チュートリアルでスライムに殺されるようなものだ。


もちろんここは異世界なれど、ゲームの世界では無い。


簡単に強くなれる方法など、中々存在しないだろう。


地道に強くなるしかない。


だからおじ様に教えを乞う。


両親に聞いても、この村で魔法が使えるのはおじ様だけなのだ。


「どんなことだってやります。辛くても逃げ出しません。だから、お願いします。僕に魔法を教えてください」


その場で土下座をして必死に懇願する。


「あーあー。やめろやめろ。儂はお前さんが思ってるほど凄いものじゃない」


「そんな事ありません!おじ様は偉大な魔法使い様です!」


こことばかりにヨイショしとく。


印象を良くしとけば、契約がスムーズになるのはリーマン時代に経験済み。


「たとえ、魔法を2つしか使えなくてもかのう」


え……?返答に困る。


「素直な反応で結構じゃ」


「あ、いえ!違います!少し驚いただけなんです!!」


「いや。構わんよ。儂には才能が無かっただけの話。それでも教えて欲しいのかのう?」


「はい!教えて欲しいです!」


これは素直な気持ち。


長年培われた経験とは、何よりも変え難い財産だ。


それを教えてくれるのならなんだってしてやる。


肩たたきはご所望ですか?


可愛い孫はありませんか?


何かお役に立てるようなことはございませんか?


「そこまで言われたら答えるしかなさそうじゃ」


豪快にニヤッと笑顔になるおじ様。


あらヤダ素敵。


「よろしくお願いします!」


「うむ。とりあえず椅子に座れい。これでは儂がいじめてるようじゃ」


「あ、はい」


お師匠ゲットだぜ。







「まず魔力を感じることは出来るかのう?」


「はい!感じることは出来ます」


「見えるかのう?」


「み、見えません」


あの魔力の放流は例外だろう。


みんな見えてたみたいだから。


「うむ。やはり本当に回復魔法を使って、ワンパク小僧を癒したようじゃな」


どうやら信じてなかったみたい。


まあ、噂話は大袈裟になるのが世の常だからね。


「回復魔法はどうやって覚えたんじゃ?」


「おじ様の見て見様見真似で覚えました!」


「…………もしかして、お前さんが産まれたばかりの頃に、頭をぶつけた時かのう?」


「…………はい」


やっべぞ。普通に考えて赤ん坊の頃の記憶とか覚えてないよね。


ゴクリ。


「世の中には本当の天才というのはおるものじゃな」


セーフ!


天才と思われたみたい。


誤解でも天才と言われると嬉しい。


「つまりは『小回復(ライトヒール)』は使えるわけじゃな」


「はい!」


「儂が使えるのは『小回復(ライトヒール)』と『回復(ヒール)』だけじゃ。それでも教えて欲しいかのう?」


しつこいっす!教えて欲しいっす!


「もちろんです!」


「なら見るんじゃ。…………『回復(ヒール)』」


おじ様の手のひらから、幾何学的模様の魔法陣が浮かび上がる。


小回復(ライトヒール)』とは少しばかり

違くて、少し大きい。


小回復(ライトヒール)』がハンドボールぐらいのサイズなら『回復(ヒール)』はサッカーボールぐらいのサイズだ。


脳内に高速で保存していく。


かっけえ。かっけえ。


すげぇ。すげぇ。


いくら見ても見飽きない。


やっぱり魔法最高!


「よし。覚えたかのう?」


魔法陣が消えて少し名残惜しい。


「は、はい。一応は」


「なら使ってみるんじゃ」


まさかのいきなりの実践。


「『小回復(ライトヒール)』を使えるならそこまで難しくないはずじゃ」


「は、はい!やってみます」


早速、脳裏フォルダーから最新の魔法陣画像を最高の解像度で展開する。


ふむふむ。なるほど。


「『回復(ヒール)』!」


ぶわぁと、さっき見た魔法陣そっくりの魔法陣が展開される。


やった!やった!


「やりました!」


「まさか1度見せただけで使えるようになるとはな…………儂は3年かかったのに」


3年という単語に、じわりと背中に汗が吹き出る。


「も、もしかして普通じゃないんですか?」


恐る恐る尋ねる。


「ああ。普通じゃないのう。魔法は理解無くして使えない代物だから。見ただけで使えるようになるなら、儂とて2つしか使えないわけじゃなくなるしのう」


本当だ。


おじ様は魔法を2つしか使えない。


それなのに僕はこうもあっさりと使えるようになった。


でも魔法の理解という点なら、僕は無知だ。


全く分かっていない。でも使える。


なら魔法に対する理解とは、明確なビジョンなのではないだろうか。


前世ではこれでもかと、アニメやら漫画やらフィクションで魔法を目の当たりにしてきた。


もしかしたら、魔法をあっさり使えるようになったのも、魔法に関連付けるものが多く記憶にあるからかもしれない。


伊達に厨二病を発症してないし、オタクしてない。


唸れ神剣エクスカリバー!!とかドヤ顔で言ってたっけ。


オリジナルの魔法とか3桁に及ぶよ。


まさかそんなくだらない妄想設定とかで、こうして魔法を楽に覚えられるようになる要因になるとは、人生何があるかわからないね。


そこでふと思い出す。


おじ様が使える魔法は2つ。


現在僕が使える魔法も2つ。


…………もしかして師事終業のお知らせ?


