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3-4

再編集した為2話分の話しを統合しました

内容に大きな変更はありません

サブタイトルの数字もそういう意味のものですので特にお気になさらずにお願いします

 公人の右手の先に何かが有る。目には見えず、質量はや重さも感じない。だが確実に何かが手の中に残っている。先ほどとは違い、今度は術は発動しておらず火の玉は無い。しかし自分の五感は何かがそこに存在していると告げている。


「暴走の違和感が中々抜けないのか?それにしては妙な感じだが……」


 忍術を使った際にはきちんと術を行使したという事が分かる。心の中に思い描いた事が外に具現化される事で心に隙間が出来るというか、心の中のつっかえが取れたというか、そんな精神的な作用が実感として現れる。今回はそれがうまくいかなかった為、違和感がこびり付いてしまって気になるのかもしれない。

 そう思いながら手を握ったり振り回してみる。そこでまた一つ違和感に気づく。握った手の中に何かが有り、振った手からその何かが離れずくっついている。そんな奇妙な感覚が残るのだ。何か目に見えない虫か、はたまた失敗した術が消えずに残っているのか。原因を確かめる為にもう一度手の先に意識を集中する。

 その瞬間、公人の目に映る世界が変わって見えた。


「こ、これは一体……」


 手の先に意識を集中した途端、意識が手の先から空中へと拡散した。目は自分の手の平を見ている。しかし公人の視覚以外の感覚は正常でその目のみが周囲の空間を色鮮やかで、綺羅びやかな世界に映し出している。

 視線を辺りに彷徨わせ、その光景に見とれていた。気づけばまたもや手の先が熱い。火傷するような熱さだ。いつの間にかまた火の玉が現れている。

 それに気づいた瞬間今まで見ていた世界が急に色褪せ、元の世界に戻された。手には未だに火の玉が浮かんでいる。

 しかし今は熱さを感じない。まるで体の一部の様に軽く、そこに有るのが自然に感じられた。試しに放り投げると軽く投げたとは思えないような速度で物理法則を無視して何処までも飛んで行く。


「まずい!このままだと森が!」


 そう叫んだ瞬間前方で巨大な火柱が立ち上がった。慌てて近づいてみるとそこには何も無かった。何も無かったわけではない、見れば地面は黒く煤けているし地面の中には木の根っ子がまだ残っているようだ。

 推察するに火の玉にぶつかった木が一瞬で燃え上がり、他の木に燃え移る前に炭化し燃え尽きてしまったようだ。


「何て威力だ……これはまさか魔法か?」


 忍術を使用した時とは違った疲労感があったがそんな事は気にしていられない。公人は騒ぎになる前に一度家に戻ることにした。

 そして修行を後回しにしてでも文献を読み漁り魔法に関する事を調べ上げ、修行の中に魔法の練習を組み込むつもりだった。これが公人が生まれて初めて魔法を使った瞬間であった。


 森を抜け住宅街に入る。まだ日は出ておらずこんな時間に出歩いている人はほとんどいないが、あちこちで誰かが駆け回る音が聞こえてくる。

 住宅街の裏路地の中、あまり日当たりの良くない家に着く。特に貧困している訳ではないのだが家賃が安かった事と、何となく忍んでいる感じがある、という点で選んだとの事だ。理由はともかく無駄な出費が減るのは有難い事だ。


 ちなみに家計は夜一が担っている。何の仕事をしているのか教えてくれないのだが、二人分の生活費を賄っている。しかも修行に付き合う時間も確保出来ているのだから、結構割のいい働き口なのかもしれない。

 公人は修行に専念するため働く事は禁止されているが、代わりに買い出しから家事全般まで家の事は公人が担当する事にしている。こう考えると衣食住から修行、何から何まで夜一の世話になりっぱなしである。早く修行を終え自らの力を夜一の手助けと、それから世の中の為に尽くしていかないといけない。


 玄関に備え付けられたポストを確認すると、既に朝刊の新聞が入っていた。どうやら駆け回っているのは新聞配達のバイトのようである。乗り物が無い為全ての民家に配り切るためにはこの時間から出ないと間に合わないのだろう。

 昔は燃料で走る乗り物があったそうなのだが、戦争の際に技術や物資といったものがほとんど失われ、或いは人造種に持って行かれてしまったらしい。

 その為人類種区に存在している乗り物と言えば人力車がほとんどだし、何より鉱物自体が貴重品になってしまっている。住まいだけでなく、剣や防具等も毎日のように使われ新調しなければならない現状で他の事に回すだけの余裕が無い。


「流石に今日は疲れたな。早めに寝たほうが良いか」


 普段から夜通しの修行等、多少の眠気は気にならないのだが今回ばかりは疲れが溜まっていた。肉体的な面よりも精神的な疲労が特に大きい。

 忍術の修行自体はあまり出来なかったが、魔法を行使した際に術の使用と似たような疲労感が訪れた。発動の仕組みは違えど本質は似ているのかもしれない。

 それについて調べるためにも一度仮眠を取り、午後から魔法に関する文献を探してみるとしよう。何かが分かれば今夜にでも修行を再開したい。

 軽くシャワーを浴びた後、目覚ましを正午にセットしてから布団の中に入ると、直ぐに寝息を立て深い眠りに落ちていった。

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