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13話 王都到着で神子認定試験?

王都の正門で貴族の列に並ぶ。


その隣の列は庶民と商人などの人が大量に並んでいた。


貴族は審査が甘いのかスムーズに進む。


「いよいよですね……」


遠目から王都は物語が始まりそうな予感満載だったけど、僕からしたら自由がない檻のよう。


「はい。王都の中に入ったら案内がいると思うのでそのまま王城に入って貰うことになります」


「分かりました……」


お腹痛くなってきた。


王様とか一生合わない人の筈なのになー。


貴族すら会いたくなかったよ。


小心者は権力を持つことも、持っている人に会うのも嫌なのだ。


責任という言葉が台所のG並に嫌いなのだ。


自由気ままに責任なく、フラフラと1人旅が性に合う。


前世では夜散歩が1番心休まっていた。


真っ暗な中を気ままにフラフラと、何があるかも知らずにのんびりと目的無く歩く。


思い出すだけで心が軽くなる。


王様に会ったら何をするんだろう。


その後は神聖国に行くことになってるけど。


それに関係することなのだろう?


どうしよう。小難しいこと言われたら。


変に返答して、後々までストレス抱えるような案件を頼まれたりしないのだろうか?


神聖国でスパイしてこいとかありそう。


嫌だなあ。会いたくないなあ。


逃げたい。


でも無理ですよね。


両親と村にきっと迷惑かける。


「そろそろ私たちの番ですね」


騎士様の言葉に体が固くなる。


いよいよだ。


心臓がパクパクする。


「これは騎士様! お勤めご苦労様でした」


門番の兵士さんが騎士様を労う。


「はい。では中に通っても?」


「どうぞ! 帰りなさいませ!」


貴族以上に短いやり取り。


騎士様は王都の騎士だったなあ。


覚悟も何も早すぎて、無になりつつある。


心を無にしてその時まで人形でいよう。


兵士さん達を引き連れて門を潜る。


そこで案内人に連れていかれるのだろう。


そう思ったら正面に修道服を着た20代前半の眼鏡美人さんが道を塞いだ。


その傍らには騎士様とは似た、でも明らかに次元が違いそうな純白の鎧を着込んだ騎士様達が共に並ぶ。


これには騎士様と兵士さん達も困惑。


シスターさんが1歩前に出る。


「初めまして、私はエディシラ神聖国の上位司教を努めさせて頂いております……ユリアと申します」


そうやって一礼をする。


後ろの騎士様方もそれに習う。


「じょ、上位司祭様ですか。それほどの方が何故……」


騎士様が馬から降りて尋ねる。


僕は馬の上で固まっている。


騎士様が畏まるぐらい偉い人だ。


エディシラ神聖国と言えば僕が連れていかれる国の名前じゃん。


「不思議なことを申しますね。こちらの国で神子候補が発見されたと伺ったなら同然ご確認をしに参ります」


「で、ですがこのまま神子様を連れていかれるには。陛下からは連れてくるように言われています!」


シスターさんの顔が冷たい真顔になる。


「訂正を願います」


「な、何をでしょうか?」


「そこの者は、まだ(・・)神子ではありません。私たちを騙す為の偽物の可能性もありますので。気安く神子と呼ばないように」


「我が国が虚偽をなさっていると申しますか!」


「それを試すのです」


シスターさんの絶対零度の目で見られた。


どうやら僕を神子とは思っていないようだ。


……いや待てよ?


このまま神子だと認められなければ、僕は村に帰れるのでは?


いいぞ。もっとやれシスターさん!


心がスっと軽くなっていく。


「証明しろと?」


「はい。既に国王からは許可を頂いております」


「……それなら。分かりました。上位司教様に従います」


どうやらシスター様は根回しをしているようだ。


もしかして王様との謁見を回避出来た?


なんや。シスターさん有能やん。


是非その調子で僕を村人認定してください。


そうしたら発覚した光属性の適正を生かして、更なる修行をして一流の冒険者になるんだあ。


後の閃光の魔法使いの誕生である。


なんちゃって! あはは! 気分良いや!


