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73話 帰還?

「ここは……? おお、見慣れた天井だぁ」

「お目覚めですね、神子様」

「っ、お久しぶりです、ユリアさん」

「はい、お久しぶりです」

「僕は何日寝てました?」

「三日程ですね」

「なるほど〜」


通りで見慣れた自室の天井だこと。


「神子様はよくお倒れに為らせますね」

「あ、あはは……ごめんなさい」


頭をボリボリ搔く。まったくもって正論です。


「神子様を担がれたキントの姿を見た時の私や聖女様のご反応を聞きたいですか?」

「ご、ごめんなさい……」

「話は伺っております。神子様は誰も見捨てたくなかった……だから、あのような行動を取ったことも理解出来ます。ですが、神子としての行動ではありません。軽率が過ぎます」

「はいぃ……反省してますぅ」

「相手は未知数の怪物だと……そんな相手に一人で立ち向かって、万が一があったらどうするつもりですか? 貴方が死ぬような事があれば、スーニャ達が生き残っても、意味が無いのですよ? 彼女たちはきっと自分のことを一生責め続ける事になります」

「うっ……本当に軽率でしたぁ」

「ええ……本当に……あなたって人は……」

「あ……ユリアさん?」


ギュッと抱き締められた。ユリアさんの匂いは母様に似ていて、暖かくて落ち着く匂いだ。


「本当に心配したんですから……本当に」


彼女は震えていた。


「ごめんなさい……ユリアお姉ちゃん」


僕は込み上がる涙を抑えながら抱き返す。


「怖かったでしょう? 不安でいっぱいだったのでしょう?」

「うん……ゔん! ずごぐごわがっだ」

「よく頑張ったね……偉いよ」

「うぅ…………」


本気で死ぬところだった。少しでもミスれば即死してた。アイツが遊んでいたから生き残った。みんなが助けてくれたから今生きている。怒りが憎しみが僕に動く気力を与えてなかったら、みんなを救えてなかった。一人で向かっていたら、アイツと戦うか、みんなを救うか、それともどちらも叶わなかったのかもしれない。


今は泣こう。悔しがろう。恥いろう。


そして、明日からもっと強くなろう。


「ユリアさん、そう言えば村人の……ムギさんは? ……やっぱり」

「彼ならクマに襲われて瀕死になりながら、クマを張り倒したそうですよ……拳で」

「!?」


なんだよ! 無事なのかよ! 安心したよこんちくしょう!


「そう言えば、神子様の魔力の余波が聖都にすら届きましたよ」

「え……」

「魔力を感じ取れるものはもちろん、神子様の治療を受けたものは等しく、その場で跪いて祈りを捧げるほどでした」

「そ、そんな余波が凄かったんですか?」

「はい。私ですら危ういぐらいでした」

「そんなに……」

「私は感じられませんでしたが、その少し前にも神子様の力を感じたと聖女様と教皇猊下が仰ってました……なんでも、神々しい波動を感じたとか」

「あ……ああ。なるほど」

「後日改めて帰還のパレードをするので、ご覚悟を」

「はいぃ〜」


仕方ないよね? うん。これもみんなを救えた対価と思えば安い。


「後、もしかしたら神子様の魔力の余波は他国にすら及んでいる可能性があります」

「なんですと!?」

「もしかしたら、他国訪問の予定も早まるかも知れません」

「ど、どれぐらい?」

「一年から……」

「一年から?」

「最短で半年ぐらいになるかと」

「そんなに早く!?」

「ええ。万が一です。何事もなければ予定通り、一年後になりますので……」

「それでお願いします!」

「善処致します」


僕がとても弱いことが分かった以上、出来る限りの準備を整いてから、出発したい。


「あと、彼らが会いたがっています。会って上げてください」

「みんなが……うん。分かった」


ライオット達は大丈夫……じゃないよね。一回死んだようなものだし。自分を責めなければいいけど。責任感の強い人ばかりだから無理かぁ。


「では、お連れします」

「はい。お願いします」

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