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3話 妄想のお友達

結論さっぱり分からぬ。


過保護な両親に暫くチヤホヤされて、ようやく普段通りになって早速取り掛かるのは、夢にまで見た魔法。


ここで問題になるのが、ベイビーボイス。


「らぁうえいひうええる」


意味不明である。


ライトヒールが言えない。


もっと言えば、聞き取れるようになったけど、まだ喋れるほどじゃない。


そこでわたくしは考えました。


無詠唱的なうぇーいでやれるんじゃね?と。


結果。


なんも起きない。


魔法が発動しない。


脳裏で魔法陣を浮かべて、思考でライトヒールと唱える。


結果、なんも起きません。


何故だろう。


才能無いのかな。


理解が足りないのかな。


魔力が足りないのかも。


全部足りない気がしてきた。


原点回帰。


才能は努力で補おう。


理解は思考を重ねよう。


なら、魔力を増やすには?


そもそもどうやって増えるの?


多くの愛読本で様々な方法があった。


ひとつ、レベルを上げる。


ひとつ、魔法を使う。


ひとつ、ジョブを変える。


ひとつ、魔力を限界まで使って、上限を底上げする。


この中でなら、魔力を限界まで使う一択。


魔法使えぬ。レベルがあるかすら分からぬ。もしもジョブがあるのなら、もれなく小心者ベイビーのジョブはニートである。


ベイビーに出来ることは相も変わらず、ひとつになるだろう。


愚直なまでの魔力上げである。


でも不安だ。


魔力の上げ方が分からない。


今までの修行は、魔力を増やすというよりは、魔力を認識出来るようにする行為に思えてならない。


なにか他に方法があるかもしれない。


まあ、何もしないよりは、やってみよう。


日常的に気絶を繰り返してきたゆえ、耐性も中々のものです。


深く潜ってから、10分ぐらいは耐えれるようになりました。


そこにひとつアクセントを加えよう。


僕は魔法の事ばかり考えていた。


だが、元を正せば、魔法というのは、魔力があって初めて行使できる力なのである。


なら、魔法ではなく、魔力そのものをもっと深く理解出来なければ、魔法の行使なんざ、夢のまた夢だ。


よし、とりあえず、日本オタク特有の能力を発動しよう。


必殺!なんでも擬人化!


魔力を擬人化します。


ほら、あれだよ。


自分の車やボウリングの球に、名前をつけて愛する人達みたいな感覚。


最近だと、自分の筋肉に名前を付ける人も居るみたいだし、大丈夫だよね!


そうさね。


髪色は同じ黒髪にしよう。


容姿は可愛いと綺麗が合わさったクールなお嬢様。


髪型はツーサイドアップとかいうハイブリット。


服装はゴスロリ一択。


日傘をさして、口調は〜そうね。〜そうよ。〜そうだわ。など、少し上から目線!


決めゼリフも決めておこう。


僕以外認識出来ない架空の存在だからね。


僕に向ける言葉にするべきだろう。


…………


………………


『その程度で魔力(わたし)を知ったつもりかしら?』


来たわ。パーフェクトです。


うへへ。


脳内で培ってきた妄想が遺憾無く発揮していく。


何事にも愛情を注いだ方が効率がいい。


魔力ちゃんはあんまし可愛くないか。


なら魔力(マナ)ちゃんでいこう!


早速マナちゃんとの脳内会議といこう。


ベッドに横たわり、目をつぶる。


だが意識は深層ではなく、仮想世界である。


そこには、夜の王城が背景に鎮座していた。


空には薄暗い雲が立ち込めて、太陽を拝めない。


王城の庭園とも呼ぼれる花々が綺麗に咲みたれている。


その庭園の真ん中に、テラスがあった。


白を基調とした高級感溢れるデザインである。


そこに彼女は座っていた。


同じく白を基調にしたクロスが敷かれたテーブルにはティーセットと、ほらあれだよ。


何段かに別れてお菓子が重なってるやつ。


ケーキスタンドだっけな?


