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52話 職場見学

「ここには、アタクシの弟子が十人ほどが、常日頃、神子様方のお洋服を作っているのですわぁ〜」


「凄いですね。手元がブレて見えます」


全員女性で、全然の機械みたいな魔道具で、糸を編んだり、布を重ねてたり、細かい作業みたいなのは、職人技で綺麗に仕上げていた。


戦場。そんな言葉が浮かぶほど、誰一人手を休めずに一生懸命に、入ってきた僕達に誰も気付いていない、もしくは気付いていて、あえて接触をしないのかもしれない。ベロニカ様が前もって、話を通していたのだろう。


「さあ、見惚れるのも嬉しいですけど、実際にどのように作っているのか説明しますわねぇ」


「よ、よろしくお願いします」


ベロニカ様に連れられて、奥の個室……ベロニカ様の仕事部屋に招き入れられる。着いてくる護衛はスーニャとドロシーそして、シリカ。他の五人は外で待機だ。


部屋の真ん中にはすごく広いテーブルが置いてあって、上には服の型番? と、布の切れ端……この場合は、サンプル? になるのかな。散乱していたけど、不思議と汚いや散らかっているというより、効率良く作業出来るように工夫されているイメージだ。壁際には、先程のお弟子さん達が扱った魔道具達が勢揃いして、どれも使い込まれた後がある。


「……」


そのまさに、職人部屋という空間に圧倒されていた。ここで、僕が身に付けている服なども、作られているんだと思うと、何故か申し訳なさと、誇らしさで満たされる。


「うふふ。どうやら、神子様には、このお部屋の素晴らしさが分かるようですわねぇ〜!」


嬉しそうに語尾を強めるベロニカ様に僕も力強く頷く。


「はい! このような作業部屋は初めて見るので、どれぐらい凄いのか分からないのは、歯がゆいのですが、それでも、ここにある全てがベロニカ様の大切な仕事道具なのは確かなのだと感じましたっ!」


思った以上に饒舌に話してしまった。少し、恥ずかしくなる。


「んまぁ〜っ! 可愛いわぁ〜!!」


照れて、少し俯く僕の視界があっという間に真っ暗になる。


「っ! ……んっ!?」


圧倒的な、『肉』の感触に、パニックになりかけて、呼吸が出来ないことで、逆に冷静さを取り戻し、でもやっぱりパニックになるという、混乱の極みに達する。


「はわわ! み、神子しゃまが! ち、ちっちょくししてしまいますぅ〜!」


それを言うのなら窒息死な! シリカ助かった! お陰で正気を取り戻したぞ!


「ほら、ベロニカ様。神子様が苦しんでいますのでお離してぐたさいな」


スーニャがすかさず、ベロニカ様の引き剥がし作業にかかる。


「……神子死んじゃう。離す」


ドロシーも物騒な事言いながら、引き剥がし作業に参加する。


「あら! ごめんなさぁーい。つい、嬉しくなってしまったわぁ〜」


ベロニカ様からパッ! と離されて、ようやく呼吸が出来るようになる。


「すぅ〜はぁ〜。……ん?」


あれ、意外と心臓など、平常時と変わらない? それに呼吸も思っていたより乱れてない? なんでだろう? まあ、気にするような事でもないか。


「ごめんなさいねぇ〜。物作りにおいて、自分の仕事を正しく理解されるのが、すごく嬉しくてねぇ〜。つい、抱き締めてしまったわぁ〜」


「そ、そうですか。お気に召す感想が言えで良かったです」


「うふふ。本当に見た目通りの子じゃないわねぇ〜」


ベロニカ様は非常に御機嫌に、そのあと、自分の仕事を解説してくれた。


どれもすごく技術の必要なもので、その中にはお弟子さん達にも任せられないものもあった。


「編む段階から、魔法陣を編み込んでいるですね……てっきり、付与で後付けしてあるのとばかり」


「しょうがないですわよ〜。この技術は、現在、アタクシ一人しか出来ないのですしぃ〜。神子様の言った方法が主流なのも確かですわぁ。ですが、そういうものは、外側からの影響を受けやすいのですのよぉ? 例えば、ダンジョンによっては、そういう付与効果を全て消すなど、極悪なトラップもあったりとするのですわぁ。その代わり、このように、編み込んだ魔法陣は、消される懸念はないですわぁ。それに、自動修復の術式も魔法陣に編み込めば、ピンポイントに破壊でもされない限りはその他の効果を、魔力を込め続ける限り継続出来るので、ある意味、半永久的な構造になりますわぁ〜」


