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「一体外で何が……」


「よそ見してんじゃねぇ!」


 夜一は飛鳥馬の攻撃を受け流しつつ、外の様子を気にしていた。先程から数度、轟音が響き渡っている。恐らくレイラ達に動きがあったはずなのだが、今夜一がいるのは遥か高い塔の中にいる。様子を見ようにもそう簡単に見れるものでは無い。


「飛鳥馬は公人の戦いが気にならないのか?一度負けているんだろう?」


「今は俺の方が強いからな。それより、お前がそんなに余裕こいてる事の方が気になるぜ!」


 夜一は飛鳥馬を挑発している。戦っている途中から夜一の目的は飛鳥馬を倒すことでは無く、ここから脱出する事に変わっていた。

 速やかに飛鳥馬を倒し、サキコの元に行くつもりだったのだが時間が掛かりすぎてしまった。サキコが手負いの状態ならばという僅かな希望もあったのだが、既に回復してしまっているだろう。何より、飛鳥馬が降りてきた時点でサキコに動きがバレているのだ。

 可能であればやはり飛鳥馬も倒しておきたいが、無理をする事も無い。飛鳥馬の言葉を信じるならば、ただサキコの手駒になるという可能性も低い。それならば自分が無事脱出し、この情報を持ち帰ることを最優先にするべきだった。


「負けた男に借りを返す気は無いのか?」


「弱い奴にわざわざ借りを返す?それはただの復讐だ。そんな事に興味は無い」


 わざと公人の事を引き合いに出しているが、飛鳥馬は本当に気にもしていないらしい。挑発して冷静さを欠いてくれれば隙も見つけやすいのだが、簡単には乗ってくれない。

 いや、少なくとも夜一がまともに戦う気を無くしたという事には怒っているようだ。だがそれはむしろ闘志を燃やす方向に作用している。


「ちょっとはまともに戦いやがれ!」


 飛鳥馬の怒りに任せた斬撃は、夜一にこそ当たらないものの後ろの壁を完全に吹き飛ばした。これで良く塔が崩れないものだと本気で感心しそうになるが、壁が壊れた事で外の様子が見える様になった。塔の下を覗き込み、夜一は事態が切迫している事をようやく知る。


「あいつらも動いたのか!」


「おい、待ちやがれ!」


 夜一は飛鳥馬の静止に耳も傾けず、躊躇なく外へ飛び出した。飛鳥馬も追いかけようとするが、飛び降りる直前で自制する。いくら強くなったとはいえ、こんなに高いところから落ちて無事でいられる保証は無かった。

 魔力をうまい事使えれば飛び降りても平気かもしれないが、流石にそれだけの自信は無い。いざとなれば出来るかもしれないが、死んでしまえば折角の楽しみも無くなってしまうのだ。


「クソ!俺も空飛ぶ練習でもしときゃ良かったぜ」




 結界が破られ二人の魔霊種が降りてくる。二人は降りてくるなり指示を出してきた。


「おい坊主。そこの嬢ちゃんとレイラを連れてここから離れろ」


「サキコはこちらに任せておけ」


 サキコはその言葉に反応し、佐綾にだけは止めを刺そうと動くがそれを天狗が止める。その間に公人は倒れている佐綾を抱え上げ距離を取る。


「ありがとうございます」


「お前のためでは無い。早く行け」


 公人はサキコに背を向け走り出す。あの二人ならば無防備な背中でも守ってくれるだろう。レイラも大怪我をしているが、ルネに肩を借りる程では無いようだ。グライフと澄佳も公人達の後を追って会場から出ていく。


「さて、サキコよ。久しぶりだな」


「二度と会いたくは無かったわ。貴方達、いつからレイラの下僕になったのかしら?」


「レイラは友人の孫だからな。忘れ形見みたいなもんだ。それに手を出したとあっちゃぁ……許す訳にはいかねぇな」


「私も散々邪魔をされたんだもの。ここはお互い様と言う事で、見逃して貰えないかしら?」


「ほざけ!」


 鬼が叫び殴り掛かるが、サキコはその腕を難なく受け止める。すかさず天狗も魔力を迸らせるがそれもサキコは躱してみせる。


「素直に見逃してくれれば良かったのに。仕方ないわね」


 サキコは二人の猛攻を避けながら、会場を飛び回っている。逃げるでも無く、攻撃してくるでも無いその行動に二人は戸惑いつつも、怒りのままにサキコを攻め続けた。


「おらぁ!くたばりやがれぇ!」


 サキコの動きが一瞬止まったのを見逃さず、鬼は渾身の一撃を御見舞すべく肉薄する。天狗もそれに合わせ、魔力を大量に放出し、次のサキコの動きに備えた。

 しかし鬼の攻撃は届かず、天狗の魔力も瞬時に霧散する。


「貴方達相手に、何の策も無く逃げ回ると思ったのかしら?ここはもう、魔霊種専用の檻よ」


 サキコはそれまで使っていた結界とはまるで毛色が違う、対魔霊種用の結界を貼っていた。中にいる人物の魔力の大きさにより効果が増大するその結界は、強大な魔霊種程に強く作用する。しかも悪い事に、やはりというべきか魔力を吸い取る機能まで付いていた。


「リージャスも仕事が雑よねぇ。一種類の結界で全てを為そうとするんだもの。使い分けという言葉を知らなかったのかしら」

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