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138話 新大陸22

「これから宜しくやっていくわけですが、俺たちは基本的に何をすれば?」

「トムさん。ちょっと無理してるよね? 話しやすい話し方でいいんだよ? みんなももっとフランクに行こ〜」

「あ〜なら、これからは砕けた感じで」

「俺は最初からこんな感じですよ」

「おい元傭兵。嘘をつくな嘘を」

「貴様! 頭が高いと言っただろ! しゃがめ!」

「それは終わった話じゃなかったのかよ!? それに背丈ならトムの方が高いだろうが!」

「あ? トムさんになんて口の利き方をしやがる!」

「いつ懐柔されたんだよ!? さてはお前チョロいだろ!」

「は? なにふざけたこと抜かしてんだ!」

「ヒュース〜ミゥとも仲良くしてねぇ〜」

「おう! 君主(マイロード)の妹君だかんな! 仲良くするぜ」

「わたしとも仲良くしてくれる?」

「トワの姉御なら喜んで仲良くするぜ!」



僕はボソリとアルシアさんに耳打ちする。


「あの流れに乗れば、コロッと行くと思いますよ〜」

「まじかよ。こほん……ヒュース! 私とも仲良くした方が身のためだぞ!」

「あ? なんてでめぇとよろしくやんなきゃなんねぇーんだよ!」

「話がちげぇーけど!?」

「あちゃ〜アルシアさんの萌えポイントが足りなかったみたい」

「なんだよその気色悪いポイントは!? そんなもんむしろ要らねぇわ!」

「アルシアには芋ポイントが沢山貯まってますので安心してくださいな」

「おい幼女! さりげなく呼び捨てにすんな! あと、芋ポイントってなんだよ! 私は別に芋なんか好きじゃないんだぞ。そんなポイント貯まるかよ!」

「あー! また、幼女と言いましたね! ご主人様。今こそご主人様の凶暴なその爪を向けるべき相手が現れあいたたたっ!?」

「これじゃ、話が進まないよ」


脱線し過ぎだ。


片手でシャルルを装備して、片手でスピカを抱く。


そして、賑やかな面々の顔を見渡す。


(みんな明るい顔を浮かべている)


何故かそれが無性に嬉しかった。


「さて! みんなちゅうもーく! 流石にこのまま雑談し続けたら、後輩の人達が来ちゃうから、今後の方針みたいなものを伝えるね」


みんなが僕に顔を向けて聞く姿勢になったので、話し始める。


「僕の目的は、端的に言えば大陸全土からありとあらゆる情報を入手出来る商会を作ることです」

「つまり旦那は情報機関を作ろうとしてんのか?」

「近い! 商会と言った通り、商いもしようかなって。取り敢えず僕が作ってる魔石を売っているけど。いずれはトワさんが発明した何かを売ったり、集めた情報を売ったり、商品の搬送をしたりして全国に店舗を広げる感じかな?」

「随分とアバウトだな。商いは魔窟って聞くけどそんなに上手くいくか?」


トムさんが僕のぼんやりとした展望に不安を抱いたようだ。


「これは表向きの話だよ」

「つまり裏があると?」

「うん。この商会の裏の目的はね……」

「裏の目的は……」

「僕のやりたいことを叶える趣味の商会です!」

「お前の趣味かよ!? もっと腹黒い目的かと思ったよ!」

「あはは! なるほど。旦那のやりたいこと……趣味を全力で俺たちがサポートするわけだ。そりゃあいい!」

「教えてくださる? あなたのやりたいこと」

「僕のやりたいことはね……まずそれぞれ部署を作ります! 取り敢えず総括! シャルル!」

「えっ!? 私ですか!?」

「うん。基本的に僕は王都から離れることが多いから僕の代理としてみんなからの要望やお知らせ、不満などを聞いて、僕に教える係です」

「ご主人様の代理ですか……取り敢えずアルシアに草むしりさせておきますね」

「なんでだよ!? もっと私の力を有効活用しろよ! 草毟って、芋を食らわせて何がしたいんだ!」

「シャルルにそこまでの権限はないかな? あくまでみんなのまとめ役としての総括だから。それぞれの仕事に関連することならある程度指示を出してもいいけど、それ以外はアルシアさんたちにも拒否権があるから」

