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9.サイド:レイラ・リリアーヌ⑤ ただいま

「しゃあああ!勝ったぜ!」

 トウライは叫んでいる。というか、光っている。全身がバチバチと発光していた。

 

 【ヴォルカニック・カルテット】に勝った喜びを派手に全身で表現しているのだ。

 

 カーラルは斧を見ながら、「折れていないのじゃ。これで散財せずに済む」などと呟いていた。


 リリーは大地と世界に祈りを捧げていた。 この信仰の深さが世界とすぐに同調できた理由なのかもしれない。


 そんな三人をみながら、レイラは笑った。自らの弱さと向き合って魔力制御を使いこなし、自らの限界を超えたこの三人とならきっとうまくやっていけると。

 

 後は、ユーカが戻ってくるのを待つだけだ。

(いつ戻ってくるのかしら ユーカ。)


 そんなことを考えていると、トウライがレイラに近づき、口を開いた。


「ありがとう、アンタから教わった魔力制御のおかげで目立てたぜ」


(感謝するときはちゃんと感謝する人なのですわね。)


だが、トウライはレイラに向かって指を差し、言葉を続けた。

「ただし、アンタのほうが目立ってたのは癪だけどな!」


(訂正、この人やっぱ自分が目立つことしか頭にない……)


「トウライ! さすがに自重せい! ワシらだけだと負けとったじゃろうが」


「そ、そうですよ。自分から、残念なイケメンをアピールしてどうするんですか」


「いやだって、派手なのはオレのポジションだろ! というか、カーラルはともかく、リリーはオレだけに辛辣だよな」

 


「トウライの言うことを真に受けなくていいぞ、レイラ、じゃったか? 自己紹介がまだじゃったな ワシはカーラル・グロウ、よろしく頼む」


 

「ト、トウライさんは、いつもこんなのですからね わ、私はリリー・トランスです よろしくお願いします」



「オマエラなぁ、俺をなんだと……

トウライ・シュルツ、絶対派手さではアンタにも負けねえからな!」



「トウライ!」


「と、トウライさん!」


カーラルとリリーがトウライをたしなめる。

「あー、わかったって……まあ、よろしくな」


「レイラ・リリアーヌです。変な人には慣れてますから 大丈夫ですわ」

「オマエもか!」


(主に、マルナとかマルナとか)


*   *   *


 そうして、自己紹介が終わり、【ヴォルカニック・カルテット】の方を四人は並んでみる。相手は全員すでに起き上がっていた。 

彼らも冒険者、敵の攻撃から自らを守る術は身につけていたようだ。


 だが、何か様子がおかしい。



「おい、どうしたんだよ!」


 リーダーの男の身体を仲間の一人が揺さぶっている。


 レイラの胸が、ざわつく。


「どうしたのじゃ大丈夫か、リリー」


 リリーが急に苦しみ出した。

「な、に、あの人…… 黒と怒りのイメージが入ってくる……ダメ!」

 

 レイラは禍々しい気配を感じ、直感的に叫んだ。

「リリーさん、今すぐ周りとの同調を解いて!」

 

 リリーは魔力制御がうまく、世界とすぐに同調できるようになった。


 だが、魔力制御がうまいのとそれに慣れているかは別の話だ。

 同調の感覚に慣れていないリリーは悪意への判別が遅れたのだ。


「はぁはぁ……」


 リリーは座り込む。


「アアアアアアアハハハハハ、オレハ! ツヨインダ! ツヨイ! ツヨイ! ツヨイ! 」



 男の狂声ともに禍々しい突風が吹き荒れる。


「ぐあああああ」



 周りにいる仲間ごと吹き飛ばされる。


「マトモじゃねぇな ありゃ」


 トウライが呟く。 レイラ達も吹き荒れる風に必死に耐えていた。

 風が周りの建物すら削り取っていく。マルナや野次馬の冒険者達も咄嗟のことで自らを守ることで精一杯のようだ。

まるで風の形をした悪魔のようだとレイラは思った。


「早く止めないと周りへの被害が増えますわね……」

「よっしゃいっちょ派手に目立つか!」


トウライは男に向かって走り出そうとする。 


だが、


「ごへぇ……」


その場で足がもつれて盛大にこけた。



「なんだこれ、身体に力がはいらねぇ」



「初めての魔力制御はさすがに身体への負担が大きすぎましたか……」



「それ、戦えねぇってことか?!」


「ええ……」



カーラルもリリーも身体にくる負荷を感じているようだ。



先程までは、模擬戦に勝てたことによる高揚感で疲れを感じていなかったのだろう。



しかもこの風だ。疲弊した身体では、身を守るので精一杯だろう。



(ワタクシぐらいしかまともに動けそうにないですわね。 とはいえ、ワタクシも相手の魔法を打ち消したりで、思ったより疲弊してしまっている)



「ハハハハハハ!モット、オレのツヨサヲシメシテ 、イフ!サセテヤル! オレハヨワクナンカナイ! 」



風の勢いがさらに強くなる。

ここで、無理を通さなければ、被害がもっと出てしまう……! レイラはそう感じていた。


「しかたがありませんわね。 アレを使うしか。 マギア……」






『ちょっと待ったああああああああ』


と、空からレイラに向かって一筋の光が降ってきた。



あのいつもの頭の中の声とともに。



『ユーカ、貴女、今までどこいってたんですの!』



『ごめん、ちょっと怒られてて、でも、グッドタイミング! 予定を早めてよかったよ!』



『まるで意味がわかりませんわ』






『うんそうだね。 それじゃあ、まずは……ただいま!』


 





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