5話 妄想のお友達増殖と本物のお友達?
翌日。
回復魔法を使うにあたり決めたことがあります。
それは回復魔法も擬人化しよう!ということ。
生まれて初めての魔法。
そんな愛着の塊である回復魔法ちゃんを擬人化しない訳にはいかない!
それにマナちゃんだって、1人であの広い庭園に居るのは寂しいだろうからね。
容姿はロリにしよう。
12歳前後だ。理由は癒しという意味でも、純真無垢という意味でも、幼女ほど素晴らしい存在は居ないから。
性格は元気っ子。常に全開ではしゃぐ感じ。
髪型はセミロングのベレー帽を被ってる感じだ。
髪色は回復魔法と同じ緑色。目の保養にいい。
服装は私立の小学校の指定のブレザーだ。ベレー帽との相性は抜群だ!
名前はヒールからとってヒナちゃん!
お約束の決めゼリフは。
『お兄ちゃん!癒そうよ!』
ええ。お兄ちゃんっ子ですよ。ぐへへ。
脳内で姿を産みだし、人格を与える。
新たな仮想世界の住人だ。
マナちゃんの庭園にいこう。
昨日行ったばかりなのにまたお邪魔します。
*
薄暗い庭園世界に変化が訪れた。
大量の花が咲いてはいたが、蝶々1匹居なかったのに、今は多くの蝶々が花に集り、雲で覆われた空には鳥が飛ぶ。
よく見ると、庭園のあちこちで鹿やら、リスなどが木々の下で居眠りをしている。
どうやらヒナちゃんを追加した事で、仮想世界に動物や昆虫が生まれるようになったらしい。
うむうむ。賑やかだ。
思わず動物を撫でに行きたくなる。
「…………」
遠くからマナちゃんボイス。
あの子は無口の方だ。
つまりはヒナちゃんもあそこに居ることになる。
行ってみよう。ワクワク。
テラスを遠目に見れば、ベレー帽を被った小学生がワンピースとブレザーを組み合わせたような可愛らしい制服を着ているではないか。
間違いなく僕が想像したヒナちゃんである。
そんなヒナちゃんがマナちゃんと言い合っている。
諏訪何事か!と急いで駆けつける。
「いいじゃん!お兄ちゃんだって怒らないよ」
「ダメよ!彼が来てから皆で食べるのよ」
「ケチ!」
「ケチで結構。そもそも貴女はここに初めて来たばかりでしょう?創造主の彼に挨拶もなしに勝手なことはよしなさい」
ケーキスタンドに手を伸ばしいるヒナちゃんと、その手を掴み、お菓子を取らせまいとするマナちゃん。
マナちゃんが優しい。僕を立ててくれている。
絶対にロイヤルなお紅茶を見つけようと決意。
それに対してヒナちゃんはやんちゃだ。
お兄ちゃんと呼ばれるだけで、ありとあらゆることを許しまいそうになる。
流石に放置してニヤニヤしてたらマナちゃんが激おこしちゃいそうだから、制裁しにいこう。
「ほらほら喧嘩しない。待ってくれてありがとうマナちゃん。ヒナちゃんは初めまして」
律儀に挨拶。
妄想の産物だとしても、愛情をもって接したい。
「あ、お兄ちゃん!マナちゃんがいじめるの!」
マナちゃんの手を振り払って僕の後ろに隠れるヒナちゃん。
マナヒナでどっちがどっちになりそうだ。
ヒナちゃんの呼び方を変えよう。
雛ちゃんにしようかな。
「い、いじめてないわよ!言いがかりはよして!」
いじめてると思われるのは心外とばかりに怒るマナちゃん。
「聞いてください旦那様。彼女は貴方が居なかったのに、先にお菓子を食べようとしたのよ?」
「だ、だって!美味しそうだったんだもん!」
なるほど。
「まあまあ。マナちゃん。雛ちゃんだって悪気があったわけじゃないし、許してあげよううよ。それに雛ちゃん。マナちゃんは先輩魔女さんなんだから言うことを聞かなちゃ。ほら、マナちゃんにごめんなさいだよ」
2人を宥める。まんまアニメとかの受け売りのセリフだ。
「マナちゃんごめんね?雛を許してくれる?」
「ふう…………ええ、許します。次からは待つようにしてもらえたら嬉しいわ。…………それに私も言い過ぎたわ。ごめんなさい」
ぱあっと雛ちゃんが笑顔を咲かせる。
「うんうん。待つ待つ。お兄ちゃんを待つよマナちゃん!」
「ええ。そうしてもらえると助かるわ」
一件落着だね。
その後はお互いの親睦を深めるお茶会が開かれた。
雛ちゃんはあんまりお紅茶が好きじゃないらしい。
終始、舌を出していた。
曰く。
「苦いよ〜」
それに対して。
「これが大人の嗜みよ」
お紅茶を啜って勝ち誇った顔をするマナちゃん。
「なら、牛乳とかどうかな?」
と、具申する小心者。
マナちゃんは嫌々、城の中に牛乳を取りに行った。
雛ちゃんといえば、クッキーが気に入ったのか永遠に口に運んでいる。
この世界にある物は無限に等しいから、好きなだけ食べればいい。
僕の場合は、いくら食べてもお腹が満たされないけど。
前世で食べたお菓子などを忘れないように、定期的に口に入れて味の再確認をしてるだけだからね。
こうして新たなるメンバーを迎えたお茶会は無事に終わった。
*
八歳児!八歳児になりました!
