7つの指輪 ~平行世界グラノガード外伝~
プロローグ
「だから、俺は勇士ではないって」
砂漠でマント姿の少年は大勢のオアシスの民、砂の森の一族にひれ伏されていた。
「しかし、そのマントは創生神の1柱、アンドリュ様のもの。貴方は第1弟子の勇士様ですよね」
「だから、このマントは龍という師匠からもらって…。もう、いいや。で、何か頼みがあるんでしょ」
一族の長老が頭を上げて、視線を右に動かす。
「巨大な剣の封印から逃げてきた巨人族の盗賊を倒して欲しいのです」
少年は溜め息を吐くと気配のする方に顔を向ける。大きな人影が3つ歩み寄って来ていた。彼は金属の玉を取り出すと、手から浮かして力を込める。それは彼の上空で30個くらいに増える。その1つを目の前にもってくると、左手をそれに向けた。
「行け」
その呟きと共に凄まじい勢いで飛んでいく。それは飛びながらさらに分裂して巨人の1人に向かった。彼は巨大な戦斧で玉に振り下ろす。しかし、その刃を砕いて全て直撃した。巨人は片足を突いて斧を落とした。
「流石、勇士様」
「だから、勇士様じゃないって。それより、あれを倒すから良く姿を消す銀の指輪を持っている人を教えて欲しい。この辺にいるはずなんだけど」
「承知しました」
彼は頷くと9つの玉を下ろしてそれに乗ると、周りに7つの玉を巡らせた。そして、巨人の方に飛んでいく。
上空の玉も一緒に移動している。その2つを下ろすと、残りの2人にも放つ。巨人はそれを避けて1人に手を貸して3人は逃げ出す。
「そうは行くかって」
上空の玉を巨人の上に移動させて一気に勢いよく降らした。巨人は砂に埋まってしまう。さらに金属の玉を増やして、さらに砂に埋まらせていく。そこで流砂が起こって巨人の盗賊は流されていった。
安心して振り返ると、オアシスの湖の中から水の化け物が現れた。
「何故、こんな場所に『影』が現れるんだ?」
少年はゆっくりと息を吐いて、金属の玉を自分の周りに沢山浮かせて構えた。
刹那、背後にとてつもない力を感じた。後ろから歩いてきたのは銀の指輪をした青年であった。
村人が近くの山にいた銀の指輪の青年を連れてきたようであった。
「勇士がここに?」
青年の言葉に少年はいつものように項垂れて溜息を吐いた。
1
彼がこの世界に来れたのは崖下で銀色の指輪を拾ったからである。見つけたのは偶然であり、それがなければ死んでいた。
彼の名前は月代龍兎といって、ごく普通の高校生である。旅行が趣味で1人色々な場所に飛び回っていた。
指輪を見つけた時もバスツアーに参加して東北を回っていた。
バスが山道のカーブで曲がり切れずにガードレールを突き破って急な崖を下り大木に激突した。
開けていた窓から投げ出された龍兎は地面を転がった。体をしたたか打った彼は痛みで息が出来なくなった。右腕を骨折して動けない。そこで、ふと傾斜のある森のある樹木の根元に丸い金属の野球ボール程の玉が転がっていた。さらに木の傍に銀の指輪が落ちている。偶然にもバスは横たわって滑ったが、龍兎には投げ出されて樹々の間に滑り込んだので楯になって物理的危害を加えることはなかった。
このままでは命の危険があると必死に念を送った。すると、金属の玉がことことと動いた。気が付いてもう1度金属の玉に念を送ると、意思の通りに動いた。痛みで集中しにくい中でゆっくりと玉を動かして指輪を押しながら自分のところに持ってきた。玉を左手に握ると少し眺めた。次に指輪を右手の人差し指にはめた。
目の前の光景が突然変わった。2つの太陽に赤い芝生の上で倒れていた。そこに凄まじい勢いで馬車が近付いてきて急停止した。
出てきた青年は彼に手を向けると龍兎の傷は徐々に治って痛みが消えていった。彼は驚愕の表情で彼を見上げた。
