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60話 セカの町6

「みんな。……僕分かったんだ。何故、僕がモヤモヤしてたのか……僕はあの人達が奪われた一番大事なもの……純潔を取り戻せていない」


みんなに向き直り言葉を紡ぐ。


「だから、それを取り戻したい……不当に奪われたものをあの人達に返してあげたいんだ……!」


「と、取り戻すって……どうやって?」


澪が疑惑気味に尋ねる。


「雛ちゃん。純潔は……その、傷には入るのですかっ?」


ライアが即座に可能性のありそうな考えに至って、雛に質問をなげかける。


過大深化(オーバーアップグレード)』での回復を思い出したのだろう。


雛はライアの質問に首を横に振る。


「うんうん。入らないよ。あれはね……え〜っと、歯の生え変わり? みたいなもので、成長に属する……の、かな? 傷じゃないよ」


「そう……ですか」


ライアは首を捻る。彼女なりにどうにかしようとしているのだろう。


彼女の光属性の適正は村から王都に向かう道のりで判明したものだけど、生まれたのは聖都の後みたいだから、あの技を知らないのだ。


知っているマナと雛は難しい、というよりあんまり良く思っていない顔を浮かべている。


「マナ、雛……僕はね……『運命改変(モイラ・シフト)』を使おう……と、思っているんだ」


あれなら出来るという予感はある。


過大深化(オーバーアップグレード)』がその魔法の限界を突破して更なる効果を引き寄せる能力なら、『運命改変(モイラ・シフト)』は、望んた効果に魔法を改変するものだと思う。


もちろん対価は魔力で済む『過大深化(オーバーアップグレード)』と違って、『運命改変(モイラ・シフト)』は、魂にかなり負担を与えるらしい。らしいというのも、後からマナと雛から教えられたからだ。


過ぎた力は、使用者本人すら滅ぼす。その為、二人は出来る限りあれを使わないように、色々と魔法や魔力の研究に勤しむ。


「お兄ちゃんっ! ……雛、嫌だよ。まだ、お兄ちゃんが倒れるの……あれはね……お兄ちゃんの魂が削られてた……雛達もお兄ちゃんの魂の欠片だから分かるの」


雛が沈痛な面持ちで初耳な事を言う。


「た、魂の、欠片?」


思わず質問をしてしまう。確かにマナ達は精霊を名乗っているけど、どうやって生まれたのかは分からなかった……でも、僕の魂の欠片から生まれてたなんて……。


「私たちがあなたの記憶の一部や記憶を知ってたり、記憶の中にしかないような物を取り出せるのも、あなたの一部だからよ。言わば、この『精霊の箱庭』はあなたの魂の世界なの……あなたの気持ちの有り様でこの世界はいくらでも姿を変えるわ」


