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129話 新大陸13

王都再び!


一週間ぶりの王都だ。


今回は門を通らず直接転移でやって参りました。


時空魔法の対策は流石にされてないみたいだね。ここに限らず、大抵の国がそうなんだろうなぁ。そもそも、古代魔法に分類されているわけだし。この大陸で適性を持つ人が一体何人いるか。


でも、使える人が居ないとは限らない。


しっかり対策をしておこう。


気持ちを新たに、僕は早速シャルルの元に向かう。あの宿に泊まってくれてたら良いんだけど。


『今日も“厨二の夏、仮面の君“ で行くの?』

……“わくわく“

(時雨、空音はわくわくしないで!? あれは無かった。もうあれにはならないよ!)


もう一回やってみろ。飛ぶぞ? 物理的に。


『じゃあ、どうするの? あなたのレパートリー的に仮面キャラはキツいわ』

『うぅ〜ん。雛ね! あれ! タキシード着た人みたいなのがいいと思う!』

(タキシード〇面じゃねーか! ダメだよ! BANされちゃうよ!)


そもそも僕じゃ身長が足らないよ! 悲しいことにね!?


『いっその事、仮面変えちゃう? 今度は緑色と黒色が左右に分かれているの作ってあげる』

(仮面〇イダーじゃねーか! 普通にこれでいいよ!)


会う度に仮面が変わってたら変な人に思われるわ!


『それは出遅れじゃない?』


あ、うん。


『茶番はともかく……見つけたわ。シャルルは外出中よ』

(流石! 道案内お願いします)

『任せて』

『……ピピッ』

『『(ぷふっ!)』』

『誰!? 今の擬音は誰なの!? 怒らないから出てきなさいっ!?』


めっちゃ怒ってるじゃん!


……“今のは?“

(あー今のはね)

『説明しなくていいのっ!!』

「あいたっ!?」


魔力で出来たゲンコツを食らっちゃった。


人通りが少ない時で良かった。


1人で何してるんだって変人を見ているような目で見られるところだったぜ。


僕は結局、どういう風にシャルルやヘンリーさんたちに接するか決められずに歩を進める。


機嫌が少し悪いマナさんのナビ通りに道をくねくね進むと、店が立ち並ぶ通りに出る。


「あ、居た」


でもお取り込み中みたい。


『どうしましょうか。 殲滅光(オーバーレイ)で牽制しますか?』

(牽制どころか、消し飛ぶわ!? ……ビックリした。ライアも冗談言えるようになったんだね)

『えっ……あ、はい! 冗談ですっ! メイドジョークですっ』


あ、これ、冗談じゃなかったみたい。


この大陸に来てから、みんな少し甘さがなくなったみたい。


今、賢者に出くわそうものなら、各々全力で殺りに行くんだろうな……。


敵ながら、逃げて! とか言っちゃいそう。


まあ、僕も腹は立ってるから、あのご立派なお髭を全部毟りとってやるけどね。


脱線しちゃった。


そうじゃなくて、現在進行形でシャルルが荒くれ者といっても差し支えない連中に囲まれている。


シャルルに向かって怒声を食らわせているけど、彼女は微動だにせず能面のように表情を消している。


まるで初めて会ったときみたいに。


「なんか言ったらどうなんだぁ!? 餓鬼がよぉ!」


そう言って、男の一人がシャルルの腕を掴もうと近付く。


それに対してシャルルは一言。


「邪魔です」


次の瞬間。


シャルルを中心に突風が吹き荒れ、荒くれ者たちは周囲の建物の壁に叩き付けられる。


「おぉ〜!」


思わず拍手をしてしまうぐらい、絵になっていた。


ワンピースの裾の埃を払っていたシャルルは僕の声にビクッてなって、わなわなと顔をあげる。


「凄いカッコよかったよ! シャルル」

「あ、あ、あぁ……」


カーッと顔が真っ赤になってしまう。


それを慌てて両手で覆うと、今度は持っていた荷物が地面落っこちてしまう。


「あ、あう……」


目がぐるぐる混乱しているのが丸わかりのシャルルは慌てて荷物を拾おうとする。


「手伝うよ……ほう! 本を買ってたんだ! 勉強熱心だね!」

「あ、まっ」


シャルルがなんかパニクっているけど、僕はそれより何を読んでいるのか気になった。


そこから仲良くなる糸口を見つけるんだ!


「えっと〜『二頭の獣、宵月の夜にて交わる』?」

「あ、あぁ……あぁ〜っ」


崩れ落ちるシャルル。


『キタコレー!』

『読み込むわよ!』


歓喜する澪と魔力の手を使って僕から本をかっさらって、空中でベラベラと本をめくり、内容を記録していくマナ。


『あれだよねっ! あのジャンルだよねっ!』

『タイトル的に間違いないかと!』

……“あのジャンル?“


きゃっきゃっと喜ぶ雛とライア。


時雨と空音と僕は同じ気持ちです。


でも、なんとなぁ〜く分かっちゃいました。


『どお!? マナちゃん!』


澪が急かす。


『うふっ……うふふっ……うふふふふっ! 当たりよ澪!』

『キタコレー!!』

『お紅茶のご用意を致しますっ!』

『雛も手伝うー!』

……“わくわく“


あ、あ〜。みんな行っちゃった。


これはしばらく出てこないね。


そう思いながら、手元に戻ってきた本をベラベラめくる。


「……は〜っ」


やっぱり腐の遺産だった! sit! ふぁきゅ!


なんで別の大陸にもあんだよぉぉぉー!!!


