53話 村訪問
「本日は我が村においてくださいまして、誠にありがとうございます」
ファース町から、野宿しないぐらいの所にある村にやって来ました。村長さんとこの村滞在の神父さんが歓迎してくれる。
夜分も遅いという事なので、明日、村を見て回って翌日の朝に出発になる。
「この村の近くには、川がありまして、そこでは稀に魔石が取れるので、子供や年寄りの暇潰しとお小遣い稼ぎも兼ねているのですよ」
「それは面白そうですね。楽しみにしてます」
村長さんの言葉に少しワクワクする。
宝探しみたいで楽しそうだ。
前世の会社での川辺でのバーベキューで、平らな石拾いに努めてたっけ。上司や同僚の水切りの石を……ね。なんだよ、お前が一番得意そうだからって、遠回しに根暗って言われてた気がする。お陰で、肉は食べられずに、不人気な野菜だらけの串を数本食うだけだったし。あれで、5000円ってぼったくりだわ。10連ガチャ出来るぞ。
はっ! いかんいかん。もう、過去の話はよそう。僕は、なう! を生きているのだから。
*
「畑……凄い広いですね」
午前中は畑の見学に来た。僕が生まれ育った村の数倍はありそうな畑に圧倒される。見渡す限り、畑、畑で豆粒みたいな人が数人作業していた。
機械もないのに、よく仕事になるよ。
「魔道具で補助もしてもらっているので、少人数でも回るのですよ」
「そんな魔道具もあるんですか?」
「ええ。他国では軍事使用がメインで生活を豊かにするような魔道具は少ないようですが、本国に関しては、平和ですからね。開発も生活を豊かにするものが多く開発されているのですよ。と、言っても、高価な物ですので、本来なら手が出せないのですがね、それに関しては本国から色々支援や実験を兼ねて魔道具の運用をしている側面もあるそうですよ。被害や上手くいかなかった時の、フォローもしてくれるので、至れり尽くせりですよ」
村長さんは、凄く嬉しそうに語る。確かに、保険制度みたいなのものがあるみたいだし、安心して働けるよね。
「私はですね。昔、他国に居たのですよ。作物も上手く育たず、子供が奴隷として売られ、年寄りが食い扶持を減らすために、わざと魔物のいる森に足を踏み入れる。そうして、食い扶持を減らして、少人数で一日を必死に生きてました……今思い出しても、あれは地獄のような生活でした」
「そんなことが……」
ファンタジーだと、浮かれてそういう側面は全く考えたこと無かった。国の名前を言わないのも、僕がいずれ訪れる可能性に配慮してなのだろう。
「神子様にお話するような話では無いのですけどね。それでもお話したのはですね」
村長さんが腰を下ろして、僕と視線を合わせて、手を握ってくる。
「私たちのような難民を受け入れてくれて、ありがとう」
「……僕は何もしてません。……ですが、その気持ちに応えられるような……そんな神子になり、ます」
その話に関しては、僕は一切関係していない。それでも、村長さんは分かった上で、僕に感謝をしてくれた。ユリア姉さんにもしっかり伝えよう。
そして、こういう人達を救えて、手助け出来る神子に僕もなろう。
*
「人が沢山いますね」
「魔石拾いは楽しいですから」
村長さんに案内されて、小川が流れる場所に辿り着いた。というよりは、村から数分程度の場所だし、定期的に、ファース町から巡回が来るので、魔物の危険もほとんどないことから、もはや既に、村までのけもの道は地面が踏み固まって、道みたいになっていることから、村の一部みたいな場所だろう。
そんな小川に、子供たちがキャッキャと川の中で石を分けて、魔石探しに精を出して、年寄りの人達は、軽く談笑しながら、魔石探しをする。
仕事が出来なくても、こういったことで村に貢献しようとしているのだ。この村には、不要な人など一人も居ない。
「あ、みこしゃまだぁ〜!」
そんな子供たちの一人から、見に来ていた僕に気が付いて指を指して、周りに伝える。
馬鹿な、何故貴様がこのわたしの名を知っている……!