実演として、マナが手元にスマホを取り出してみせる。


てっきり、僕の妄想が具現化したものだと思っていたら、予想の斜め上にいくとは……あはは。


「みんなを生み出した能力も、『過大深化(オーバーアップグレード)』みたいなとんでもない能力も、全て僕の『才能(ギフト)』により結果……なの?」


僕の答えに、肯定という形で四人が頷く。


「ご主人様の能力は『才能(ギフト)』の範疇を越えていると思うけどね……それこそ神に与えられた『神能(ディア)』なんじゃないかと思うわ」


混乱する頭の中で、一つだけ分かったことはある。


「それは違うよ……僕の能力は『神能(ディア)』なんかじゃないよ」


確信持って言える。だって、直接、女神様から『神能(ディア)』を授かったんだ。未だに、発動方法もどんな能力かも分からないけど。


「断言……するのね?」


マナがじっと目を見詰めてくる。


そうだな……言っといた方がいいか。あの時は夢なんかじゃないと疑っていたけど、日を増す度に、あれは夢じゃないと確信した。


特に、神が人に授けたという魔法……『神の秘跡(サクラメント)』には、微かな女神様の力を感じたんだ。


「うん……この際だから、『運命改変(モイラ・シフト)』をライアと澪に伝える上で話せることは話しておこうかな」


「お願いするわ」


マナの言葉に頷き、隠さずに全て話す。





「……っていう感じなんだけど」


話し終えた僕は、ライアが入れてくれたミルクティーを飲む。やっぱり前世のミルクティーも美味いや。


「待ちなさい……キス、したのね?」


「え? そこ!?」


「した、のね?」


「え? あ、うん。女神様が僕を眷属化? させるために必要な行為なんだと思うよ」


「それでも、したのね?」


な、なに!? こ、怖いんだけど!? 他の子達も目が据わってるぞ〜?


「うん……しました。僕のファーストキスです。前世含めて……で、でもあれは精神体? だからノーカンじゃないかなっ!?」


何とか思いついた言い訳を口に出す。


「ふ〜ん。で、初めてのキスをしたその"女"にメロメロになって、ホイホイと使命とやらを受け取ったわけね……」


「マナ! 女神様だよ! 不敬だよ!?」


天罰下るかも! とビクビクしながら辺りを見渡すけど特に何も起きない。


「だいたい、その"女"が女神だった保証は何処にあるの? 実際には、"私たち"のご主人様は貰ったと言う『神能(ディア)』を使えないのでしょう?」


「ぐっ……た、確かに使えませんけど……で、でも! 分かるんだ。あの人? あの一柱? の方は女神様だって……多分言葉に表すことが出来ない……会った僕にしか分からない感覚なんだと思うよ……だから、その、信じて欲しい」


僕は頭を下げる。確かにキスした話をした時、僕は少しにやけてたかもしれない。心配して話を聞いていた彼女達からしたら面白くないだろう。


「全く……取り敢えず、後で一人づつ二回キスして貰うとして……本題に戻りましょう。みんなもそれでいいわね?」


ちょっ!?


「うん。雛はいいーよー」


若干ジト目で僕を見る雛。


「私は……三回でお願いしますっ!」


回数交渉するライア。


「ダメよ。取り敢えず、今日は二回で我慢しなさい」


「分かりました〜」


若干落ち込むも了承する。


「え……その、キ、キスって、私もしなきゃ……ダメ?」


澪がオドオドしながら聞く。


ぐっ……何気にダメージが僕にも。


「あら、嫌なら澪だけ、しなくてもいいわよ? 強制などしないわ。これは"私たち"のご主人様から大切なものを奪った"女狐"に対する牽制も兼ねた、私たちの日頃の努力に対する正当なる対価よ」


女神様に対する牽制ってなに!? それに女狐って!? 確かにみんなには普段からお世話になってるから何か恩返し出来たらしたいけど、僕とその、キスが褒美になるの? た、確かに生まれ変わった僕は自分でもビックリするぐらい美形だよ? でも、だからって、そのキスを強請られるほど中身は魅力的じゃない気が……。


「嫌なんか一言も言ってないよっ! た、ただ……その、二人きりになれるかな〜って思っただけだし! み、みんなの前でするとかまだ早いよ!」


よ、良かった。嫌がられていた訳じゃないんだね。……ホッ。


「そうね……なら、みんながそれぞれ気に入っている場所を指定して、その間、他のメンバーはその場所には絶対に近寄らないルールにしましょうか。これなら、イチャイチャも出来て一石二鳥ね。澪って見かけによらずむっつりなのね……うふふ」


「むっつ……! そ、そんな訳ないでしょ!? 訂正して! 私はむっつりじゃないっ!!」


「はいはい。それでは、本当に本題に入るわよ?」


澪に生暖かい目を向けた後に、手をバンバンと叩き、みんなを纏める。


「さてと、こうなったら意地でも意志を曲げないだろうご主人様の為に、話を詰めるわよ」


「マナ……ありがとう」


本当にこの子には適わないなぁ。


「うふふ。伊達にあなたを零歳の頃から見守ってないわよ」


そうだった。この子は、この子達は……本当に僕には勿体ないほど素敵な子達だよ。

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