27-28
再編集した為2話分の話しを統合しました
内容に大きな変更はありません
サブタイトルの数字もそういう意味のものですので特にお気になさらずにお願いします
しかし今後の課題と思っていた事が、ルネの助言によりいきなり解決してしまった。だがすぐに新たな疑問が浮かび上がる。
ルネは扉で隔てられているにも関わらず、公人が魔法を使ったことに気付いていた。出会った時にもルネはすぐ気付いたようだし、今後も簡単に露見してしまっては何かと都合が悪い。真の課題はこちらの方だった。
「なるほど。ところでもう一つ聞いても良いですか?」
「遠慮せずに聞いてくれていいわ。私に答えられる事ならね」
「魔法そのものを、若しくは魔法を使ったことを気づかれないようにすることは可能ですか?悪用するつもりはありませんが、人類種の俺が魔法を使えることが広まってしまえば騒ぎになる可能性がある。俺が魔法を使えることを隠す方法が有ればと思うんですが」
「確かにこの事が知られれば騒ぎになるでしょうね。今の時期に広まってしまうのはこちらとしても……いえ、それは別問題ね」
ルネは俯き考え事をしながら何か呟いている。時期が何か関係有るのだろうか、ルネの立場に何かあるのかもしれないし聞こえなかったフリをしておこう。
「私も隠すことには賛成よ。と言っても今の公人ならそうそう簡単にはバレないと思うわ」
「そうなんですか?今も風呂場からここまでの距離を、遮蔽物が有るにも関わらずバレてしまったし昼間だって……」
「それは私が公人が魔法を使えることを知っているからよ。それに昼間は精霊眼の制御が出来ていなかったから気付けたのよ。でもそうね、一度見てもらったほうが早いかしら。今から私がお風呂場で魔法を使ってくるから、公人はここで精霊眼で見ていて」
そう言ってルネは風呂場へ向かう。風呂場に至るまでのドアは全て閉められていているしいつ魔法を使うという合図も無い。
公人は言われた通り精霊眼で風呂場の方を見つめていると突如違和感を覚えた。見えているものに変化は無いが何か物が動いたような気がする。するとすぐにルネがこちらに戻ってきた。ルネの様子に変化は無いように見える。
「もう少し精霊眼を使った状態でいてね」
そう言ってルネはキッチンの方へ向かう。先程と同じ様に何かが動く気配と共に、今度は水が流れる音が聞こえてきた。どうやらただ水を流しているだけのようだ。
「どう?何か分かった?」
「と言われましても……風呂場で魔法を使った時に何かが動いたような気がしたけど何かは分からないです。今も蛇口をひねって水を流した時に同じような感じがしただけで……」
そこまで言ってから気付いた。水を流しただけで魔法と同じような気配を感じたという事が、つまりどういう事なのかを。
「気付いたかしら?実は私はお風呂場では魔法を使わずに水を流してきただけ。けれど私が魔法を使ってくると言っただけで、その気配を魔法だと思い込んでしまったわね」
ルネは再び蛇口を捻り、水を流す。流しては止め、それを公人は精霊眼で見続ける。
「水と一緒に精霊が一緒に流れていくから、精霊眼を使う事でその動きを感じ取れるようになるだけ。これで私の言いたいことが分かったかしら?」
「意識すれば精霊の動きを感じ取れるが、実際に魔法を使ってる所を見なければ分からないと。なるほど、安心しました。ちなみに水が流れる以外にも、似たようなことはありますか?例えば強い風が吹いたりとか」
「強い風でも精霊は大きく動くわ。あとは空間内の魔力量が急激に変化したりすると、そっちに精霊が引き寄せられたりもするわね。強力な魔霊種なんかは歩いてるだけで精霊達が騒ぎだすくらいだもの。流石にそれほどの大物が歩いてれば、精霊眼が無くても気付くと思うけれど」
ルネは他に質問は無いかと目で問うてくる。表情は真剣そのものだったが、その顔には流石に疲れが見て取れた。疑問も無い事だし、そろそろ休む時間だろう。
「疑問も解決出来たようで何よりだわ。さて、そろそろ寝ましょうか。私も今日は久しぶりに沢山魔法を使ったから疲れちゃった」
「そうですね。今日は本当にありがとうございました」
「私も公人とお話出来て楽しかったわ。それじゃあおやすみなさい。そうそう、寝室は書庫の向かいの部屋よ。それと明日は七時には朝食の準備をしておくから、それまでゆっくり寝てて良いわ」
「分かりました。おやすみなさい」
ルネはもう一度ふわぁと欠伸をしながら自分の部屋へ向かった。ふと時計を見ると間もなく日付が変わろうとしている。
昨日も一日修行で家を空けていたのでほぼ二日間家を留守にしている事になる。夜一がいつ帰ってくるかは分からないが、食材は買ってあるため困ることは無いだろう。
しかし今夜一が帰って来てしまうと公人は今日の出来事を報告しなければならない。別段後ろめたい事が有るわけではないが魔法の事、ルネの事を話しても良いものだろうか。
夜一を信用してない訳ではないが、様々な人物と接触していると聞いているし万が一があってはいけない。それにルネもこの事は隠したいと言っていた。ならば自分の判断だけで話すわけにはいかないだろう。
「適当にはぐらかすしか無いな、何か言い訳を用意しとかないと……まぁそれは後でいいか。今日はもう寝よう」
寝ようと決めると急に眠気が襲ってくる。さっさとベッドに潜り込んで寝よう。きっとふかふかの布団なんだろうなと想像した所である事に気付いてしまった。
「布団を外に干しっぱなしだった……」




