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42話 ドロシーVSライオット

模擬戦八日目。


騎士様とミーゼさんとの闘いで、ボロボロになった舞台を修繕する為に時間がかかり、四回戦を終えるだけで、1日が終わってしまった為、午後にやる予定だった五回戦は翌日の今日になった。


当然のように神聖騎士の2人とスーは勝ち残った。


騎士様の闘いに触発されたのか、3人とも圧勝していた。


さすがはエディシラ神聖国が誇る神聖騎士と言ったところか。


恐らく今日が模擬戦最終日。


五回戦が八試合。


六回戦が四試合。


七回戦が二試合。


そして決勝戦。


別に優勝とかないけど、おじいちゃんがどうしてもとこのような形式になったんだよね。


お陰で模擬戦だけで八日もかかっちゃったよ。


そして模擬戦が終わったら、面接だ。


さすがに当日にやらないから、明日になる。


明日面接を終えたら、明後日に騎士団メンバーを発表して、その流れで僕が考えた騎士団の名前を公表することになる。


『皆様お待たせしました。模擬戦最終日、第五回戦、第一試合の選手は舞台に上がってください』


アナウンサー顔負けの美声で今日の第一試合が行われる。


お互い歴戦の猛者だ。


これまで勝ち残っただけの実力はある。


『第五回戦、第一試合……開始っ!』


ユリアさんの言葉をひぎりに闘いが始まった。





いやぁ〜第五回戦も激しかった!


まさか、カツラでオカマだったとは。


さすがにチャラが濃すぎて、うちの騎士団はパスしてもらおう……。


ドロシーは、闇魔法を使うようになったけど、僕の時に使った暗殺技は使わなかった為か、苦戦はしてたけど危なげなく勝てた。


騎士様は、無茶はしなかったけど、早くも新しい風魔法のコツを掴んだのか、足に纏わせて、立体機動を体現していた。空中を蹴るとはあのような感じなんだなぁと思いました。


チャラ男なキントさんは、イケイケで、相変わらず舞台全体を走り回り、ヒットアンドアウェイを繰り返していた。なんか騎士様の真似をして腕にしか纏わせていなかった水魔法を身体全身に使おうとして、暴発していた。まあ、結果として相手の視界を潰すことに成功してたけど。


どうやら、水魔法や土魔法など身体にダメージを負わない属性系は腕や足などに纏わせることは、一般的なことのようで、ただし一流に限るけどね。その代わり、殺傷力がありまくる火魔法や風魔法は身体に纏わせることが一般的じゃない代わりに純粋な魔法としては、土魔法や水魔法より強力らしい。ミーゼさんがいい例だ。


まあ、基本四属性を持ってない僕には、関係ない話だけどね!


ノーコンなカルスさんは、圧倒的な守りを貫き、シールドバッシュを多用するようになった。勝つ為なら、使うものは使う精神に目覚めたのだろう。右手に持った槌がオブジェに見えるぜ。今度、盾の二刀流というものをオススメしてみようかな? メアのお気に入りなのは分かったけど、シールドバッシュする度に笑いを堪えるように僕の背中をガシガシ叩きのは止めて頂きたい。さりげなく、ノーコンとシールドバッシュを合わせてノーバッシュとか訳の分からい造語を作るのやめようね? 叩きつけることすら出来ないみたいじゃないか。


スー相変わらず、一瞬で相手を倒してるから、語る事なし! まあ、彼女は、騎士団長になることが決まっているから、部下になるかもしれない参加者達に苦戦するわけに行かないだろう。


それに彼女は僕が『運命改変(モイラ・シフト)』を唯一、行使して死の運命から救った為か、本人曰く、全盛期より強くなったらしい。現に彼女の魔力に若干僕の月白色の魔力が混じっていることから、生まれ変わったとも言える。