「魔法?」
彼は微笑んで屈んだ。
「ここは君の世界の双子のような次元でグラノガードというんだ。俺は安藤龍」
そして、馬車に乗せてもらい町に向かうことにした。
「どうして、ここに?」
「それは君の指輪だよ。それをはめることでこの世界に移行する。…今は外さない方が良い。向こうがどんな環境か分からないからね。土の中、川、地上100mか、とにかく、安全と思われる場所で指輪を取り外しをするんだ。ちなみに、その左手の玉は三種の神器で自在に動かすことや数の増減が可能だ。他に三角の目の飾りがある指輪に日本刀がある。君がそれを使えると言うことはアンドリュの子孫かもしれないな。それを使う為にはアポリオという能力で使用できる。それらを手にしたのは運命だ。直に使命が分かる」
突然、馬が足を止めた。彼らは衝撃でバランスを崩す。
「また、影か。この辺は影が多いんだ。影とは妖魔や悪魔だと思ってくれていいよ」
そこで、龍はマントを渡す。それを纏うと体か軽くなった。外に出る龍の後について出ると、複数の金属の玉、銀宝珠を浮かせて5つに増やした。
「最初にしては勘がいいな」
龍は手を化け物に向けると凄まじいエネルギー波を放つ。一瞬にして影は消滅してしまった。
「それじゃあ、選ばれし戦士様。俺が修行を付けてやるから、普通に影と戦えるなることが最初の目標な」
龍は彼を馬車に乗せて芝生の中を走っていった。
しばらくすると、巨大な壁に囲まれた町が徐々に近付いてきた。
「ここは大樹の国だ。あの大樹の下には魔神が封印されている。チェイサーエンドはそれを守る為に生み出されたんだ」
そのまま、国の中で修行を始めることになった。
中央の近くに神殿があり、その側には教会がある。そこに滞在して龍に修行を付けてもらうことになった。
2
高校に入ってしばらくした時に、甲斐礼羽は中学の修学旅行で行ったハワイで拾った銀の指輪を眺めていた。洗って磨いて眺めていた。何故か、それをはめることは出来なかった。
ロサンゼルスの空港の近くの露店で買った三角に瞳の飾りのある指輪も出して磨き出した。
それを右手の中指にはめる。すると礼羽の瞳に、銀色の指輪が異様な気配を纏っているのが見えた。
「やはり、これは…」
その指輪を意を決して左手の指に差し込んだ。
突如、彼の周りの光景が自分の部屋から砂の上にいた。椅子に座っていたので尻餅をついて回りを見回した。
そこには、人を探している少年がいた。礼羽が現れたのを見ると、すぐに駆け付けた。
「…ここに来たのは初めて?」
少年はどう見ても6歳くらいだが、その言動はやけに大人びていた。
「僕は神早見亜鈴。ここはラグノガードという僕達の世界と平行次元」
そして、右手の指輪を見て言う。
「その指輪は三種の神器の1つ、プロビデンスの指輪。眼の力を司っている」
「で?」
礼羽は多少混乱の中で、それでも指輪の力で見えて理解していた。
「玄王様に修行をしてもらう」
そう言うと彼は遠くに見える壁に囲まれた街に向かって歩き始めた。
街の門は門番がいて厳重に出入りする者をチェックしていたが、亜鈴は簡単に顔パスで仰々しく門番は敬礼をしていた。
街の中で亜鈴は教会にいた龍に会った。
お互い指輪の持ち主を紹介し合って事情を簡単に話す。
「それじゃあ、2人の神器使いを玄王様に修行つけてもらうか」
龍は指を西に向けた。
「ちょうど、草原の国の風下の街の塔にいるんだ」
西に向かうしかないのだ。
彼らだけで行かせるのは危険じゃないか亜鈴は疑問に思うが、これからの戦いを考えると任せることにした。
礼羽は金属の玉の神器使いの龍兎と共に2人で西に向かって乗り合い場所に乗った。
話をしていると、彼もここに来たばかりのようだった。
