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160話 新大陸44

「ふむ? モリタイナンに行きたいとな?」


驚くことに、冒険大好きリリィさんに有るまじき渋面。


場所は街でお借りしている家。色々と秘密が多いので宿に泊まれないのだ。


「獣人さんのお国はね〜私たちの天敵なんだよ〜?」


どうやらなにやら事情がおありの様子。


「あやつらは鼻が利くでのう。妾達、吸血鬼の血の匂いに敏感なんじゃよ。……昔、好奇心で行った時は散々な目にあったのう」


遠い目をするリリィさん。


「あはは〜追いかけ回されたよねぇ〜」


困ったような笑みを浮かべるククリさん。


どうやら、二人にとってモリタイナン百獣国は鬼門のようだ。


なら仕方ないか。


二人にはお留守番してもらって、僕一人で行こう。


そう決断し、二人に告げようとする。


「しょうがないから僕一人で」

「じゃが! そんこともあろうかと対策はしておったのよ!」


な、なんだってー!?


胸を張り、ドヤ顔のリリィさん。


「見せてやろう! 百年の暇つぶしに編み出した『獣人化魔法』を!」


そう言うやいなや、魔法陣がリリィさんの頭上に現れ、足元まで降りてくる。


すると一瞬でリリィさんの姿に変化が現れた。


「うむ! 成功じゃな!」

「お姉ちゃん、可愛い〜!」


その金髪と同じ色のケモ耳と細長い尻尾が生えていた。恐らく猫型の獣人だろう。


ガバッとククリさんがリリィさんに抱きつく。


『う、うそっ……』


あまりにも呆気なく変身を完了させてみせたリリィさんに、マナがショックを受ける。


そりゃあ、賢者のオリジナルだと思っていた魔法だし、解析に半年も要したし、そんな魔法を百年掛けたとは言え我流で編み出してしまったリリィさんに、マナのプライドは粉々だろうことは、察してあまりある。


『ま、まあ、いいじゃん! マナの方が色んな魔法を短期間で開発してるし!』

『澪さん……そう意味でショックを受けてないと思います』

『純粋に、サクッと使われたことがショックなんだと思うよ?』

…………“よしよし。まなはいい子いい子“


見れないけど、みんなでマナを慰めようとしているのは伝わった。


僕も慰めたい。


そうだ。こんなにあっさり使って見せたけど、何かデメリットがあるはずだ。


自分の閃きに感謝しつつ、デメリットが有ってくれと割と酷いことを望んでしまう。


「な、なんかデメリットとか……ないの?」


恐る恐る尋ねる僕に、にこやかな笑顔でリリィさんはあっさり言う。


「魔法を解除したら爆発四散するな!」

「デメリットがデカ過ぎるだろ!!?」


そう易々と使っていい魔法ではないよね!?


「お姉ちゃんらしいね〜」

「その一言で済ませていいの!?」

「お姉ちゃんは昔から思い付いた魔法は、大体最後は〜木っ端微塵になるよ〜?」

「安全面に一切考慮しなすぎる!!」


思いつきで作って思いつきで使って、爆発四散する吸血鬼嫌すぎる!


「そもそも安全面に配慮なんかしておったら、いつまでも試せんじゃろう」


分かってないなあ〜みたいなやれやれジェスチャーと一緒に尻尾がフリフリされるのが、死ぬほどイラッとさせられます。


「魔法は爆発四散して完成するんじゃ」

「だよね〜」


ダメだ。はやくこの姉妹を何とかしないと!


僕まで爆発四散してしまう!


「ぜっっったいに僕にその魔法を使わないでよね!?」

「ふむ? 何故じゃ?」

「死ぬからだよ!!」


何を不思議がっているのかな!?


「この程度でお主が死ぬ……? おおっ……そうじゃった。お主一応人間じゃったな!」

「一応じゃなくて人間ですけどぉぉ!?」


ついうっかり人の種族を忘れないでもらえませんかねぇ!


『ふふふっ』

『あ、現場からお伝えしますっ。マナさんが回復した模様ですっ』

『なになに〜? 『私は安全面も配慮したうえで魔法を開発しているわ』? だそうで〜す』

『とても満ち足りた顔をしているよ〜』

…………“現場からは以上、です“


良かった。回復したみたい。


「そもそもモリタイナンに行くのはもう少し後だよ。色々準備しないとだし」

「なんじゃ……なら、解除するかのう」


そう言ってリリィさんが服を脱ぎ始める。


「な、なにしてるの!?」

「これから爆発四散するからのう。衣服ごと逝くわけにはいくまい?」


慣れた様子でククリさんが服を受け取る。


「ほいじゃ、部屋から出てくれ。巻き添えを食らうぞ?」

「ほら、一緒に出ようね〜」


ククリさんに背中を押されて部屋の外に出る。


扉が閉まりしばらくして。


パァァァン! ピチャッ。


何か弾け飛ぶ音と水分を含んだ物が壁にぶつかった音がした。


「…………」


僕は今世紀最大にガクブルしていた。


(ス、スプラッタは無理なんだよぉぉぉ!!)


ギィ。


「ひっ!」


扉が開き、素っ裸のリリィさんが現れた。


「いやぁ〜ひさしぶりじゃったが、存外気持ちよく飛び散ったわい!」

「ふふっ〜お掃除が大変だね〜」

「すまぬの〜」


ククリさんに服を着させてもらって、ご満悦気味なリリィさん。


(な、なんだ何ともないじゃん)


変にビビって損したぜ!


と、油断した僕は、開いていた扉から部屋の中を見てしまう。


「ぎゃぁぁぁーーー!!!? 『リフレッシュ』!!!」


咄嗟に汚れを綺麗にしてくれる『リフレッシュ』を使う。


「おお……やはり便利だのう」

「わぁ〜綺麗になったねぇ〜」


危なかった。


危うく十八禁指定されるところだった。


え? どんな部屋だったって?


『赤い部屋』とだけ答えておこう。

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