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140話 新大陸24

久しぶりのアーサーのターン!


二週間ちょっとぶりです。


最初の頃はこまめに安宿に姿を見せてアリバイ作りをしてたけど、途中からめんどくさくて少し冒険してきますと告げて街から出たんだよね。その設定すら忘れそうなぐらい忙しかった。てか、マナたちが張り切りすぎたのが原因です。


冒険者アーサーのコンセプトは、もしも僕が一人で異世界転生して冒険者として生活を始めたらというものだ。


だから、冒険者アーサーは剣一本と闘気だけでできる限り戦います。マナたちの力はピンチや人助けの時以外は使わないようにします。


息抜きだから、ちょくちょくソロモンとして王都に行くけど、基本的にアーサーとして生活します。お金もアーサーとしての稼ぎだけで生活します。


マナたちに好きにさせた見返りが冒険者ライフの獲得でした。


彼女たちは今、精霊の箱庭の奥に引っ込んで屋敷の魔改造案や魔法の改造に精を出していて出てきません。スピカもシャルルの頭上が気に入ったみたいで屋敷で姿を現してみんなからチヤホヤされているので、実質ソロでの活動がメインです。ちょっと寂しい。


二週間冒険に出たという、ていなので少し服を汚したり破ったりと涙ぐましいことを一人でやってから街に帰還。途中何やってるだろうとか思ったけど気にしないです。


「久しぶりだなアーサー君」


門番さんにフレンドリーに話し掛けられた。


「……はい」


こっちもフランクに返すところだった。ソロモンモードをまだ引き摺っているみたい。


「聞いたよ。武者修行に言ってたって?」

「まあ、そんな感じです」


あれ? こんな感じで話せば良かったっけ? 少しぶっきらぼうになったかな?


「アボさんからですか?」

「まあね。彼らは最近頑張っているから応援したくなるよ。もちろんアーサー君も応援してるからね! さあ、ようこそ! エスティの街へ」

「ありがとうございます!」


不思議だ。この街に入ると帰ってきたと感じる。そんなに長くいた訳じゃないのに。


僕は取り敢えず安宿に部屋を借りに行くことにした。


「久しぶりじゃないか。泊まっていくのか?」

「はい。一泊お願いします。あと、アボさん達は泊まってますか?」

「いいや。あの子たちなら星三になったから他の宿に移った。律儀にお礼を言われたよ」

「そうですか……良かったです」


どうやらアボさんたちは目的を果たしたようだ。めでたい!


これはうかうかしてられない! 僕もサクサク依頼を達成してあとを追わないと。


次は冒険者組合に向かう。


建物に入ると久しぶりの感覚につい立ち止まってしまう。


まだ早い時間だけど、既に冒険者たちは依頼を達成しに冒険に出掛けたみたいで物静かだ。


カウンターに見知った人達が居るのでそちらに向かって歩く。


「お久しぶりです。ミサさん、ソフィーさん」

「え? ……あ! アーサー君! 久しぶり! もう! いきなり冒険に出るとか言ってたから心配したんだからね?」

「ごほん……まだ勤務時間ですよ」

「う……ごめんなさーい」


ソフィーさんは相変わらずだし、ミサさんも真面目だ。


「お久しぶりですね。アーサー様。何か大きなことをなされたようなお顔をしている気がします。お怪我などは大丈夫ですか? 体調は優れませんか? あんまり無茶してはいけませんよ? 冒険者は体が資本なのですから、しっかり休んでしっかりご飯を食べてくださいね」

「先輩、お母さんみたいです」

「一児の母ですので」


ミサさんに滅茶苦茶心配されてたことは伝わりました。


ミサさんは変わった気がする。


前は線引きをして少し冷たい感じだったけど、今は物腰も口調も柔らかくて、行ったことないけどバーとかのママってこんな感じなのかもしれない。


「大丈夫ですよミサお母さん」

「あらあら。私にいつの間にかこんな大きな息子が出来てたなんて」


試しに茶目っ気で呼んでみるとニコニコとノリよく返すし。親しみやすさが凄い。


「ぷぅ〜なら、私はアーサー君のお姉ちゃんですね」

「ソフィーお姉ちゃん」

「ズキューン! なに!? この胸の高鳴り……これが恋?」

「手を出してはいけませんよ?」

「ちょ……普通、そういうのは男の子側に言うことじゃないですか!? なんか目も怖いです!」


仲良しな二人だなぁ。


あ、そうだお土産を渡しておこう。さすがに冒険に出ていてなにもお土産無しじゃ万が一怪しまれるからね。


「お二人にお土産です。……ミサさんにはこちらを」

「あら、これは……保湿クリームかしら?」

「はい。この時期手が荒れやすいとかなんとかで売ってたので買ってみました」

「ありがとうございます。使ってみますね」


実はトワさん作だったりします。


彼は色んな方面の知識に精通して、メシア商会の第一弾の商品は化粧品など女性向けの商品です。元商人だった女性から買い物によく来るのは女性だから、メインターゲットとしてリピーターになってもらいましょうとのこと。


