クロウドとマグラ
こんにちは、すらいむ[N]です。
マグラ2話です。
自分ではうまくできたと思います。
感想、アドバイスもお待ちしております。
レノはふと目を覚ました。
まだ辺りは暗い。空には星たちが瞬いている。
周りには、昨日の戦いで疲れきっている仲間たちと、昨日戻ってきた化け狸のテトが眠っている。
レノ自身も疲れが残っていたのでもう一度眠ることにした。
「魔王様!ここは私が食い止めます!!どうかお逃げください!」
若い魔物は魔王に申し出た。
「駄目だ。お前は仲間と共に神殿へ行け。」
魔王は巨大な剣を抜きながら言った。背丈は人間の三倍ほどある。黒いマントをなびかせ、紅色の甲冑を身にまとっている。
「しかし・・・」
若い魔物は引き下がらない。
「行け」
魔王は振り返らずに語る。その背中は大きく、魔物たちの頂点に君臨する魔王の背中だ。
「はい」
若い魔物は頷くしかなかった。そして魔王城を抜けて、神殿へと走った。
それから五日間。魔王と勇者一行の死闘は<バルドガリア>全土を巻き込んだ。
五日目、若い魔物は痺れを切らし、戦いの舞台へ行くことを決めた。
魔王と勇者一行の戦いの場所は最初の場所、魔王城だった。
魔王と勇者一行の戦いも終盤を迎えていた。
お互いの魔力も残り少なく、五日間の戦いで疲労していた。
魔王は破壊呪文を唱えた。黒い禍々しい波動が魔王の右手へと集まる。魔王はその波動を圧縮し、球体にした。それを勇者一行へと放った。
ズドオオォォン!!
凄まじい音と共に辺りに煙が舞った。煙が晴れかかった時、戦士、魔法使い、僧侶がそこに倒れていたが、勇者の姿がなかった。
「うおおおおおおおお!!!!!」
轟く咆哮を発しながら魔王の右肩辺りに勇者が現れた。剣を大きく振りかぶり、全力で降り下ろした。
ザンッ!!!
魔王は右肩から斜めに一文字に切り裂かれた。
だが、すぐに巨大な剣を握り、横に薙いだ。
勇者の小さな体は軽く飛び、魔王城の壁に激突した。ガラガラと壁が崩れる。
魔王は持てる魔力で大きな傷を修復しようとした。
しばらくすると瓦礫の中から勇者が現れた。
剣を杖にしながら魔王の元までくると、見上げながらこう言った。
「そろそろ終わりだな。俺がアンタを倒すか、アンタが俺を倒すか・・・」
勇者は剣を構え直し、最後の攻撃の姿勢を整えた。
「そのようだな。だが私は倒れるわけには行かぬ。私は魔王、この世界の覇者にして最強の王。私を信じてついて来た仲間たちを残して逝く訳には行かぬ!!」
魔王もすべての魔力を一撃に込めるために準備をした。
『うおおおおおおおおッッ!!!!!!!!』
二つの頂が魔王城にて激突した。
聖なる光と邪なる光、お互いに一歩も退けをとらなかった。
その時、若い魔物は既に到着しており、離れた場所から見守っていた。
ズバンッ!
不意に魔王の体に炎球が当たった。
魔王はぐらりと揺らいだ。
そして聖なる光が圧倒した。
若い魔物は炎球が飛んできた先を見た。そこにはボロボロの魔法使いが立っていた。
「うわぁぁぁぁあぁあぁああぁ!!!!」
若い魔物は己の剣を抜き、魔法使いに斬りかかった。そのスピードは若い魔物が出せるスピードを遥かに越えていた。怒りにより箍が外れ、種の本当の力が溢れでたのだ。
我を忘れた怒りの一撃で魔法使いを叩き斬った。
ガキンッ!
鈍い音で、若い魔物の攻撃は受け止められた。
剣は双方からの凄まじい力で砕け散った。
受け止めたのは同じくボロボロの戦士だった。
戦士は剣を防ぎきるとその場に崩れた。
若い魔物は拳を握りしめ、戦士と魔法使いをひたすら殴り続けた。己の拳に血が滲んでも止まることはなかった。
するとそこへ、魔王に押しかった勇者が襲いかかってきた。
若い魔物は死を覚悟し勇者を睨んだ。
だが勇者の斬撃が 若い魔物に届くことはなかった。勇者と若い魔物の間には黒い力の壁があった。
それは魔王が最後の力で作り出したものであった。その壁はすぐに壊れ、砕け散った。
「勇者よ、お前の勝ちだ。私を殺すがいい。だが私の仲間に手を出さないでほしい。私の大事な仲間たちだ。仲間たちにはこの先人間を襲うことなく平和に大人しく暮らせと言ってある。」
魔王は絶え絶えに言った。
「それがアンタの願いか。最後の勝負、魔法使いの一撃がなければ倒れていたのは俺かもしれない。その時は俺もアンタと同じようなことを言うだろう。 わかった、俺はアンタの仲間たちに手を出さない。だが、アンタの仲間が人間を襲ったとき、俺の仲間か俺の子孫がそいつらを大人しくさせるからな。」
勇者は魔王の願いを聞き入れた。
それから魔王は、若い魔物に言った。
「お前はこれからの魔族を導くのだ。私が死んだ後を任せられるのはお前しかいない。人間を襲わず、平和に暮らすのだ。」
若い魔物は涙を流しながら頷いた。
その後、勇者一行は敬意を込めて魔王を倒した。魔王は最後、若い魔物にとある力をを託して黒い光となって散った。その姿は最後まで「魔王」らしく、威風堂々としたものだった。
それから若い魔物は勇者と共に神殿へと向かった。魔物のたちは驚いたが、若い魔物が落ち着かせ、これからの生きる道を勇者と語った。
納得ができない魔物には、若い魔物の力で魔王の最後の言葉を伝えた。
その後、勇者は戦いの傷が元で死んだ。
葬儀には共に戦った戦士、魔法使い、僧侶、そして若い魔物が参列した。
元々人間の姿に似ていた若い魔物が、他の人間に気づかれることはなかった。
クロウドは過去を思い出して、夜の星たちに涙を流した。クロウドの中には、忠誠を誓った魔王の姿がしっかりと残っている。
あの時、自分がマグラを使えたらと思うと悔しくて仕方がない。
今、傍で眠っているレノがかつての魔王によく似ていることは、クロウドだけの秘密だ。
どうでしたか。
よければ評価、感想、アドバイス、お願いします。