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ゴブリンに助けられて  作者: くろきち
第二章
28/110

第27話 群れの生活

新章スタート!

※主人公目線があります

「ハァッ!」

「踏込が浅い!もっと深く!」


 様々な生物が棲むガヴァの大森林。

人の手の入っていないこの森の木は、思うがまま―文字通り自然にのびのびと成長している。

そんな森の中で、おおよそ自然の中とは思えない金属音が響く。

キン、カンと一定のリズムで鳴るその音は剣同士がぶつかる音だ。

 剣を振るうのは二人の男。

丁度今、片方の気合いとともに繰り出された一撃を、もう片方が怒鳴りながら受けたところだ。


「くそっ!」


 剣を防がれた方の男は、悔しがりながらも再び剣を振るう。


「今度は深すぎる!それでは・・」


 しかしその剣撃はまたも防がれ、剣を振るった男は追撃を許すこととなった。


「うぐっ!」


 男の追撃をうけしりもちをつく。

そんな彼に倒した男は手を差しのべた。


「ふーまずまずです。課題は体重移動ですね、ショウ様」

「リード・・お前強すぎ」


 そう言ってしりもちをついた男―ショウは、倒した男―リードの手を握る。

握られたのを確認し、リードはショウをひっぱっり起こした。


「大長ー!長ー!飯ノ用意ガ出来マシター!!」


 ちょうど二人の闘い―もとい訓練が終わったタイミングでお呼びがかかる。

呼びに来たのは、小さな体躯に赤い肌、大きなつり目に尖った耳が特徴のゴブリンである。


「飯にするか、リード」


「ええ、そうしましょう」


 そういって二人は呼びに来たゴブリンの後に続いた。




◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

「大長、ドウゾ」

「ありがとう」


 俺は軽くお礼を言い食事を受け取る。

メニューは三角猪トリプルボアの肉焼きだ。

三角猪は三つの角が生えた猪みたいな魔獣で、その肉は油が甘くけっこう美味い。

今はまだ昼といったところだが、こんな時間に三角猪が食えるのは狩りがうまくいったからだろう。

俺は串に刺されたソレを思いっきりかぶりつく。肉は柔らかく口の中には肉汁が溢れた。味付けは塩のみだがいけるものだ。


「ドウデスカ・・大長」

「ああ、うまいよ!ありがとな」


 俺がそういうと、聞いてきたゴブリンは嬉しそうにして俺から離れた。

彼女は料理担当の子で、「彼女」というからには女性である。

リードやバルたちが捕まっている頃、ボルが守っていた群れの残党のなかにいた一人だ。

というより、その残党の中のほとんどは女性で、男はボル含め数人しかいなかった。

正直、俺の目には男女の違いはあまりない気がする・・。強いてあげるなら、女性は身体が全体的に丸く、顔はどことなく可愛い寄り、というところぐらいだろう。

後は腰に布を巻くというスタイルが一般的なゴブリンの中で、女性は胸にも布を巻いていることだ。男女の区別をするときはこれを頼りにしている。


「ショウ様。先ほどの訓練をよく思い返しておいてください。まだまだ攻撃に隙があります」

「うえー…厳しいなリード。食事中の時くらいいいだろうよ」

「駄目です。常に自分の動きや立ち回りを考え続けてください。ショウ様はまだ能力を活かしきれていません」

「・・・はーい」


 苦言をていするリードに俺は返事をする。

吸血鬼の身体能力だけに頼らず、しっかりと技術を身に着けるために剣の訓練を頼んでからリードは厳しかった。

 リードを倒し、皆に長として認められてから一週間が経った。

正確に言えば俺は三日ほど眠っていたみたいだから、10日間だが。

三日間の気絶。原因は間違いなく『誓約の儀』だ。

『誓約の儀』は魔人が力を分け与え主従契約を結ぶ儀式。リードと行った場合は魔人が俺。つまり俺がリードに力を分け与えるわけだ。

気絶したのは力を分け与えたせいで、一時的に力を失ったから。そう俺は考えている。

それを証拠に――

 俺はちらっと三角猪トリプルボアの肉焼きにかぶりつくリードを見る。

座っていてもわかる身長の大きさ。さらされた上半身から望めるひきしまった筋肉。

目は鋭くどこか理知的で、耳はとがっている。ここまでは初めて闘技場で見たときと同じである。しかし、今のリードにはそれまでの特徴に加えて頭に二本のがあった。

その角は白く、先端に向かうにつれ細く反っており、鬼を連想させるものである。

気絶から目が覚めて、初めて見たときは大いに驚いたものだ。

 俺はリードに意識を集中し、心の中でステータスと唱えた。


【個体名】リード・ホブソード

 【種族】人子鬼ホブロン

 【称号】吸血鬼ヴァンパイアの臣下

 【スキル】

   ≪ゴブリンの一撃≫ ≪統率者≫


 眼前にステータスが表示される。俺のではない、リードのである。

これはためしてみて分かったが、俺はリードのステータスを見ることができるのだ。これは『誓約の儀』のおかげであると思う。それを証拠に他のゴブリンに試してみたが何も起こらなかった。