「では本日はお疲れでしょう。1晩休んだ後に、神子に相応しいか試験を致しますので……お覚悟を」


鋭い眼光から、嘘はいけねぇぞ! と言われているようだ。


もちのろん! 元々勘違いだったのだ。


余裕の不合格でしょう。


やっほーい!


そのままシスターさんと騎士様方が居なくなっていく。


「神子様……レイン様。申し訳ございません」


「いえ。元々僕には過ぎた肩書きだったのです」


既に村に帰っているビジョンが浮かぶ。


「そんな! そのようなことは。レイン様なら必ず神子として認められます!」


「あはは。だと良いんですが」


冒険者! 魔法! パパ様ママ様!


今、愚息が帰りますよ!


騎士様に連れられ相変わらずの高級宿に宿泊して1晩過ごす。


兵士さん達は既に解散して各々に家に帰っている。


騎士様だけ残り僕の護衛を務める。


神子ではなく神子候補になった途端にこの扱いの軽さだ。


最高だね!


明日には神子候補から村人の少年にジョブチェンジだ。


そうしたら騎士様も態度変えるのかな? それは少し寂しいなー。


高揚した気分を収めながら僕はふかふかベッドで意識を手放した。







運命の日。


「教会に案内します」


朝一に騎士様方をお連れしてやってきたシスターさんが言い放つ。


「み、レイン様行きましょう」


「はい」


朝食を取り終えた後だから眠い。


一眠りしてから行きたいけど、一村人がお偉いさんであるシスターさん達を待たせる訳にはいかない。


後ろをついて行く。


目立つ。とにかく目立つ。


ギンギラギンに輝く鎧を着込んた騎士様方は目立つ。


ちなみに4人だ。


シスターを護るように四辺に立っている。


僕を護る気はゼロみたい。


完全に偽物認定ですねありがとうございます。


騎士様は僕の横で護ってくれている。


嬉しい。


そうしてしばらく歩いていると教会っぽい建物が見えてきた。


予測通りに教会でその中に進んでいく。


「試験の内容はなんでしょうか?」


騎士様が僕の代わりに尋ねてくれる。


あれでしょ?この呪われた武器を浄化してみろとかでしょ?


僕には無理ですからね。やったぜ!


「会えば分かります。既にギリギリですから」


シスターさん意味不明だよぉ。


猛獣にでも会うの?


猛獣を手なずけろとか言われたら全力でお断り土下座をして許してもらおう。


教会の中にはシスターさんと同じような服装の女性や神父さんがいっぱい居た。


みんなシスターさんに頭を下げてる。


やっぱり凄い偉い人だ。


そのまま教会の中を進むと眼前に凄いでかい女神像が祀られていた。


だけど僕の視線は女神像ではなく、その真下であった。


「聞くによりますと貴方には人を癒す力に長けているようなので今回、神子候補である貴方にはこの方を癒してもらいます」


そこには一応人型の何かが居た。


表面上はほぼ全て焼き爛れており性別すら認識出来ない。


かつての衣服が体にこびりついているような状態だ。


「い、生きているのですか?」


思わず尋ねるしかなかった。


どう見ても助からない。


「ええ。辛うじてですが。彼女(・・)はA級冒険者パーティの一員でした。ですがクエストを受けている最中に出会ってしまったレッドドラゴンに仲間を全員奪われてしまったのです」


「れ、レッドドラゴンがこんな近辺に現れたのですか!?」


「いえ。場所はここから西部の竜霊山の近辺です」


「竜霊山と言えば竜達の国とすら言われている場所じゃないですか……何故そんな所に」


「レッサードラゴンの討伐を受けたようですね」


「なるほど。それにしても不運でしたね。上位竜に出くわしてしまうとは」


「はい。ですが全ては自己責任です。それでは神子候補。貴方は彼女を治せますか?」


「む、無茶です! さすがに欠損を治す所の次元ではないのですよ!? 既に体の大半が酸化しているじゃないです!」


騎士様が必死に抵抗している。


確かにこれは無理くさい。


でも僕はそんなことどうでもよかった。


「シスターさん。生きているんですよね?」


「レイン様!」


「はい。少し前まで私が生命維持を担当していましたので。ですが持って後1時間で彼女は命を失うでしょう」


1時間かあ。


ギリギリかな?


