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21話 新たなる仲間はメイド?

目が覚める。


最近は気を失うことにも慣れた。


目を開くと、知らない天井だ。


きっと倒れた後に、施設のベッドまで運んでくれたのだろう。


「無茶のし過ぎです。貴方に何かあったらどうするのですか?」


メアの声が横から聴こえる。


返事を返そうとすると。


「いえ。これでは責めてるように感じさせます。……もっと、優しく……目が覚めましたか? 貴方のお陰で大勢の方が救われました。私も心から感謝します。……なんか、かたいですね? もっと親しみを込めた方がいいでしょうか? ……レイン、無事で何よりです。貴方のお陰で亡くなる運命だった方々には笑顔が咲き、ご家族や仲間の方々も感謝をしているのですよ? 誇ってください。貴方は名実ともに神子として認めてもらえましたっ! ……その、私のわがままだと気づいても、頑張ってくれた貴方には感謝しても仕切れません…」


どうやら、僕が起きた時のシュミレーションをしていたようだ。


初めて会った時のような神秘的で近寄り難い雰囲気はなく、今はむしろ親しみやすい。


「別にいいですよ。僕も助けられる人は助けたかっただけですから」


「ひゃっ!……お、おお起きてたんですか!?」


体を起こす。まだ気だるけど、動けない程ではない。


「そんなに驚かなくても、お陰で今の状況を凡そ分かりましたけどね」


「驚きますよっ! だって貴方が魔力切れで倒れてからまだ3時間程なのですよ!? 魔力切れを起こした者は半日は目が覚めないのが常識なのですから」


僕は4分の1の時間で起きたのか。


前の時は、馬車に乗せられて神聖国に向かう最中に起きたから大体8、9時間程で、今回は確かに早いな。


「だったら、どうしてこんな早くから居てくれたんですか? 退屈でしょう?」


もしかしたら途中で離れる予定だったのかな? それでも、聖女という立場から暇な訳じゃないだろうし。


「同然じゃないですかっ! 貴方のやったことはエディシラ神聖国が始まって以来の大事なのですよ! 」


手を握り締められた。


メアは目頭に涙を浮かべている。


「何百人もの人を僅か一瞬で救ったのです。貴方が展開した魔法陣は首都のどこにいても見えるほどたと聞きました。これで名実ともに貴方はエディシラ神聖国の神子だと大勢の方に、肩書きではなく実力で証明したことになります」


そんなに派手にやっちゃったのか、僕。


「今や、昨日の神子の誕生の祝いと合わさって、神聖国は過去に例のないお祭り騒ぎなのです。救われた方々の中には他国の貴族や大商人、高位冒険者など、世界に大きな影響力を持つ方々も含まれています」


そんなに凄い人達も含まれていたのか。流石は世界最大の治療施設だ。


「彼らは貴方に感謝を直接言いたいと押しかけて来てるのです。今は私の部下である『戦乙女(ワルキューレ)』に宥めてもらっている所です。それにこの事は彼らが自国に帰ったら、間違いなく国の代表に告げるので、ひっきりなしに謝礼をしたいと貴方を自国に招こうとするでしょうね」


