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51話 国内巡り

「お久しぶりですわねぇ〜神子様」


「お、お久しぶりです……ベロニカ様」


「ベロニカ様なんで、他人行儀な〜ニーカって呼んでくだいなぁ〜」


国内巡りの最初の到達地点。聖都に最も近くに町を構える、ファース町の代表も務めるベロニカ様に御挨拶をしていた。


神聖国でもトップクラスの裁縫師であり、司祭という一面も持つ才女だ。


……ふくよかなのも、裕福の証。そうしておこう。


「いえいえ。いくら神子とは言え、町を治め、その類まれなる技術を遺憾無く発揮させるベロニカ様をそのような愛称で呼ぶのは、おこがましいにも程があります。私など若輩者で常日頃勉強に勤しむことしか出来ず、歯がゆい気持ちです」


ベロニカ様の迫力につい、下手で話してしまった。リーマン時代の自分を下げて、相手をよいしょするという技術をほぼ強制的に習得させられたんだよなぁ〜。


聖都に戻ったらユリア姉さんに怒られるな。


神子が下手に出るな! もっと偉そうに振舞え! みんな喜ぶから!


という無茶ぶりされても困るし、喜ぶって何だよ。マゾなの?


「あらまあ〜、随分と自己評価が低いのですのねぇ〜まだ、子供なのですから、もう少しワガママを言った方が喜ばれますわよ〜」


「はい。善処します」


僕の堅い返事に苦笑して、本題に入る。


「先ずは、ワタクシが監修を務める裁縫師の職場に見学にいらっしゃった後に、牛の牧場見学ですわねぇ。本来ならもっと見せたいところはあるのですがぁ、神子様は後がつかえてるので仕方がないですわぁ〜」


「はい。本日はよろしくお願いします」


国内巡りは、全てではないけれど、主要の町や村を時計回りに、西から北、東そして最後に南に回る。


それぞれの方向に町がある。その中間にも無数の村があって、今回はその中からユリア姉さんセレクトのルートを通ることになる。


後に、他国訪問の予行練習も兼ねているので、野宿する場面もある。というより、僕がお願いした。やっばり、異世界での冒険は野宿しないとね!


因みに、神聖国には、都市の規模があるのは聖都だけで、それ以外はかなり縮小された町しかない。


理由の一つとしては、神聖国は大陸の中心部であり、その国土も最大のものになるが、人口という点だと、半分程度の国土しかないミノリス帝国の人口より少ない為でもある。


神聖国は暮らすのには、快適なものだけど、資源という点だと恵まれていない。故に輸出に頼る面も多く。自給自足の生活が出来る環境ではないのだ。


例えるのならば、国土のほとんどが草原とも言える。川や山は聖都の近くにある森林程度で、ほとんどは平地で農作物は育てやすいけど、国土いっぱいになるほどの人を養えるような立地ではない。


他国のように隆起が激しかったり、食料のメインになる魔物も少ないなど平和故に、住むメリットと同時にデメリットもあるので、あんまり人が住み着かないのである。


もっともの理由は、神聖国は、国を抜けることに対して罰を定めていないからだ。ようは住むのも住まわないのもご自由にという国としてかなりどうなの? という緩さがある。


なぜそんなり緩いのか? それは、神聖国はミノリス帝国を除く人族の国と和平を組んでいるからだ。


他国は神聖国に対しての侵略行為を禁ずる変わりに、神聖国は治療施設の利用を許可してあるのだ。


釣り合うか疑問かもしれないけど、人の肉体欠損を回復させる魔法を扱えるのは、神聖国だけだ。


他国では強力な魔物が出現するダンジョンや地域、そしてドラゴンなどの脅威に晒されることが多い。その為には、戦力になる人達を失うのはかなりの痛てになるのだ。


神聖国に対して、戦争など吹っかけずに、仲良くすれば、いざってときに、治療行為を行ってくれるし、大陸の中心部なので、商人の行商のルートにもなる。しかも強い魔物も湧かない為、非常に安全である。


そんな複数のメリットを考えて、十分にメリットになるとユリア姉さんが言ってた。


与えられた部屋で一息つく。


今回、僕に着いてきているのは、護衛の星騎士団の七人全員。


それと、お世話係として……。


「シリカも座りなよ。君だって疲れているでしょう?」


聖女候補の一人、元村娘のシリカも着いてきていた。


「ふぇ? そ、そそそんな恐れ多いことですにゃ! あっ……」


相変わらずの、噛み噛みの上に、汗だくだぁー。


出発前に、メアがねじ込んだらしい。


メア曰く、「元村娘ということもあり、色々と勝手が分かっているのでどうぞ使用人のように扱ってください。ああ、気遣いは不要ですよ? これはシリカの息抜きにもなるので」と、半泣きのシリカを僕に押し付けたのだ。


お世話係なら、スーニャやライオット様が居るから大丈夫なんだけどね。今もカッチンコッチンに固まっているシリカには、本当に息抜きになるのか怪しい。


「ねえ。シリカ。僕、そんなに怖い?」


悪意がないのは分かっていても、さすがに毎回このリアクションはくるものがある。


「そ、そんなことないでしゅう! み、神子しゃまはす、すすううごくおやさしいですぅ!!」


凹んでいる僕にフォローをしてくれているみたいだけど、相変わらずのキョドり具合だ。


「なら、なんでそんなに緊張しているさ? 僕は、シリカとも仲良くなりたいのに」


「ご、ごめんなさい! わた、たわしは、そのあ、あまりにも、み、神子しゃまが可愛すぎる(・・・・・)ので!」


「なるほどー僕が可愛すぎてかぁ〜………………ん? んっ!? 可愛すぎて!? カッコよすぎてとかじゃなくて、可愛すぎて!? ファ!?」


予想外の理由に脳の処理が追い付かない!


「は、はひぃ〜!! すみませんずみまぜん! 不敬なのはわがっているんでずがぁー!」


土下座をかましながら、涙ながらに謝罪する彼女の姿で冷静さを取り戻す。


「お、落ち着いてよ。別に怒っているわけじゃないんだよ? ただビックリしただけだよ……可愛のか」


早に備え付けられている姿見の前に立つ。


そこには、確かに、可愛よりの美少年……いや、美少女に見えなくもない僕が写し出されていた。


「今、気付いたけど、中性よりの容姿をしてるよね……あんまり、自分の姿なんか気にしてなかったよ」


煌めく肩にかかりそうな銀髪に、透き通った雪のような肌。そして、どこまでも吸い寄せられそうな黄金色の瞳。


白髪のロングで、サファイア色の瞳を持つメアに似た雰囲気がある。


「遠目から見たら、僕とメアって、姉妹に見えたりするの?」


僕の質問に、シリカがコクンコクンと頷く。


「髪、切ったらカッコよくなれるかな?」


「それを切るなど、ドンでもない!」


なぜそのネタを知っている、シリカよ。


あと、初めて噛まずに話せたね……。

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