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70話 現れよ、魔導騎士王!

「取り敢えず『殲滅光(オーバーレイ)』!」


聖典に記載されていた魔法の一つだ。圧倒的な光の放流が悪魔に襲いかかる。


聖典に記載されていた魔法の中で唯一『神の秘跡(サクラメント)』だけが別格なだけで、他の魔法はマナがサクッと解析した。

どうやらそれ以外の魔法は完成度が高いだけの只の魔法で女神様の力は一切ないようだ。

端的に言えば、頑張れば適正がある人なら使えるようになるというわけだ。


殲滅光(オーバーレイ)』は光と回復魔法の複合、神聖魔法に分類され、全てのアンデッドを一発で浄化してしまう上に、純粋な破壊力も一級品で見た目も光の極太レーザーで非常にカッチョイイ!


ドロシー達を救う為に使った魔力は半分ぐらいか。セカンの町の時を超えるぐらい魔力使ったのに半分で済んでいるあたり、僕の魔力量は天井知らずだ。


「イキナリだなぁオイ!」

「成仏するか、墓地に帰れば悪魔!」

「俺様はアンデッドじゃねぇーぜ!」


鉤爪の手で『殲滅光(オーバーレイ)』を薙ぎ払ってしまう。


「『殲滅光(オーバーレイ)』よわっ! 殲滅出来ないじゃない!」

『あの人が規格外なだけ何ですよっ!』

『そーだ!そーだ!』


ライアとヒナの複合魔法なだけあって、ぶつくさ言ってきた。


「弱いなら束ねれば強くなるよね! 『殲滅光(オーバーレイ)』×10!」


とあるスーパーモンキー4さんが十倍にしたカメウッキー砲を真似ね十発を束ねて打ってみた。


ドガァァァァン!!!


爆音を発しながら前方を全て包み込んでしまう。


「殺意やべぇーな! オイ!」

「死ねぇぇぇ!!」


聖職者にあるまじき発言をする。


流石に弾けないらしく両手をクロスして守りの構えだ。


「知ってた? それあんまり意味ないんだよぉ!!! おかわり持ってきました! お代は結構です! 『殲滅光(オーバーレイ)』×10!」

「容赦ねぇぇーー!!!!」


殺意に満ち溢れた後続のレーザーも掛け合わりもはや前方の地形は消し飛んでいた。


「はぁ……はぁ……これで少しは時間がかけられたらいいなぁ……それにしても、ふぅ〜少しスッキリした」

『あれで死んでくれれば楽なんだけど』

『無理でしょ』

『ですね〜』

『ヒナも少しスッキリしたぁ〜!』


完全にはスッキリしないあたり、殺意が高い。

こちとらコンティニューなしの一発勝負の確率なんぼの精神ゴリゴリの鬼畜難易度を突破したストレスがマッハなんだ。こんなもんで晴れるわけなかろうなのだ。


「さてとどうせ直ぐに戻ってくるから……アレをやりますか」

『本邦初公開ね』


マナも楽しそうに言う。


アレはまだマナとヒナしかいなかった頃に思い付いてはいたけど、一度も使う機会が無かったんだよね。


「んじゃいくよ! ……魔導騎士(ランスロット)過大深化(オーバーアップグレード)! しかも二体同時です!」


二体の魔導騎士(ランスロット)を深化させる。

圧縮と増幅を繰り返し、その身体が可視化される。

込められる魔力は魔導騎士(ランスロット)の十倍にも及ぶ。おなじ大きさなので密度も段違いだ。


「名付けて……魔導騎士王(アーサー)!」


月白色の騎士王が二体現れる。


『すごいすごーい!』

『カッコイイですっ!』

『うふふ。ご主人様の脳内にあったモデルから最適化させたフォルムよ。……美しいわね』

『ロボットみたいだね』


魔導騎士(ランスロット)のなんか一兵卒ぽい姿から、歴戦の騎士のような格好はマナが言った通りかなりカッチョよくなっている。

僕的には魔導騎士(ランスロット)みたいな無骨な感じも好きなんだけど、この派手な感じも厨二病心をくすぐる。


「さぁ、それだけじゃないんだ……マナ! 僕は剣を作るよ!」

『私は盾ね!』


ノリノリで魔導騎士王(アーサー)の武装も作る。魔導騎士(ランスロット)は拳だったからね。


「剣が出来たよ!」

『盾も出来たわ!』

「よし! なら、これも……過大深化(オーバーアップグレード)!」


剣と盾も過大深化(オーバーアップグレード)により、その密度を遥かに高めていく。


「さあ、騎士王よ! 剣を持ち、盾を構えろ! 万物を切り裂く勝利の剣……勝利聖剣(エクスカリバー)!」

『万物を受け止めし精霊と癒しの盾……精霊聖盾(アヴァロン)!』

「あ! 剣は左手に持ってね! 僕左利きだから!」


自分で操るけど、何となく声に出しておく。


『左右対称というのも面白いわよね。私は右手に剣を持つわ』

「おっけー」


左右対称に並び立つ魔導騎士王(アーサー)は圧倒的な存在感と貫禄を醸し出していた。


まあ、残念ながら僕もマナも剣と盾の使い方も分からない素人なんだけどね!


「いつか人工AI組み込んでライオットやスーの剣術を模倣できれば完成するんだけどなぁ」

『ええ、現在実行中よ……近日公開ってやつね』

「知ってる。いつまで経っても公開されないやつだ」


僕とマナは眼前で膨れ上がるドス黒い魔力を纏った怪物に目を向ける。


「ちっとも効いてないとか、気持ち悪いなぁ」

「いやぁ? 効いたぜぇ? ……おいおい、その二体はなんだぁ? ゾクゾクするじゃあねぁーか、オイ!」


更地というかクレーターみたいな所からほぼ無傷な悪魔がノシノシ歩いてくる。

本当に化け物すぎて泣きそう。


「まあ、さっきのは挨拶みたいなものだよ。……ここからが本番だ。覚悟しろ!」

「ギャハハハハ! 最高の贄だなぁお前は!」


悪魔は僕に、厳密には僕の目の前に鎮座する二体の魔導騎士王(アーサー)に向かって吹っ飛んできた。

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