125話 新大陸9
「それではオークションを始めます!」
魔導具の拡張器により、会場に響き渡る司会者の声。ちょび髭の男性だ。
オークション! そう聴くと、ワクワクが高まった。
どんな言われのある品が出品されるのだろう!
伝説の剣とか、売られないかな!
期待で胸が膨らむ。
「それでは、一品目!」
ステージ横の隙間から、身なりを整えた人に、鎖で引っ張られる形で連れてこられた人。
…………えっ?
「オーナーの方曰く、この度の品は、屈強で体力に優れており、多少痛めつけても死なないという! この方は毎回、いじめがいがあるような奴隷を連れてこられますね!」
…………は?
「この度の奴隷オークション! その一品目の落札を始めていきます! 銀貨十枚からです!」
「銀貨十五枚!」
「銀貨十七枚!」
これ、奴隷オークションだったのかよ!?
知ってたら座ってないわ!
奴隷は必要悪だと、思っている。
それに救われる人もいるだろうし。
国だって、必要だからその制度を設けたのだろうと思っている。
だから頭ごなしに、奴隷はダメ! って言うつもりはないけど……。
こんなんなの?
こんな、商品みたいな紹介なの?
同じ人間だよ? 言葉だってかわせるよ?
どうして鎖で繋げて、物みたいに扱えるの?
そうして、僕が混乱している間にも、オークションは進んで行った。
なにか、なにかないか?
助けられる方法は?
人が売られていく。
買い取った人は満足そうに、買われた人は生気を失っている。
まるで格差の縮地図を見せられているような気分だ。
そうしてもんもんとしていたら。
「それでは午前の部、最後の大トリにして今日一の商品を大手の奴隷商の方から出品されました……その幼さは妖精? その可愛らしさは天使? 万人を魅入らせる幼き女神!」
そんな大々的な宣伝から、垂れ幕が下ろされ、一人の少女が姿を現す。
無地のワンピースだけを身につけ、俯く少女は色白で全てが白に染っていた。
アルビノ。という単語が浮かんだ。
彼女はアルビノなのかもしれない。
髪もまつ毛も白色だと視認できる。
彼女の登場に、会場が沸く。
「美しい! 是非私のコレクションに!」
「いいや! 美しいからこそ壊しがいがある! ワシの物だ!」
「男どもは野蛮だこと。私なら、その生き血を美容の為に使いますのに」
反吐が出るような発言ばかりで、僕は怒りが込み上げてくる。
ステージ上の、少女は一切反応を示さず、下を俯いている。
痛ましい。
そう思っているのは僕だけなの?
みんなどうして、そんなに盛り上がっているの?
自分より幼い女の子なんだよ? そんな子が、貴族共がのたまうような目にあってもいいの? むしろなんで喜んでいるの?
この場は異常だ。
異常過ぎて、怖い。
人の気持ち悪さを感じる。
醜い。おぞましい。気持ち悪い。
人を玩具扱いするコイツらが心底気持ち悪い。
「大変盛り上がってまいりました! それでは買取を始めていきます! 金額は当然、金貨三枚から!」
「金貨五枚!」
「金貨十枚!」
「金貨十二枚!」
徐々に上がっていく金額が、その者の欲望の数値化なのだろう。
それほどまでに少女を手にしたいという欲望の。
混乱する頭で考えていた。
本当は稼いだこのお金を、存在するだろう裏ギルドや闇ギルドに夜、接触して有益な情報を買い取ろうと考えていた。
その暇つぶしにブラブラするだけの筈だった。
でもやめた。
人を案内して小銭を稼ぐ浮浪児を見た。
そして、モノ扱いされる人達を見た。
情報を買うのはやめだ。
情報は自分で集めよう。