「そうですか……残念です」

「その残念には私に対するものしか含まれてない気がするんだが!?」


シャルルは言わば、管理職の人。そうです。給料が安いのに責任だけがあるで有名な。


僕はこの大陸に自分が安心出来る居場所を作ろうとしている。


拠点はこの御屋敷。


これからマナたちと魔改造を施して、要塞化する予定です。


そして奴隷のみんなには僕が思いつく限りのやりたいことをフォローしてもらう。


商会というのは表の顔。裏は謎の秘密結社みたいなノリです。


この先、元の大陸に戻れたら、はいさよならじゃ、寂しいからね。ここから大陸間の外交を担っていける商会に育てれればなぁみたいな漠然としたイメージ。


「そして、一つ目の部署……諜報部! この部署の部隊長をトムさんにお願いします!」

「ほう……つまり情報を取ってこいってことか」

「うん。ここの部隊員は情報収集を専門とした部隊です。これからどしどし奴隷さんを雇っていくつもりだけど、みんな素人だろうからトムさんにイロハを叩き込んで欲しい」

「期間は?」

「うーん。一年? それまでは浮浪児や貧民街の人達から情報をお金で買い取ろうかなって」

「あ、だから浮浪児のボスさんにお金を渡して情報を集めさせてたんですね」

「うん。いきなり買うよ〜って言っても、みんな大した情報を持ってないからって売ってくれなそうだからね。今のうちにどんな情報でもお金は出すよ〜って宣伝しておこうかなって。大したことの無い情報でも子供の小遣いぐらいになるなら気楽に売ってくれるだろうし」

「旦那はそんなことやってたのか」

「そう言えば浮浪児のボスさんもご主人様を旦那って呼んでましたね」

「そうなのか。そうだな……これから組織として動くなら呼び方を変えた方がいいか。ボスって呼んでもいいか? そっちの方が呼び慣れてんだ」

「うん。良いよ」

「そんじゃ、ボス。一年だと基礎を叩き込むのがやっとだ」

「そうだよね。出来れば普段なら入手出来ない情報を手に入れられる場所や情報屋と接触する方法とか。そういう手段を覚えて欲しいんだよね」

「戦力は二の次ならなんとか」

「それでお願い」


賢者やダグラスが何処にいるか分からないからね。出来る限りの情報を集められるようになったら、心強い。


戦力に関してなら、防御系の魔導具を作って渡せばある程度は何とかなるかな。


「次に……奉仕部! ここの部隊長というより、メイド長にアルシアさん。執事長にヒュースさんです」

君主(マイロード)の仰せのままに」

「なりきってるところ悪いけど、私は可笑しいだろ!?」


ヒュースさんはイケメンだから様になるね。


そして案の定アルシアさんから抗議の声が。


「んん! なんだか喉が乾きました。そこのメイド。紅茶を用意しなさい」

「お前は私をいじめたいだけだろうが! 泥水なら用意してやろうか? あぁ?」

「まあ! なんと無作法なメイドだこと。ご主人様。このような者は芋を育てて草むしりでもやらせるのが相応しい姿です」

「シャルルゥ?」

「ごほん。誰にでも初めてはありますよね。アルシア。あなたもご主人様に仕事を与えられたのなら文句を言う前に全うしてから言ってください」

「わーったよ! でも理由を聞いてもいいだろ? 私は奉仕なんかした事ないぞ?」

「理由はね、奉仕部はこの御屋敷で掃除洗濯、炊事と基本的な給仕をするのがお仕事なんだよね。でも、こんな広い屋敷だし、きっと抜け道や隠し部屋みたいなものは沢山あると思う。一応屋敷の見取り図はあるけど、これだけを信じるのはダメだと思う。そこで色んな所に侵入してきたアルシアさんなら、そういう所を未然に防いだり出来るんじゃないかって」