「ソフィーさんにコチラを」

「飴ちゃんだ!」

「何とか商会の飴です。新作らしいのでソフィーさんでも知らないかと思い買いました」

「ありがとう〜アーサー君大好き!」


ホクホク顔で紙袋を開けて、目を輝かせて個別梱包された飴ちゃんを口に放り込む。


「甘〜い。何これ!? 凄く美味しんだけど!」


それは開発部作。メシア商会で買い物をしたお客さんにプレゼントするあれです。商品としても売っている。


「僕も詳しくは知らないですね。たまたま買ったものなので」

「そっかーなら大事に食べないとね! 先輩も食べます?」

「私は遠慮しておきますね」


どうやらミサさんはあまり甘いものが好きじゃないみたい。危ない。同じもの贈らなくて良かった。


二人とも喜んでくれたから僕も嬉しいです。


「旅に出て成長しました。こほん。賄賂を渡したのでオススメの依頼とかありませんか?」

「本当に成長してる!?」

「良くない成長ですけどね……うふふ」


そう言いながらも依頼をカウンターに乗せてくれる。


「本来なら明日の早朝などに貼る依頼なんですが」

「えっ。冗談ですよ! そんなして貰わなくても」

「大丈夫だよ。人気のある依頼だから残ったりしないの。てきたてホヤホヤの依頼でーす」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

・討伐依頼 ☆☆


コッコ村の村長です。

最近村の近くに魔物の足跡が多く見受けられます。足跡からしてゴブリンかコボルトだと思いますので、念の為に駆除をお願いします。


達成条件 コッコ村付近の魔物を任意の数討伐


報酬 銀貨二枚 討伐数に応じて少し増額

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「オススメの依頼って討伐依頼なんですね」

「討伐依頼と言う点なら少し違いますよ。人気のある依頼というのは冒険者組合ではなく身元のしっかりしてる人物が出した依頼なんです」

「この場合はコッコ村の村長さんだね。コッコ村という決まった定住地。村長という地位。あとは読み書きが出来る人だから、知識もある。こういう依頼主は難癖を付けてきたり、報酬を不当に減らしたりしないんだよ」

「なるほどー」


冒険者組合が出した依頼は基本的に報酬が安いことで知られているからね。緊急性の高い依頼なら報酬は高くなるけど、そういうのは信頼される冒険者に直接依頼するだろう。


個人が出した依頼は、その依頼主がある程度決定権を有しているのでトラブルも起きやすい。


「そう言えば誰でも依頼は出せるのですか?」

「可能ですよ。ですがその場合は冒険者組合に対する手数料も掛かります。大銅貨二枚ほどですね。星が高いものによっては、前調べとかの必要もあり、その負担分も払ってもらいます」

「なるほど……」


ソロモンとしていずれ何かしらの依頼を出す可能性もあるから聞いといて良かった。


うちの奴隷の中にも何人か元冒険者が居るから既に活用しているかもしれないけどね。


「また一つ賢くなりました。ありがとうございます」

「いいえ。それでは依頼を受注していきますか?」

「せっかくのご好意なので受けさせてください」

「かしこまりました」


軽くお辞儀をし、ミサさんはてきぱきと手続きをする。


「そうだ。コッコ村の位置分かる?」


それを横目に見ていたソフィーさんは簡易的な地図をカウンターに広げる。


「一応国家秘密みたいなものだから、模写したりしちゃダメだよ」

「はい」


その地図には大まかな村の名前と街の名前が記されていた。


多少の情報も記されているけど、本当に最低限だ。ここら辺に山があるとか、川が流れているとかそんな感じ。どんぐらいの高さとか生息する魔物とか記されていない。


「でね……ここ。コッコ村は歩いて半日ぐらい。依頼の内容的に一晩止まっていくかもね。そこは村長さんのお家に泊めてもらえると思うよ」

「手続きが済みました。彼女の言う通り。泊まり込みになる可能性はあります。今から向かっても夕暮れ時ですから。夜間の討伐依頼はあまり推奨されておりません。夜目が効きませんから」

「分かりました。ちょうど一晩の宿を借りたところなので、明日の早朝に村に向かいたいと思います」

「それがよろしいかと。あまり早急な依頼でも無いので、安全を優先してくださいね」

「了解です」


お二人にお礼をして、冒険者組合を後にする。


一ヶ月ぶりの冒険者としての依頼だ。


少し緊張するな。


今日はまだ早いし、街でも散策するか。


しばらく街を見て回ったけど面白い情報を入手した。


酒場に立ち寄った時のお話を立ち聞きしました。


「なあ、しってるか。最近血吸いの森が広がってるらしいぞ」

「マジかよ。あそこは良く魔物の血が抜かれていて、気味悪がって誰も寄らない場所なのに」

「そうだ。これまでは森の奥地だけで起きていた現象なのに、最近は結構近場にも魔物の死骸が発見されているんだ。血が吸われたヤツが」


なんでも地元では有名な血吸いの森なる場所があるらしい。吸血鬼でも居るんじゃないの? それか大きなヒルとか。


吸血鬼が居るかもしれないというワクワクした気持ちでその日は過ぎていった。

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