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ゴブリンに助けられて  作者: くろきち
幕間
102/110

外伝:英雄へと至る part 1 4/5

間が空いております。

前回までの簡単なあらすじ:銀級シルバーの冒険者になったザインは同じく銀級シルバー冒険者のダイン、金級ゴールドの冒険者パーティーのリベラ、ルドー、ララドらと共にデラロという名の商人の護衛の依頼を受ける。道中盗賊の襲撃に遭うも、リベラの獅子奮迅の活躍により難なく生還。キャンプで「英雄になる」という夢を笑われながらもザインは先輩から冒険者について学んでいた。

「しっかり寝れたか?」


「まあまあです。でも身体の方は問題ありません!動けます」


 ならいい、と微笑してルドーは視線を前に向ける。夜が明けて、朝、デラロ一行は目的の街を目指して歩を進めていた。昨夜池の畔で野宿することになった彼らは火を絶やさない為、そして魔獣や野盗を警戒する為に見張りをたてた。その任に当たったのは気配察知に優れ経験が豊富なルドー、そして未経験のザインだった。ルドー一人でも充分なその仕事にザインが抜擢された訳は単にザイン自身による立候補があったからだ。彼にしてみれば冒険者としての位階が上がった以上、こういった場面に後々遭遇することは目に見えているし、ならば自分がミスをしてもほとんど問題がないであろうというールドーがいるというー状況でできるだけ経験を積んでおこうと思ったがゆえの行動だった。


 とはいえ、事はそう簡単ではなかった。静かな夜。頬を撫でる風、暖かい火。慣れない馬車の護衛に加え対人戦闘で身体には疲労が溜まっている。睡魔に襲われるのは自明の理だった。全く寝ない不寝番ではなく朝方近くには交代できるが、それでも肉体は容赦なく睡眠を求める。うつらうつらするザインを見かねて、寝るようにルドーは勧めたが、ザインは頑として起き続けることを選んだ。思えば昼間の戦闘からルドーには助けられてばかりなのだ。この上自ら立候補した仕事までまともにこなせずに、どうして英雄になるのだと言えよう。ザイン服を脱ぎ捨て近くの池に飛び込んだ。冷たい水と濡れた肌にあたる風が彼の意識を強制的に覚醒させた。そうして意識を保ち続け、交代し、仮眠をとったが緊張状態が続いたせいか眠りは浅かった。しかしそうも言っていられない。同じ条件でありながら悠々と前を歩くルドーの背中を見つめ、ザインは今一度心の帯を強く締めた。


「おいおい、ちょっと待ちなよデラロさん。この森を抜けていくのかい?」


「はい・・こちらを抜けたほうが近いものですから・・・・」


「まあそりゃ近いけどさー・・」


 渋るリベラに恐縮するデラロ。彼らの眼前に広がるのはそこそこ大きな森だ。街へと続く道中にあるので、抜けるか迂回するか選ばなくてはならない。当然、迂回すれば時間をより消費するし直線で突っ切れば大幅に時間を短縮できるだろう。それでもリベラが渋る理由は単純にその危険性からだ。人の手の入っていない自然で、幅を利かせるのは魔獣や魔物。日があるとはいえ木や葉に日光が遮られ森の中は視界が外より悪くなるだろう。馬車、そしてデラロという護衛対象がある以上、出来るだけ安全性を高め、危険を避けたいと考えるのは冒険者として当たり前である。とはいえ依頼者の要望をそう簡単に無下にできないのも事実。そしてなによりリベラ程の実力があれば森を抜けることなどそうそう難しいことでもないのだ。要は手間がすこし増えるだけ。昨日の盗賊の例がある手前迂回の方が安全だとも言い切れない。


「そう問題があるわけでもないんじゃないか?ガヴァの大森林じゃあるまいし」


 悩むリベラにルドーの一言。彼の言葉に理解を示して頷くリベラの様からは彼女のルドーに対する信頼の色が見て取れる。黙って腕を組むララドをよそに、二人は互いに意見を交わし出し、やがてリベラはザイン、ダインの方へと顔を向ける。


