72話 やったか!?
「ギャハハハハ! 慣れてきたぜぇー」
「学習能力S補正でも受けてんのかコノヤロー!」
ものの数分で悪魔も氷の上をスイスイ滑り出した。こちとら、澪がまだ操作に不慣れだって言うのに。
「しょうがない! 『絶対零度の氷結槍』の用意!」
『そんな魔法作ってないわよ!』
『そこに氷魔法をチョイスするレイン君に好感度が五ポイント上がりました!』
「やったー!」
『マスターっ! 『終末の光天使の追撃』を撃ちましょうっ!』
「よし! それで行こう!」
『そんな! 魔法! な・い・わ・よ!!』
「知ってたぁー!」
『お兄ちゃんお兄ちゃん! 『癒し手の拳で!』でアイツをボコボコにしよっ!』
「物理で殴るんですね分かりますぅ!」
『近付いたら即死してくるボスに近接戦仕掛けようとするんじゃないわよっ!!』
一通りのボケをマナがツッコミを入れてくれた事でやり遂げた気分だ。
……僕は胸に新たな決意を秘めた。
「もっとみんなとボケてたいからアイツシバキ倒すわ!」
『動機がくだらないけど、同意よ!』
『氷の精霊より上手く滑っているやつはこの世に要らないよねっ♪』
『蹂躙! 粉砕! 殲滅! ですねっ!』
『そして誰もいなくなるんだねっ!』
「全滅エンドはお断りっ!」
魔力を収束させていく。
「こい! 魔力の手!」
不可視の両手が出現する。
「みんなアイツの足止めよろ!」
魔力の両手を振り上げその中心に魔力を収支させていく。
「形成せよ! 魔力の剣!」
十メートルを超える魔力の剣が魔力の両手に握られる形で現れる。その密度は騎士王には及ばないものの大きさから当たりやすい。
「行け! 魔力の剣!」
横払いの斬撃が悪魔に襲いかかる。
「うお!? 痛え!」
「吹っ飛んだ! 当たれば結構効くみたいだね!」
「痛えぇ……なんで俺に魔法が効くんだぁ?」
「さぁね! 僕の力パワーがお前を超越したんじゃないの?」
「ギャハハハハ! ならおもしれぇ!」
魔法を弾かれても、魔力は弾けないようだからね! 騎士王の聖剣も当たればかなりのダメージを与えられるだろうけど、如何せん、当たりませぇーん!
だから手しかないという機動力に全振りした上に、十メートルを超える大剣を振り回してもらったのさ。これで辛うじて当たるって、アイツの回避性能が高性能過ぎる件!
「ギャハハハハ! ならよぉ、もう俺も本気出していこうかぁ? ギャハハハハ!」
「こら! か弱い子供に本気出すなんて汚いぞ! 流石悪魔! きちゃない! ばっちい!」
「戦場に立ったら女子供関係ねぇーなぁ!」
「ですよねー!」
悪寒が全身に走る。
魔導騎士王は……間に合わない!
ならば!
「魔力盾……過大深化!」
魔力の盾を形成し、すぐさま深化させる。
ドロシー戦ではあたふたしてこんなことは出来なかった。成長したもんだ。
「行くぜぇ?」
ブン!
「ぐっ!?」
『っ! 魔気!』
悪魔がブレたと思ったら、一瞬にして僕は吹き飛ばされていた。
背中に木々がぶつかるけど、マナの咄嗟の機転のお陰でダメージは殆どない。
「けほっ! ……はぁ……はぁ……何メートル吹っ飛んだんよ」
血こそ吐かなかったが、思っきりぶん殴られて肺の中の酸素が殆ど持っていかれた。
間違いなく魔力盾の深化をしてなかったら死んでた。そう確信してしまえる程の攻撃だった。
「感謝の気持ちを込めてこの盾を『魔力神盾』と名付けよう」
『バカ言ってないで、来るわよ!』
吹き飛ばされていたと同時に、魔導騎士王の制御を離したから消滅しちゃったし。
悪魔は余裕をかましているのか、ノシノシとゆっくり歩いてくる。僕が死んだか気絶したと思っているのかもしれない。
「野郎、半端ない……ぱないのう!」
『ネタぶち込んでいる場合じゃないでしょ!?』
死神の足音が近付いてくる。やり過ごすなどは無理だろう。
「覚悟を決めるか……取り敢えずやつに純粋な魔力はかなりダメージを与えられる事は分かったし、一か八かだけど、そんなのいつもの事だし、いっちょやりますか……マナ! ヒナ! ライア! 澪! 一分の時間稼ぎと数秒の足止めよろ!」
『軽く言うわね……でも、承ったわ!』
『オフコースですっ!』
『モーマンタイ!』
『えぇーっと……ほいほいさー?』
みんなの同意と同時に目を瞑り魔力の両手を再度構築。
「ふぅ〜過大深化」
両手の魔力が膨張と圧縮を繰り返す。こんなのはおまけだ。
「名付けて、『魔神の手』か……」
……ツッコミがないと寂しい。
歩み寄る悪魔にみんなの全集中砲火。手加減無しだしする余裕もない。
「さあ、こい! 魔力の剣! ……これが本番だ! ……過大深化!」
十メートル程度の魔力の剣を天貫くほどの大きさに伸ばしていく。
圧縮するのではなく純粋に増幅させる。
「なんだぁ? あれぇ? すげぇなぁ! お前本当に人間かぁ?」
「人間だよ!」
多分!
これで終わらない!
「初めてだけど、いけるはず……いや、いくんだ! ……更に過大深化!!」
天貫く大剣を今度はその大きさのまま圧縮の為に魔力を際限なく込める。
「これは……やべぇなぁ! オラ!」
『行かせないわ! ……まだ試作だけど、止めてみせるわ! …………『神聖結晶の鎖』!』
光、回復、氷の三属性合成魔法。
悪魔の足元にひどく色変わりする魔法陣が浮かび、鎖が飛びてて悪魔に絡まる。
「ちぃ! 邪魔だあぁ!!」
余裕を無くした悪魔が藻掻く。その度に鎖にヒビが入る。
『魔法を弾けても、まとわりついた魔法はどうやら弾けないみたいね!』
流石マナさん! 頼りになる!
『もう持たないわ!』
「了解! …………すぅ〜」
もうこの一撃で終わってもいい……と言わんばかりに残りの全魔力を剣に注ぎ込む。
剣は眩いほどの光を放っていた。周囲の光を全て飲み込むほどに。
「悪魔、お前は僕より遥かに強いのは分かった……でも、勝つのは僕だ! だから、お前に贈ろう……九界の一界を滅した巨人の一撃を…………『界滅の神剣』っ!!!」
「ヤメロォォォ!!!!」
振り下ろされた無慈悲な刃は鎖に繋がれた罪人を容赦なく滅する。
「ヴォォォォォォーーー!!!!」
罪人に断末魔が響き渡る。
「…………大人しく滅されてろ」
有言実行かな? 本気を出し切らせる前に討てた。
魔力切れによる強制気絶に辛うじて抗う。
「……もう一生分頑張った気がするよ……寝みぃ」
『お疲れ様……本当に強敵だったわ』
『おつおつー帰ったらマナ。『絶対零度の氷結槍』の開発おねがーい』
『はぁ〜最善を尽くすわ』
『あ、私も私もお願いしますっ!』
『ヒナも〜』
みんなの声を聞きながら僕は静かに意識を手放した。
だって、こっちに走ってきているボロボロの鎧を纏ったうちの騎士達が見えたから。




