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130話 新大陸14

うっぷ。


口の中があっまぁ〜い。


なんでもいいよなんか言わなければ良かった。


シャルルは目を輝かせて次から次へと甘いものを頼むし、その感動を分かち合いたいのか、やたら僕に勧める。


僕も断れない性分だから全部食べてしまう。


周りからは仮面付けたやつに甘いものを食べさせまくる美少女の構図だ。


間違いなく目立っただろう。


でもシャルルとは少し仲良くなれたようで良かった。


今もシャルルから手を握ってきてくれたし。


ヘンリック商会までの道のりで数回荒くれ共にエンカウントして、追い返すの繰り返し。


シャルル曰く、これが日常になるぐらいは襲われているとハイライトが消えた瞳で言われました。一人にしてゴメンなさい。


ヘンリック商会の前には警備員が二人追加で立っており、シャルルの言う通り商人らしき人らが行列をなしてヘンリーさんに会おうと菓子折りを持って待っていた。


「僕も並んだほうが良いのかな?」

「そんなことしたらヘンリックさんのお腹が大変なことになりますよ」

「そんなに? ならこのまま入った方がいいか」


シャルルを連れて普通にお店に入ろうとする。


並んでいた商人が慌てるように僕に声をかける。


「き、君! 割り込みはよくないぞ!」

「ようこそ! ソロモン様! シャルル様!」

「えっ!?」


僕を注意した商人が驚いたように僕とシャルルを見る。シャルルを改めて見てしまい、あまりの美少女に顔を赤らめる。


「うむ。ご苦労。直ぐにヘンリーに会える?」


僕はしょうがないと腹を括り、少し尊大な態度で警備員に話しかける。


「はっ。代表には常に最優先でお通しになれと」

「そっか。ありがと」


僕は周りにまじまじ見られながら店の中にはいっていく。


店の中にはお客さんなんか居なかった。


まあ、あの商人の集団のせいで店に入りずらいのだろう。普通に営業妨害だ。


普通はアポを取ってからやってくるだろうに。


それをせずに直に来たということは、アポを取ろうにもコネがない。もしくは新米さんで成り上がるために今勢いに乗っているヘンリーさんに擦り寄ろうとしているのか。


カウンターには前に対応してくれた女性がいてニコニコと会釈をする。


片想いの男性は……ムスッとした顔で椅子に座っていた。


よっ! と手を上げて挨拶したけど、無視されたよ! 根に持ってるのかなぁ?


「ヘンリック様が中でお待ちしております」

「あれ? お客さんとか居ないの?」

「いえ。今は丁度(・・)空いております。空いていなくても最優先で通せと言われております」


僕が王都に来ていることに気付いて接客を控えたな。流石はやり手の商人さんだよ。


「上がらせてもらうね」

「どうぞ」


二階に先導され、執務室にてヘンリーさんに再開。


「いらっしゃい! ソロモンさん」


目元に少しクマがあるけど、そんなのはどうでもいい! と言わんばかりの元気っぷりだった。


「景気が良さそうだねヘンリー」

「はははっ。おかげさまですよ。シャルルさんもお久しぶりです」

「はぃ」


僕の背後で小さくなっているシャルル。


「まだ根に持ってるみたい」

「あ、あはは……申し訳ないです」


そりゃあ、麦茶をぶっかけられたからね。


ソファに促され、シャルルと並んで座る。


ヘンリーさんは直ぐに麦茶の準備にかかる。


「氷要る?」

「お願いします」


コップに氷作り出して入れる。


「ご主人様はなんでもできるのですね」


関心したようにシャルルはコップの中の氷を見つめる。


「なんでもは出来ないよ……出来ることだけさ」


くーっ! 言いたったこのセリフ!


「なら何が出来ないのですか?」


そこ聞く? うーん。いきなり言われても、僕個人なら沢山あるけど、マナたちの力も含めると大抵の事は乗り越えられるからなぁ。


「はははっ。悩むほど出来ないことはないという訳ですか。羨ましいですね」

「ありがとう」

「ありがとうございます」


僕が答えられないでいると、目の前に麦茶が置かれ、ヘンリーさんからフォローをもらった。


麦茶を頂きながら一つ思い付いた。


「少なくとも僕にはこのような美味しい麦茶は作れないかな」

「これはこれは。故郷のみんなに自慢ができますね!」

「「はははっ」」


なんか子気味良いやり取りだ。


まるで旧友のような。


そしてこれから本当にそういう友人になれたらなぁ。


「それでは本題にでも入りましょうか?」

「うん。お願い」

「では。……奴隷に関しては三十名ほど確保出来ました。ソロモンさんが主人になるので契約は保留にしております。後で手続きに行きましょう。もし気に入らない者が居たらこちらで引き取りますので」

「この短期間にそんなに集まったんだ」

「多すぎましたか?」

「ううん。想定内だよ。続けて」

「なら良かった。次に物件に関してですが、少し事情が厄介なんですよね」


それってあれか。第二王子絡みだったりする? ほら、王都だし。王族が物件を差し押さえているとかありそう。


「第二王子が取引相手だったりする?」


僕の一言にヘンリーは目を見開く。


「……凄い。よくお分かりで。ええ。私が不動産屋から空き家の情報を調べていたことを知り、王家が所有している物件を打診してきました」


ビンゴかよ。マジか。王族が絡むの?