僕は意を決して、立ち上がる。
「金貨三十五枚!」
「ぐっ! 金貨三十七枚!」
「なら! 金貨三十八枚だ!」
「ぐぬぬ!」
「さあ! もうおしまいでしょうか!?」
勝ち誇った貴族の男。
もうおしまいかと煽る司会者。
僕は金貨が詰まった皮袋を司会者の顔面に思いっきり投げつけた。
「ぶげっ!?」
「金貨百枚」
「は?」
「金貨百枚で彼女は私が貰う」
僕は割れた人の群れを堂々と歩き、ステージに上がっていく。
「ひゃ、百枚! まさかの金貨百枚でございます! ……本物です! 金貨百枚が私の顔にぶつけられました! 幸せでございます!!」
皮袋から零れた金貨、そしてその中身を確認して、狂乱したように司会者は叫ぶ。
「さあ! これ以上の金額を出せるお客様はございましょうか!?」
「……ふん! 今日は手持ちが足らん」
「まあ、よい。適当な奴隷を買い集めて殺し合いでもしてやろう」
貴族の負け惜しみ以外静寂に包まれた。
「決まりましたーっ! 金貨百枚! 過去一の金額での落札になります! おめでとうございます」
司会者は拡張器を片手に僕に近付いてくる。
「さあ、買い取ったお客様は、そのお品をどのように使うのでしょうか? 是非、皆さんにお聞かせてください!」
「そうだな……」
ああ。答えてやるよ。
拡張器が仮面の前に置かれる。
期待したような司会者。
ワクワクするような観客。
不服そうしながら、どうするんだ? と問いかけてくる貴族連中。
「彼女を幸せにする……以上だ」
「へ?」
蓬ける会場一同を無視して、彼女の元へ。
契約書を持った、魔法使いの男が慌てて駆けつける。
「ど、奴隷契約をします」
どうやらそういう魔法を使っているようだ。
「必要ない」
「えっ?」
契約書を受け取り、粉々に引きちぎって捨てる。ポイ捨てしちゃった。
そして彼女の首を締め付ける首輪に手を触れる。
(マナ)
『うふふ。了解』
嬉しそうにマナが返事をして、首輪に刻まれた魔法陣を解析する。
そして数秒も掛からずに首輪は粉々に弾け飛んだ。
「「「はぁっ!?」」」
恐らく彼らにとって、奴隷契約の魔法は手順を踏まないと解除不可能の魔法だったのだろう。
馬鹿馬鹿しい。
こんなゴミ魔法がそんな凄いものなわけないだろう。
『割と単純だったわよ。でも古い魔法だから、近代だと解ける魔法使いが居なかったのかも知れないわね』
なるほど。
古竜様から、時空魔法だけとはいえ、それには古代魔法の構造に関する知識も含まれていたから、簡単に解けたわけだ。
まあ、分からなくても、余裕だけどね!
驚愕する人々を無視して、彼女の手を引いて立たせる。
彼女も驚いたような僕を見つめる。
ごめんね! へんな仮面被っているへんなやつで!
「着いてきて」
彼女の手を引いて、ステージから降りる。
そして、固まっている人々の間をすり抜けていく。
行先はもう決まっている。
彼女の奴隷契約は解除したけど、さあ自由だと解放しても直ぐに捕まってしまうだろう。
だから責任は取る。
彼女に仕事を与えよう。
これは大事な仕事になる。
とても大きな大仕事になる。
「驚いた。もう追っかけてきたの?」
「お客さ〜ん。流石にやりすぎじゃねえーか? お陰で大騒ぎだぜ? その責任取ってくれねぇーかな?」
「……っ!」
静かな貧困街のど真ん中で、武装した荒くれ者に囲まれた。
怯えたように少女が僕の背中に隠れる。
そして驚いただろう。
自分と大して背丈が変わらないじゃないかと。
ごめんね! もっと大きな背中の方が安心出来たよね!
