表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/9

洞窟脱出……からの出戻り


 前方には熊。後方には蜂。

 巨大な熊にも巨大な蜂にも俺は正攻法で勝てる気がしない。

 

 唯一の救いは後方の蜂エリアに熊が進撃していること。

 明確な敵である熊がいる以上、蜂はそちらにかかりきりで俺に手を出す余裕は無いだろう。


 だが、問題なのは熊の方。

 鈍い銅色をしていて、体長が三メートルある化け物だ。

 広い空間の中に二十ほどがまばらに存在している。

 ……まさかと思うがこの洞窟って熊が冬眠に使ってる洞窟じゃないだろうな?


 とりあえず熊の大半は蹲ってじっとしている。

 寝ているのだろうか?

 刺激しなければ大丈夫か?


 俺は抜き足差し足で熊エリアの突破をこころみる。


 ――グラアアアアアアアアアアアアアアアアッ!


 ……が、思った以上に熊共は敏感だった。

 俺の僅かな足音で熊どもは起き出し、のっそりと立ちあがった。

 さあて、どうしよう?

 自力じゃ無理だ。

 こんな時にこそ同行者の手を借りるべきだろう。

 ただでさえ、無言で気まずいんだ。少しくらい役に立て。


 俺は頭上に浮かんでいる結晶にダメ元で思念を送る。

 

 『どうにか凍らせられないか?』


 『キケン、キケン、コワイ』


 さいですか。

 

 ……それでも俺が運が良かったとすれば背後からこのタイミングで蜂の大群が熊エリアに攻めてきたことだろうか。

 蜂共は捨て鉢に熊に突撃していき、熊は俺に目もくれず蜂を相手取り始めた。


 「……よし、逃げる!」


 逃げてばっかりだが仕方がない。勝てる敵がいないのが悪い。

 そもそも、この洞窟にいる魔物の強さって狼人の大人の男でも勝てるかわからないレベルだぞ。 少なくともあの熊と蜂は食卓にのぼらなかった。

 俺は全力で最短ルートを駆け抜ける。


 ……無我夢中で駆けて駆けて駆け抜ける。

 

 気づけば風が流れはじめていた。

 恐らく出口は近い。洞窟の様相も様変わりしてくる。

 所々草が生え始めた。それに伴い、出現する魔物にも変化が現れた。

 

 俺とばったり遭遇したのがアイスゴブリン。

 森の中でも見かける魔物だ。

 恐らく森に出て狩りを行いつつ、この洞窟を巣として外敵や寒さから身を守っているとかそういった具合だろう。

 

 また仲間を呼ばれては敵わないので、俺は背後から不意打ちでゴルフクラブを振るい一撃で仕留めた。アイスゴブリンはぎゃっと短く鳴いて絶命する。


 更に洞窟を進んでいくとようやく光が見えた。


 「……やった。今度こそ出口だ!」


 俺は光に吸い寄せられるようにぐんぐんと加速する。


 ――そして、その先で見たものは……やぁこんにちはと、ばかりにすぐ外で待ち受けているアイスオーガの姿だった。

 

 同一個体かはわからない。ただ、俺が取った行動は洞窟の中へと踵を返すように逃げ込むことだけだった。

 アイスオーガは俺の後を追ってきた。ずんずん迫ってきて太く逞しい腕を洞窟の中へと伸ばしてくる。だが、洞窟の入り口はアイスオーガを入場制限するくらいには狭かった。

 俺は間一髪でアイスオーガの魔の手から逃れることが出来た。

 そして、有り体に言ってしまえば巨体が洞窟の入り口にすっぽりと挟まった。

 

 出口を塞がれた!

 かといって勝ち目も無い。俺の身長の倍以上の体積がある片腕は洞窟の中だ。

 捕まれたら一瞬でミンチにされる。


 少々外は名残惜しいが、これだけ広い洞窟だ。まだ他に出口があるかもしれない。

 

 俺は諦めて再び洞窟の探索に戻ることにした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