全身黒いマナちゃんが紅茶を飲んでいる。


彼女の向かいには誰も座っていない椅子。


脳内で彼女に向かって進む。


自分の姿は、前世の姿。


服装は私服より着たスーツ。


彼女の正面に立った。


可愛らしいお顔をこちらに向ける。


「…………」


喋らないけど、ニコって微笑んで、手で正面の椅子を勧める。


頷き、正面の椅子に座る。


彼女はポットから紅茶をカップに注いでくれた。


まだしても手を差し出して、どうぞと勧める。


「いただきます」


一様礼儀として、口に出しておく。


紅茶を啜る。


芳醇な香りが鼻腔をくすぐり、スッキリした味が舌を程よく刺激して喉に流れ込んでいく。


「うむ。美味しい」


僕のセリフに嬉しそうに微笑むマナちゃん。


ドレードマークの日傘がクルクル回っている。


さっきまで持ってなかったのに。


て、こんなことしに来たんじゃない。


「マナちゃんお願いします。魔力の増やし方を教えてください」


頭を下げて教えを乞う。


「…………」


暫くマナちゃんが考え込む。


その際に指を顎につけるのが可愛い。


「魔力は全ての始まり」


なんか語りだしたぞ。


「全ては巡り、やがて元に戻る」


それっぽい。


「貴方が、魔力(わたし)をその身に巡らせれば、貴方の望む答えに辿り着くのかもしれないわ」


それっきり、まだ紅茶を楽しむマナちゃん。


うむ。


流石は我が妄想の産物。


真っ当そうな事言ってるようで、実際はかなり適当だ。


まあ、彼女の存在理由は、僕の思考を纏めて、改めて可能性を提示する事だからね。


僕の知らないことは、彼女も知らない。


僕の知っていることは、彼女も知っている。


ただ、小心者が自分の考えている答えに自信がないから、こうやってわざわざ擬人人格ぽい存在を生み出して、代わりに答えを告げてもらうのだ。


こうすらば、ミスった時に、精神的なダメージが軽減する。


伊達に学生時代ボッチしてない。


こと、脳内会議はお手の物だ。


これに何度、上司の無理難題を乗り越えてきたか。


学生時代の体育の2人組は、見えない黒子さんが務めました。


嘘です。ムキムキな先生と組みました。


まあ、こうやって妄想だと分かっても、美少女とのひと時のティータイムを楽しむことにしよう。







マナちゃんの教えの元、体の奥底に眠る魔力を、体に巡るイメージをする。


これが非常に難しい。


まともに魔力が体を循環出来るようになったのは、2歳の誕生日を迎える直前だった。


その頃は、1歳を迎えても、まともに言葉を喋らないことから、両親を心配させまいと、魔力循環と並列して、言語解読に精を出しました。


拙いながら、異世界語ゲットだぜ。


おかげで、うろ覚えの英語忘れた。


人間、何かを得ようとすれば、何かを失うのです。


循環し始めたので、まだしてもマナちゃんの仮想世界へ。


せっかくだからこの仮想世界にも名前を与えよう。


魔女(ウィッチ)のお茶会(ティーパーティー)』とかどうやろ。


雰囲気的にマナちゃんが魔女に選出されました。


1年前となんだ変わらないマナちゃんワールド。


紅茶を啜るマナちゃんも全く同じだ。


そのゴスロリは1年以上着ているのだろうか。


ばっちい。


「貴方が着させたのでしょう!?」


そうだった。


ゴメンよ。


流石に今のままじゃあれだから、即座にオニューの可愛いお洋服をイメージ。


そうさね。


洋風のゴスロリから、和風メイドの服装とかどうかな?


