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21-22

再編集した為2話分の話しを統合しました

内容に大きな変更はありません

サブタイトルの数字もそういう意味のものですので特にお気になさらずにお願いします

 ルネはここに来てから驚いたり慌てたりコロコロと表情が変わる。店で見た時とは大分印象が変わってきた。先程自分に向けて魔法を放ってきたのも軽い悪戯のつもりだったのだろうし、もしかしたら今のルネの方が素なのかもしれない。

 門の兵士達も随分敬っていたが、上流の出身として相応しくあろうと振る舞っていたのだろう。そう思うと何だか可愛く見えてくるが、失礼な事を考えるのはここまでにしておこう。

 少なくとも年下である自分に可愛いと思われたくは無いだろう。それよりも今は目の制御の練習をする方が先だ。せっかく切っ掛けを掴んだのだから、この感覚を早く自分のものにしなければ。


「怖がるなんてとんでもない。むしろもう一度お願いしたいくらいです」


「もう一度?公人あなたもしかして……」


「変な勘違いしないで下さい。魔法が眼前に迫ってきた時に一瞬精霊が見えたんです。もう一度あの状況を再現すればまた見えるかもしれない」


「そういうことね。余り気乗りはしないけど今度もちゃんと避けてね?」


 やはり茶目っ気を覗かせる辺り今のルネが素なのだろう。しかし魔法を使うために集中した瞬間その雰囲気を大きく変え、美しく凛々しいルネの姿を覗かせる。

 公人は距離を取り魔法に備えて集中力を高める。要は修行の時と同じ感覚だ。修行の際も常に敵と闘うイメージをする。思えば店でも実際に闘ってはいないが、そうなるかもしれないという心構えはしていた。共通点は戦闘のイメージにあったのだ。そうしてルネを見ると今度は魔法の兆候から、発動するまでの精霊の動きが全て見えた。

 完全にこの感覚を掴んだ。火の玉は先程よりもやや大きいがもう恐れは無い。自分の手元に集まっている精霊を視た。次に自分の手の平に意識を向ける。

 昨晩はここで意識が拡散してしまいそれが暴発に繋がってしまった。だが今度はそうはならない。意識は自分の手から自然とそこにいる精霊へと流れていく。その瞬間手の平に熱が宿り火の玉が生成された。

 この時既にルネの魔法は放たれていた。だが公人は焦ること無く自分が創りだした火の玉が飛んで行く様を思い描き、手の中にある火の玉を放り投げる。二つの火の玉は衝突し轟音と共に火柱を上げた後程なくして消滅する。


「うまくいったか」


「すごいじゃない公人!いきなり成功させて、しかも私の魔法を相殺するなんて!あなた才能があるわ!」


 その後も公人は魔法の練習を続けていく。公人はルネの言う通り才能が有るのか、飲み込みが早くどんどん上達していく。

 一度切っ掛けが出来てからの魔法の発動は驚くほどうまくいき、日が暮れる前には戦闘時の様な、極限の状況を作り出さなくても魔法が発動できるようになっていた。

 ルネはそんな公人の成長を本当に楽しそうに見ている。指導にもどんどん熱が入りいつの間にか模擬戦形式で行うようになっていた。模擬戦とは言ってもルネは動き回れる様な服装ではないので、一箇所に留まり公人に向けて魔法を打ち続ける。

 公人はそれを避けながら、或いは魔法で相殺しながら接近し、ルネに手が届けば一本というような具合にしている。そんな魔法の練習という名の訓練は四時間程経過した所で公人の魔力が底をついた。


「ふっ!……今のは危なかったな」


 魔法がきちんと発動せず相殺に失敗した公人は、辛うじて避けることに成功する。普段の公人の体力であればまだまだ動き続ける事は可能であったが、この日は疲労の蓄積が早かった。魔力を放出しすぎると体に負担がかかると言っていたがやはりそれが原因だろう。


「そろそろ終わりにしましょうか。いつの間にか外も暗くなってしまったわ。それにそろそろ公人の魔力も限界のようだしね」


 額に汗を滲ませながらもルネは爽やかに微笑み、魔法を使うと室内に心地よい風が吹く。火照った体にはとても心地よかった。


「それにしても公人はすごいわ。今日一日でこんなに魔法の発動を安定させるなんて。それにいくら魔力が多いと言っても、それは人類種という範疇での話よ。並のエルフ種がこれだけ魔法を使い続けたら、とっくに魔力切れを起こしているわ。きっと魔力の運用がうまいのね」


「魔力の運用ですか?」


「例えば火の玉を操作する時には、その軌道にいる精霊にも魔力を受け渡しているでしょう?この時自由に操作できる幅を拡げるために、周囲の精霊にも多めに魔力を渡さなければいけない」


 身振りと魔法の実演でもって、理屈を説明してくれている。


「普通は相手の動きに対応できる様に余計に多くの魔力を使うのだけど、公人は決めた道筋にしか魔力を渡していなかったわ。威力に関しても、私の魔法を相殺できる最低限の威力でしか使っていなかったわね」


 ルネは改めて公人に向き直り、魅力的な笑顔で言う。


「精霊や魔力の動きがちゃんと見えている証拠だし、何より瞬時に必要な魔力だけを絞りだす事が出来る集中力と意識配分は並大抵のものじゃないわ。凄いわよ」

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