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ゴブリンに助けられて  作者: くろきち
第三章
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第56話 狼の罠

短いっす

 

「うわぁーずいぶんと進みましたね!」


「そうだろう!・・まぁゴブリンに手伝ってもらったおかげだけどな」


 ショウが感嘆して声を出すと、ノイドが鼻高々に応答する。

しかしすぐに頭をかいて恥ずかしそうにほほを赤らめるが、それでも誇らしげである。


 現在、ショウとガードがいるのはニンデ村。

レイクビューから迷わず行って約二十分の距離にあるマッシャルディーナ王国下の村である。

しかし実際のところ、辺境に位置するこの村は、王国下といっても半ば独立しているようなものであり、税の徴収は年に一度でよく、兵士や領主もめったに訪れない場所であった。


 『独立』といえば自由で楽だというイメージがあるが、それはこの村においては全く違った。

辺境に位置するため観光的な収入は得られず、近くに別の村もないので完全な自給自足制。

税の徴収が年に一度という事の裏には国との交流が少なく、またその森に囲まれているという立地から、魔獣の被害が多いいという理由がある。近くに兵士がいない。魔獣と戦うのは自分たちしかいないというわけである。


 おかげで魔獣除けの匂いを放つ調合薬や、村人たちも―ほかの村に比べてだが―強くたくましく、弱い魔獣であればひるませて逃げる程度はできるようにはなっていた。


 が、だからと言って、魔獣の脅威が完全になくなったというわけではない。

事実、数か月前、ニンデ村は魔獣の襲撃にあっていた。

最悪全滅していたかもしれないその天災。しかし運命は村を生かした。


 ゴブリンである。


 魔獣が襲撃してきた時、その時期はちょうどノイドとナダがレイクビューに助けられ、ショウは彼ら以外にゴブリンを知ってもらおうと、ノイドはほかの村人にもゴブリンを理解してもらおうと奮闘していた時期であった。


 絶望する村人たち


 村に侵入する魔獣


 ―――そしてそれらをレイクビューのゴブリンたちは撃退した!


 この事実のおかげでニンデ村の人々はゴブリンを受け入れ始め、レイクビューとニンデ村は本格的な交流が始まったのだ。

そして、その交流の証ともいうべき、両者の共同作業の結晶が、今現在、ショウ、ガード、ノイドの三人が見上げる、ニンデ村の門である。


 魔獣の襲撃を容易にさせないために、ノイドが設計し、ゴブリンたちが組み立てたそれは、さながら砦のように、分厚く、外敵を寄せ付けない壁として存在していた。

木によってできているそれはがっちりと固く閉ざされていて、その上には、村人たちが安全圏から攻撃できるように射手用の、簡易な防護壁も設置していた。


「いやーすごいですね。僕でも簡単には超えられない」


「はっはっは!オークにそう言ってもらえれば安心だな!」


 ガードのいった言葉に、ノイドは豪快に笑って喜ぶ。

そう、その門はいくら巨躯を誇るガードといえど簡単に登れないほどに大きくなっていたのだ。

さすがにそれだけの規模を壁全体に求めるのは無理だったようで、周囲の森を隔てる壁はそこまで高くはない。

しかしだからと言って、当然魔獣の侵入を許すものではなく、しっかりとその役割を担っていた。


「よし、まぁとりあえず入ってくれ!ガードはもちろんだが、ショウも最近は来ていなかっただろう?俺にも紹介したい奴らがいるんだ」


 すっかり上機嫌になったノイドが先導して門まで歩く。

ニンデ村の畑は村外にあり、今はちょうど収穫時のようで、ゴブリン程度の身長なら覆い隠せそうなほど草のような作物は大きくなっていた。

その畑の中で収穫の作業を行っている村人たちに手を挙げて挨拶しながら、ショウとガードはノイドに続く。

今は昼時で魔獣の活動は活発ではないため一応は安全である。しかしゆくゆくは畑の周りにも柵を設けたいとノイドは話していた。


「あぁノイド、おかえ――――」

「おお、ナダっておい!・・あちゃーやっぱ驚くか」

「すいません、僕が大きいばっかりに」


 村に入ってきたガードを見て驚きのあまり固まるナダ。

案の上というわけでノイド一行に驚きはない。謝るガードに「いつもの事だ」とノイドは苦笑した。


「お、親父・・」


「・お?おお、こっちこい!紹介するぞ」

 