当然黒を基調にした落ち着いた感じの。


脳裏でテキパキと服を仕立て上げる。


伊達にギャルゲーをやりまくってない。


可愛い服から奇抜なやつまで何でも即座に構築可能だ。


逆に、自分の着る服が全くイメージ出来なくなってしまいました。


イメージをマナちゃんに反映させようとすると、彼女が立ち上がる。


「着替えてきます」


有無を言わさない物言いで、お城の中に消えていく。


この場の服を変えようとしたのは、いけないことらしい。


小心者ひとつ賢くなった。


テーブルに座り、妄想のバリエーションを増やす為だけに、ネットで見たお菓子を口に放り込む。


「うむうむ。美味しいや」


味は何となくイメージ。


この手のお菓子って男性には購入しずらいんだよね。


紅茶も啜っていると、気配を感じた。


む!何奴。


視線を向けると、和風メイドになったマナちゃんが綺麗な仕草で歩いてくるではないか。


「マナちゃん」


「何からしら」


大胆不敵な態度で、表情を崩さない和風メイド。


「似合ってるよ」


我ながら、自分のセンスに驚く。


何故、リアルの女性達は和風メイドコスをしないのだろうか。


「ええ。ありがとう」


素っ気なく感謝を伝えて、マナちゃんは椅子に座り紅茶を啜る。


僕は彼女に尋ねる。


「マナちゃん」


「何かしら、旦那様」


服装につられたのだろうか。


呼び方が変わっている。可愛い。


「この紅茶飽きた。それに僕はロイヤルミルクティー派だ」


「っ!」


マナちゃんにお紅茶をぶっかけられました。


さっきまでの上機嫌から不機嫌そうです。


何故僕はこんなにも妄想をリアルにしてしまったのだろうか。


顔やら手やらがベタベタする。


「これで!いい!かしら!だ・ん・な・さ・ま!」


鬼の形相で、ロイヤルミルクティーを入れてくれるマナちゃんには感謝だ。


「やっぱりミルクティーは、紅茶〇伝に限るよね」


懐かしき、ミルクティーの味に酔いしれる。


ベットボトル24本入をネットで買ってたなあ。


でも、何となくだけど、ベットボトルより缶の方が美味しく感じるんだ。


コーラでもサイダーでも同じ現象が発生する。


何故だろう。


「なんでだろうね、マナちゃん」


「そうね。貧乏舌だからじゃないかしら」


回答が適当です。


機嫌は直ってないようです。


マナちゃんの言い分もわかる。


ミルクティーは缶やらベットボトルのやつだけど、紅茶に関しては取引先とかで出される上等なものをいただく機会があったからね。


値段も1桁も違うかもしれないし。


「マナちゃん」


「なにかしら」


「紅茶も飲みたいなあ」


小心者ゆえか、高いとわかると、途端に飲んでみたくなってくる。


さっき飲んだのにだよ。


「はぁ……分かりました」


僕の態度にマナちゃんも呆れるご様子。


それでも紅茶をいれてくれるんだから、なんだからだ優しい子だ。


再び出された紅茶を啜る。


マナちゃんも啜る。


2人して息をつく。


うむ。


なんか紅茶じゃなくて、お紅茶と呼びたくなってきた。


なんか味わい深い気がする。


こうロイヤルな感じの。


くそう。前世で高級なロイヤルミルクティーを飲んでおくんだった!


そうすれば、更なる安らぎを得たのかもしれないのに。


まあいっか。


この世界でもロイヤルミルクティーがあるに違いない。


きっとある筈。


「旦那様」


「なに?」


マナちゃんが話しかけてくるとは、隕石でも降ってくるかも。


あ、空の彼方から隕石が降ってきた。


遠くからデカい爆発が起きるけど、マナちゃんは特に気にしない。


「私も、もっとロイヤルな紅茶が飲みたいわ」


どうやら、更なるお紅茶をご所望だ。


いいだろう。


「ロイヤルミルクティーのついてに、ロイヤルなお紅茶も見つけてくるよ」


「ええ。楽しみにしてるわね」


マナちゃんの機嫌が直った良かった。


本題に入ろう。


「マナちゃん」


「ダメよ」


まさかの言う前に、結果が言い渡された。


「なんで?」


理由を知りたい。


「今の貴方では、足りないもの。巡りが」


「…………なるほど。巡りが足りないか」


「ええ」


「なるほど」


うむ。相も変わらず適当な。


でも、僕も思ってた。


魔力循環がようやく出来るようになったところだ。


きっと魔力量はまだ増えてないのだろう。


増やすには、この循環を更に極めないと。


目指せ身体中、魔力血管構築。


はてさて、いったい何年かかるのやら。


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