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「こいつ……どうやって……」


 どうやっても何も、佐綾としても答えようが無い。勘のみでこの建物に来たが、ここまで辿り着けたのは運が良かっただけに過ぎない。

 そう考えた時点で、これが偶然によるものではない事に気付いた。サキコの背中越しに巨大な機械が見えた。この建物を貫くかのように部屋の中央にそびえ立つその機械こそが、人造種区を統括しているメインコンピュータの一つだろう。

 それ程の存在がここにあるにも関わらず何事も無くここに来れたという事は、人造種がサキコを裏切ったという事だ。


 裏切られた事を悟ったサキコは、佐綾から逃げようともがいた。しかし全く身動きが取れない。

 今のサキコは本来のサキコの身体では無い。誰かの身体に自身の意識を魔力によっ憑依させ、意のままに操っているにすぎない。

 故に通常の攻撃を受けてもサキコの意識に対してダメージは少なく、魔霊種の身体である為魔力の有る限り身体を修復出来る。最悪今の身体が消えて無くなったとしても、サキコの意識を持った魔力が消えない限り別の誰かを乗っ取るだけだ。

 一見すると弱点が無いように見えるが、サキコの意識は魔力によってしか存在していない。その為身体に宿っている魔力をそのまま消滅させる事が出来れば、サキコも消滅させる事が出来る。


 レイラはサキコの不死身の仕組に気付いている。自身も分身を作る際には、大量の魔力を使って分身に意識を持たせていた。試した事は無かったが、同様の方法で別の身体に意識を写す事が出来る事は知っていたのだ。

 問題はどうやって魔力を消滅させるかである。単純に消耗させようとしても、サキコが力を使わなければ魔力が無くなる事は無い。


 佐綾は突き刺した右腕に力を込めた。するとサキコの身体が穴の開いた腹部から燃え始める。


「あああああああ!貴様あああああああ!」


 これは忍術による発火では無い。その事に気付きサキコは驚愕した。この炎にはサキコの魔力が使われている。

 佐綾はレイラとの特訓で飛鳥馬と同様、魔力を操る事が出来るようになっていた。しかし飛鳥馬と違い、いくつかの条件がある。

 そのうちの一つが、魔力に直接触れている事である。直接触れる事が出来る程の魔力は、空気中には存在しない。直接触れる事が出来る魔力とはつまり、魔霊種や魔獣の身体という事になる。

 飛鳥馬が周囲の魔力を操る事が出来る事に比べるとかなり見劣りする。更にこの条件には大きな欠点がある。

 それは魔力をその身に浴びてしまうという事だ。魔力の制御を無理やり相手から奪い取る為、大量の魔力を吸収してしまう。

 今回は吸収した魔力を即座に炎に変換しているが、やはり身体に通している以上その影響は少なくない。


「貴方の魔力が尽きるか、私の体力が尽きるか根比べです」


 佐綾は目を真っ赤に充血させ、血の涙を流しながら不敵に笑った。




「ああもう!どうやって倒したらいいのよこいつ!」


 桜は道を塞いでた人造種を全て倒していた。だが、未だに神霊種の使いは倒せていない。


「佐綾ちゃんよくこんなの倒したわね……私じゃあ忍術使ってもキツいわよこれ」


 神霊種の使いからの攻撃は今のところ全て躱している。しかしいくら攻撃しようともまるで傷つく気配が無い。

 周囲にはいつのまにか人だかりが出来ていた。初めは騒動に巻き込まれないよう避難していた人々が、騒ぎが小さくなった事で様子を見に来たのだ。その事もあり、桜は終始忍術を使わずに戦い続けている。


 人々が興味を持つのも当然の話だ。神霊種区に長く居る者でも、神霊種の使いがまともに戦ってる所を見たものはいない。

 神霊種の使いが犯罪者を裁く際、当然反抗する者も多くいる。だがいくら反抗しようとも、圧倒的な力の前に為す術もなく捕縛されていった。だからこそ誰しもが神霊種の力は絶対だと認め、区内での犯罪率は大きく低下したのだ。

 ところが神霊種の使いに渡り合っている人物がいる。それも人類種で、女だ。闘技祭に出てきた神霊種の使いはあくまで人造種の模造品だが、今目の前で戦っている存在は間違いなく本物なのだ。


「一体なにもんだ!?誰か知ってる奴いるか!?」


「あれ程の実力者が闘技祭に出てこないなんて……一体人類種区はどうなってんだ?」


 疑問を口にしているのは皆、人類種ではない者達だ。それも当然で、殆どの人類種は区へ駆けつけている為ここにはいない。

 ただでさえ騒ぎになっていた事態が、更に大きくなっていく。もはや避難している者はおらず、闘技祭の続きを見るかの様な雰囲気になってしまった。


「凄く目立っちゃってるし……ただの足止めのはずがどうしてこうなっちゃったのよ……」


 もはや桜自身がこの状況を覆すことは出来なくなっていた。公人達が人造種の暴走を止め、人造種に非があった事を認めさせない限り、神霊種の使いは止まらないだろう。それまで見世物になろうとも、戦い続ける他無かった。

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