僕もシャルルみたいに頭を抱える。


僕は前世で唯一手を出さなかったジャンルが二つある。唯一じゃないじゃんとかのツッコミはなしだ。


百合とBLだ。


百合はまあ、ワンチャンマナたちが読んでもいいかなぁとは思ったけど、BLに関してはほんっとうに触れて欲しくなかった……!


ただでさえノット君とのやり取りをおちょくられていたというのに、そこにガチモンの知識が入ったら……ぶるっ!


絶対ピー音入りまくるじゃんかよ! 勘弁してよぉ。


好きなマナたちにBLのネタにされるのはなんか複雑ぅ!


「シャルル」

「あ、あひ!」

「行こう。浮浪児の所に行くんでしょ?」

「は、はぃ……」

「僕も一緒に行くよ」


しょんぼりした僕は本をシャルルに返して、空いた手でシャルルの手を握って、歩き出す。


シャルルは抵抗らしい抵抗はせず、着いてくる。


シャルルの手がめっちゃ汗ばんでたけど、僕は怒ってないよ? そんなに怖がらなくても。逃がさないために握ってるわけじゃないんだから〜アハハ。


「……出来れば、僕を対象にしないでね? (ニッコリ)」

「ひぃ!? はひぃ! (ガクガク)」


ダメだぞぉ〜ご主人様をそんな目で見ちゃ。めっ! だかんね!


仮面付けてるから表情見えてないことが幸いだよ。



その後、出くわした荒くれ者たちを八つ当たり気味に、ポコポコにして少し気分がスッキリして浮浪児のボスの元に向かう。



「よう旦那ぁ。一週間ぶりだなぁ? いきなり派手なやったんだって?」

「情報はやいね。流石だよ」

「ん? なんか様子が違うな? こっちが素の旦那って訳か?」

「そんな感じです」


流石は浮浪児たちのボス。


一目で見破るとは。恐ろしい子っ!


「あっ! シャルルちゃん! お願いしてた本、買ってきてくれた!?」

「は、はい!」

「えっ」


どうやら僕は誤解をしていたようだ。


シャルルはそんな子じゃないって信じてた!


「ごめん。僕の勘違いだったみたいだね」


お詫びにシャルルの頭をくしゃくしゃと撫でる。


「と、当然です。私はあのようなご本は読みませ「この前興味津々に読んでたよねっ! これも読んだら貸すねっ」んから」


…………。


「あっ……」

「へぇ〜ふぅ〜ん?」

「ち、ちが……いたい……いたいですっ。ご主人様いたいですっ」


撫でる手はそのままシャルルの頭部を鷲掴みに変わる。


問答無用! アイアンクローだ!


「あんたら仲良いな」


その後、シャルルが白状するまで刑を執行しました。嘘は良くないぞ。



「これが本日分だ」

「ありがとうございます」

「よせやい。仕事だ」


浮浪児のボスから紙束をシャルルは受け取り一礼。ボスは照れくさそうに手を振る。


僕はつい知的好奇心からシャルルにボソリと聞いてしまう。


「ちなみにあのボスは誰とがシャルル的にベスト?」

「そうですね! やはりあの傍にお付き人のようにベッタリくっついている短髪褐色肌のヤンチャそうな彼でしょうか! いつもワイルドで知的なボスさんに劣情を抱くことに苦しみながら、抑えられなくなりある日襲ってしまうっ! ボスさんもその容姿からは想像できない母性で受け入れてしまい……「いいぜ、来いよ。受け止めてやる!」「ボ、ボス!」……あぁっ!」


…………。


「んじゃ。次もよろしくってことで」


僕はシャルルを脇の横に抱えて、ノシと挨拶して脱兎の如くその場を脱した。


「待てよゴラァ!? この空気をどうするつもりだぁーーー!!!!」


ワイルドで知的なボスからは想像出来ない悲鳴であった。



「やってしまいました……」


紙の束を抱き抱えてとぼとぼと歩くシャルルは気だるげ。


「次からどのような顔でお会いすれば……」


流石に僕も少し反省。


この姿だとやっぱり少し調子に乗ってしまうみたい。


「そ、そうだ。ヘンリーさんの元に行くまでに、何か僕に伝えるような情報はない?」

「は、はい。……最近、ヘンリック商会が大きな取引をしたそうです」

「僕関連だね」

「その取引でベイトール王国の第二王子がヘンリック商会に接触したそうです」

「……僕関連だね」

「その事でヘンリック商会に接触しようと人の出入りが増えております」

「大忙しだね。悪いことしたかなぁ」

「いえ。むしろ生き生きしているようです」

「流石は商人!」

「一部の奴隷商人が最近、王都から離れようとしています」

「僕が大勢の前で首輪ぶっ壊したから?」

「……恐らくは」

「そっかぁ……後悔はちっともしてないけどね! でも場所ぐらいは選んだ方が良かったかな? あれのせいで奴隷制度が揺らいだかもしれないしなぁ……」


王子!? 大物にもほどがあるよ!?


これあれかな。王族に目をつけられたかな……。


首輪に関しては、まあやったもんはしょうがないや。僕以外出来ないのはおいおい気づくだろうし。いずれ騒ぎは沈静化するだろう。


お互い少し沈黙してたら、シャルルが思い出したように言った。


「あ、あとは菓子店ふわりんで新作のケーキが発売されているようです!」

「食べたいんだね!」

「ち、ちがいま……す」

「いいよいいよ。食べに行こ? 僕が奢るから」

「だ、だからちがいますって!」

「はいはい」


なでなで。


「あぅ……」


気を遣われちゃった。


マナたちも最近凄く頑張ってるし、新しい甘味でも差し入れてあげますか!

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