うげぇ。王様に合わなくて済んだと思ったら、今度は複数の王様に合わなくなる可能性が高いと。


何とかならない? と僕が視線で訴えると。


「元と言えば私のわがままで貴方の力を使わせたのが原因ですので、代わりに私が彼らの国に出向きます。流石に聖女では釣り合わないとは言わないでしょうから」


「迷惑をお掛けします」


「迷惑などありません。むしろ聖女になって以来、これ程、晴れやかな気持ちはないのですよ? レイン、本当ありがとうございます」


そう言ってメアは僕を抱き締めた。


「貴方に会ってまだ1日ほどなのに、もう私は何度も救われました。本当に不思議な方ですね」


「役に立てて良かっ……たです」


不意に眠気に襲われる。


「さあ。まだお疲れでしょう? もうしばらく休まれた方がいいですよ」


「そう……しま……す」


優しく頭を撫でられる。


「お休みなさい、レイン」


………………。


目が覚めた時には、翌日になっており、ユリアさんからメアと聖女候補の子達が他国に向かう為に出発した報告を受けた。


出会って2日しか経ってないし、まともに会話したのは昨日が初めてだったけど、何故か寂しさを感じた。





ええと、現在神子になって7日目になります。


僕は元気です。


あの後、ユリアさんから知らせを受けたあと、聖騎士(パラディン)の方々に護衛され、神殿に戻った。


その間も、僕にお礼を言おうと大勢の人達が施設に入ってきていて、てんやわんや。


聖騎士(パラディン)の人達が護ってくれてなかったら、揉みくちゃになっていただろう。


神殿に戻って直ぐに教皇様の元へと連れていかれた。


怒られると思ってビクビクしてたら、教皇様が僕の肩に手をおいて、一言。


「予想外ではありましたが、良くやってくれました。感謝します、神子レイン」


「良くやったな! レインよ! 儂も何事かと驚いたぞ! ワハハ!」


ひょこっと現れたおじいちゃんに背中をパンパン叩かれ、頭をくしゃくしゃに無て回された。


その後、あっさりと解放された。もっと色々言われると思ったけど、気を使ってくれたのかもしれない。


初日は、1歩引いて、話しかけてこなかったのに食事に向かう時も、食事をする時も、お風呂に行く時も、神殿を見て回る時も、会う人全員にもれなく感謝と賞賛され、跪かれて英雄気分を味わったけど、それ以上に精神的に疲れた。


教皇様が直ぐに解放してくれたのは、こういう展開を予想してたのだろう。


流石に3日も過ぎた後からは、落ち着いてきているけど、未だに羨望の眼差しを向けられている。


で、現在僕が何をしているのだと言うと、礼儀作法や他国の王侯貴族の名前や名産品、有名な高位冒険者の名前と2つ名とか、一般常識? を叩き込まれていた。


もちろん教師はユリアさん。


スパルタです。厳しいです。でも分かりやすく教えてくれるから覚えられている。


でも、1つだけ抜けてます。


そう、僕が愛して止まない魔法について何もないのです!どういうこと!? 未だに3つの回復魔法しか使えないのですが!!


「ユリアさん! 何故魔法を教えてくれないのですかっ!」


「あれほどの魔法を単独で使われる神子様に魔法を教える人が居ると?」


原因は僕でした。


あの『範囲回復(エリアヒール)』は、見た人達の独自解釈により、僕だけが使える『神の秘跡(サクラメント)』のさらに上にある魔法だと思われている。


それゆえ、僕は回復魔法を極めた神子だと認知された。


そんなやつが実は3つしか魔法が使えないとは、思うまい。


「な、ならユリアさんが教えてください! 回復魔法じゃなくても、光属性の適正があるので光魔法でもいいです!」


「私には回復魔法も光魔法も、適正がないので教えられません。そもそも、どちらも希少な適正なので両方教えられる方は少ないと思いますよ」


そんな……ゲームの神官なら回復魔法と光魔法は当たり前のように使えたのに……っ!


リアルはそう上手く出来てない。


「ですが1人だけなら、知ってます」


「本当ですかっ!」


「はい。回復魔法も光魔法、そして基本の4属性魔法も扱える凄腕の魔法使いなら」


なにその化け物性能!? 賢者様とかじゃないよね?


「そんなに凄い人なんですか?」


「はい。と言うより神子様もお会いしてますよ」


「え?……まさか……教皇様?」


「正解です」


1発で当たり引いたよ! 一瞬、メアかなと思って迷った。


でもメアは今、僕の代わりに他国に訪問中だから、教えられないと思ったから。


おじいちゃんは大浴場の時の雑談で、回復魔法は使えないと言ってたからね。


「ですが、教皇様はお忙しい上に、神子様の事に対する他国からの対処でほぼ休みがない状態ですので、魔法を教えてもらうのは、もうしばらくお待ちください」


「いえいえ! そんなに慌ててないので、ほんっっとうに暇な時にだけお願いします!!」


「かしこまりました。残念ながら他の者だと、神子様に必要以上に緊張や気後れ、邪な気持ちを持って接する可能性がありますので」


「よ、邪な気持ちって……」


「神子様に気に入られる為に、媚を売ったりと非常に不愉快な一時をお過ごしになるということですね」


「な、なるほど……それなら、我慢した方がいいですね」


「神聖国の聖職者だからと、皆、清く正しく生きられる訳ではないので。時には私情に走る者もいるでしょう。ですので、普段から教皇様や聖女様は傍に信頼出来る者を置いているのです」


「それが聖騎士(パラディン)戦乙女(ワルキューレ)なのですね?」


「はい。ですので、近々神子様にも専属の騎士を選定して貰うことになります。それに彼女ももうすぐ神子様の元に現れるでしょうから」


僕が治したエルフさんの事か。


今は、神聖国の聖職者になる為に頑張っているんだっけ?


「彼女は今、何を?」


「神聖国においての基礎となる所作や禁止事項などを勉強している所です。神子様も一緒ですね」


「あはは。僕も頑張らなくちゃ」


「ならば、今日は普段より厳しくしましょう」


「え?」


「冗談です」


真顔で言うから冗談に聞こえないんですけど!!


