35話 各国紹介
入団試験四日目。
3日間の試験は滞りなく終わり、千人近い参加者のうち、僅か二百人にまでその数を減らした。
ここから模擬戦で成績上位25名に次の面接資格が与えられる。
この成績上位とは勝敗だけではなく、戦闘技術や適応力、戦闘スタイルなど幾つもの評価項目別に別れている。
勿論、瞬殺されるような人は論外である。
これから数日に別れて模擬戦が闘技場で行われ、それを僕含めたエディシラ神聖国の教皇様と聖女であるメサイアと司教などの上位神官であるユリアさん達。
そして、各国の貴賓の方々とチケットを獲得した一般客で模擬戦の行く末を見届けることになる。
ここで来日した各国の紹介をする。
僕が生まれ育った村があり、豊かな自然に包まれたルノワール王国からは、王族でもある公爵家ミスディール当主、メロウ・ビイ・ミスディール様とそのご子息様が見に来ている。四十代半ばと若く、眼鏡の奥から覗く瞳は力強い。そのご子息は二十代前半で父に似て落ち着いた姿勢を貫いている。挨拶する時も、僕の両親や村を武器に何かしら要件を言うかもしれないとユリアさんに忠告を受けてたけど、実際は他愛ない会話だけで済んだ。
次に経済国家で多くの産業を担っていて小国ながらその影響力は大国にも匹敵するパステル王国。そこからは伯爵家バイヤー家の時期当主であるレットゥ・バイヤー様がご参加だ。二十代後半で少し怖い笑みを浮かべている腹の中が分からない御仁だ。ユリアさん曰く、パステル王国は他国をカモとしか思っていない為か他国訪問に当主や王族が参加はしないらしい。珍しい教皇様が招待があってもパステル王国には行くなと言われた。なんか怖い。
お次は、剣士の最高峰にて最強と呼ばれる剣聖を抱えるアースガル騎士国。そんな圧倒的な武勇を持つ国からは、まさかの当代剣聖様とそのご子息が参加だ。剣聖様は代々王族に使えるセーバー侯爵家で名は、ライト・セイバー様。ご子息はユーリ・セーバー様。剣聖様は三十代前半でユーリ様は何と僕より1つ年上の十一歳児である! 歳が近いけど、無言で僕を見定めるような視線を向けてくるのはやめて欲しいです。それを剣聖様はゲラゲラと笑って、息子と仲良くしてくれと頼まれた。
更にお次は、ハワード魔導国。名の通り、魔法に精通しており、そのトップに魔導王に据え置き、賢者様もいるという魔法使いにとって夢のような国。教皇様は賢者様とは知り合いらしい。しかも、魔法学園とかいうワクワクする場所もあるんだから、是非行ってみたい。そんな魔導国からは、宮廷魔法使いであるふんわりカールがかかった三十代の女性のリシン様がご参加だ。そんな彼女は僕を終始見詰めては興奮気味に近寄ってきて、その護衛の人達に止めれられていた。おかしいな?魔力は完全に押さえ込んであるから魔力を纏った瞳を持っても僕からは魔力を感じられないはずなのに。
お次はミロディア王国。大きな湖の真ん中に水上都市が浮かんでおり、外観の美しさは大国一らしい。さらに歌と平和をこよなく愛する謳歌的な国で、1度行った事のあるスー曰く、冒険者ですら冒険を忘れてのんびりしてしまいそうになるらしい。スローライフに持ってこいな国なのかな? そんなミロディア王国からは、なんと、王族が来ています! 第二王子のルイス・D・ミロディア様と第一王女のシャロン・D・ミロディア様のご来日です。ルイス様は十代後半の金髪でニコって笑った顔は優しそうだ。シャロン様は僕と同じ歳の女の子で、引っ込み思案なのかお辞儀ぐらいで会話は無かった。
次に同じぐらいの国力で同じような地理を持つ、グルトン竜国、ミリープ王国、ファスマ王国の3国である。国的には小国に位置するらしい。
グルトン竜国は、竜殺しが建国した国なだけあって豪快そうな中年のおじ様がご来訪。……なんと国王陛下です。名はオック・グルトン様。僕を見る目が明らかに狩人の目でした。竜殺しの家系なのかその筋肉はおじいちゃんにも負けてない。実際おじいちゃんとニヤリあっていたけど、お知り合い? 竜の亜種であるワイバーンこと飛竜を乗り回す飛龍隊が主力らしい。年老いて亡くなったワイバーンはその肉を振る舞う習慣があり、俗に言うドラゴンステーキがあるそうです。ゴクリ……
ミリープ王国は、牧場などの家畜育成に力を注いでおり、そのミルクは極上で、その羽毛で作られた枕は予約が10年先まで埋まっているとか。ミルクティー好きな僕としては、是非そのミルクを飲んでみたいですねー。はい、初の女性のトップ女王陛下のご来訪です。ネンネ・ミリープ様ですね。二十代後半のこうなんだ、大きいものをお持ちですね? やはり牛乳を多く飲むと膨らむのでしょうか? あと、名前が眠そうですね。目の下のホクロがなんかいやらしいです。
最後にファスマ王国。……うん。王様です。五十代ぐらいの覇気を感じさせない穏やかな王様です。名はラーグ・ファスマ様。……以上! 特に目立った特徴がある訳でもない小国らしいです。僕的には、うん、平和そうな国だなー。
因みにもうひとつ国があるんだけど、そことはどの国も関わりあっていないらしい。
国の名前はミノリス帝国。国土は神聖国に迫る上に、国力は圧倒的で、鎖国気味なのだけれど、大陸最強の戦力である黒騎士団は一人一人が一騎当千の実力を有する為、この国と隣接する国はいつ戦争を仕掛けてくるか警戒を怠れないらしい。噂だと魔獣すら手なずけてあるとか。この大陸で唯一、神聖国に戦争を仕掛けてくる可能性がある危険な国だ。もしかしたら、この国が暗殺者であるドロシーを送り込んできたのかもしれない。考えすぎか?
以上がこの大陸の国々である。他の大陸とはほとんど交流がないし、行く機会はほぼないらしい。
それ以外にも、ルノワールの西側にある山群は竜の国と呼ばれており、多くの竜が根城にしている為、一般人の立ち入りは禁止されている。スーが仲間と一緒に行き、そして上位竜のレッドドラゴンに遭遇した場所でもある。
もうひとつは、アースガル騎士国の北に存在する魔の森で、そこの奥地には魔族の国が存在して、魔王が総ているとか。魔王は魔族の王様の呼び名で、別に悪者では無いらしい。
エルフが住まう世界樹の森や、ドワーフの地下帝国、獣人の国などもあるけど、神聖国とは和平を組んでいないので、お互い不干渉だ。