絶対裏しかないじゃん。めんどくさいです。


「その物件は面倒くささを上回るような代物なの?」


でも、気になる。王族がわざわざ紹介するようなものだ。


「ええ。かつて公爵家が保有していた屋敷……いえ、豪邸です。敷地面積もさることながら建築物も実用性と芸術的な美しさを合わさっており、これを交渉材料にするとはと驚くばかりです」

「そ、そこまで言わしめるなんて」


僕ってセールスに弱いんだよね。


凄いぞ! お得だぞ! 限定だぞ! って言われるとつい買ってしまうんだ。


「ですがこれはお察しの通り、裏があります」

「な、なんでしょう?」


ほらきた!


「三等級の紫色(・・)の魔石の定期的供給です」

「……紫色だけを指定してきたの?」

「ええ。正直、まさかこれほど早く手を伸ばしてくるとは……して、紫色の特徴はなんでしょうか? 希少というだけではないのでしょう?」


第二王子は分かって指定してきたのか、それとも何かを見越して買っておこうと備えたか。


「理由は聞いた?」

「ええ。理由は綺麗だからと」

「嘘っぽい」

「私も同感です」


普通では予想のつかないことが起きる。


そしてそれは大抵、“才能(ギフト)“が関わっていたりする。


僕の知らない才能(ギフト)が紫色の魔石の特徴を見抜いた。その可能性は大いにあるね。


「あ、特徴ね。僕が知る限り全属性の最高適性だね」

「ぶふっ!」

「…………」


またしてもヘンリーさんはシャルルにぶっかけてしまった。


シャルルの瞳からハイライトが!!


「も、申し訳ない!」

「も〜! 気を付けてね!」


シャルルにリフレッシュの魔法を掛けて綺麗にする。


「ご主人様……わざとですか?」

「わ、わざとだけど、これはわざとじゃないですよ?」


ほんとほんと。ソロモン嘘つかない!


無表情に首を傾げないで! すんごい怖いです!


「次やったら……ご主人様には対象(・・)になって頂きます」

「あ、あい……」


やっべ。立場が逆転しちゃった!


「私の方からもお願いしますよ……毎回心臓に悪い」

「ヘンリックさんも次からはご主人様にぶっかけてくださいね?」

「つ、次がないことを祈ります」


その返答に満足したのか、麦茶を飲むことに戻るシャルル。膝の上に乗せた紙束を一枚ずつめくる姿は小さなOLだ。


「それで……さっきの話は本当ですか?」

「うん。今のところ六属性全てにおいて単一属性の魔石以上に親和性があるよ」

「何かあるとは思ってましたが……そんな希少すっ飛ばして、伝説になりそうな代物を簡単に渡さないでください!!」

「え〜。だって消耗品だしぃ〜」

「何処の世界に高級ポーションで手を洗う人が居ますかっ! 使い方次第では、技術が何世代も進歩しますよ!」

「僕以外生み出せない可能性があるから、大丈夫じゃないかな?」


僕の返答に、ヘンリーさんは疲れたようにソファーに体を沈める。


「聞きたくない情報を得てしまいました。偶然の産物ならいくらでも言い訳ができたのに……」

「なら今からでも偶然物ということで」

「無理です。第二王子には嘘が通じないんです」


ま、まさか。


「特殊な能力でもあるの?」


才能(ギフト)みたいなものが備わってるのか?


「その通りです。第二王子……エバン様には“天武“『事実』が与えられております。効果は真実を見抜くという強力なもの。呼吸するように嘘を吐く貴族社会や、騙してなんぼの商人達にとっては天敵のような天武です」

「会いたくないんですけど」

「あの物件が欲しければ、一度お会いするしかないかと」


いーやーだー。


ろくなことがおきないよ。


マナさんたち〜? はよ帰ってきてぇー!


僕一人では対処不能です!


「ちょっと考えてもいい?」

「ええ。約束の時間まで余裕がありますので」

「……待って。約束の時間?」

「今日。指定の時間までに例の物件にて待っていると先程連絡が来ました」

「用意周到すぎる! あとどんぐらい!?」

「あと二時間ほどでしょうか」


懐中時計で教えてくれるけど、思ったより短い。


マナさん! 出番ですよ!


『聴こえてたわ。そうね。ヘンリーさんに聞いてちょうだい。その天武は言葉だけに発動するのか』

「ヘンリー。第二王子の天武は言葉にのみ発動するの?」

「恐らくは……エバン様の前で余計なことは言うなというのが、常識になるほどですからね」

『なるほど……なら旦那様。それは嘘ね』

(えっ!? 嘘の能力なの!?)

『考えてみなさい。第二王子という高貴な身分の人間の能力が、たかが一商人にすら知れ渡っているのよ。本人が広めた可能性が高いわ。誤解させる為に』


なるほど。言葉のみに気を付ければいいと気を緩んでいたら、他の部分で嘘と見抜いてくるというわけか。


(初見殺しにもほどがあるよ!)

『安心しなさいな。要は嘘を言わなければいい訳。お望み通り真実だけ告げればいいじゃない』

(良いの!?)

『情報集める為にもいずれは有力な権力者の助けは必要だったのよ? それが早まっただけだわ。嘘つきなら天敵でしょうけど、本音で話す分ならただの人間じゃない。しかも今回はこちらの拠点も提供してくれるって言うじゃない。……ふふ。むしろ鴨が葱を背負って来るようなものよ』

(僕はマナさんが怖いよ)

『あら。嫌いになったのかしら?』

(もちろん大好き!)

『うふふっ。私もよ。なら問題ないわね』

(うん! 問題ない!)


悩みは吹き飛んだ。


そうだ。僕は一刻も神聖国に戻らないもいけないんだ。


利用できるものは利用しないと。


欲しければいくらでもあげよう。


紫色の魔石を。


その代わり僕に協力してもらいますよ?


第二王子様。

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