「あんたらはどう思う?迂回するか森を突っ切るか、どっちがいい?」

「どっちでもいい。俺はあんたに従う、格上はあんただ」


「僕もリベラさんに従います」


「やれやれ・・面倒くさいね高位の冒険者ってのも」


 失笑混じりにため息をつくと、リベラはデラロへと向き直る。


「わかったよ。森を抜けていこう!ルドーの言う通りガヴァに比べればどんな森も楽勝だしね」


「あぁよかった!ありがとうございます!ここの森は比較的安全だと思いますよ。なんでもこの辺りの地域は精霊が宿ると言われていて昨晩泊まった池の畔も精霊たちが守っておられるとか、そのお陰かはわかりませんがこの辺りでは魔獣の被害が他に比べて極端に少ない――――」


「わかったわかった!そういう話はララドにしてやんな!時間が惜しいんだろ?ほら!行こう」


 大げさなほどに喜ぶデラロを制してリベラは出発を促す。馬車の移動速度に合わせてトコトコと一行は森へと入っていく。日光は遮られ、木漏れ日が冒険者たちの頭上に降り注ぐ。ララドの「先程の話を詳しく」という言葉をうけて、話し出すデラロ。盛り上がる二人をよそに皆は周囲を観察するように足を運ぶ。周囲はいたって普通の森といった様子だ。大陸最大規模のガヴァの大森林に比べれば、リベラ、ルドーの言う通り危険は少ないだろう。自然が育っている場所ほど魔獣もまたよく育ち、強く大きくなる。奥に棲息する魔獣ほど危険だと言われているが、この程度の規模の森ならばたとえ奥に行こうが、さほど心配する必要も無さそうである。


 ガヴァの大森林は広大でたとえ高位の冒険者や熟練の狩人だろうと気楽に立ち入れるものではなく、奥に行くなど以ての外。位置関係上、ザインたちが活動の拠点としているエリート・レントにはガヴァの大森林に関係する依頼ー魔獣退治や薬草採取などーが多く組合に寄せられるが、森の奥まで行くというのは全くといっていいほどない。時折道に迷った新人等が誤って奥へと進んでしまい魔獣に襲われてしまうなんて話はよくあるもの。今回は自分よりも格上のリベラたちが一緒なものの、一抹の不安をザインは抱えていた。曲がりなりにもザインは銀級シルバーの冒険者。ガヴァの大森林で依頼を何度もこなしてきた。しかし森といっても内情は森ごとに異なる。危険度でいえばガヴァの大森林の方が圧倒的に上の筈なのに、ザインはこの森に言いようのない不気味さを感じていた。風で揺れる木々から、鳥たちが羽ばたく羽音、足底から伝わる土の感触までもどこかザインの神経にいやな感覚を送り込んできている気がする。まるで森全体に睨まれているかのように落ち着かなかった。


「静かな森だな・・。自然豊かな割に魔獣の気配がない」


「ふむ。デラロ殿の言う通り精霊に守られておるからでは?」


「ふん・・案外ほんとにそうなのかもな」


 微笑混じりのルドーにララドは力強く頷く。神が実在するかどうかなどルドーの知った事ではない。しかし、現実に神の力なる「奇跡」というものを発現させるララドとは長い付き合いだ。それが本当に神の力なのか信仰心もなく、才能もないルドーに確かめる術など無いが、もし仮に神がいるとしたなら、神の手足たる精霊もいてもおかしくはない。索敵者レンジャーのルドーでも感知できない何かをララドは見つけているのかもしれない。


「森の中をこんなゆったりと歩くなんて久々だね。・・・あれなんか、何とかっていう薬草じゃなかったっけ?」


「ラクマ草ですね」


「薬草か。珍しいね商人が薬学に精通してるなんて」


「あはは、いやあ。ほんの少しかじった程度ですよ。昔薬草を売ってたこともありまして」


 街には教会があり、お布施をすれば奇跡によって外傷から体調不良まで治してもらえるのが普通のこの世界において、薬学というのは侮られがちで発展の遅い分野である。薬草の需要は主にお布施を払えないほどの貧乏人、冒険者等の応急処置用、もしくは近くに教会がない田舎の村人の民間療法用だ。たまに香草扱いで料理に添えられることなどがあるが、それでも需要は狭い。利益率を考えると商売には向かない代物だ。農業の傍ら、村人が集めて売る程度で十分だと言える。


