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62話 セカの町8

「その、ドロシー。いいかな? 少し二人きりで頼みたいことがあるんだ」


お昼のご飯時にドロシーに話しかける。


「……分かった」


「主様? 他に問題でも発生したのですか?」


スーニャが眉をひそめて尋ねてくる。恐らく、ネーティの一件みたいのを考えているのだろう。


「違うよ。少し個別に頼みたいこと。そんなに時間もかからないから安心して」


「……? かしこまりました」


僕の様子がおかしいことに気が付いたのだろう。それでも、了承してくれる。ありがたいけど、マナ達の会話での、スーニャに頼んだ時のことを思い出すと直視出来ない。


……押し倒されるって……そんなこと。


僕からしたら、スーニャは僕に依存に近い感情を持っていても、そんな恋愛感情は無いと思う。だから、押し倒されるようなことは無いと思うんだけどなぁ。


まあ、今回の件は、スーニャよりドロシーの方が比較的頼みやすいのは確かだ。


スーニャに押し倒されるようなことが無くても、からかわれるネタにされそうだし。


食事の味が少し分からなくなるほどの緊張が押し寄せてくるけど、何とか完食する。





食後、早速ドロシーと二人きりで寝室に入る。


……やばい。心臓の高鳴りがやばい。


今から言う一言で改善されてきたドロシーとの関係が崩壊するかもしれない。そんな恐怖に足がすくみ、喉がカラカラになる。


「……神子? 具合悪い? 寝る?」


さっと、僕の傍に寄り添い、腰に手を回す。


「……っ。だ、大丈夫だよっ!」


数センチ先に居るドロシーにドキマギすしてします。


……ドロシーって、こんなに可愛いかったっけ?


つい、マジマジとドロシーの顔を見てしまう。


整った顔立ちに、深い青色のセミロングの髪に、真っ白でビックリするぐらい傷のない肌に、柔らかそうなほっぺた。


気が付いたら、僕はドロシーに見蕩れていた。


「……? どうして見てくるの?」


首を傾げる仕草すら可愛い。


だから、だからこそ。


……言い出しずらい……っ!


「私に頼み事? あるんでしょう? 私、神子の為なら……何でもする……よ?」


目を正面から見詰めてくる。吸い込まれそうだ。


でも、そうだよね……ここでしりぼみしてたら、誰も救えない!


僕はドロシーの両肩を掴む。


「ドロシー! お願いがありますっ!!」


「うん……分かった」


ドロシーが頷く。


僕も意を決して口を開く。


「き、キミの処女を僕にください!」


言った! 言ってしまった! ……あれ? なんか言い間違えた?


確か、僕はちゃんと処女膜を見せてくださいって言った……よね?


「……私でいいの? スーニャじゃなくて?」


「へ? あ、うん! ドロシーがいい! ドロシーじゃなかったら嫌なんだ!」


もう、よく分からない! テンパリ過ぎて、自分が何を言ったら分からない。


「……分かった。神子が望むなら……」


そう言って、ドロシーが服を脱ぐ。


するすると星騎士の制服が脱がれていく。


あっという間に下着姿になる。


見蕩れるほどに、綺麗だった。


「私、そういう方面の教育は受けてない。そういうのは、第二席の『悪女』の担当だったから……」


「そ、そうなんだ」


見蕩れて、ほとんど聞いてなかったから、空返事だ。


「上手く出来る自信はない……でも、嬉しい……と思う。あなたに求められて」


その時、普段、表情一つ変えなかったら、ドロシーが頬を少し赤く染めた微笑んだ気がした。


あまりにも可愛い笑顔だった。


「ドロシー。すごく可愛いよ」


「……あぅ……」


僕の言葉に顔を横に逸らす。耳が真っ赤になっていた。


今まで一度も見たことの無いドロシーに心がときめく。


でも、おかしいな? 何故上まで脱いたんだろう?


ドロシーはガーターベルト着用のスカートだから上を脱ぐ必要は無いのに……。


「……神子の好きにして」


そう言って、目を瞑るドロシーに対して違和感。


「ド、ドロシーさん?」


「……な、なに?」


恥ずかしいのか、珍しく声が震えている。可愛い。


「えーっと、僕。君になんて言ったっけ?」


「……ん? ……処女をくださいって言った……よ?」


ああああああああぁぁぁーーーー!!!


やっちまった! 言い間違えたぁーー!!


「で、ドロシーさんはOKをくれたの?」


ついさん付けしてしまう。


「……うん。でも、もっと先の話になるって、スーニャが言ってた。神子はまだ幼いから求められるのはあと数年後になるって」


スーニャさん!? 何でそんなことドロシーさんと話し合っていらっしゃるのかなー?


そんな生々しいことを話し合っていたのか。


「でも、それでもドロシーは応えてくれるってことだよね?」


「……うん。私は、スーニャと同じく神子に全てを捧げているから」


「全てって、でも僕は言ったよ? ドロシーが自分の生き方を見つけられたなら、好きに生きても良いって」


ドロシーとの面接の時に言ったことだ。彼女は自分で決めて行動出来ないと言ったから、世間のことを知り、自分で考えて行動出来るようになったなら、好きに生きてもいい。星騎士を辞めてもいいって伝えてあったのに。


「……だから決めた」


ドロシーが深く頷く。そして顔を上げた彼女は僕をじっと見詰める。


「私はあなたの為に生きたい。あなたの影で在りたい……だめ、かな?」


不安そうに揺れる瞳に彼女の決意がどれほど本気か察する。


……本気で、僕に。


すごく嬉しかった。こんな僕でも、誰かにこんなふうに思われることが堪らず嬉しいかった。


「ありがとう……すごく嬉しいよ! これからも僕の傍に居てね、ドロシー」


僕は握手を求めて手を差し出す。


「うん。……ずっと傍にいる」


僕の手を両手で包み込む。


その時のドロシーの表情を僕は生涯忘れないだろう。


それほどまでに、魅力的で最高な笑顔だった。


……


…………


………………あれぇ? 何か忘れてない?


あっ……本題忘れてるし、誤解されたままだ。


「ドロシー!」


「うん。いいよ……きて」


両手を広げて微笑むドロシーに一瞬誘惑に負けそうになりつつも、踏みとどまり、その場で土下座に移行する。


「ま、誠に申し訳ございませんでしたーーーっ!!!」


「……へ?」


固まるドロシーに懇切丁寧に誤解だということと、目的を告げる。


ははは……マジギレしたドロシーさんマジ怖かった。顔を真っ赤にしてたのは可愛いけどね!


封印してた暗殺技をフルに使うのやめて? 死んきゃうから!

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