両親から村の中なら遊んでいいよと言われた。
ついに外出許可です。
過保護がたかり同年代の少年少女達と遊ぶ機会は無く、窓から眺めるだけでした。
ようやく1人で動き回れる。
ロリショタと遊ぶつもりはないです。
中身的には、見守る側だし。
「レインちゃんをよろしくね。カーソン君」
「任せろよおばちゃん!おらいくぞ!」
「い、いってきまーす」
世界は非情でした。
近所のガキ大将ならぬ、村のガキ大将カーソン氏に引きずられての外出である。
カーソン氏は僕を村の中心にある広間に連れていく。
カーソン氏は十一歳児。
外を駆け回っているからか、その体は意外にも引き締まっている。
十一歳児にして細マッチョだ。
肌も焼けており、いかにも強そう。
それに対して、こちらは豆腐ボディ。
外出をしなかった為に、筋肉は無く。日の当たらない部屋で過ごしたショタの肌色は純白だ。
白人顔負けである。
太陽光が肌を刺激する。
外出許可を出したのに、やはり不安なのかこうやって近所のカーソン氏に僕の面倒を見るようにお願いしたらしい。
1人で出歩ける日は来るのだろうか。
魔法は使えても回復魔法だ。
もやしがごぼうに勝てないように、僕もまたカーソン氏に勝てないのだろう。
潔くカーソン氏について行く。
広間に着くとそこには年齢1桁のショタロリが沢山。
ショタ4人、ロリ3人。
ゴリショタなカーソン氏と、気弱ショタの僕が加わる。
ショタ6人と、ロリ3人。
将来3人のロリを6人のショタが奪い合うのだろうか。
ふっ。僕は村から旅立つから関係ないね。
せいぜい嫁の奪い合いに精を出すといい。
嘘です。嫁貰えるのなら、冒険辞めます。
イチャイチャしたいです。
意外と同期のイケメンのエンジョイ発言に、ダメージを負ってる模様。
「あ!ミレイユおばさんちの子供だ!」
「新しいやつだ!」
「名前なんて言うの?」
「これ食べる?」
てんやわんや。揉みくちゃにされております。
子供は元気がいいなあ。
ミレイユとは我がママ様のことです。
「こいつは俺たち、『ハジ村防衛隊』の1人になったのだ!」
おお!と盛り上がる。
子供のごっこ遊びなのだろう。
ふっ。付き合ってやるか。
ワクワク。
その後は影踏みや鬼ごっこ、かくれんぼとか懐かしいけど、やったことない遊びを堪能しました。
防衛はとこに行った?
でも、以外と楽しい。
体を動かすのは心地よい。
程よい疲労感を感じながら、それ以上の充実感を得た。
たまにはこういう日もいいよね。
…………
………………
……………………
毎日とは聞いてないですよカーソン氏。
翌日もその次の日も、更に次の日も、カーソン氏はウチに来ては、僕を強制連行する。
筋肉痛です。
「今日もお願いね。カーソン君」
「任せろ!ほらいくぞ!レイン」
「い、いってきまーす…………はあ」
カーソン氏良い奴だよね。
毎日迎えに来てくれるんだから。
感謝しかないよ普通は。
でも、本人の意思を無視するのはダメだと思うんだ。
それに、なによりも、このガキんちょ。
ママ様のお胸ばかり見て、鼻を伸ばしてやがる。
ママ様にカッコつけようとしてる。
間違いなくママ様が好きなのだろう。
このマセガキが。
ママ様は美人さんだから、見るだけなら許してやらんでもない。
騒がしい日々になりそうだ。