「ああ、そうなのかい。やっぱり売れないもんなの?」


「ええ。・・売れませんね」


「でもポーションは薬学の粋たるもんだろ?私はてっきりデラロさんが作ってるもんだと」


「いえいえ、私は単なる卸売業者です。私にもっと薬学の知識があればこのラクマ草も役立てる事ができたのでしょうがね」


 横目でラクマ草に視線を送り、デラロは失笑する。自嘲気味の笑みは商人の笑みと混じり少し歪な形を見せた。ふーん、と納得した声を出して、リベラは会話を切った。森を進む一行にしばし静寂が訪れる。森の中ゆえに警戒を怠るわけではない。ただ危険が少ないのも確か。すっかり意識が環境に順応した彼らはある程度リラックスした状態で道なき道を進む。そんな彼らの目の前に魔獣が現れるのと、馬車の馬が嘶くのはほぼ同時だった。


「どうどう」


大核猪アボージャンか。大丈夫、俺らの敵じゃ・・・!!」


 意識を切り替え、全員が現れた魔獣に警戒心を全面に出し、そして絶句した。大核猪アボージャン。全長二メートル程の大きな猪の魔獣。三角猪トリプルボアと親子ほどのサイズ差があるもののそこまで脅威であるわけではない。結局突進しかできないので落ち着いて動けば割と簡単に仕留められる魔獣だ。そう、リベラ一行が絶句した理由はこの魔獣ではない。それは全長二メートルあるその魔獣の頭上から振り下ろされた棍棒らしき武器と、それを握る何者かの手を視認したからだった。


 脳天から血の噴水を出して倒れる大核猪アボージャン。倒れた時によって生じる砂埃が一行をさらうが、誰も視線を外そうとしない。馬の嘶きはその強さを増すものの、それを宥めるララドの手は止まっている。


「ん?・・ああ来たか、商人」


 木陰からのそりと現れた大核猪アボージャンを仕留めた腕の主が一行を見て口を開いた。酷く淀んだ、耳障りな声。まるでその能力のない者に無理矢理話させているようだ。しかしその声は意味ある音を出し言葉を紡いだ。遅れてその意味を理解した一行はすぐさま後方の、ある人物へと視線を送る。


「はい。ディランバス様。今回の贄はこいつ等に御座います」


 嘘くさくない、醜悪な笑みを浮かべて、デラロは確かにそう言った。




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「・・・五匹か。あまり強そうには見えんな」


「こいつらは銀級シルバー以上の冒険者です。それなりに腕はたちます。特にそこの赤鎧の女はディランバス様を喜ばせられるかと」


 身長は四メートル以上はあろうかという巨体。横に太いというよりは縦に長く、細長いという印象を受ける体つき。片手で巨大な棍棒を握る腕もまた長く、射程距離リーチも広いだろう。それでも決してひ弱な印象を受けないのは”ソレ”の異質な外見ゆえか。


 全身は黒と茶色を混ぜたような色の毛で覆われ、足は鹿のような蹄、手は人のように細くしなやかな造りになっていてそのどちらもが体毛に反して白い。二足で立つソレの腹はむき出しで、他の部位同様に毛で覆われてはいるが、その上に薄っすらと人間の筋肉のような形の模様が白の線によって描かれている。顎は長く、口は大きく。開けば光る牙の数は一瞬見ただけでも人間の歯の本数を優に超えていることがわかる。鼻、目ともに獣のソレに酷似していながら頭髪は人間のものに近いが、額から映える鹿のような角が頭髪との不和を示している。最もわかりやすくソレを説明するとしたら化け物という言葉がふさわしい。その化け物が頭上から自分たちを睥睨している状況に、一同はー各々程度は違えどー混乱の最中にいた。