十人以上に囲まれている。
周辺住民は怯えて家に閉じこもっている。
「安心しな。大人しくしてくれるなら、命は取らねえ。まあ、もうここら辺歩けなくなる体にはなるけどなぁ……」
「「「キャハハッ!」」」
野太い笑い声が響き渡る。
「そんな人数でいいの?」
「あ? 痩せ我慢はよせよ。そんな外套を被っているのも、仮面をつけているのも、ビビってるのを分からせない為なんだろう? 今、足がガクガク震えてるんだろう? 無理すんなよぉ」
ニヤニヤと気持ち悪いおっさんだこと。
「あっそ。じゃあ行くね?」
「あ? っと待てやコラァ!」
連中の合間を抜けていく。
震える少女の手を強く握り、大丈夫だと伝える。
追い掛けてこようとする男たちは気付く。
「っんだよ! なんで動かねぇんだ!?」
「ボ、ボス。俺も動きやせん!」
「俺も!」 「オラも!」「おいどんも!」
「くそっ! 何しやがった! 答えろ! 仮面野郎っ!!」
「はあ? 教えるわけないじゃん。馬鹿なの? あ、馬鹿だったね」
「て、てめぇぇぇ!」
凄んでも無駄。
既に格の違いが出ている。
魔力の密度を上げただけで動けなくなる程度の実力しかないのがバレバレ。
僕相手に数は無意味。
でも、逆恨みされて、この後も狙ってくるのも面倒だ。
僕は殺気を彼らに当てる。
いつの間にか、人を睨むだけで殺気を発せるようになりました。訳が分からないです。
「……っ!? あ、あ……」
「ひ、ひぃ!」
「あ、あわわわわ」
男たちは阿鼻叫喚としたように、顔を恐怖で歪ませる。
「次、顔見せたら……いじめるぞ♪」
「ひ、ひぃ〜た、助けてくれえ」
「助けてけろ〜!」
「逃げろ〜!」
「お、置いてかないでよぉ〜おかあ〜ちゃーん!」
「じゃね〜」
手を振って、逃げる男たちを見送る。
静かになった道に僕と少女の二人だけ取り残された。
「それじゃあ、行こうか」
「…………は、はひ」
少し怯えたような様子を見せる少女。
無理もない。僕、不審者の格好してるもん。
あと、声がアニメ声だ。
この子、どんだけ属性盛るの?
可愛い。
気を取り直して、目的地に行く……行く?
どこにあるの?
参った。
道が分からない。
周囲をチラチラしたら浮浪児を発見。
今度は女の子。
ポケットから銅貨を一枚、指で弾いて女の子に渡す。
驚いたようだけど、しっかり銅貨はチャッチした。
「ヘンリック商店って場所分かる?」
「……着いてきて」
少しオドオドしながらも、小走りで先導する。
可愛い。
いかんいかん。これではロリコンだ。
小動物みたいで可愛い。
これでよし!
案内される道は、細い路地をくねくね曲がりながら突き進む。
こんな迷路みたいな道をこの子達は完全に把握しているのだろうか?
やはり、僕の考えは間違っていなかった。
この子達は役に立つ。間違いなく。
「ここ……だよ」
「ありがとう」
「ふあ……」
くしゃっと髪を撫でて、銅貨を追加で一枚与える。
「またお願いね」
「うん……またね?」
小さく手を振って路地裏に消え去っていった。
追加の銅貨を貰っても、特に驚かなかった。
既に知れ渡っているね。僕のこと。
僕は確信して、本日二度目の来店を果たす。
「いらっしゃ……いらっしゃいませ!」
「おつかれさまでーす!!」
「えっ……なに? 熱烈な歓迎」
いきなり店員さん一同に頭を下げられた。
ほら、周りのお客さんがびっくりしてるぞ?