俺のステータス同様、集中すればより細かな情報が読み取ることができる。


 【人子鬼ホブロン

   鬼の因子を持つ小鬼ゴブリン族。

  大きな体躯と高い戦闘能力を持ち、武器の扱いにも通ずる。

  知能は高い。炎属性に適性がある。

  小鬼人ホブゴブリンより進化。

 

 ≪ゴブリンの一撃≫

   小鬼ゴブリン族固有スキル。自身の力に応じた一撃を放つ。


 ≪統率者≫

   指揮下、配下に入っている者達の能力を向上させる。


 俺はリードのステータスを見るまで知らなかったが、スキルだけでなく種族にも注目すれば詳しい説明が見ることができた。

種族の説明にもあるとおり、リードはもう小鬼人ホブゴブリンではなく、人子鬼ホブロンという種族らしい。どうやらホブゴブリンから進化したようだった。

博識の老ゴブリン、ガンによれば種族進化は頻繁に起こるものではなく、時折力が強いものなどが敵を倒した時に起こるらしい。

感覚で言えば、ゲームのレベルアップに近いようだった。

 そんな進化を起こしたのは間違いなく『誓約の儀』、つまるところの俺が分け与えた力だろう。

珍しい種族進化を俺が力を分け与えるだけで―三日間気絶したが―起こせるなんて、『誓約の儀』は強力だ。

だが同時に危険でもある。『誓約の儀』は俺が本当に心から信用できる奴にだけに行わないといけない。

それにそう頻繁に行うのは俺自身が危ない気がする。リード1人にやっただけで三日寝込んだのだ。もし何人にも頻繁にやれば最悪死にそうだ。

今のところはリードだけでいい。リードは俺に忠誠を誓ってくれているし、『誓約の儀』を行わなくても群れのみんなは俺についてきてくれている。

 それを証拠に、群れの生活は順調である。

 一週間たって、俺が教えた、ゴブジイに習った罠の作り方や木の実の採り方のおかげで狩りは効率化され、食料は群れのみんなに行き届いている。

おかげで一日中狩りに行かなく済むようになり、空いた時間でリードには俺を含めた群れの男の訓練をしてもらっている。

訓練の内容は主に武器の使い方と、闘いの連携である。

武器は俺がエリート・レントの武器屋に行って買ってきた片手短剣ショートソードを使っている。けっこー値が張ったが、群れの男たち全員に支給することができた。

まだ始めて数日なので、成果はまだまだだが、ボル、バルをはじめとして段々と見え始めている。

このまま訓練が進めば、いずれは冒険者から身が守れる程度の力を身に着けることができるはずだ。

 群れの運営として課題なのは、今住んでいる環境だろうか。

今俺たちがいるのは、森の中の木の生えてない開けた場所だ。

立地はとてもいいが、問題なのは住居だ。

ゴブリンはどうやら物を作るのが本当に苦手なようで、長である―皆が呼びにくそうにしていたので、リードを「長」、俺を「大長」と呼ばせている―俺には家を作ってくれた。

でもそれは家というにはあまりに粗末で、どうみてもあばら家である。まああんなに器用だったゴブジイが建てた家も同じようなものだったのでしょうがないと思うが・・。

しかし、このままではロクに雨風もしのげないし、他のゴブリンに至ってはみな地面に直で寝ている。

「俺たち寒さに強いから平気です」とか言っているが、このままでずっとやっていけないのは明白だ。誰か技術者を呼ぶか、もしくは俺自身が家を建てなくてはいけないだろう。

 とまあ早急に解決しなければいけない問題はあるが、とりあえずは大丈夫だ。

周りを見れば肉に食らいつく群れのみんなは笑っていて楽しそうだしな。

俺は長としてしっかり皆を守っていかなくちゃならない。それがリードから受け継いだ長の責任だしな。

補足。

調理に使っている塩は町で購入したものです

吸血鬼ヴァンパイア

  夜の魔人。

 冷気に耐性があり寒さを感じない。

 反対に炎耐性が弱い。

 夜の眷属を従えることができ、自身もまた夜の眷属の姿になることができる。

 大気から魔素を吸収して生きており、食事、排せつは必要なく長命。睡眠も短時間でよい。

 高い身体能力、血を従える能力を持つ。

 生命魔法、召喚魔法に適性あり。

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