「あんた『贄』って言ったね?つまりこいつとあんたはグルで、私らは嵌められたってことかい?」


「そうだとも。お前らは私の商売の糧になるのだ」


 口火を切ったのはリベラだった。多少の乱れはあるものの、彼女の声は冷静で、落ち着きが見て取れる。彼女に返答するデラロの声は以前と違い低く、また口調も淡々としている。それが本性だということは一目瞭然だった。偽ということを理解していながらも、商人という皮を被ったデラロしか知らなかった一同にとって彼のその態度は多少の衝撃であったのは言うまでもない。


「・・・あんたは一体何なんだ?なぜこのデブと協力して私らを嵌める?」


「我はディランバス。魔竜より生まれし貴様らが言うところの魔物というやつだ。まあ普段貴様らが相手しているやつらとは格が違うがな・・・はっはっは」


「質問に答えてないね。私はどうしてあんたみたいな化け物が人間と協力してるんだって聞いてるんだよ」


「ん?貴様、威勢がいいな!よいよい楽しめそうだ。おい商人!」


 リベラの強気な態度に臆するどころかディランバスは笑う。人外が人間の様に笑う様は不気味そのもの。笑みを消しデラロに一声かけると、デラロは馬車の荷台を漁り木製の鍋のよう器を持ち出しディランバスの元へ駆けてくる。


「これが理由だ」


 そう言うとディランバスは大きく口を開け、自身の腕に噛み付いた。鋭利な牙が皮を貫き腕からはドロドロとした黒い液体が流れ出る。


「ありがとうございます!ありがとうございます!」


 隙間なく感謝の言葉を口にしながら頭を垂れるデラロの手元の器に、ディランバスの腕から流れ出る黒い液体が溜まっていく。やがて器が一杯になると、デラロは蓋をして布で丁寧にそれを包んだ。


「・・・!まさか!!」


 数瞬の間を空けて、リベラは目を見開き勢いよく振り返る。後方へと移された彼女の視界には同じような表情を浮かべながら、荷台を乱暴に漁るダインの姿。


「おいおい本気か・・・!!」


「おいお前!勝手に私のものに触るな!」


 デラロの抗議の声をよそに、ダインはなおも荷台を荒らし続け、やがて木箱を一つ抱え皆の視界に現れた。


「てめぇ・・くそ野郎!お前が売ってるポーションってのはそれのことか?」


 ダインは持っていた木箱を勢いよく地面に叩きつけた。衝撃によって蓋は外れ、中身が辺りに散乱する。デラロが「梱包した」と言っていた彼の商品。ポーションの瓶、しかし中身は空。そこに本来あるはずの中身はなく、割れたガラスの破片しか見当たらない。


「お前、魔物の血を売ってやがるのか!!」


 ダインに怒鳴られ一瞬怯むもの、息を大きく吸いデラロはふんぞり返る。


「それがなんだ!効能に嘘はない!価格も適正だ!私は立派な商人だろうが!!!」


「ふざけるなクソ野郎!」


「ひいぃい・・!!」


 怒りを顕にしたリベラに掴みかかられデラロは思わず悲鳴を上げた。女性ながら片手でデラロの首元を掴み上げ、リベラは強く彼を睨む。


「魔物の血が無害な訳がない。そんなものをたとえ一口でも飲んだりしたら・・・」


「ふむ。まあこやつは色々混ぜて薄めてるらしいが・・最低でも寿命は減るだろうなあ。一時的に向上しても、すぐに身体機能は落ちるだろう。正式な儀式もなしに血を授かるなど・・くくっ愚かなことだ」


 ルドーの呟きに答えるようにディランバスは語る。脳内であれこれ想像しているのか、時折間延びした口調になってはくくくと蔑んだ笑いを浮かべる。それを見て、答えを聞いて、頂点に達したリベラの怒りはそのまま拳となってデラロの頬を思い切り殴った。衝撃そのままにデラロは地面に叩きつけられ、涙目になりながら赤く腫れていく頬を撫でる。