もう、僕の人相は知れ渡っているのね。
「直ぐにオーナーをお呼びします!」
「必要ありません」
「オーナー!」
「さっきぶり〜」
どうやら店員さんたちの元気な御挨拶は、僕が来店したことを知らせる合図代わりにもなっていたのか。
気楽に手を振ったら、少しため息をつかれた。
「奥にいらっしゃってください」
「うん」
僕に手を引かれた白い少女のことも視認しているのに、何も言わず奥に通す。
ヘンリーさん、グゥ有能。
またしても、談話室に通されて、僕は少女を横に座らせる。
「茶は如何しますか?」
「同じやつを二つで」
「かしこまりました」
「あ、これ使って」
生み出した氷を浮かせて、そのまま空のコップに入れて、ヘンリーさんに渡す。
「……もう何も考えたくない」
「思考停止は体に毒だぞ〜」
「常識を当てにしたら、逆に毒ですよ……貴方相手には」
冷たい麦茶が前に置かれる。
「美味しいよ。飲んでみて」
「は、はぃ」
か細い声だ。
ははっ。まるでギャルに話しかけられた学生の頃の僕のじゃないか〜。……ははっ。あれは怖いよね。一言目が、金ある? だからね。
っと、少しトラウマが。
僕に促され、少女はコップを傾け一口。
それで済ませようとしたみたいだけど、余程喉が乾いていたのか、はたまた美味かったからか、そのままごくごく飲んでしまう。
僕も続いて飲む。
ヒンヤリとして喉越しよき。
ヘンリーさんも故郷の飲み物を美味しそうに飲んでもらえて、ご満悦。
彼が麦茶に口をつけたタイミングで僕は言葉を発した。
「あ、契約しよう?」
「ぶぅー!!」
思いっきり噴き出し、僕の横で麦茶を堪能していた少女はビショビショに。
『大人の男の人の出した汁が、あどけない女の子の身体を濡らす』
『雛ちゃん!? また読んだの!? やったの!? 観たの!? あれはまだ早いって言ったじゃん!』
ああ……雛が、僕のせいで変な趣味に目覚めちゃった。
それはさておき、少女はあまりもの展開に、固まっている。
「し、失礼しました」
ヘンリーさんは慌てて、ハンカチを取り出し、拭おうとするが僕が手を出して制止。
「僕が何とかするよ」
「はあ……」
僕は少女の頭を人撫でしてリフレッシュを使う。
すると一瞬で、少女の体に飛び散った汁は、跡形もなく消え去り、ついでに汚れも消え去る。
「……もはや、なんでもありですね」
「…………」
呆れたようにヘンリーさんは言い、少女は自分の体をジロジロ見つめる。
「大丈夫。もう綺麗になったよ」
そう呼びかけるとビクッとして、恐る恐る首を縦に振る。
そしてワンピースの裾を握って、俯いてしまう。
「それで返事は?」
「いきなりですね……もちろん願ったり叶ったりですよ。それにしてもわざとですか?」
「うん♪」
「意地悪な人だ」
ヘンリーさんは弄りがいがあって楽しい。
まあ、今の僕は正常ではないので悪しからず。
「それで契約内容なのですが……」
文書を用意するのか立ち上がり、箪笥の引き出しから紙束とペンとインクを取り出す。
「簡潔に言うね。君にしか魔石は売らない。君はその売上の一部を私に支払う。そしてこれから言う私のお願いを聞いて、叶えるし他言無用とする」
「……随分、一方的な要求ですね?」
席に座り、紙束にペンを走らせる。
一応メモは取るようだ。
「そのお願いというのはね、この王都の何処でもいいから大きなお庭付きの御屋敷、もしくは豪邸が欲しいな」
「いきなり無茶ぶりしてきましたね。流石に今日準備するのは無理ですよ。それに代金も馬鹿になりません」
「それは今後の魔石から得た収入から引いてもらってもいい。出世払いでお願い」
「それなら……ですが、警備や使用人はどうしましょうか? あと、期日はいつまで?」
メモには、既に計算みたいな表が書かれていて、喋りながら費用とかを計算しているようだ。器用だなぁ。
「期日は……一週間でいける?」
「まあ、不動産の知人に当たりますが、なんとかなるかと。代金も私が肩代わりして、今後の魔石の売上の一部を返済に当てていくと」
