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155話 新大陸39

夜間テンションだったことで軽はずみなことをしました。


リリルカ改めリリィさんは僕について行くとは言っているけども、妹のククリカ改めククリさんがそれを許諾するとは限らない。


なので、早朝ククリさんが目を覚ましてからリリィさんは言った。


「ククリカよ! 妾はアーサーについて行くことにしたぞ! お主はどうするのじゃ?」

「お姉ちゃんがついて行くならいくぅ〜」

「よしっ! 決まりじゃな」

「いやいや! そんなアバウトな……いいですか、ククリ……さん。リリィさんの言っているのは僕に生涯ついて行くという意味ですよ?」


愛称で呼ぶ気恥ずさは感じたが押し切った。実際ややこしい名前の姉妹だと思っていたわけで。


僕は念を押すようにククリさんに言うが、彼女は分かっているのか分かっていないのか分からないぽやや〜んな顔で僕を見つめる。


「最初からそのつもりだよ〜? アーサーくんには凄く助けてもらったもん。なにかお礼はしたいなぁ〜って思ってたけど、私には戦うぐらいしか出来ないから……よおし! ついて行こう〜って思ってたの〜」

「えっ生涯ってこと?」

「うんっ! 一生一緒だよ〜」


軽っ! そんな重大な決断をそんなあっさりと……。これが吸血鬼の常識なのか?


やっぱり吸血鬼ってエルフに負けないぐらい長命の種族なんだなぁ。


でも、やっぱりそれは良くしてもらいすぎる気がするし、彼女たちはようやく百年越しの再会を果たしたのだ。これからは一緒にのんびり過ごした方がいいだろう。


よし。決めた。断ろう。


僕はそう決心して二人の顔を視界に収めるようにする。


そうしたら、リリィさんが呆れたように、優しい声音で諭してくる。


「お主は勘違いしておるでのう。なにも妾達の恩人だから尽くそうとか思っておらん。お主が良からぬことを企んでおると感じたならばできる限りの恩は返すがそこでおさらばじゃ。じゃが、お主が妾達のために涙を流してくれるような……優しい心の持ち主じゃから、妾達はお主について行って、ついでに恩も返そうと思うんじゃよ」

「私もそう思うよ〜だって、覚えてないけど私はアーサーくんを襲ったんでしょう〜? なのに、アーサーくんは自分のことみたいに話を聞いてくれて……お姉ちゃんを助けてくれたもんっ! だから、ありがとうが溢れてね〜ついてきたいなぁって思ったの〜」


なんだよ。そんな事言わないでよ。


僕だって救われているんだ。


そうやってあなた達の笑顔が見れただけで、胸がいっぱいいっぱいになるんだ。


ああ……助けられて良かったって思えるのに。


そんな良くしてもらったら、僕はチョロいからさ、好きになっちゃうよ。


自分で言うのはあれだけど、一度好きになったら尽くすタイプだよ?


僕にとって愛とは愛してくれた人に抱く感情だと思う。


だから、あなた達も僕にとって既に愛すべき家族なのかもしれない。


「分かったよ……それじゃ、よろしくお願いします」

「うむ♪ これからよろしくのう、アーサー」

「よろしくね〜私、頑張るよぉ〜えいえいおー!」



☆☆☆



「アーサー。お主は冒険者じゃったな。ならば妾達の実力も見ておいた方が良かろう」

「あ、アーサーは偽名です」

 「え〜? アーサーくん、嘘ついてたのぉ〜?」


それはその通り過ぎて申し訳ないっ!