「・・し、しょうがないだろう!それしか手がなかった!たとえどんなに必死に薬草を集めようとも、丁寧に加工して薬を作ろうとも、報酬は労力に見合わずごく僅か。商人は新参者に厳しい!新しい商売なんてコネや金がなくちゃやっていけない!!馬鹿にされ、嘲られ、家族にも見放された私に与えられた唯一の挽回の機会がディランバス様だ!この血だ!人から金をとって何が悪い!寿命を奪って何が悪い!少しくらい欲張ったっていいだろう!私は苦しんだんだ、十分すぎるほどに。報われていいはずだろう。私は今も昔も立派な商人だ・・!!」


 涙を流し必死にデラロは訴えた。頬かそれとも過去の傷か。痛みに耐えきれず泣きながら叫ぶ彼の声には聞くものに同情させる力が少なからず存在した。しかし、ディランバスは笑みを浮かべながら場を見守り、リベラの表情は依然として厳しいままだ。


「おい、甘えるなよデラロ・ビービル。商売が上手くいかなかったのはあんたの実力不足。物事が上手くいかなくて苦しんでるやつなんてこの世にたくさんいるよ。なんであんたの苦しみだけみんなで背負わなくちゃならないんだ?苦しくても諦めず努力し続ける人を私らは尊敬するんだ。あんたはクズ中のクズ。どんなに泣いたってこの事実は変わらないよ」


「ぐっ・・!!」


 毅然とした態度でそう言われ、デラロは口を紡ぐしかない。リベラは口を閉じ視線をデラロから外して化け物との対峙へと戻る。


「よい茶番であった。人間の良いところはこういうところであったな」


「そいつはどうも・・・。それで、一応聞くけどあんたの目的は私達の命って事でいいんだよね?」


「うむ。正確には貴様らの血肉だがな。・・・おい商人」


「・・はっ、はい」


 大きく腫れ上がった頬をさすりながら、デラロはディランバスへと向き直る。女冒険者に殴られ、怒鳴られ、説教され、精神的に疲れていたが、腐っても商人。ディランバスという最重要顧客のために迅速な対応をすべく、とりあえずいつもの通り愛想笑いを振りまき要望を待つ。


「ご苦労だった」


「えっ、あ、はい!ありが―――――」


 風を切って振り下ろされた棍棒は、デラロの脳天に直撃し、痛みを感じさせる暇もなく彼の命を奪った。吹き出る血と頭蓋が割れる音、そして棍棒についた血を払うディランバスの姿を見て、一同はようやく今、何が起こったのか理解した。


「・・・ま、まさか。殺すとは、ね・・」


「お?恐怖したか?慄いたか?しかし、誇るが良い。ここまで冷静を保てたのは貴様が初めてだぞ。これまでの贄は我が姿を見せた瞬間に逃げ出すか、すぐさま戦いを挑んでくるやつらばかりだったからな」


――――ヒヒーン!!


 馬の嘶き。反射的に視線は音の発生源、即ち馬車へと集中する。そこにあったのは外された荷台と、裸の馬に跨り背中を見せて走るダインの姿。敵前逃亡。生き抜くための撤退である。


「ダインさん・・・」


「くくっ!逃がさん!」


 離れてゆくダインの背中を見ながら、しかし余裕の笑みを浮かべると、ディランバスは彼目掛けて近くに転がっていた大核猪アボージャンとデラロの死体を投擲した。くぐもった声を上げダインは空中へと投げ出される。直接当たりはしなかったものの逃走阻止させられる程の衝撃はくらっていた。


「いい狙いだ」


「(硬い・・・)」


 ディランバスが投擲を終えると同時、繰り出したリベラの不意打ちは、目標の頭直前、ディランバスの腕に阻まれた。袈裟懸けに振るった二つの斧は持ち主にディランバスの毛の感触を伝える。


「ルドー!ララド!」


 身長差を埋めるために飛び上がっていたリベラは着地して、一呼吸を置く。次いで出たのは信頼における仕事仲間たちの名前。


「やるよ・・!!」


「「応ッ!」」





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