表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/502

9-10

再編集した為2話分の話しを統合しました

内容に大きな変更はありません

サブタイトルの数字もそういう意味のものですので特にお気になさらずにお願いします

 ようやく店内は静かになった。周囲の客達からは公人があの男に何かしたのかと、訝しむ様な視線を感じるがあえて無視する。

 席に戻ろうとした所で、エルフの女性もこちらに視線を向けている事に気づいた。そういえばこのエルフは自分を助けてくれようとしたのだろうか、それにしても投げかける言葉は別にありそうなものだが。

 あれでは男の神経を余計に逆撫でするようなものだが。しかしそうでもなければ、わざわざ騒動に自分から首を突っ込む様な真似はしないだろう。

 一応感謝の言葉を伝えておくか、そう思いエルフに歩み寄る。その時店の外からまたも騒がしい声が聞こえた。


「てめぇどこから出てきやがった!俺は急いでんだ、そこをどけ!ちょっ……おい!な、なにしやがんだ!うわあああああ!」


 悲鳴は先程の酔っぱらいの男のものだった。また騒ぎを起こしているのか、どうせ逃げる最中に誰かに衝突でもしたのだろう。それで相手の怒りを買ってしまい返り討ちにされたと、そんなところか。

 改めて礼を言おうとしたところでまたも予想外な事が起きる。まだ店の入口に立っていたエルフの後ろにいきなり巨大な影が現れた。

 いや影ではない、よく見るとそれは人間よりも二回り程も大きく黒い全身鎧だった。これほどまでに巨大な鉄の塊の存在を、この目で確認するまで気付くことが出来なかった。公人の視線に気付いたエルフも振り返り驚いている。

 この鎧が何者か分からないがあまりにも怪しすぎる。とっさに身構える公人に反応したのか鎧の首がこちらへ向く。思わず息を呑む公人だが鎧はすぐに前を向きカウンターへと歩きだした。

 店員が驚きしどろもどろに対応していると急に手を突き出し、その手の中から大量のお金が溢れだした。店員は何かに納得したのかお金を数えている。

 確認を終えると鎧に向かって微笑みながら頭を下げ、その様子を見届けた鎧は突如として姿を消した。


「なんだったんだあれは……」


「あれはどうやら神霊種の使者のようですね。どうやら先程の方は無銭飲食をしたと見做されて処罰の執行、そして代価を支払いに来たのでしょう」


「神霊種の使者ですか、初めて見ました。神霊種の名の下に平等とはこういう事だったんですね」


「そうよ。私もあの使者を見るのは初めてだわ。以前はもっと違う装いの方が使者を務めていたわ。あんな機械人形みたいなものではなく……」


「機械人形……確かに人造種の様な雰囲気ですね」


「人造種か。そうね、確かにそうかも」


 そこでエルフ種は考えこむように黙ってしまった。自然と会話を交わしてしまったがまだお礼も言えていない。しかし考え事の邪魔をしてしまうのもなんだか忍びない。

 どう切り出そうか悩みあぐねていると、それに気付いたエルフ種がこちらに気づき柔らかく笑う。


「あらごめんなさいね、急に黙りこんでしまって。ずっと立ち話をするのもあまり行儀が良くないわね、腰を落ち着けてお話がしたいわ」


「それでしたら俺……僕の席が空いてますのでそちらでどうです?」


「喜んで同席させて頂きます。でしたら私も何か注文しないとお店の方に失礼ですね」


 新たにエルフの分の注文を済ませて席に着いた二人だがそこで公人は気付いた。女性と二人で食事をするという状況に。

 しかも改めて見るまでもなく相手は美人だ。今まで女性とほとんど接したことがなかったのに、いきなり食事なんてハードルが高すぎやしないか。

 何を話して良いのか、そもそも何故相手は自分と話がしたいと言い出したのか。自分では特に理由も思い当たらないので会話の成り行きでそうなったとしか言えない。そうだ、自分は礼を言うためにこのエルフに近寄ったのだ。まずはきちんと礼を言わねばならない。


「あの、ありがとうございました。それとあの魔法……すごく綺麗でした」


 つい感想が口をついて出た。それほどまでに綺麗で感動したという事を改めて自覚する。


「……?あぁ、あの男性の事ですね。礼を言われる様なことではありませんわ。私もああいった品の無い方は好きではありませんから。それにあなたとお話したいと思ってこのお店に寄ったのですし」


「僕にですか?」


 全く心当たりが無い、そもそもエルフに知り合いなんていなかった筈だ。改めて記憶を辿るがやはりこのエルフに見覚えはない。この美貌を見て忘れるはずも無いが。

 もしかして逆ナンパというやつか、などと一瞬でも考えてしまった自分が恥ずかしい。見たところ気の軽そうな人ではないし、自分の様なファッションにも気を使っていない様な子供を引っ掛けてくる訳がないだろう。やはり男とのやり取りでの技を見抜かれて興味を保たれてしまったのか。

 しかしそれではこのエルフが言っていた店に入って来た理由とは異なる。ここは考えていても仕方がないので素直に理由を聞いたほうが良さそうだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