ベロニカ様が作りかけの服を持ってきて見せてくれる。


刺繍のように、複数の色の糸で編みかけられた魔法陣は、素人目で見ても、凄まじい技術が必要なのが分かった。


「この方式が使われるお洋服を使われるのは、現在だと、教皇様と聖女様、そして神子様の三人だけですわぁ。それ以上は、アタクシの手が足りないのでご勘弁ねぇ〜」


マジかよと、自分か着ている煌びやかな服に視線を落とす。魔力の流れは感じていたけど、編みこまれていた魔法陣に関しては見受けられない。恐らく、何層も重ねて、見えなくしているのだろう。


やべぇもん着てる。そう思うと、お礼を言わなちゃと思い始める。


「あ、あの、いつも、ありがとうごさいます……」


「んもぉ〜! かわいいぃ〜!」


ガバッ! と再度、抱き締められた。


またかよと思いながら、思っていたより、息苦しくないことに疑問を抱きながら、まあ、いいかと、再度思考を放置した。





「牛がいっぱいですねー」


「そうですねー」


「ん。いっぱい」


「う、美味そうですよね!」


「「え?」」


僕に続き感想を述べるスーニャとドロシー。そして、1人だけ、美味そうとのたまうシリカに僕とスーニャが驚く。ドロシーは確かにと言わんばかりに頷く。


「あの、シリカ? ここは、お牛さんのお乳を搾る牧場だよ? 」


だよね? 僕も、話に聞いていただけで、本当に牛乳を搾るだけの牧場かは、断言出来ない。


「す、すすすみませんっ! 」


「いや、責めてるわけじゃ……」


もはや、別の意味で職人技の土下座に移行しようとするシリカをすんの所で、止めることに成功する。


「あわわ。神子しゃまに触ってるぅ〜罰があたりますぅ〜」


「あたらないよ!? 僕は祟り神かな!?」


「うふふ。ほらお二人さん。ベロニカ様が戻って来ましたよ」


スーニャに言われて、慌ててシリカと距離をとる。


今更ながら、女性に触れ合うことが増えてる気がする。喜ばしいことかどうかは置いといて。


前世だと、コンビニ店員の女の子にすら、触れられないように上から小銭を落とされていることを考えると凄い格差だ。小銭が零れても、拾うの手伝ってくれないんだよね……あはは。


「あらあら。もしかして、神子様のいい人なのかしらぁーん? 若いのに、早いのねぇ〜」


「ご、誤解ですよ!? シリカはい、妹みたいな存在です!」


「わ、わたしが神子しゃまの妹でしゅ!? お、恐れ多いでしゅぅ〜」


「土下座やめぇい!!」


なぜ、ナチュラルに土下座をかまそうとするかな!?


「この二人をからかうのは楽しいですわねぇ〜」


「それに関しては、私も同じ気持ちです……少し、妬きますけど」


「あらあら〜モテモテですわねぇ」


責め苦、責め苦を受けている! ドロシーフォロミー!


「……神子がモテモテ? 子沢山?」


飛躍しすぎだから!


その後、何とか場を収拾して、お牛さんのお乳搾り体験をする。


「の、伸びる! 凄い出ますね!」


じゅぼぉー、じゅぼぉーっと、優しく引っ張る度に、白い液体、牛乳がバケツに溜まっていく。


「うふふ。この牛乳を使ったミルクティーは格別なんでしょうね……」


大好きなエル茶葉と組み合わせたら、一体どんな味わいになるのだろうか。想像するだけでも口元が綻ぶ。


「お牛さ〜ん。いいですよぉ〜。その調子ですよぉ〜。うひ、うひひ」


隣りで同じく乳搾りをしているシリカは、何故か生き生きと搾っていて、もはや別人格を疑いかねない。目がなんか女の子がしちゃ不味そうな感じになってるし!


もしかして、これがシリカの息抜き!? メアはこれを見越していたのか!


その後、せっかくだからと、スーニャとドロシーも搾らせてもらった。


スーニャは少し手つきがいやらしく。ドロシーは別の意味でお牛さんが気持ちよさそうな声を上げてあた。


ここまで、ライオット様達を蚊帳の外にしている申し訳なさから、みんなで搾った牛乳は、護衛のみんなに振舞った。


ドワーフの二人が遠慮しないのは分かるし、ライオット様が上品に飲むのも分かるけど、元神聖騎士の二人は、なぜ飲まずに懐に納めようとする? お恵みじゃないよ? 家宝にする? 腐るよ!?


ちゃんと飲ませました。泣いてました。


すごく濃厚で、僕も涙出ました。


ありがとうございました。

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