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34話 入団試験前日

「間に合った」


達成感に浸りながら薄暗い部屋の中央に置かれた10組の鎧を見つめる。


月白色に輝く僕の『加護(ブレッシング)』が付与された鎧。


これは僕を護衛する専属部隊である物で、これとは別に普段着として、前世ではブレザーや制服に似た服装を以前、僕の祭服を作ってくれたベロニカさんが作成に携わってくれた。


制服に関しては、この後に行われる入団試験で僕自身が見極めた人達に合わせるため、材料を一通り集めた状態だ。


それの試作品といより、既に入団が決定しているエルフ娘であるスーニャことスーが先に着込んでいる。


「うふふ。いつ見ても素敵ですねー」


そう言いながら、展示されている鎧に頬ずえをするスー。


「君はいつもギャップが凄すぎるよ……」


今、この部屋には僕とスーしか居ないためか普段凛としている彼女とは思えないほどの変貌ぶりだ。


と言っても、僕には見慣れた姿なのだけれどね。


ーー見慣れたくはなかったよ。


「お言葉ですが、この鎧には主様の魔力を感じるのですよ? つまりは主様が何時でも私を包み込んでくれていると言っても過言ではない! ぐへへ」


垂れたヨダレを新しい制服で拭くのはやめてくれないかなー?


「乙女のする顔ではないよね……はぁ」


ため息が零れてしまうよ。


因みに、制服には『加護(ブレッシング)』ではなく、『祝福(ブレス)』が付与されている。


素材の性質的に、制服では『加護(ブレッシング)』には耐えれないのだ。


当初はなんでも付与出来ると思っていたから、全く持っての誤算だ。


そんじゃそこいらの木の棒に『加護(ブレッシング)』を付与して、木の聖剣的な贅沢使いする予定が!


『うわぁ……くだらなー』


くだらなくない! 澪君ぅ〜君には理解出来ない男のロマンなんだよぉ〜?


『しりたくもないしー、興味もない!』


ひでぇー。


『それに私は制服の作成に協力したでしょ? 感謝してほしいなー』


その通りなのだ。


僕の騎士団なのだから、服装や鎧に関しては、僕の意見が多く反映されている。


最もなのは制服だ。


これには澪が日替わりで身に付けている前世のブレザー要素が使われている。


因みにセーラー服もたまに着てくれる。可愛い。


制服は青色をメインにしており、女性なら紐リボン、男性ならネクタイと別れている。勿論女性はスカート! ガーターベルト! ニーソックス! の着用を任意にまかせている。ズボンを付けたければ付ければいい。僕は残念な気持ちになるけど。