確かに厳しくなってないけど、勉強量が増えました。





日々学ぶ事の多いこと。


ユリアさんも常に暇ではないので、今は1人でお勉強中だ。


部屋に誰も居ないのは、僕を気を使ってだろう。


もちろん誰も居ない訳じゃなくて、部屋の前では、2人の聖騎士(パラディン)が立っている。


見ようによっては監視されているようにも見えるけど、その聖騎士(パラディン)の人達は、馬車の旅を共にした人達なので顔馴染みだ。


ユリアさんに与えられた課題を黙々と解いていく。


「驚いだなぁ。まさかこんなにもすんなりと読み書きが出来るようになるとは」


読み書きが出来なかったけど、今はある程度出来るようになった。


子供ゆえの吸収力というやつだろうか。


物覚えが非常によろしい。


「ここで……ひと休憩っ!」


キリのいいところで、休憩だ。


1人で覚束無い手つきで、紅茶を入れて飲む。


「ぶはぁー。美味しい。やっぱり高いやつ使っているのかなぁ?」


ボッーとしていると、久しぶりにみんなに会いたくなった。


最近、魔法を使う機会がないからね。


目を閉じて意識を飛ばす。


もはや妄想とは呼べない代物になった空想の世界へと向かう。


視界がクリアになる。感覚もある。


やっぱり、もう妄想なんかじゃない。


既にここは1つの世界としてあるんだ。


庭園と背景に巨大な城が存在するのは、いつもの風景だけど1つだけ、違うところがあった。


「太陽が登ってる……朝?」


そう、今までは夕暮れか夜しか無かったこの世界に朝があるのだ。


動物も日向ぼっこに洒落こんでいたりと、かなりの変化だ。


いつもと同じように彼女達が居るであろうテラスに向かう。


風が頬を撫で、花の甘い匂いが鼻腔をくすぐる。


地面を踏みしめる感触。視界に広がる鮮やかな庭園。


全てが現実と何ら遜色ない。


テラスが見えてきた。


胸の鼓動が跳ね上がる。


そこには2人の少女が座っていた。


1人は、黒髪をツーサイドアップにした、凛とした雰囲気を持つ、魔力の化身マナ。


もう1人は、緑髪のセミロングにベレー帽を被った幼い容姿を持つ、回復魔法の化身ヒナ。


2人とも僕が生み出した妄想の存在。


なのに、今は1つの存在、1つの生命として感じる。


僕に気が付いたヒナが僕に向かって手を振る。


「おにーいちゃん! はやくぅ! はやくぅー! ヒナお腹空いたよぉ〜」


「こら、彼を困らせないの。そんなに急かさなくても直ぐに着くわよ。……どうしたの? |ご主人様」


僕は近寄らずにいた。


声が認識出来る。吐息が聴こえる。


仕草ひとつが彼女達が生きていることを教えてくれる。


「2人は生きている……んだよね」


僕の質問に2人がキョトンとする。


でも直ぐに答えてくれる。


「同然じゃない。貴方が願い生んだのが、私達よ。正真正銘、生きてるわ。貴方の中に」


「ヒナもマナちゃんも、お兄ちゃんが望んだからここに居るんだよっ! だから、お兄ちゃんの家族だねっ! ヒナは妹でぇー、マナちゃんがお姉ちゃん?」


「あら、お嫁さんじゃダメなのかしら?」


「ならヒナもお嫁さんになるー!」


「うふふ。そう、ならしょうがないわね」


なんか恥ずかしいことを言ってるけど……うん、彼女達は間違えなく僕が生み出した子達だ。


「ほら、疑問が解けたのなら座りなさいな」


「お兄ちゃん! かもん!」


「あ、うん。すぐ行く」


椅子に座る。


視線が彼女達と一緒になる。


向けられた視線は、親しみがこもっている。


思えば、ずっと支えてくれてたよね。


「二人とも……ありがとう。ずっと支えてくれて」


「うふふ、別にいいわよ。この先も勝手に支えるつもりだから」


「ええっと、こういう時はこう言うんだっけ? お兄ちゃんのこと、死んでも離さないからっ!」


「ぷ、ぷははぁっ! ありがとうね! これからもよろしく!」


「こちらこそ」


「うんっ!」


「こちら粗茶になります」


「あ、ありがとうございます」


すすぅと飲む込むと深い味わいが口の中に広がる。


「美味しい」


「そうね。彼女の入れる紅茶は最高よ」


「ヒナもこれなら飲めるー!」


はぁ……やっぱりここが1番落ち着く。


現実逃避では無いけど、息抜きにここに来るのはいいね。


「………ん?」


なんかおかしくない?


