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 澄佳は折角の風呂なのに、何故戦いの話になってしまったのだろうと思った。思えば佐綾といるといつもこうなる気がする。

 嫌ならば風呂を出れば良いのだが、まだまだこの広い浴槽を堪能し足りない。何か話題を変えようと考えていると、丁度良い話題があった事を思い出した。


「そういえば佐綾、今日の事なんだけど……」


「あら?佐綾も入ってたのね。水入らずのところを邪魔しちゃったかしら」


 丁度話題を変えようとしたところで、レイラも風呂に入ってきた。二人が話しているところを見て少し申し訳無さそうにしている。


「平気よ。それより丁度良かったわ。佐綾に今日のことを話そうと思ってたのよ」


「今日の事?何かあったかしら?」


 調査の件ならばわざわざ風呂で報告するような事ではないだろう。当然澄佳もそんな話しをするつもりは毛頭無かった。


「ほら、ロイさんが言ってた事よ」


「あぁ!そのことね!確かに佐綾に話しておくべきだわ」


「ロイさんが何か言ってたんですか?」


 何のことだか分からないという表情の佐綾に対し、二人はニヤニヤとした笑みを浮かべている。恐らくからかわれるなという事だけは感じ取った。


「佐綾さんは格好良い上に美人で、まるで女神のようだ!だっけ?」


 レイラがロイの真似をしながら大袈裟な手振りを交えつつ説明する。その手振りの中で偶然を装い澄佳の身体を触診し始める。レイラは佐綾をからかいつつも、澄佳の身体に興味津々だった。


「レイラちゃんのはちょっと誇張しすぎだけど、エルフ種区でも人気になってるのは本当みたいよ?それも女性を中心に、神格化されてるんじゃないかっていう程らしいわ」


「神格化ですか。私が神になってるんでしたら、レイラちゃんも女神になって貰わなくてはいけませんね」


「それはもう男性中心になってるんじゃない?」


 レイラはそんな噂など知らないが、実際にそう捉えられてもおかしく無い程度には人気だ。その人気はルネと二分してのものだが、それでも凄いことだろう。


「それなら問題ないです」


「そうね。一緒に崇めてもらえるならそれも良いわ」


「崇めるって……エルフ種区に魔霊種を崇拝する宗教でも流行らせるつもり?」


 澄佳は佐綾をからかうつもりだったが、例によって佐綾は全く気にしていなかった。一緒にノッていたレイラもいつの間にか佐綾側についている。そうなればからかう対象が佐綾から澄佳に移るのは必然だった。


「澄佳だって獣人種区で似たような扱いを受けてるじゃない」


 レイラの言う通り澄佳の、正確にはカスミの人気は獣人種区内では絶大なものだった。獣人種は強者に畏敬の念を抱くというのは普通であり、カスミはグライフすらも勝てない相手として広く知られている。

 しかし人気の原因はそれだけではなく、カスミがリオンの寵愛を断っていたことにある。強者が強者と結ばれるのは獣人種区では当たり前の事であるため、カスミ程の実力ならば相手は王以外には考えられないと思われていた。

 だが実際には断っているという事もあり、カスミは現在フリーなのだ。ならば是非自分のものにしたいと、夢を見る男が多くいるのも納得出来る話ではある。


「ありがたい話ではあるんだけど、正直ちょっと面倒なのよね」


「姉さんはスタイルが良いですからね。獣人種区だけでなく他の区でも人気ですよ」


 佐綾も羨ましくないとはいえ、ついつい目で追ってしまう様な魅力があるのだ。


「でも澄佳を近くで見てると、男の気持ちも分かる気がするわ。つい触りたくなっちゃうもの」


「レイラちゃんはさっきからずっと触ってるじゃない。そんなに羨ましいの?」


「自分にないものを持ってるんだもの。でも数十年後には私も手に入れてみせるわ」


 レイラも最初は偶然を装っていたが、澄佳が抵抗しないと分かると堂々と触り始める。セクハラと言っても差し支えない無遠慮さだったが、澄佳は逆に胸を張って触らせていた。それがレイラに謎の無力感を募らる。


「さっきから何そわそわしてんのよ?あんたも興味あるなら触っていいわよ?」


「私は別に、レイラちゃんがベタベタしてるから……でも折角なので少しだけ」


「素直じゃないわね。そうだ、どうせ触るなら二人にマッサージでもしてもらおうかな」


 澄佳の提案を二人は快く了承する。澄佳は時折セクハラ染みた触り方もされるが、それでも基本的にはしっかりとマッサージをしてくれている為、特に怒ったりはしなかった。


「こんなに広いお風呂で従者にマッサージしてもらうなんて贅沢の極みね」


 いつの間にか従者にされてしまった二人だが、この身体を堪能出来るならそれでも良いかと思い始める。


「しかし二柱の神を従者にするなんて、贅沢が過ぎるのでは?」


「澄佳ならそのうち本当に神様を従えてそうよね」


「レイラちゃんの私に対するイメージどうなってるの?」


 三人は冗談を言い合いながら穏やかな時間を過ごしていた。そのせいでかなりの長風呂になってしまい、ドクターとロイは既に帰ってしまっていた。

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