頭を下げつつ説明する。


なにも全て話すわけではないけど、僕の魔力が膨大なのは知られているし、時空魔法も見せている。なら、僕が別大陸から不意の事故でこの大陸に来たことと、帰るために色々やっていることは伝えといた方がいいと思う。


冒険者としも活躍するけど、ちょくちょくソロモンとして活動するし、それについていずれ突っ込まれるぐらいなら今話しておこうと思ったんだ。


神子とかは伏せた。


いきなり、


「僕はエディシラ神聖国の三大聖者の一人、七代目神子の座に着く、救済の神子……レイン・ステラノーツです」


とか言われても、ちんぷんかんぷんだろ。


むしろ痛い人に思われるよ。


なのでこれに関しては伏せているというより、混乱を避けるために省いているのだ。


僕の説明を興味深そうに聞くリリィさんと、ほけーっと聞いているのか分からないククリさん。


説明を終えて、リリィさんは興奮するように言った。


「別の大陸じゃと!? 最高じゃ! ワクワクじゃ! 絶対行く! 絶対いくぞえ!」

「お姉ちゃんは旅するのが好きだもんね〜」

「うむうむ♪ どんなに長生きしても初めて触れ合える体験には心躍るものよ! じゃから、妾達はその大陸までついて行くぞ! こんな面白そうなことがあるから死ぬに死にきれぬよ! がはは〜!」


絶対に逃がさないと言わんばかりに、僕の腕を掴みあげるリリィさん。爪がめり込むぐらい本気です。


まあ、僕とてこの新大陸に来た時は、大好きなゲームの大型DLCが突如発表された時ぐらいテンションが上がったものだ。


リリィさんは好奇心が高そうだし、そりゃあ、テンション上がりますよね。


そんなお姉さんの様子をククリさんは愛おしそうに見つめる。


ここだけ切り取ったら、ククリさんが姉に見えるだろう。なにせ、リリィさんは合法ロリだし。かたや、ポンキュッポンのナイスバディの大学生ぐらいの容姿のククリさんだ。


(これからこの二人と冒険者やっていくのか〜濃いなぁ)


苦笑はするものの、僕はきっと楽しくて退屈とは無縁な日々になると確信出来た。


「よぉし! 妾張り切るぞ。そこで見ておれ。妾の凄いところ見せるからのぉ」


どうやら実演してくれるそうで、三人で築百年の家の外に出て、ククリさんと一緒に少し離れた場所で待機。


「妾達には普通の属性以外にも固有の魔法……血魔法が扱えるのじゃ。こんなふうに……のう!」


虚空を掴むようにリリィさんが手を閉じるとそこに大きな真っ赤な弓が姿を表す。


「血に見えているけど、魔力の塊じゃからのう」


それじゃククリさんのハンマーもそうなのか。


僕はククリさんを見ると、彼女は頷いてみせた。


『へぇ……興味深いわね。旦那様みたいに魔力をそのまま半物質化した技術を、血魔法で再現しているのね。確かに毎回ゼロから形を生成するより、その方が展開速度も安定感も段違いね』

『まあ、こっちには魔力の精霊のマナちゃんが居るから、コンマ数秒で生成出来るし姿形も自由自在だし?』

『もうっ澪ちゃんは張り合わないでよ〜』


マナに全部言われたけど、僕も同じ感想でした。


「こっから更に凄いぞえ」


そう言って、弓を持たない方の手でまたしても、虚空を掴む。


そうすると赤い矢が一本現れた。


それを弓に番える。


「見ておれよ〜ふっ!」


放たれた矢は遠くの大岩にぶっ刺さり、


ドカァーーーン!!!


大岩ごと爆発四散した。


「どうよ! 妾の爆殺矢は! これでも威力は最低限じゃぞ?」


胸を張ってドヤるけど、そんなことされたら討伐の証も、使える素材すら残らないんだけど。


「冒険者基準なら落第です」

「何故じゃ〜ぁ!?」

「そんな攻撃されたら、素材もなにも残らないでしょうが」

「むぅ〜……確かに。妾のおっちょこちょい♪」


てへぺろみたいな舐め腐った態度を取りおる。


「これが一番基本的な血魔法の使い方じゃな。それぞれ得意な獲物に形を固定するのがセオリーじゃ。こき下ろすなら血を自在に操るだけの魔法じゃ」


大したことないように言うけど、結構汎用性が高いよね。


ククリさんが魔物の死体から血を取り出し飲み干したのも血の魔法か。


「ククリはもう見せたみたいじゃし、見せんでも良いだろう」


ククリさんはハンマーだもんね。


叩きつけた後に血のトゲが生えまくったのは、若干トラウマだけど、言わないでおこう。

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