僕の目の前で鎧に頬ずえすることをやめないスーは全て着用してくれているので眼福である。


スカートとニーソックスの間の太ももがガーターベルトの締め付けで少しぷにゅとしているのは7歳児である僕ですら頬の緩みを耐えるのは難しい。


エロカワイイの言葉の意味がようやく分かった気がするよ。


細剣をメインで使う彼女だからか、腰には細剣がベルトにて装着されていて、改めてファンタジーを実感する。


そんな僕の視線に気が付いたのかこちらを頬を赤らめながらチラ見するスー。


「この後は、ベットの上……ですか?」


「ですかじゃない!! どうして君はそうやって下ネタをぶち込もうとするの!」


「うふふ。照れなくても〜私はい・つ・で・も、オッケーですよ!」


そうやってスカートの裾を軽く持ち上げて誘惑するエロフは無視する。


「そろそろ制服は脱いで、神聖騎士の鎧にしなよー。その制服はまだお披露目は先なんだからさー」


「す、スルーですか……主様は不能なのでしょうか……」


「7歳児に不能はないだろうっ!! 寝ぼけてんのか、このエロフっ!!」


幸先に不安を感じながら、先に部屋を出る。部屋の前では済まし顔の神聖騎士の2人が待機。


別に僕とスーのやり取りを気にしてないんじゃなくて、防音の魔法が付与されている部屋なので、純粋に聞こえてなかったのだ。


でなきゃ、神子という立場である僕が声を荒らげたりはしない。


神聖騎士の2人が緊張した面持ちで僕に最敬礼をする。


部屋を入る時もそうだったけど、もう少し砕けてもいいんじゃないかなー。


「お待たせしました。では、参りましょう神子様」


誰? と思うぐらい澄まし顔で部屋から神聖騎士の鎧を着たスーが出てくる。


神聖騎士にも男女別の鎧の為、スーの着込む鎧も女性らしさがある感じだ。


控えめに言って似合っている。


その為か、最敬礼の状態で2人の男性神聖騎士は、その視線をスーから離せてない。


「はい。ではお勤め頑張って下さい」


「「はっ!」」


僕の言葉に我がかえった2人に苦笑しながらスーを引き連れて、目的地に向かって歩を進める。


「それにしても、もう明日かー意外とあっという間だったね」


「そうですね。明日から入団試験が始まり、各国のお偉い様が集まってきていますね」


それに加え、明日から各国から集まった無所属の人達が僕の騎士団に入団するべく集まっている。


入団試験の内容は5つだ。


1つ目は明日行われる身体能力試験。


主に基礎的な身体能力を測るものだ。


ハードルはそこまで高くなくて、ユリアさん曰くDランク冒険者ならクリア出来るものだ。


え? そんなにハードル低くていいの? と思うかもしれないけど、これは魔法を主に扱う魔法使いなど、後衛メインの人達に配慮してだ。


変にハードルを上げすぎると脳筋ばかり集まるからこれで丁度いいとはユリアさんの話。


それでも脳筋が集まるのが必定の為、2つ目の試験で脳筋だけの人達を排除する為に、筆記試験が行われる。


この筆記試験では、一般的な常識やいざって時の行動やその理由を書く必要がある為、字が書けない人はアウトである。


勿論、いざって時の行動は、護衛対象である僕が危機に陥った時の対処が主になるため、護衛対象である僕をほっぽり出して敵に突っ込むような回答をしたらアウト。


騎士団に憧れる。神子にお近づきになりたいなどの中途半端な理由の人達を排除するのも目的だ。


僕的には3つ目が1番きついのでは? と思う。


何故なら3つ目は休息ということになっており、1日の休みを与えられている。


その1日の間に行った行動は全て監視され、怪しい真似をしたり、人格に難がある場合は、失格になる。


格式や伝統を重んじる神聖国に置いて、問題ある行動するやつなど必要ないという意思表示だ。


スパイなどを排除するのもこのタイミングだ。


「相変わらず凄いですね」


思考に耽っていた僕の後ろから感嘆の声を上げるスー。


彼女の視線は少し離れた場所に、僅か2ヶ月で建造された"闘技場"に向けられている。


「おじいちゃんが張り切って作ったらしいからね……」


アーケル枢機卿ことおじいちゃんは、ユリアさんに仕事を押し付けて、勝手に僕の入団試験の責任者に付いたらしい。


その為、ユリアさんの小言を聞き流しながら、あんなデカい建造物を作り上げた。


「お金がかかってますねー」


「そうだねー白金貨300枚だっけ?」


「……冒険者時代でも滅多に稼げない金額です」


Aランク冒険者であったスーすら稼ぐのは大変な額が使われている。


日本円にして約300億円なんだから無理ゲーだよね。


「よくそんな大金をつぎ込めましたね」


「神子貯金から使ったらしいよ」


「なんです? それは」


「毎年、白金貨10枚を神子の予算にする制度があってね。これは建国直後から続く制度で、神子の不在中でも変わらず貯まるらしんだ」


「……確か、前の神子様から100年ほど空いてきますよね?」


「うん。つまり白金貨1000枚と先代が使えきれなかった分も含めると1320枚ぐらいあるんだよ」


「うわぁ……主様、お金持ちですね」


「そんな次元じゃないとおもんだけどね」


スーのズレた言い方に苦笑する。


日本円で1320億円とかとち狂ってるわ。


「それに、教皇様からはある程度使ってくれても問題ないって言われてるんだ。変に貯めすぎると経済に影響を及ぼすからって……だからおじいちゃんも別に私利私欲の為に建てたわけじゃないよ? 入団試験が終わったあとも、訓練場として使えるからね」


前々から、大きな訓練場が欲しかったけど、教皇様に却下を食らってたからこれ幸いと、建てたと豪快に笑ってたけどね。


神聖国は魔物討伐とかはかなり徹底してるし、治安も悪くないから、あんまり騎士達に強さは必要なかったらしい。


大陸に存在する国々ともほとんど和平を組んでいるから攻められる心配が必要ないのが拍車にかかってたわけだ。


そう、お察しの通り、入団試験4つ目は模擬戦。しかも各国のお偉いさん達が観戦する中である。


これには闘技場が使われる。


おじいちゃん曰く、パステル騎士国が3年に1度行う闘技大会が羨ましかったからという私情も含まれてたりする。


その為、うちの国でもそういうことをやりたい! と前から思っていたらしい。


「スー。がんばってね? あと、怪我とかしないようにね?」


隣にいるスーにエールをおくる。


なんだかんだ言っても、スーのことは信頼している。


だからスーが傷付く姿は嫌だなぁ。


僕の言葉に少し驚いたようにみせるスー。


そんなに僕がそういうことを言うのが意外か?


だけど直ぐに柔らかい笑みを浮かべる。


「もしも、私が模擬戦で優勝したらご褒美が欲しいですね」


模擬戦だけど、トーナメント形式で行われる。その為、勝敗も評価の1つになるし、勝てば勝つほどアピール出来る回数が増える。


「そうだね。……うん、僕で出来ることなら」


「本当ですか!?」


「う、うん……」


食い気味に反応するスーに嫌な予感を感じる。


「なら、主様にお情けをいただければ!」


「お前、頭に蛆でも湧いてんの?」


やっぱりご褒美はやめとこう。


このエロフにご褒美は不要だ。


「そんなぁーお慰みを! このエルフめに劣情の限りの蹂躙を!」


「あ、人だ」


僕が嘘で廊下の奥を指すと、一瞬にて、澄まし顔に戻るエロフ。


変わり身はやい!


「神子様、そろそろ参りましょう」


「あ、やっぱり見間違いだった」


「主様ぁ〜!」


僕を責めるように言う。


「そんなに警戒するなら、普段から普通にしてればいいのに」


「無理です。私は主様をからかうのが生き甲斐なので」


「きっぱり言うことじゃないよ!」


この子本当やだあ〜。


再び歩き始めた僕はボソッと言う。


「……スーは面接で落とそうかな?」


「ご堪忍を!」


最後にして1番の最難関である僕との面接。


どんなに優秀でも、どんな英雄譚を持った英雄でも、僕が却下したら、その人は入団出来ない。


最後の決定権は全て僕の選択になる訳だから、ある意味世界一意地悪な入団試験になるかもしれない。


この世の終わりみたいな表情を浮かべるスーが後ろについてくる。


そんなスーに向き直り茶目っ気全開で言う。


「うーそ! あははー」


「もう! 心臓が止まるかと思いましたよ!」


「あはは! ごめんごめん」


この幼い身体に引っ張られてか最近は、子供っぽい自分がいる。


でも悪い気はしないんだよねぇー。


本当の意味で僕もこの世界の一員なんだと感じるから。

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