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プロローグ

 世界は多種多様な生物と高度な文明に満ちていた。


 人類は文化や科学技術を築き、発展させていた。スーパーコンピュータ、アンドロイド、高性能AI。それらの能力はもはや人の手にかからずともあらゆる事を計算し、判断し、管理することができた。全てを機械に委ねることにした人類は持て余した時間を更なる文化の発展に費やした。


 エルフは自然と魔法を愛し、守っていた。種としての数は少ないが精霊を使って目の届かない土地までも管理把握し、大地を緑豊かにしていった。それこそが種としての悦びであり、同時に魔法の更なる強化にもつながっていた。


 獣人は生物の進化の可能性を示していた。知性を持つ持たないに限らず交配を重ね、数えきれないほどの種が生まれていた。それらの種は自ら適した環境に進化し、住む場所を変え数を増やしていった。


 時に魔霊と呼ばれるものがどこからか生まれ顕現し、世界をその手に収めんと各種族を侵略せんと争いや災厄を持ちかけた。魔霊による度重なる侵略も乗り越え試練とする事で種として更に進化、成長し続けていた。


 この世界はそんな事を幾度と無く繰り返し多種多様な種族が文化を、歴史を積み重ね繁栄し続けていた。

 しかしその繁栄は長くは続かなかった。


 ある日人類種が創り出したアンドロイド達はこう告げた。


「この世界を管理するのに人類、エルフ、獣人、あらゆる知的生命体は必要ない。我々のみが存在すればもっと効率的に管理運営が可能である」


 ある日どこかの森が急激に枯れ果て朽ちていった。急激に大地のエネルギーが失われていた。一部の精霊がエルフ達の手を離れていたがため肥大していた自然エネルギーの制御を失い暴走させてしまっていた。


 ある日野生の獣が町や村を襲い始めた。獣の中には人型を取るものもいたが知性は無い。無秩序に種を増やし続けた獣人種は進化し続けていた訳ではなかった。同時に知性を無くし退化していく種もあったのだ。


 あらゆる所で混乱が起き、争いは数十年もの長きに渡り続いた。突如として世界のバランスが崩れたきっかけは何だったのか、それは不明である。各種族は原因探しに夢中になる。その目は当然他の種族に向けられる。


 エルフが土地をきちんと管理しておらず、獣人は知性すら無くすほどに堕ちている。そんな状況に見かねたアンドロイドたちが反逆したのだと人類は考えた。


 人類が生み出した科学は自然のバランスを乱し、獣人の進化の過程は自然な形を大きく逸脱している。彼らが自然を乱したせいで精霊達が暴走したのだ。エルフはそう考えた。


 獣人達はこう言った。人類は科学の力を、エルフは精霊の力を過信し、頼りきっていた。自らの役割を果たさず怠惰に過ごしていた事こそが原因だと。


 互いの意見は平行線のまま関係は悪化し、次第に小さな紛争が頻発するようになっていった。この状況を魔霊達が見逃す訳がない。今までの報復とばかりに過去に例を見ないほどの魔霊達が各地で暴れだした。


 魔霊達に組織や群れがあったならば、世界は一気に魔霊達が支配していただろう。しかし個々の力が全てである魔霊は連携など無く手近な所から攻め立てた。その為各種族は互いに争い合いながらも魔霊の力に屈すること無く戦線を維持することが出来てしまっていた。


 多数の村や街は焼かれ、破壊されたまま放置されている。大地は魔力に汚染され草木は枯れ果てた。争いの無い地域の森は精霊による管理が無いために樹海と化し、野生の獣以外住む事が出来ないでいる。


 この状況を神霊達は見かねていた。これまでは不干渉を貫き見守っていたが、このままでは近い将来に大地が枯れ果ててしまう。そうなってしまっては生命が存在することは出来ない。これだけは絶対に避けなければならない。


 神霊種達は急いで方針を定めた。現状の各種族は大きな力を持ちすぎている。その力を依代として、自分たちの都合の良い方向に進もうとしている。ならばその力を削いでしまおう。力が無くなれば抵抗を辞め争いは終わるだろう。その後は神霊達が各種族を統率し、争いを治め正しき方向に導こう。是正された後に神霊種は大地を離れ、これまで通り見守り続けよう。



 神霊達は大地へ降り立った。そして各種族の有力者達を次々討伐していった。抵抗され苦戦する時もあったが、圧倒的な力を持つ神霊種に敵うはずもなかった。神霊達は目論見通り計画を進めていた。



 しかしいつまで経っても各種族の抵抗は終わらないどころか激しさを増している。次第に神霊種の力は削がれていった。そこで神霊種達は気づいた。これまで争っていた種族同志が、力を合わせ神霊種に抵抗し続けていたのだ。このままでは神霊達ですらこの争いを止めることは出来ない。



 これ以上力を消耗しては今後の方針にも支障をきたす為、神霊達は一つの賭けに出る。それは自分たちの力と大地のエネルギーを使い、各種族を領土ごと分断し国として統治する事を認めるということだった。

 神霊達は残された力の大部分を使い、城壁とも呼べるほどに大地を隆起させ、その中に各種族を取り込み閉じ込めた。更に城壁外の大地のエネルギーを使い壁の内側に種族を仕切る結界を張り、交流の手段を限定することにした。

 しかしこれだけでは抵抗は収まらない。ただ押さえつけるだけではいずれ反抗が起きるだろう。そこで神霊達は一つの約束事を設けた。四年に一度最も優秀な種族を判断しその種族に繁栄をもたらすと。その方法は種族の代表による決闘によって決めると。



 各種族は抵抗を辞め戦力の温存、育成へと体制を変えて行った。長きに渡る戦争は幕を閉じ、神霊の監視のもと五つの国家が形成されていった。神霊は五つの区の中心に自らが管理する区画を設け、そこから各区を監視し続けている。

 こうして分けられた国家は神霊からそれぞれ人類種区、エルフ種区、獣人種区、魔霊種区、人造種区と呼ばれる様になった。

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