馬車は何もない場所で止まった。ここで泊まるようであった。お金は龍からもらっていたから、馬車で配られる乾パンと革袋の中の水を買って横になった。
同じ馬車に乗っていた男女は立ち上がると2人は周囲を見回す。
「いる」
男性がそう呟いた。礼羽は神器の指輪に力を込めると、目の前の2人から青いオーラが発せられている。
「吽!」
そのオーラが弾になって放たれた。それは馬車の側の樹々の中に飛んで行き、何かを捉えた。しかし、それはダメージを受けずにそのまま姿を消した。
チェーサーエンドに不思議な能力を持つ者はいない。すると、魔道族か。その気配はしないし、外見的特徴も違う気がする。
彼らはすぐに馬車から降りて姿を消した。
「今のは何だったんだ?」
龍兎が訊いてきたので、礼羽は首を横に振った。気にしないで眠ることにした。
3
如月真琴は中高と女子高に通っているので男性は苦手だった。しかし、剣道、柔道、合気道を小さい頃から習っていたので、かなりの腕になっていた。
歴女でもあった関係で柔術、剣術、居合も独学で覚えていた。
その彼女が中学校の卒業旅行で友人たちとフィレンツェに行った際に手に入れた銀の指輪を引き出しの奥にずっと思い出に取っておいていた。
すると、マモンの使い魔である小さな蝙蝠が現れて彼女に鍵を使うようにせかした。その存在に怯えながらも指輪をすると別の次元に移行した。
そこは小さな丘の上であった。振り返るとマントを羽織っている長身痩躯の男性が立っていた。
彼女は恐れたが、持ち前の勇気と腕で構えを取った。
「そう警戒することはない。私は穢れを司るゼノという」
そして、赤い装飾のある鞘に納まった日本刀を渡した。
「これは三種の神器の1つで、あらゆる精神的能力のキャンセルの力がある」
「私にどうしろっていうの?」
ゼノは軽く微笑んだ。
「まあ、仲間と合流して大いなる敵を倒してくれ。そうすれば、呪われた島が解放される」
そう言い残してゼノは帽子を取って礼をした途端、風と共に姿を消した。
彼女はため息をついて刀を杖にして項垂れた。
しばらく、当てもなく歩いていると急に流砂が発生した。すぐにもがいて這い出そうとするが、そのまま吸い込まれて行った。
気付くと真琴は洞窟の中にいた。上からポロポロ砂が零れてくる。
「もう、嫌だ…」
洞窟の中を見回すが光がないので視界は保てなかった。ふと、暗がりの中に気配を感じた。
急に光が迫って来た。咄嗟に剣を抜いた真琴はその光を斬った。その光は消え去った。
「キャンセルの…力?」
光が来た方に駆けて行くと、巨大なミミズの化け物がいた。
目は退化しているが、口を向けて再び光を放った。と次の瞬間にその光は消えてワームは縦に真っ二つになって倒れた。
その奥にはある人影が立っていた。暗くて見えないが、その人物が近付いてきて懐中電灯を向けた。
「あ、君は下界の人ですね」
彼は同じ下界の日本人のようであった。銀色の指輪もしている。
「僕の名前は我神棗。SNOWCODEの血の力を使えます」
そう言うと、手を洞窟の奥に向けた。次元がゆがみ始める。
「ちなみに自分の次元を作り出すことが出来る」
そして、彼女を誘った。その先には暗黒空間が広がっていた。
「修行をして自由に扱えるようになったが、光を作り出すことは出来なかったんです。でも、空間把握能力で見えなくても大丈夫」
10分程歩くと、棗は次元の出口を作った。すると、北西の街の中にある廃墟に出た。
「ちょっと近道をしたんです」
廃墟から出ると北にそびえる低い山を指さした。
「あそこに玄王…、この世界で言うと神様の1種類の一番偉い存在がいるので行きましょう」
真琴の手を握ると、棗は地面に左手を向けた。凄まじい波動が放たれて空高く跳び上がった。