早ない?10分も経ってないぜ。


「ほ、他に何か教えてくれませんか?」


さすがに申し訳なくなる。


それにほら、おじ様だって2つの魔法だけで生きてきたわけじゃないし、もしかしたら、魔法に匹敵する凄い技術があるかもしれない。


「そうだのう。まあ。無いわけじゃない」


「本当ですか!教えてください!」


なんでも覚えたい気分です。


女性の落とし方とかも教えて欲しいっす。


「本来なら基本になるものなんじゃが、如何せんお前さんはその過程を吹っ飛ばして魔法を行使してるからのう」


「基本は大事ですよ!基本がなってなければいざという時にその差が出ますから!」


徹夜しての1夜漬けより、毎日コツコツとした反復が身につく。


受験生の頃に身に染みて理解しました。


「お前さん本当に6歳児か?妙に賢いのじゃ」


「ぱ、パパの受け売りです!」


「そうかそうか。あやつこんなことも息子に教えてたかのう」


納得してくれた。


パパ様の親バカぶりは知れ渡ってたのか。


なんか嬉しい。


あとパパ様を言い訳に使ってごめんなさい。


「本題じゃが、簡単に言えば、魔力を操るのじゃ」


「魔力を操るですか?」


魔力を体に循環させてはいるけど、操るとはなにか。


魔力を一点に集めるのも魔力を操るに入るのだろうか。


「うむ。基本的には2つパターンがある。まず1つ目は、魔力を自在に操り球状にしたりして放出する『魔力操作』。2つ目は、魔力を体の中に留めて活性化させて、身体能力を一時的に上昇させる『身体強化』の2つだのう」


ちょっとまってよ。


『身体強化』とやらは体に魔力を循環させるのとは違うの?


「あのぉ……魔力を体に循環させた場合は?」


「そんなもん『身体強化』に決まっておろう」


うそん。


僕、身体能力とか1ミリも上昇してないんですけど。


「あの、身体能力が上昇しない事とかあるんですか?」


「知らんのう。そもそも『身体強化』に関してはお前さんに教えるつもりはないのじゃ」


「え?なんでですか?」


「簡単に言えば、並大抵のことじゃ身につかんからじゃ。儂の知り合いの一流冒険者も習得に2年かかったしのう。ちなみに儂も使えん。と言うよりは、一流の冒険者に限らず国に使える騎士や宮廷魔導師とかはもれなく使えるのじゃ。使えて初めて強者の舞台に足を踏み入れられるわけじゃのう」


冒険者!やっぱいるんだ!ワクワク。


それに宮廷魔導師とか素敵ワードすぎる。


というより僕は1年ちょっとで習得したけど、もしかして子供の頃に身につけると不具合が発生するとかかな。


ほら、小さい頃から体を過剰に鍛えたり、ダイエットしたりすると、異常をきたすとか聞くし。


子供の頃は、体が発達する途中だから、無理をすると逆に体が成長しづらくなるとか。


やっちゃったやつ?


確かに赤ん坊の頃から気絶をおやすみ代わりにしてたわ。


それじゃあ、異常をきたすわな。


…………グッバイ僕の魔法剣士ルート。


魔法使い1本で頑張るしかないね!


いやいや。思い出したよ。


1つの事を極めるのにと一生かかることを。


ええ。欲張らず魔法を極めるとしましょう。


「分かりました。なら『魔力操作』を教えてくれますか?」


「それなら構わんぞ」


あざす。


「『魔力操作』は体に宿る魔力を外に放出することができるのが前提じゃ」


前提で躓きました。


「魔力を放出するには?」


「これは中々難しくてな、魔力そのものを見るのじゃ」


見る?さっき言ってた魔力が見えるかどうかの理由はこれか。


「見えないのですが…………」


「そう慌てなんでもよい。そもそも魔力を見るにはコツがいるのだからのう」


「コツですか!」


コツがあるのなら、あとは根気よく挑むのみ!


「うむ。非常に難しい上に、さっき言っていた『身体強化』にも深く関わるのじゃ」


『身体強化』で不具合発生させた僕は習得出来ないかもしれない件について。


「簡単に言えば、目に魔力を集中させるのじゃ」


魔力を目に?盲点でした!


見るの代名詞と言ったらこの眼球ではないですか!


「魔力を目に集中させて魔力が見えるようになったら、自分の中にある魔力を視認してそれを上手く操って放出するんじゃ」


うむうむ。なんかやれそうな気がする。


でも何も変化なかったら、へこむ。


と言っても、『身体強化』に関わることなら、かなり難易度は高い筈だ。


もしもそれを今あっさりと出来てしまったら、おじ様の立つ瀬がない。


離脱です。


「ありがとうございました!あとは、自分でやってみます!」


「うむ。何か疑問があったら尋ねに来るといい」


「はい!」


新たな目標が出来た。


目指せ一流の魔法使い!

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