「一応、理にかなってる」

「ヒュースは純粋に、屋敷がいざって時に護ってくれる最終防衛ラインとして置いておきたいなぁって」

「御意」

「それでね、余裕があればだけど、奉仕部の人達にも護身術ぐらいは身に付けられたらなぁって」


いわゆる武装メイドや武装執事が理想です。


「王宮に仕える侍女みたいに暗器を隠し持ってたりするもんか」

「そうそう。そんな感じ」


トムさんの補足で二人とも何となく分かったみたい。


「なるほどなぁ。確かに大抵の貴族の傍の奴って、やたらと血の気が多い奴が多い」

「俺みたいな元傭兵を給仕として仕えさせてるわけですね」


二人ともしっかり理解出来たみたいで良かった。


「仕事はおいおい覚えてくれたらいいよ。それじゃ次は……開発部! 開発長はトワさん!」

「わたしの出番ね」

「この部署が今後の商会の資金源になると言っても過言じゃない」

「責任重大ね」

「今ね僕が作りたいものがあるんだ」

「あなたほどの人が作りたいもの……気になるわ」


トワさんが前のめりになりながら目を輝かせる。


「魔導具じゃないけどいい?」

「もちろんよ! 魔導具だけが発明家の仕事じゃないわ」

「ならよし。実はボードゲームを作ろうと思うんだ」

「ボードゲーム? 盤面遊戯と言えば良いのかな? マス目に分けられた盤面上で駒を使って遊ぶ感じ」

「近いものなら知っているわね」

「詳細は後で話すけど、開発部には僕が思いついた物を作ってもらったり、商品になる物を開発してもらったり、趣味に特化した物を作って欲しい」

「あら、趣味でもいいの?」

「もちろん! 作りたいものが作れないとか、開発部じゃないじゃん! 僕はねぇ。みんなが笑顔の花を沢山咲かせれるような楽しいものが作りたいんだ」

「笑顔の花を沢山……うん。うんうん。凄く素敵だわ! 私の作りたかったものはそれよ。誰もが喜ぶもの! 笑顔になれるもの! 是非やらせてちょうだい」

「お願いね! ここには手先が器用な人を入れる予定です。運が良ければ何かものづくりに携わっていた人がいるかも」

「腕が鳴るわね〜」


やる気に燃えるトワさん。是非頑張って欲しい。


「そして最後」

「ミゥの出番だねぇ!」

「そうだよ〜。ミゥには警備部の部隊長になってもらいます!」

「警備部ぅ〜?」

「簡単に言えば、この御屋敷の周りを見回ったり、正門や裏門の前で門番をやってもらいたいんだ。いずれ商会としての店舗を開けれるようになれば、店舗の護衛にも行ってもらう感じ」

「みんなを守るのがミゥのお仕事ぉ?」

「そうだよ。これはねミゥに適したお仕事なんだ」

僕はしゃがみミゥと視線を合わせる。


「ミゥの天武の名前を考えたんだ。それはね……『召喚』」

「『召喚』。ミゥのお友達の名前……」

「お友達には好きな名前を付ければいいんだ。この召喚というのはミゥがお友達をこちら側に呼ぶための手段みたいなものだと思えばいい。ミゥの力はねお友達を好きな姿や力を持たせることが出来る凄いものだと思うんだ。ミゥはさ、お友達を呼んでいる間は少し疲れるよね?」

「うん。でもバイバイしたら元気になるの〜」


ミゥは召喚している間は、召喚したお友達の強さにより魔力を消費するけど、バイバイ……送還したら魔力がその分だけ回復する。


つまり、いくら能力を使っても魔力が減ることは無い。


戦っている間に、ミゥを魔視を使って見ていて気付いたことだ。クマさんが消えると同時にミゥの魔力が爆発的に増えたんだ。


「普段は小鳥や子猫みたいなお友達を沢山御屋敷の周りに配置すれば、変な人が御屋敷に近付いたら直ぐに気付くでしょう?」

「そうだね! クマちゃんだけしか呼んでなかったから気付かなかったよぉ〜」

「それでねミゥに試して欲しいことがあるんだ」

「なぁに?」

「ミゥはお友達の見ている景色を自分で見たことある?」

「うぅん? ないよー」

「試しにそのお友達の見ている景色を見てみたい! って思いながら呼び出してみて」

「分かったぁ〜小鳥ちゃん!」


一羽の小鳥が召喚され、頭上をクルクル旋回する。


「うぅ…………見えた! 見えたよ! お兄様ぁ!」

「よしっ! それを使えば、ミゥは御屋敷の中にいながら色んな所を見に行けるようになるよ!」

「すごいすごい! 空ってこんな感じで飛ぶんだね!」

「聞いてないし……まあ、いっか」


小鳥と連動してミゥの体も動かしている。あれだね。レースゲームの時に体が傾くのと同じ感じ。


「ざっとこんな感じかな。これから僕の知り合いの商人さんが奴隷さんを三十人ほど連れてくるから、一人一人軽く出来ることや得意なことを聞いて部署を分けようと思う」


みんな、やる気に満ち溢れている。


よし! 頑張りますか!

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