「この次元では何故か僕達の力が倍増されるんです。だから、下界ではここまでの力は出せません」
怖がって声が出ない真琴に普通にそう話して北の山にある神殿に着地した。
「玄王様、棗です。神器を持つ選ばれし存在を連れて来ました」
すると、神殿の入り口に鎧を纏った存在が姿を見せた。
「ご苦労だったな。直に他の者もここに来る。棗は奴らの様子を見てきてくれ」
彼は一礼をして、すぐに先ほどの街に戻って行った。
「さて、早速修行をしようか。剣の神器を持っているから、剣技を教えよう」
訳が分からなず混乱していたが、真琴は居合、剣道をしていることを告げる。
そこで玄王は人形を持ってきて、それを操った。
側にあった竹刀を掴んで真琴は構えると、同じく竹刀を持つ人形と剣道をした。しかし、簡単に竹刀を弾かれてしまった。さらに迫って来る人形に素手で立ち向かった。
「剣道じゃなく剣術…」
玄王は真琴のその呟きに微笑んだ。
真琴は蹴りで人形の竹刀を弾いて、体術で投げ倒して抑え込もうとした。ところが人形は竹刀をわざと弾かれたようで、それを囮にして油断を誘って自分のペースに持ち込み返し技で真琴を逆に抑え込んだ。
苦痛に歪む真琴に玄王は人形を止めて言った。
「剣術は体術が基本、長けていて当然。しかし、精神も同時に鍛えなければ折角の技も鍛えた体も意味がない」
人形を投げ飛ばして彼女は独り言を零した。
「心技体…。基本さえ私は出来ていなかったのね」
「今日は休みといい。お前の疑問を全て話してやろう」
玄王は真琴を神殿の奥に誘った。
4
礼羽と龍兎は馬車で3日かけてやっと街から次の街に移ることが出来た。
「はあ、意外に遠かったな」
龍兎はそう言って、宿に飛び込んだ。
「玄王様はまだこの北の街の北の山か」
礼羽も疲れ果ててベッドに飛び込んだ。
その窓から布で顔を隠した存在が短剣を構えて飛び込んできた。すぐに礼羽は邪視を向けると、謎の人物は壁に弾き飛んだ。龍兎も金属の玉を複数飛ばして手足を壁に固定する。
「吽」
その人物は言葉を発すると金属の玉が全て落とされた。邪視の力も解除して窓台に飛び乗った。
「まずいな、神器の力が効かない」
礼羽が距離を取って構える。
「効かないんじゃなくて、解除されたんだよ」
玉を掌に付けて相手に向けると、龍兎は思い切り放った。凄まじい勢いでそれは謎の人物に向かうが短剣で受けた。
そして、そのまま窓の外に消えて行った。すぐに彼は窓に駆け寄るが、真っ暗な外の街に人影は既になかった。
「あれは何だったんだろう?」
礼羽は落ち着きを取り戻してベッドに座りながら呟く。
「敵だ。いずれ、また戦うことになるだろうな」
龍兎は隣のベッドに飛び込んでそう言った。
ふと、礼羽は指輪に力を入れて目を閉じた。そして、備え付けのクローゼットの上を椅子の上に乗って除く。取り出したのは奇妙なお札であった。
「ほお、便利な力だな」
龍兎は起き上がるとお札を睨んだ。
「阿字が書かれた札に『吽』という真言。この世界の奴らじゃないな。俺達のいた下界の術者か。陰陽師、修験者、呪言者、密教者。又は道士か…。いずれにしても、実際に能力を使える人はいないだろうけどな」
そこで関心して礼羽は意外そうに龍兎を一瞥した。
「案外、物知りなんですね」
札を破りながら礼羽は窓外の風に乗せた。
「別に、そんなんじゃないさ」
彼は念の為に金属の玉のトラップを部屋の周りに浮かせて寝ることにした。
次の日に乗り合い馬車で北の街に進むとその街の入り口に女性が立っていた。
「やっと来ましたね、玄王様がお待ちです」
そう、その女性は真琴であった。既に知識、心技体を鍛えられていた。
彼らを街の側に連れてくる。そこで羽根のある馬が現れた。