 そんな光景を見て驚きの声を上げた青年に、ノイドが手招きをして呼び寄せる。


「紹介する、こっちはレイクビュ―のショウ君だ。ゴブリンたちの長で、いろいろ世話になってる。

 んで!こっちは俺のせがれのオイド。ほれっ!あいさつしろぃ」


「お、オイド・イーエルです・・どうも」

「どうも、初めまして。レイクビュ―のショウです」


 ノイドが勧めるまま二人は握手を交わす。


「突然すまんな。こいつを含め最近村に若者たちが帰って来たんで紹介しておきたかった」


「ああ、そういえば!若者たちが徴兵されたとかなんとか・・・帰って来たんですね!よかった」


 ニンデ村と交流が始まったあたりで聞かされた村の現状に、「普段顔を見せない領主が急に徴兵した」ということがあったのをショウは思い出した。

どうやらそれはニンデ村だけでなく、その領主が収める他の村々の若者たちも集められたのだとか。仕事が滞るとノイドはよく怒っていた。


「どちらまで行かれていたんですか?」

「えっ!・・あー霧の大地まで・・魔物狩りに・・」


 巨漢のガードに尋ねられて驚きながらもオイドは答えた。


「びくびくすんな!しゃんとしろぃ!・・ではショウ、他にも紹介したい奴らがいるんだが・・いいか?」


「はい、俺も会っておきたいです」


 ショウの同意を得て、ノイドとショウは村の奥へと進み、ガードもそれに続いた。

残されたオイドと、ようやく衝撃から立ち直ったナダは、顔を見合わせて、苦笑を浮かべた。




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


(うむむぅ・・・)


「では、こちらにおかけください」


 すたれた一軒家。

明らかに何年も人が住んでいないと分かる家内の荒れ具合。

周りには人の影がなく、部屋唯一の家具は木でできたテーブルとイス二つ。

奥にある椅子に座った『レールイ』と名乗った男に勧められるまま、オードン伯爵はおそるおそる手前の椅子に腰を掛けた。


 オードンの心中は全く穏やかでなかった。

自身の財政難、経営難、その他色んな問題を抱えるあまり、「いい話」、そんな安っぽく嘘くさい言葉につられて、ついついついてきてしまったのだ。

暗い路地裏を散々歩かされて、たどり着いたこの家。どこからどう見ても怪しすぎる。

もしかしたら身代金目的の誘拐なのかもしれない。そんな思いが芽生え、今心中ですくすくと育っていた。


「・・さて、今回は伯に耳よりのお話があるのですが・・・・・その前に我々の身分を明かしておきます」


 レールイの言葉に、ひっそりと後ろにたたずんでいた人物がわずかに動く。

ローブですっぽりと体が覆われているため男か女かわからないが、でもその様子から、レールイを非難しているような印象を受ける。

そんなローブ人を片手をあげることで抑えると、ふっといきを吐いてレールイは懐から何かを取り出した。


「こっ・・これはっっ!!!」

「えぇ、我々は――――」


 レールイの話も聞かず、オードンはすぐさま立ち上がると、一目散に背後の出口へと走り出す。


(やはり!やはり罠かっ!!くそっ!くそっ!くそっ!!)


 脂肪でたるんだ肉体を必死に動かして、出口へと走る。

油断していた。馬鹿だった。脳内で自分を罵倒しながら反省と後悔を繰り返す。

もっと疑うべきだった。オードンの頭上には悪い未来しか降ってこない。


「ふーっ、落ち着いてください。危害は加えませんよ」

「あ、がっ・・」


 出口まであと少しというところで、レールイが眼前に立ちふさがった。

「背後にいたはずなのに」なんて考えは思い浮かばず、オードンはただただ神に自身の平和を願った。


 レールイが懐から取り出したのは布。

赤色の生地に金色の刺繍が施された高級品。

描かれていたのは満月に向かって吠える、剣を咥えた猛き狼。


 ティステル大陸が三大国。長きにわたってマッシャルディーナ王国と覇権を争う大国。ガルディアス帝国の紋章であった。


 




 

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