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「......暑い」

 横になった時はさわやかだったのに......太陽が高いトコまで来たらしい。

「んーっ」

 寝返りを打ってみる。......やっぱり、暑い。

「あーっ!もう限界!」

 叫びながら起き上がり、のろのろと手近な茂みの陰に避難すると、もう一度座り込んで背中を丸め、手でパタパタと風を送ってみる。

 悔しいなぁ、目が覚めた。

 ――寝直すには、ちょっと微妙な時間だな。このタイミングで二度寝して、はっと気が付けば精霊世界に押し戻されていたって経験、実はあるし......

 借りたものを壊すのも、やたらに命を奪うのも、どっちも俺の信念に反するんだよね。それをダブルで破るようなマネは、二度も三度もして気持ちのいいもんじゃない。

 特に、この坊やとは色々話もして情も移っちゃってるし。

 ――仕方ない、起きるとするか。

 座ったまま、大きく背伸びをする。背筋が伸びる感覚が気持ちいい。

「――おはよう。お陰様で俺の望みは叶えられた。次はお前さんの番だな」

 久しぶりに少しとは言え眠れた訳だし、お仕事の方も少しはしてあげないとね。

 世の中ギブアンドテイクって事で。

「さ――一体、闇の精霊の力を何に使いたいんだ?」

 髪に付いた細かい草を払いながらそう訊ねる。しかし......

『御言葉はありがたいんですが......貴方ではちょっと......』

 返って来たのはそんな、歯切れの悪い思考。

「なんだよ、遠慮する事ないぞ。下っ端の精霊に出来て俺に出来ない事はないんだから。お前さんには迷惑掛けたし、何でも聞いてやるからさ」

『いえ、貴方では無理です』

 こいつ......言い切りやがった。

「......ふーん。じゃあ、ま、言うだけ言ってみろよ。闇を呼び出した理由ってヤツを」

 こんな坊やの言う事に、いちいちプライドとか、そんな単語を持ち出すのもどうかとは思うけど、ちょーっとね、面白くなかったなー、今のは。

 でも......

『......契約ですよ。俺の配下になってもらう為の』

 ......あ、そういう事か。

 やや口ごもる様子の言葉に、俺も納得する。

「ほんとだ。確かにそいつは俺には無理だな」

 精霊使いと呼ばれる者たちは、呼び出した精霊と契約を結ぶ事によって、召喚の言葉を短縮し簡単に呼び出す事が出来るようになる。ただ、当然だけど、契約出来る精霊は、術士が制御出来るものに限る。

 潜在的な力は強い方とはいえ、この坊やはまだそれを使いこなせていない。今は、俺が主導権を握ってるから力が暴走する事はないが、これが契約となれば主導権は坊やのもの。――その場合、コイツにはまだ、俺の力を押さえ込むだけの力量はないだろう。

「悪いな、お役に立てないで。しかし......代わりにというか、ひとつ忠告させてもらうとさ、闇の精霊の力って、そんなに使用頻度ないんじゃないか?勿論、必要不可欠な要素のひとつではあるけど......契約して、しょっちゅう力を借りるほどのものか?」

 精霊使いが契約出来る精霊の数には、当然、能力による限りがある。有り余る力を有していて、折角だから......とかなら解るけど、今の坊やなら闇よりも、もっと使いでのある精霊と契約した方がいいんじゃないかなあ?――水とか火とか、大気なんかの方が日常でも色々役立つし、戦いに巻き込まれても便利。が、闇となると精霊の中でもかなり扱いにくい上に象徴的意味合いの方が強いくらいの存在だからな。

 一日の半分が、ほぼ俺の力の領域であるとは言え、だからどう?と言う解り易い、かつ有効な闇の力の利用法なんてなー......俺が教えて欲しいくらいだよ。

『何に使うという事ではなく、必要だと感じたんです』

「......ふーん」

 変わった奴だな。

 別に、闇と悪意とを結び付けて勘違いしている三下な悪党って訳でもないのに、闇に惹かれてるって言うのか?

 ......って、ああ、そういう事かな?

 なるほどねー、昼寝しに来ただけだったんで、そこまで意識働かせなかったよ。

「お前さんの中の、その無意識に闇を求める理由、解っちゃった」

『えっ?』

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