「分かりました。引き受けます」


「ええ。承りました。例え貴方が彼女を治せなくても決して責めるようなことはしませんのでご安心を」


「御気遣いありがとうございます」


「レイン様。やるのですね」


「はい。騎士様には今までお世話になりました」


どんな結果でも受け止めよう。


今僕にあるのは、死の淵に立つこの人を救いたいだけだから。


死ぬのは怖いよ。


死ぬのは痛いよ。


耐えれるものじゃない。


彼女の前に座り込む。


聴こえているとは思えないけど。


「だとえ誰もが貴女の生を諦めても、僕は諦めません。大丈夫。貴女は僕が助けます」


僅かに口だと分かる部分が震えた。


僕は頷く。


必ず救う。


目を瞑り全ての魔力を胸の中心に圧縮させる。


「すぅ…………」


深く。


もっと深く。


さらに深く。


両手を引っ張られる。


これ以上は危ないと警告してくれている。


(ありがとう。でも大丈夫だよ。僕は必ず戻ってくるよマナちゃん雛ちゃん)


両手から拘束が解かれる。


どこまでも沈む。


底なしのように感じる。


体全身に悪寒が走る。


これ以上先に進めば命はないと警告するように。


それを無視(・・)する。


今更、死ぬ以上の恐怖なんざない。


生きているならそれは天国なのだ。


暗闇を進む。


どれほど時間が経っただろうか。


時間という概念すら忘れる。


…………だが見えてきた。


暗闇の最奥に。


僕の根源を。


魔力の根源。


魔力の始まり。


魔力の終わり。


それを胸に抱く。


拒絶はない。


根源はすんなりと体に溶け込む。


…………ドクン。


体全身に魔力が溢れる。


溢れる度に圧縮させる。


ゆっくりと目を開く。


体全身が眩い光に包まれる。


圧縮した魔力を両手に移す。


「んっ……」


両手が悲鳴を上げて血管が破裂する。


痛い。でも生きてるなら耐えられる。


本来の彼女の姿は分からない。


でも見える。


彼女の内側の魔力の根源を。


その根源には彼女の可能性が秘められている。


ならその可能性を引っ張り出す。


「…………『回復(ヒール)』」


過大深化(オーバーアップグレード)』させた魔法の魔法陣が天井を突き破り空いっぱいに浮かび上がる。


それを圧縮する。魔法を圧縮する。


彼女のみに当たるように圧縮する。


僕の魔力が彼女の魔力とぶつかり合う。


彼女の根源が僕を拒絶する。


治すのを拒絶する。


既に死ぬことが決まったのだと拒絶する。


「うるさい! 僕は救うことを諦めないぞ!!」


不意に両肩に手が乗せられる。


見なくても誰か分かった。


『無茶するわね』


『お兄ちゃんはおバカさんだよ!』


「力貸してよ。友達でしょ?」


『当然じゃない』


『もちのろん!』


力が湧いてくる。


今まで力ずくの『魔力圧縮』の操作法が分かる。


血管破裂するほどの魔力は落ち着きを取り戻し、かつてないほどにスムーズに圧縮出来る。


魔法も収束していき、彼女の下に魔法陣が出現する。


『さあ。仕上げよ』


『ふぁいと! だよ』


「うん…………もう一度『回復(ヒール)』」


『『運命改変(モイラ・シフト)』』


彼女の死を拒絶する。


彼女の死を生に改変する。


運命を書き換える光が彼女を包み込む。


爛れた皮膚が再生していき、そのおまけみたいに服装までもが蘇る。


酸化した四肢が再生していく。


彼女の全てを癒した後には、美しい女性が姿を現す。


「はは。ここで初エルフさんですか……」


銀色に輝く長髪の髪に、少し長くとがっている耳を持って少女がエルフの美少女だった。


「うっ……」


密かに聴こえる吐息に心から安堵する。


そして久々の魔力切れに意識が遠のいていく。


閉じられる視界から周りの人達が跪いている光景が映る。


「貴方は、貴方様こそが私たちの追い求めていた神子様です」


シスターさんの声を最後に僕は気絶した。


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