「どうしたの?」


「お兄ちゃん?」


「いや待って……誰なの? 君」


紅茶を入れてから、僕の斜め後ろに待機する金髪メイド美少女に問いかける。


「はっ! 自分はご主人様から生まれた光属性を司る精霊になりますっ! 以後よろしくお願い致しますっ!」


「え? 光の精霊?」


「そうよ。私達は貴方が生み出した精霊よ」


僕の疑問にマナが答えてくれる。


まさか化身やら魔女とかで呼んでたけど、精霊とは……。


それはそれで驚愕なんだけど、それ以上に。


「ちょっと待ってよ。僕はまだ光の精霊を生み出してないよ!?」


「はっ! 僭越ながら、マスターが光属性の適正があると知った時から、勝手に生まれておりましたっ!」


「なんじゃそれ!?」


「生まれる条件が貴方に、その適正がある事なのよ。後は勝手に貴方の好みの精霊が生まれるわ。これからは適正を知れば知るほど勝手に精霊が増えていく感じね」


「マジすか」


「マジよ」


「マジマジ!」


「マジですっ!」


「精霊か生まれる理由は?」


本題である。明らかに普通じゃないだろう。


もしかしてだけど。ひとつ心当たりがある。


「もう気付いてると思うけど、そうよ。これが貴方の『才能(ギフト)』よ。その能力の1つが私達を生み出したの」


「その1つということは、他にもあるの?」


「あるでしょうけど、それは私達にも分からないわ。貴方自身の力だから、貴方自身が気が付かなければ誰にも分からないわ」


「そっか……まあ、おいおい模索していこう」


流石に情報量が多くて疲れた。


僕に『才能(ギフト)』があるのは驚きだけど、そのお陰でみんなに出会えたのだから悪いものじゃないだろう。


「ちなみに私達、精霊に出来ることを聞く?」


「あ、お願い」


「分かったわ。まず私は、知っての通り魔力の精霊ね。出来ることは、魔力に関すること。主に『魔力操作』や『魔力圧縮』と『魔力増加』などをサポートしてるわね」


「次はヒナだねっ! ヒナは癒しの精霊! お兄ちゃんが回復魔法を使う時にサポートするよっ!」


「自分は光の精霊ですっ! 今はまだ役にお立ち出来てませんがいずれ光魔法を覚えた時にはお役に立ってみせますっ!」


「『過大深化(オーバーアップグレード)』は私達精霊全員がサポートする事で出来るようになるわ。光の精霊が増えた事で、比較的簡単に出来るようになったでしょう?」


確か今まで以上にスムーズにおこなえた。


「『運命改変(モイラ・シフト)』に関しては、貴方の『才能(ギフト)』の力ね。ごめんなさい、それ以上の事は分からないわ」


「いや、十分だよ。ありがとう」


「それでは本題にいきましょうか」


「ん? 本題? なんかあった?」


「お兄ちゃん酷いよ!」


「え? え?」


なんか忘れてる? なんだ、何があったっけ?


「あ、あの。僭越ながら自分の名前を授けて貰えたらと……」


「あ! 名前かっ! ごめんね。忘れてたよ」


すっかり忘れてた。


「ちょっと待ってね。今、考えるから」


「き、恐縮です! ……わくわく」


めっちゃわくわくしてる。


改めて姿を確認する。


髪型はポニーテール。金髪碧眼の美少女だ。


フリルをあしらわれたミニスカートの白と黒のメイド服とフリルの付いたブリム。太ももからはガーターベルトとニーハイソックスの組み合わせ。


メイド喫茶の安っぽいのとは違って、本物のメイドさんが着そうなしっかりした作りで、非常に彼女にマッチしている。


名前か……どうしよう。


洋風のメイドだから日本名により、洋風の名前が似合うんだよね。


あかり、ひかり、ライト、シャイニング……自分のネーミングセンスが壊滅すぎてヤバイ。


もはや神話の神様から引っ張ってきた方がいい気がする。


光の女神と言ったらアグライア。


それをもじって、ライアってのはどうだろう。


「えぇっと。……ライアはどう?」


「ライア……ライア。ライア! それが自分の名前なんですねっ! 嬉しいですっ! マスターっ!」


噛み締めるように自分の名前を呼んだ後に、僕に抱き着いてくる。


そうか! 感触があるということは、彼女達を触れるということ。


つまり、押し付けられた胸の柔らかさがダイレクトに伝わる。


「は、離れて」


離れないで! 自分の本心と葛藤する。


「はっ! し、失礼しました! あまりにも嬉しかったので……もじもじ」


頬を染めてもじもじするライア。


「あーっ! お兄ちゃん、顔が真っ赤だぁ!」


「本当ねっ! そんなに大きい胸がいいのかしらっ!」


「そういう話じゃないでしょう!?」


ちなみに、ライアは胸が大きくて、マナは標準、ヒナがちっぱいと呼ばれる安牌。


新しい仲間が加わってますます賑やかになるこの世界。


そうだね。この世界にも名前を付けよう。


『精霊の箱庭』というのはどうかな?

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