「こらぁ! 坊! 神子様に指を指すでない!!」
「ごべんなさぁ〜い!!」
指を指した子供に怒鳴る村長さん。
キャッキャと楽しそうに駆け寄ってくると、子どももほぼ全員やってくる。年寄りの人達は、遠慮してか、頭を深々と下げる程度で近寄ってこない。
反省してない子供に頭が痛そうに眉間を押される村長さんに苦笑して、気にしてないことを伝える。
「子供は元気なのが取り柄ですから、気にしてませんよ」
僕のフォローに驚きながら、少し呆れるような表情を浮かべる。
「神子様。それ、神子様の言うセリフだとは思わないのですけど」
スーニャから指摘を受ける。
何で? 視線で理由を求めるとドロシーが答えた。
「……神子も子供」
「あ、そうでしたね!」
そうだったわ。僕、八歳児でしたわ。この前、盛大に八歳の誕生日を祝ってもらったばかりでしたわ。
思い出したと言わんばかりの僕の態度に周りは苦笑する。
「みこしゃま、みこしゃまぁ〜みてまてぇ〜」
子供の一人、正確には僕とほぼ同じ歳ぐらいの女の子が、無邪気に見つけたと思われる魔石を見せに来る。
た、確かに、同じ歳でも、普通はこんぐらい無邪気なのがふつうだよ……ね? 自分と同じ歳ぐらいの女の子がキャッキャ言うのを見ながら、自分がかなりアレな感じで少しへこむ。
「これは、風の魔石ですね」
女の子から受け取った緑色の魔石を手に取って鑑定する。鑑定と言っても、魔力を少し込めると性質が分かるからなんだけどね。それに、大凡は見た目で判断がつくし。
大豆ぐらいの大きさの魔石を、女の子に返す。
「見せてくれてありがとうございます」
お礼を言うと嬉しそうにキャッキャしながら、駆け回る。それを見た子供達がわたしも〜ぼくも〜と魔石を見せてくる。
それに苦笑しながら、1つずつ属性を言って、お礼を言うと、駆け回る。
そんな中から珍しい魔石を見つけた。
「へ? これって……氷の魔石?」
『呼ばれた気がしたよ!』
いつもはドライな澪がいきなり声を出てきた。
ビックリしたわ。
『確かに、氷の魔石だね! すごい! 珍しいよ!』
澪が珍しく興奮している。氷魔法なんで、僕以外使い手が見つからないぐらいレアな魔法だもんね。この魔石があれば、特性を持つ人が見つけやすくなる。
でも、これはこの子のものだ。欲しい! でも、取ってはいけない! 僕は、渋々その子に返す。
「ありがとうございます。その魔石は氷の魔石と言って非常に希少なものですので、大切にしてくださいね」
上手く笑えているか分からないけど何とか、言い切った。欲しい。
その子は、僕を不思議そうに見て、氷の魔石を見て、ニコって笑う。
「みこしゃまにあげうー」
「え!? ……くれるの?」
「うん!」
マジかよ! 天使かよ!
「あ、ありがとう! 大切にするね!?」
その子から貰った氷の魔石を大切に握り締める。ほんの僅かな冷気を感じた。
「えへへ〜」
僕が嬉しそうにしてあるのを見て、その子も嬉しそうにする。それを見た他の子も、自分もー! と言わんばかりに、魔石をプレゼントフォーユーしてくる。
「あげるー」
「みこしゃまー」
「みこはまあげうぃー」
「あ、ありがとう! 」
手のひらに乗り切らないほど貰ってしまった。大切にしよう。
「神子様も、魔石探ししてみますか?」
「是非!」
魔石をライオット様が持っていた袋に入れてもらって、村長さんの誘いに乗る。
靴を脱いで、裾をたくしあげて、万全の状態で川に入る。
「つめたい!」
ひんやりと冷水みたいな冷たさだ。この中を、あんなにはしゃぎ回って動いていたのか。子供って元気の子、風の子だなぁ。
さて探してみようかな?
無意識に『魔力領域』を展開して、川の中の魔石を探知してしまう。
「あ……」
やった後に、これじゃ、宝探しにならないやん! と、思い直して、『魔力領域』を解除する。
一回、深呼吸して、再度チャレンジ! でも、さっきの位置情報が頭に残っていて、イマイチ楽しむことが出来なかった。自業自得だけどね!




