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終幕

なんとっ!? 今までの物語は全て映画の中の話だったのです!

 ……本日は、「Marry Kro-魔Sugu in Summer」をご覧いただき、誠にありがとうございました。

 これにて、本日のプログラムは全て終了となります。

 皆さま、お忘れ物の無いよう、お気を付けてお帰り下さい。





「中々、迫力のある映像でしたの―――……」


 先程見た映画に感化されたのか、マリーがやや興奮気味に感想を述べています。確かに、最新の特殊技術を駆使した映像は、まるで現実に在った事を記録して来たかのようにリアルでした。


「う―――ん……。あたしはもう少しFlashy(派手)でも良かったと思うけどね―――……」


 逆に、クロー魔には物足りなかったようです。リアルすぎる映像よりも、エンターテイメントを重視した物の方が良かったのかもしれません。


「スグはどうだった?」


 そして、最後尾を歩いていた直仁様に意見を求めます。


「……あ―――……? どうでも良いよ……。実際、俺ってあんなに格好良くないしな……」


 直仁様には、あの映画自体が不満だった様です。







 直仁様達を題材として映画のオファーがあったのは、もう1年近く前になるのでしょうか? 国家エージェントが、“依頼”として話を持ち掛けてきたのです。何でも、「異能力者」に対しての偏見を和らげるため……だとかなんとか。

 まぁ……あれじゃあ、益々偏見を持たれそうな気もしますが。

 そしてボック達はスペシャルアドバイザーとして、実際の撮影現場まで行ったりもしました。クリスマスの夜を南の島で過ごす事は出来ませんが、それでも結構頻繁にあの島へ行き来したのでした。……もっとも、縁者たちには全く会えませんでしたけどね。


「仕方ないじゃない、直仁。あの人達は世界でも有名な役者なんだから。それに直仁の役をした人……あれって女の人だよ?」


「ええ―――っ!?」


 流石にこの事実には、直仁様だけじゃなくボックもビックリしました! 確かに直仁様の役をした方は、男性の割には綺麗な面立ちで、直仁様の雰囲気を上手く出しているとは思ったのですが……。


「アッハハハハッ! スグー、今頃気付いたの? Actress(女優)が演じないと、流石にあの水着姿(・・・・・)にはなれないでしょう!?」


 クロー魔のこの意見には、直仁様も言い返す事が出来ませんでした。考えてみればそれは当然の話で、もしも劇中の様な能力が発動するとしても、直仁様は決して女性物の水着なんて着ないでしょう。


「でも、中々面白い能力だったわよね? 『ちゅいん』だったかしら? あんな攻撃が出来たら凄いわよね―――」


 クロー魔は手で銃の形を作ると、空へ向けて先程見た通りに演じてみせました。……しかし劇中の様に、彼女の指から光線が出ると言う事はありません。クロー魔の発音は映画の中で使われた物と程遠い、どうにも拙い物だったのです。


「そうですの―――……でも現実に在り得そうだから、あまり試し撃ちはしないでね?」


 やや顔を引き()らせて、マリーがやんわりとクロー魔を止めました。こんな街中で、もし先ほどの様な異能力が発動したなら、それこそ大惨事が引き起こされてしまいます!


「え―――!? 大丈夫よ、マリー。あんな事、当分は出来そうにないし、出来なくっても不便はないし……。何より出来たとしても、あんな光線は指先から出たりしないわよ?」


「そ……そうなのですか!?」


 クロー魔の言葉に、マリーは驚きの声を上げました。それは出来ない事に驚いたのではなく……手から光線が出ないと言う事に驚いている様でした。


Naturally(当たり前)じゃない。あたしの能力はあくまでも“空気塊”を飛ばす能力よ? 実弾並みの威力を持たせる事が出来るけど、あんなLaserBeam(レーザー光線)なんか出すなんて無理よ。あんな事、ロボットにしか出来ないでしょう?」


 確かに、指先からビームを発するなんて、人間の所業ではありませんね。


「俺の方も多分、あんな能力は持てないと思うぞ? 離れた相手を握り潰すなんて、もはや悪魔としか言い様が無いじゃないか」


「なんと―――っ!」


 マリーはさっきから驚きっぱなしです。でも、冷静に考えれば確かにそうですね。

 水着で得た能力については可能性もあるでしょうが、着ぐるみの方はちょっとSFが過ぎますね。


「やっぱり……映画は映画なのですの―――……」


 ホッとした反面、マリーはどこか残念そうです。その凶悪性は兎も角として、新しい能力の発見と言う事には好奇心を掻き立てられるのは分かる話です。


「そうそう。あれはあくまでもFiction(想像)よ。だからあたし達も、映画にする事をOKしたし協力もしたんじゃない」


 国家の仕事も請け負う直仁様達の能力を、如何に別人が演じているとは言え大っぴらに公表してしまっては、流石に今後の仕事にも差し支えます。……もっとも、直仁様やクロー魔と言った世界的に有名な「異能者達」は、その能力も少なからず漏れ広がっているのが事実なんですけどね。


「そうだな。現実に俺達は、映画の中の様な南国じゃ無くて、冬真っ只中の極東に居るんだからな」


 直仁様がそう締め括ると同時に、一際寒い風が吹きつけてきました。


Oh(ウワッ)! Cold(寒いっ)! でも、寒い方がクリスマスらしいわよね?」


 鼻の頭を真っ赤にして、クロー魔がニッと笑ってそう言いました。その笑顔に釣られたのか、マリーも、そして直仁様にも笑みが零れます。


「そうですの―! やっぱりクリスマスは寒い方が雰囲気がでますぞ―――!」


 そういってマリーは、直仁様の右腕にしがみ付きます!


「ああっ!? マリー、ズルいっ!」


 負けじとクロー魔が、直仁様の左腕にしがみ付きました! 一気に両手に華状態となった直仁様ですが……。


「おい……動きづらいだろ……ったく……」


 反応は薄いようです。直仁様は、まだまだこの手の感情には疎いようです……嘆かわしい。

 ですが二人の女性は、そんな事を気にした様子もなく、ニコニコとした笑顔で幸せそうです。


「それじゃあ、予約していたディナーにでも行くか」


「そうね」


「うんっ!」


 直仁様の提案に、二人は同時にそう答えました。


「あっ! クリスマスツリーよっ!」


 その時、3人の前方には、街中に設置された巨大ツリーが目に入りました! 赤、青、緑、白……見事な電飾が美しく彩った、素晴らしいツリーです。


「これを見ると、Xmas……って感じがするよね」


「そうですの―――……」


「ああ……」


 3人は暫し立ち止まって、その美しい樹を眺めていました。


 そして、3人の影は一つになったまま、その場を後にするのでした。


 Happy Merry Christmas.


 了


最後まで御読みいただいてありがとうございました! またいつか続編なり外伝を書く機会がありましたら、その時にお会いしましょう。

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