23-24
再編集した為2話分の話しを統合しました
内容に大きな変更はありません
サブタイトルの数字もそういう意味のものですので特にお気になさらずにお願いします
ルネはやや興奮気味に語っているが、それほど魔法初心者にしては異例のことだったのだろう。事実公人はルネの魔法がどういう軌道で飛んで来るか、どの程度の魔力を注いでいるかという事を見極めていた。常に周囲に気を配りながら相手の動きを見定め、予測し最善の手を打つ為の布石を用意する。
幼いころから夜一にそう教えられながら修行していた事が、そのまま魔法に関しても役に立っていたのだ。
「師の教えが良かったんだと思います。武術の教えがそのまま魔法にもあてはまっていたので」
「そういえば公人は武術を会得しているのよね。どこの道場なのかしら?今度挨拶に伺いたいのだけど」
「いえ、俺は道場には……親戚から習っているので。その親戚も別に道場主という訳ではなく別の仕事をしています」
「そうなの。それなら仕方ないわね……そろそろ帰りましょうか。今日はもう遅いしうちに泊まっていくと良いわ」
「はい、ありがとうございます……え?」
「いくら公人がすごいと言ってもまだ子供ですもの、こんな夜遅くに一人で帰す訳にはいかないわ。ここからなら私の別荘が近いから今日はそこに泊まりましょう。お家の方への連絡はこちらでやっておくわ。それで良いわね?」
ルネの有無を言わさぬ勢いに断りきれない。言い分は最もだし、公人としても変に断ってしまうと家の事を探られる恐れがある。仕方がないので素直に応じる事にした。
「分かりました。それと家には連絡を入れなくても大丈夫です。家族は今留守にしているので」
「決まりね。それじゃあ早速行きましょう」
ルネの別荘は丘を下ってから程なくして着いた。街の中心からやや離れたその位置は修練場に一番近い場所でもあった。
しかし別荘と言っていたが近くの民家と見比べてみてもかなり大きい。公人の中でルネは上流階級出身ということになっているので別段驚きもしなかったが。
「ここは元々お母様の実家だったのよ。お母様はこの辺りから修練場がある場所までの土地の管理を任されていたから、他の家よりも立派に造られているわ。有り体に言ってしまえば大地主って所かしらね。さぁ、遠慮せずに上がって」
中に入ってみると外見通りの広さだ。玄関口は民家というよりもまるでホテルのロビーの様だった。地主と言う表現をするだけあって来客も多かったのだろう、一階は来客を持て成す為のスペースとして大きめのテーブルやソファーが用意されている。今更になって自分との立場の違いを意識してしまって若干萎縮してしまう。
「適当に寛いでもらっていいわよ。今お風呂とお食事の用意をするから少し待っててね」
「あ、えと……ありがとうございます」
何か手伝った方が良いとは思ったが、勝手の知らない場所でうろちょろしてはかえって迷惑になるだろう。料理くらいなら手伝えるかとも思ったが、いつも公人が作っているのは手間の掛からない男料理程度のものだ。人様に食べさせるような上等な料理なんて作ったことがない。ここは大人しく好意に甘えるのが一番だろう。
「もし暇だったら二階の書庫で本でも読んでいたらどう?一番奥の部屋がそうだから自由に使っていいわ」
そう言ってルネは準備のため忙しなく動き回っている。ここにずっと居座るのは少々居心地が悪いので言われた通りに書庫に行くことにした。
「予想はしていたがすごい量だな……」
家が大きいため部屋一つ取ってもも広いはずなのだが、所狭しと並んでいる本棚のせいでやや窮屈に見える。なんとなく眺めていると歴史書やら魔法学、経済学や文集と多種多様なものが揃っている。
適当に手にとって眺めて見るが、どれも昔のエルフ種の言語らしく読むのが難しい。現代の文法と共通している部分もあるので、何とか読み解こうと熱中しているといつの間にかいい匂いがしてきた。
どうやらもうそろそろ食事の用意が出来そうだ。いずれ時間があれば勉強しようと心に決め、適当な所で区切りをつけて一階に降りる。テーブルの上には既に料理が並んでいた。
「丁度良かった。今呼びに行こうとと思っていたところよ」
「ええ、良い匂いが上まで届いていたのでそろそろかと……これ全部ルネさんが作ったんですか?」
「いつここに来ても良いように、下ごしらえした食材を置いてあるのよ。もし使わなければ、ハウスキーパーに使ってもらってるのよ」
それにしても二人で食べるには結構な量である。昼食の時にはそこまで量を食べていなかったと思うのだが、実は大食漢なのだろうか。
それに意外というかなんというか、肉料理や魚料理の種類が特に多い。エルフ種は痩身の人が多いのでてっきり菜食主義なのだというイメージを持っていた。
「育ち盛りなんだからこれくらい食べるでしょう?魔力の回復には、肉や魚といった生き物を食べるのが良いと言われているの。あとは綺麗な水ね。体の中の魔力の淀みを浄化してくれるのよ。さぁ、温かい内に食べましょう」




