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39-41

再編集した為3話分の話しを統合しました

内容に大きな変更はありません

サブタイトルの数字もそういう意味のものですので特にお気になさらずにお願いします

 魔獣は決意を新たにしたことで心に余裕が生まれ冷静さを取り戻していく。しかし未だ解決の糸口を見いだせていない。

 ここは少し考え方を変える必用が有りそうだ。過程や方法が見つからないのであれば目指す結果が間違っているのだろうか。自分が目指しているのは魔獣達の生存でありそれ以上の事を望んではいない、これが間違いであるはずがない。

 ならば目の前の男と自分が目指すものが噛み合っていないのか。今までの口振りからして仲間たちを危険に晒したくないのだろう、争いを望んでいないのは分かる。だがこの男ほどの力があればそう危険が及ぶことは無いのではないか。

 考えてみればそうだ、人類を守るという目的ならば自分という危険分子の事を放っておく筈は無い。必要な事を聞き出した時点で処分してしまうのが一番だろう。

 だが、まだこうして生きている以上他にも何か目的があるに違いない。それとも自分に何かを求めているのだろうか。相変わらず相手の狙いは分からないが、しかし共通点を見つける事が出来た。

 互いに争い事を望んではいないと言うことだ。そこを焦点にして語るしか道は無いだろう。後は自分の正しさを信じて口を開くのみだ。


「個人的に求めている事は無いと言ったが訂正させて欲しい。俺が求めているのは平和な暮らしだ。だからこそ魔獣同士の争いや今回の問題に限った話ではなく他種族との生存競争だとか、繁栄のための侵攻だとか、そういう事も全部含めて無くしていきたい」


 熊は夜一の反応を伺う。夜一は特に口を挟む素振りも見せず、目で語ってみろと言っていた。


「……他の奴らが素直に従ってくれるとは思わない。全員を納得させることは出来ないかもしれない。生存圏に関してはまだしも食欲に関しては完全に別問題だ、完全に抑え続けることは出来ないからだ」


「それでは……」


「そこでもう一つの質問、俺が今度どう生きていくかという問に答えさせてもらう。俺は全ての魔獣を説得しながら、問題の解決策を探して回る。それがいつまでかかるか分からないが、俺達魔獣には寿命という概念は存在しない。全てを終えるまで俺は闘い続ける。それが俺に出来ることの全てだ」


 それは一つの覚悟。実現がいつになるか、そもそも実現するかも分からない問題だが、決して諦めないという決意。


「……先程まで暴れていた俺が、こんな事を考えてるのはおかしいと思うか?だが今の俺は争い合う事を望んでいる訳ではない。俺が変われたように、他の奴らもきっかけがあれば変われるはずだ。信じて欲しい」


 解決策も用意していないし出来るという根拠も無い。殆ど相手に縋る願望のような回答だ。実現する事自体可能なのかも分からない現状では、これ以外に術は無い。決意のまま身を任せて口から出てきた言葉だが、どこまで聞いて貰えるだろうか。せめて猶予期間が貰えれば幸いだ。

 それすらも叶わなかったらやはりこの男と闘うことになるのだろう。そうなったら闘うべきか、いや勝ち目が無いのみならず、魔獣に対する印象も悪くなるだろう、やはり自信は無いが逃げるしかあるまい。先程諦めることだけはしないと決意したのだ。命乞いでも何でもしてやる。

 心の内でそこまで思い詰めていた所でようやく目の前の男が口を開く。


「分かった。信じよう」


「……今、信じると言ったのか?」


「そうだ。俺はあんたの事を、魔獣達の事を信じる」


「そう簡単に言われても俄には信じられないんだが……自分で言ってしまうのもなんだがあんな荒唐無稽な話しの何処に信じられる要素があったのだ?」


 その問に夜一は笑ってみせる。


「信じるとも。あんたの態度や会話の内容を鑑みれば、充分すぎる内容で正直驚いているよ。そういうあんたは俺達の事を信用してくれるのか?」


 物事は知れば知るほど、出来る事と出来ない事の判断を頭の中だけで勝手に判断してしまいがちだ。最初から行動するという選択肢を捨ててしまう。


 しかし目の前の熊、いや、男はそれに囚われる事無く未来を、理想を思い描いてみせた。それも私利私欲では無い。己以外の奴らもまとめて、不幸にならない方法を探すために行動すると言っているのだ。


 出来るか出来ないかは問題ではない。そういう気概を、信念を持った者こそが信ずるに値すると夜一は信じている。


「言い方は悪くなってしまうが、俺は元からお前の力を頼る以外の選択肢は無かったからな、信用というよりは神頼みに近かったんだが。だがお前は俺の事を信じる言ってくれた。ならば俺もお前を裏切るような事は出来ない。その位の誇りが無ければ、信念を通す事なんて出来ないからな」


「素直に信じてるって言ってくれればいいのにな……まぁいいか。これからよろしくな」


 その場を支配していた緊張感が次第に霧散していく。魔獣が言葉を話すという極めて稀なケースではあるが人類と魔獣という、今まで相容れなかった者同士の和解が成立した。


 互いに協力を必要としていた為にこの結果は双方にとって理想の形となった。夜一は右手を差し出し握手を求め、魔獣は戸惑いながらも意図を理解し握れない右手を夜一に向けた。


 そうして互いの信頼関係を築く事が出来た一人と一匹は今後の事について会話をシフトしていく。


「さて、これからの事だが俺はとある場所に向かっている最中なんだ。正直なとこ指定された時間にはもう間に合わないんだが、どちらにせよ向かわないといけない。そこで、あんたも一緒に行かないか?そこでなら落ち着いて話も出来るし俺の仲間も紹介したい。どうだ?」


「俺達と言うからには分かっていたが、やはり仲間がいるんだな。ぜひとも同行させて欲しい。お前の仲間というからには皆相当な実力者なのだろうな」


「そうだな。みんな俺とは方向性は違うけど凄い奴らばかりだよ。あの中だったらもしかしたら俺が一番普通かもしれないな」


「お前が普通だと?いったいどんな連中なんだ……仲間といえばお前たちはどういう関係の集まりなんだ?」


「そういえば言ってなかったな。まぁ俺達もあんたの事は笑えないくらい無茶苦茶な事をやろうって集まりなんだ」


 そう言って夜一は声高らかに宣言する。


「俺達が集い目指すその目的は……世界平和だ!」

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