そうしてつつがなく第五回戦は終わりを迎えたのだ。


『第六回戦、第一試合を行います。両者は舞台にお上がりください』


そして、遂にドロシーと騎士様が激突する。


お互い無言で武器を構える。


どちらも無駄口を叩くタイプじゃない。


『それでは第六回戦、第一試合……開始っ!』


合図と同時に、2人が残像を残して衝突する。


ドロシーは『身体強化』のみだが、騎士様は『身体強化』と両足に風魔法を纏わせている。


その上で速さは拮抗。パワーは騎士様が上だが、ドロシーの短剣での受け流しは凄まじく、騎士様の正確な連撃を一呼吸でいなしていた。


そんな2人の卓越した闘いに会場は息を飲むように静まり返る。


会場には、剣と短剣がぶつかり合う剣戟のみが鳴り響く。


演舞のような美しい闘いだが、ドロシーが仕掛ける。


何と、闇魔法を自分ではなく、騎士様の足元に展開したのだ。


両足に風魔法を纏っていた騎士様は突然踏ん張りが効かなくなった為、体勢を崩す。


そこの隙を逃さずドロシーは、短剣を騎士様の胴体に繰り出す。


しかし、騎士様は迫り来る攻撃に、予想の斜め上の動きで対処した。


何と影に沈んだ足から突風を起こし、崩れた体勢を無理やり変えたのだ。


振り抜かれた短剣は虚空へと空振り、体勢をほとんどうつ伏せにした騎士様が、腕立てのように、剣を持たないほうの腕に風魔法を纏わせて、再度突風を起こす。


一気に体勢を戻した騎士様は、剣をドロシーに振るう。


もはや、避けることも防ぐことも出来ない体勢のままドロシーは目を瞑る。


騎士様の剣はドロシーに触れる直前で止まる。


『……私の負け』


『はい、私の勝ちです』


最後まで目が離せない試合に、会場はもはや何度目だよとツッコミたくなる歓声に包まれる。


本来の暗殺技を封印してまで、戦ってくれたんだ。


僕も覚悟を決める時だなぁ。


澪に甘いと言われるかもしれないけどね。


命を奪われそうになったことは、今では思い出すだけで震えそうになる。


でも、それは僕が未熟で、彼女がそれ以外の生き方を知らなかったからだ。


これからは違う。


僕が彼女に新しい生き方を教えるんだ。


ドロシーを面接リストに追加して、僕は決意を決めた。





第六回戦も終わりを迎えた。


残った4人は、騎士様とチャラ男とノーコンとエロフ。


うん、キャラ濃いな!


そして、さすが神聖国なのかな? 4人中3人が神聖騎士だ。


第一試合目は騎士様とチャラ男のキントさん。


第二試合目はノーコンのカルスさんとエロフ……ゲフンゲフン、エルフのスーニャだ。


残す試合は三試合のみ。


この場合は、カルスさんがとこまで健闘出来るかだね。


言っては悪いけど、スーが負けるヴィジョンが浮かばないし、浮かびたくない。


騎士様とキントさんとの闘いはどうだろう? 騎士様は圧倒的な剣術と風魔法の補助により、圧倒的な対応力を持っている。


それに対して、キントさんは、無尽蔵のスタミナと、相手の攻撃をいなす手首の柔らかさと、衝撃の吸収に優れた水魔法を両手に纏わせている為、生半可な攻撃では、全て無効化されてしまう。


これがミーゼさんなら、面攻撃で圧倒してただろう。


騎士様の攻撃は、剣と風、共に斬撃タイプだ。


相性はそこまで良くない。刺突系や鈍器なら相性は良かったかもしれない。


騎士様の課題は、いかにその攻撃を体力お化けにぶつけられるかが正念場だ。


逆にキントさんは、機動力では上回る騎士様にどうやってその拳を叩きつけられるかが課題になる。当たっても威力の劣る水魔法を纏った拳では決定打には欠ける。


勝負の行く末は誰にも分からない。

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