「3人も乗せられないぞ」
その不思議な動物が言葉を発した。
「大丈夫、この2人を連れて行って」
「真琴はどうするんだ?」
「硬化の儀を行ってくるわ」
「…いいのか、本当に。あんなに嫌がっていたのに」
「今のままじゃ、勝てないもの。仕方ないわ」
彼女はそう言って、髪を掻き上げて街に向かって歩いて行った。
礼羽はその馬に恐る恐る声を掛けた。
「あの人はどうしたの?かなり、神妙な顔をしていたけど」
すると、躊躇してから静かに答えた。
「玄王様が男の体でないと剣術を十分に発揮することは出来ないと、性別を変える儀式を行うんだってさ」
龍兎と礼羽は顔を見合わせて街の方に視線を向けた。
「じゃあ、連れて行くぞ」
2人は玄王の元に向かった。
5
時期は再び最初に戻る。
修行により強くなった龍兎は玄王の命により銀の指輪を持つ選ばれし者を集める為、色々な場所に行くことになった。
西の砂漠を彷徨って砂漠のオアシスの村で山から現れた指輪の持ち主を見る。
異様な雰囲気の少年であった。
彼は微笑みながら言葉を紡いだ。
「指輪は3つは君達、三種の神器の持ち主で3つ。我神棗、神早見亜鈴が持っている。そして、僕が1つ持っている」
「残りの1つを持っている人を知っているのか?」
龍兎の質問に彼は鼻で笑った。
「悪魔が持っている。近い内に逢えるから待っていればいい。向こうから来てくれるさ」
そう言って彼は手を上げる。
すると、周りに布を顔に巻いた戦士達が現れて龍兎を囲んだ。
「…このまま、僕に会わなければの運命だけどね」
龍兎も微笑んだ。
「いや、会っても運命は変わらないさ」
龍兎は金属の玉を足元の砂から、かなり多く上に放った。布の戦士達は強烈な衝撃に構える隙なく打たれて倒れた。
さらに真琴と礼羽が姿を見せた。
「指輪さえ集めたら、持ち主はどうでもいいんだって、玄王様がね」
真琴は少年になっていて剣を抜いて構えた。亜鈴は後方で支援の態勢に入る。
指輪の少年は後ろに飛んで距離を取って行った。
「僕の名はフルフル。呪術法力の使い手だ」
彼は凄まじい気を放って地に五芒星の炎を発して浮き上がった。龍兎は多くの玉を浮かび上がらせて、全てを放った。
彼は1つ1つ弾いていく。しかし、その玉の裏に隠れていた真琴が数個の玉に乗りながら迫っていた。
剣を振り下ろすが既に見切られていた。
「そんな隠れ攻撃等、効かん」
彼はキャンセルの能力の効かない物理攻撃で七星剣により受け流された。しかも、陰陽五行の法により弾かれてしまった。
「上だ」
邪視でフルフルの動きを弱めながら礼羽が叫んだ。玉で真琴を受け止めて真上に運んだ。
そして、上から剣を振るった。
が、それを簡単に弾かれてしまった。力が及んでいない上空にも気が張られていた。
それでも礼羽は邪視を放った。
そう、龍兎の多数攻撃、その後の真琴の攻撃、そして上空の囮に乗った攻撃は全てこの攻撃の為であった。
真下の火の五芒星はその下から出てくる龍兎の玉に消されて、その玉に反射された邪視は下から放った。
フルフルは流石に対応出来ず、落ちて行った。そして、地面に動かなくなった。すぐに礼羽は銀の指輪を取ってさらに力を込める。フルフルの体は徐々に石になっていった。
エピローグ
玄王の元から言われて真琴を連れて龍兎は乗り合い馬車に乗った。南に下がっていき、ある街の乗り場に止まる。
「武神、聖天八神将の1柱の月下の炎騎に逢って、最後の指輪を持つ悪魔を倒すって言われてもなあ」
「まあ、亜鈴に会えば分かるって言うから、会いに行くしかない」
真琴がそう言って頬杖をついて遠くを眺めた。
しばらくすると、異様な少年が馬車に乗って来た。そして、龍兎に目をやると目の色を変えて近付いてきたのだ。
了