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69話 一分ぐらい寝てた?

「うっ……! 僕はどれぐらい寝てた!?」

『一分ぐらい?』

「短っ!」


どうやら意識が吹っ飛んでいたのはほんの一瞬だったらしい。


『お兄ちゃん顔……吹いた方がいいよ。血塗れだもん……』

「ああ、うん」


手で顔に触れると血が付着していた。これは血溜まりの血だけではなく、僕自身の身体から出たものでもあるのだろう。


「鼻と目、あと耳からも零れてたかぁ……はは、間一髪といったところかな?」

『もぉー! 笑い事じゃないよ!! ……本当に心配したんだからねっ!』

「あはは、ごめんごめん。それにしても……うん、みんな生きてる!」


目の前に倒れている彼女たちからは生を確かに感じ取れた。


「さてと、まだ頑張ってくれているマナ達を助けに行かないとね」


法衣を脱ぎ、ドロシーに掛けてやる。再生した下半身は生まれた姿だからね。


僕は魔力の放出を感じる方向に向かい走り出す。

近付けば近づく程その圧は高まっていく。

そう遠くない場所で二人の騎士とマナが操る魔導騎士(ランスロット)とライアと澪の魔法が人型……仮称悪魔に殺到していた。


カルスとキントは既にボロボロだ。可哀想にキントは片腕が無くなっており、カルスも片目が潰れていた。

それでも二人は逃げるつもりも引くつもりも無く、常に攻める姿勢を保っていた。


僕は過大深化(オーバーアップグレード)を込めたエリアヒールを発動させながら歩み寄る。


「お疲れ様。よく頑張ったね……ここからは僕が相手だよ……悪魔!」

「神子様!」

「神子様も血だらけじゃないっすか!」


二人が僕に視線を向ける。悪魔も僕の出現に距離を取る。


「神子様が居るってことは……」


キントが不安そうな顔で問いかけてくる。再生した腕をにぎにぎして感覚を確かめながら。

僕は万遍の笑みで頷き、彼らが望む答えを伝える。


「うん! みんな、生きてるよ!」

「うっしゃああああああああああああああああああああああああああ!!」

「しっ!!」


キントは体全体で喜びを表現し、寡黙なカルスも珍しくガッツポーズをした。


『そう。ふふ……さすがね』

『マスターステキでムテキですっ!』

『おつかれ〜ボロボロだね? まだ無茶したんだー』

「うん。最高の無茶をしたよ」


頑張っていたマナ達が労いの言葉をくれる。


「それにしても神子様は凄いっすね! 隊長達の治療をしながらこっちのサポートもこなしてたんすから……見えないっすけど凄い強い何かが自分らを守ってくれたっすよ!」

「はい……お陰様で俺は無事でした」

「うん。みんなにも伝わっているから」

「うえ!? 人格あるんすか!? 召喚魔法なんすか!?」

「やはり、規格外ですね」


二人からしたら僕が遠隔でやったんだと思ったんだろうけど、さすがにそんな離れ業を僕が出来るわけないじゃない。


『いいのかしら? 私たちの存在は秘密でしょ?』

(いいよ。だって頑張ってたのみんなだもん。だったら感謝されるのはみんなだよ)


何でもかんでも僕の功績になるのは嫌だなぁ。僕にしか見えないし触れられない存在であっても、彼女たちは実在し生きているんだ。

僕の魂から生まれたとか僕の一部とかそんなの関係ない。彼女たちは僕の大切な家族なんだから。


『君がそうしたいなら、別にいいけど』


澪が少し素っ気なく応えるけど、多分照れてる。


「ギャハハハハッ! やっぱり俺様の技を解いたのはおめぇかあぁぁぁぁ?」


唐突に話に割り込んできた悪魔にカルスとキントが警戒態勢に移る。


「ぎゃあぎゃあうるさいよ悪魔め。そうだよ。お前のちんけな技とやらなんか、大したことなかったね!」

「おもしれぇぇ。アイツらも結構強かったけどよぉ足りねぇんだよなぁ〜贄にはよぉ」

「贄……生贄か? 一体誰に」

「ギャハハハハ。教えねぇよぉ〜」

「なら、その体に聞くまでだよ! カルス、キント! 二人はみんなを安全な場所まで運んで守って!」

「ちょ! 自分も戦うっす!」

「ああ。この身は神子様の盾だ」


二人が揺るがない意思で断る。


「知ってた? みんなより僕の方が強いんだよ? ……余波でも危ないんだ。だから、命令です。仲間を守りなさい」


戦闘経験皆無な僕がみんなより強いわけ無いけど、それでもここばかりは強がってみせる。時間ぐらいは稼げる筈だ。勿論倒すつもりで挑むけど。


「了解っす! 隊長達を村に運ぶっす! そうしたら、必ず戻ってくるっすよ!!」

「もち! その時にはまだ背負ってもらう予定だからね!」

「神子様……健闘を祈ります!」


二人が全力でこの場から離れていく。一安心だ。

ここからは出したことも無い全力を引っ張り出す必要がある。つまるところ、周りのことを気にしている余裕も手加減も出来ない。


「いいのか? 簡単にみんなを行かせて」


僕は一切動かない悪魔に問いかける。


「ギャハハハハ! お前の魂ひとつであの雑魚共より遥かにうめぇからなぁ」

「なるほど……悪食め。簡単に喰えると思うなよ。クソ悪魔!」


魔力を全力で込めて新たな魔導騎士(ランスロット)を作り出す。

マナのと含めて二体だ。


「まだぁその人形かぁ〜? つまんねぇ〜ぞぉ」


そいつは何も動揺せず、その両手をまるで鉤爪のように開く。


『アイツ半端なく頑丈で伸びるわよ』

『あとあとっ、すごく攻撃が痛いですっ!』

『あとキモイ』

「なるほど……参考にするよ。サポートよろ!」

『『『『了解っ!』』』』


うちの子達の全力と僕の全力だ。


遠慮はいらない。全部食らって地獄にでも行け、悪魔!

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