「それでお願い。魔石は何日で捌けそう?」
「信頼できる人にまずお売りつもりなので、十日もあれば」
「そんなにかかるんだ」
「これでも早い方ですよ? 相手を選ばなければ今日にでも……ですがその場合は、軋轢を生み出しかねませんので」
そうだよね。商人にとって繋がりって、金以上に大事だもんね。
ならば直ぐに売れるレベルの物を用意しようか。
「なら、星一や星二の魔石ならどう?」
「それならすぐにでも……でも、現物を用意する時間が必要ですよね。持ってくるにしても」
「あ、大丈夫だよ。大きな籠持ってきてくれる?」
「なにかされるおつもりですね?」
テーブルに密かに置かれていたベルを鳴らすと、店員さんが現れて、ヘンリーさんに言われ籠を持ってきてくれた。
「用意しました」
「ありがとう」
僕は籠の上に手を掲げて、収納に収まっている、マナが暇つぶしに作りまくった星一と星二の魔石を山のように籠にぶちまける。
紫の魔石。黄緑色の魔石。黄色の魔石。水色の魔石が山積み。
時空属性だけの魔石はほぼ透明なやつで、流石にレア過ぎて出すのは不味いと思い踏みとどまった。
ヘンリーさんも少女も本日何度目か分からない驚愕に、口が閉じない。
「こんぐらいあれば足りる?」
「足りすぎます!! この数は大きな商会ですら保有しているかどうかのレベルですよ!」
「あ、そうなの? あと何回か同じ量出せるけど?」
「やめてください! 国家転覆を計っていると思われてしまいます!」
等級が低いやつだから、大丈夫だと思ったけど、ちょっと反省。
「でも、君なら捌けるよね?」
僕の言葉に、商人魂が燃え上がったのか、不敵な笑みを浮かべる。
「三日で全部売ってみせましょう」
「頼もしいね。でね、もうひとつお願いがあるんだけど」
「まだあるのですか……いいでしょう! 受けて立ちます」
「そこまで意気込まなくても……そんなに難しいことじゃないよ。これは物件が手に入ったあとになるけどね。値段、性別、種族、年齢、健康状態、全て問わずで、奴隷を買い漁って欲しい。これに関しては無理のない範囲で構わないよ」
「……悪魔の贄にでもするおつもりですか」
魔法使いがそんなこと言い出したら、そう誤解するよね〜。
「違うよ。私の大仕事に必要なのさ」
「大仕事、ですか」
「そう。とても大きなお仕事。大丈夫。その時には君に相談するし、押し付けるから」
「押し付けないでください……貴方がそう言うのですから、本当に大仕事なのでしょうね」
「大コケしたら笑ってね!」
「洒落にならないのでやめてください」
まあ、勝算はあるよ……少し。
未知数の選択だからね。
どうなるかさっぱりだ。
「そうだ! 前金としてある程度纏まったお金貰えない? この後入用だからさ」
「幾らほどでしょうか?」
「う〜ん。金貨十枚もあれば?」
「直ぐに用意しましょう」
「あ、ちょっと待って! 銀貨以下にバラして貰えない?」
「かなりの数になりますよ?」
金貨十枚は、銀貨千枚換算だからね。
「問題ないよ。彼女が持つから」
「っ!?」
「あはは。冗談だよ」
一割ぐらいは持ってもらおうかな?
そして、銀貨百枚が入った皮袋が十袋用意されて、僕は収納を使って八袋を収めて、少女に一袋。僕も一袋手に持つ。
収納をヘンリーさんに見せたけど、長い付き合いになるし、そもそも魔石を大量に出している時点でっていう話。
まあ、驚いていたけど。詳細は聞いてこなかった。流石、グゥ有能。
「どころでそろそろ名前を教えて欲しいのですが……契約書にも記載しないとならないので」
「あ、忘れてた」
「警戒していると思ったらこのオチ……」
偽名が多すぎて、名乗るのを忘れてた。
うーん。怪しい魔法使いかぁ。
「ならソロモンで」
「“なら“って、偽名だとバレバレですよ。まあ、構いませんよ」
「それじゃ、またね〜」
硬貨の重みに驚く少女を連れて、商店を後にした。
流石に、あの元気な挨拶は控えてもらった。
ビックリするから。あと目立つからやめて!