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ナインイレブン異世界支店

ナインイレブン異世界支店 久藤シフト

作者: 久藤雄生
掲載日:2011/05/31





時給に釣られて始めたバイト。

あなたのコンビニ、ナインイレブン。



俺のバイトしているコンビニは、一風変わっている。

何が変わっているかというと……。


「おう、兄ちゃん。カラアゲたんと塩味くれや」


まず、客層。

このコンビニの客の九割五分九厘は重装備だ。

鎧や兜装備はザラ、剣や弓を持っている人もザラ。

ついでにいうと自称魔法使いもザラ。

あれだ、ある条件を満たした30歳過ぎの男性がなれるという魔法使いではない。

ちなみに俺は、もうなれない。

ってそんなことはどうでもいい。


「はい、カラアゲたんノーマルひとつ、塩味のポップコーンひとつですね」


「ほらよ、これでどうだ? 良い鉱石だろう?」


つぎに、通貨。

このコンビニの取り扱いは日本円ではない。

つうかぶっちゃけ物々交換だ。

主に鉱石やモンスターの素材で取引される。


「このカラアゲたん、うまいんだよなぁ。俺ぁノーマル派なんだが、一体何のモンスターの肉なんだ?」


「ははは、それは企業秘密ですよお客さん」


そして、商品である。

勿論、普通のコンビニで取り扱っているような弁当・ドリンクなどもある。

しかし人気が高いこのからあげたん。

何の肉を使っているかというと……。


「小林くん、今日の分捌けたわよ」


「ありがとうございます、橋本さん。あの……返り血浴びてますよ……」


「あらやだ。また子供が泣いちゃうわ。落して帰らないと」


えぇ、ぜひそうしてください。

橋本さんはからあげたん原材料のロックワームを、大きめだけど普通の包丁1本で捌く凄腕主婦なのである。

ちなみにロックワーム、岩場に生息しているだけで、岩で出来てるわけではない。

店の事務所から繋がる、地下ダンジョンに生息している。

主要商品であるポップコーンの仕入れの時、一緒に納品されてくるのだ。


さて、もうお解り頂けたかと思う。

そう、ここはナインイレブン異世界支店、なのである。







「か、かかかかか金を出せ!」


「は?」


おぉ、初のコンビニ強盗だ。

って感動している場合ではない。

ここは異世界であって、日本でない。

警察が来るわけないだろうし、保険も効かないのではないだろうか。

こういう時に限って相方のハルは休憩中だ。


コンビニ強盗は声と体つきからして中年男性。

ごく普通の鎧と兜、手甲などを身につけている。

もうごく普通なんて言ってる時点で馴染んでるな、俺。

あぁヤダヤダ。

いくら時給が良いからってやめときゃよかったかなぁ。


「な、何をしている! 早くしろ!」


両手剣を突き付けられて、俺は大人しくレジを開けた。

レジの中身、銀貨3枚程しか入ってないんだよな。

だってこの店は物々交換。


「はい」


「……え、これだけ?」


「何ならレジの中見ればいいんじゃねぇっすか? 入ってないから」


強盗はさっさと銀貨を掴み逃げていった。

あーあ、オーナーに怒られるんだろうなぁ……。

これがギンちゃんだったら怒られないだろうし、そもそも山崎さんやアキラさんなら難なく撃退出来るに違いない。


案の定こっ酷く怒られた。

あれ俺なんでここで働いてるんだっけ。





癒しを求めて地下ダンジョン。

地下ダンジョン入口階段付近に、実はホワイトタイガーの子供が住み着いている。

バイトの日は必ず廃棄弁当を持っていくおかげか、俺が行くとすぐに寄って来る。

最初は警戒心ばりばりだったが、今では抱っこも出来るようになった。


「はぁ……お前だけが癒しだよ……」


バイトを辞めるとこいつとも会えなくなるんだよなぁ。

そんなの耐えられん。

だがしかし、いずれは辞めなくてならないのだ。

今は学生だからバイト出来てるけど、もうすぐ就職活動だ。

この店に社員登用さえあればなぁ……。


「はぁ……そろそろ戻るか。また明日な」


名残惜しいが休憩時間はもう終わりだ。

最後にひとなでして地下ダンジョンを後にした。




「かかか金を出せ!」


「ってまたかよ!」


先ほどの男と同じ声、同じ装備。

同一人物じゃないか。

しかもハルは上がりで、またもや俺一人。

何だこれ、俺が狙われてんの!?


「いやもうないし。さっき持って行っただろうが!」


「あれっぽっちなわけないだろ! ここが繁盛店だってことはわかってるんだ!」


どうやら思い直して戻って来たらしい。ちっ。

強盗は両手剣を持ち直し、その切先を俺の喉元に突きつけて来た。

っていうか金くらい働いて稼げよ!

異世界じゃ定職がなくてもハンターとして金を稼ぐことが出来る。

弱くても採取って手があるんだし。


首がちくりと痛む。

くっそ、頸じゃなくて心臓にしてくれれば良いのに。

ここの制服は防御補正が掛かっていてるのである。

覚悟を決めたその時。

白い物体が高速で飛んできた。

強盗の手元に喰らい付く。


「しろ!」


地下ダンジョンのホワイトタイガーである。

俺のピンチに駆け付けてくれたのか! 

何ていいコなんだ……!


「うわあああああ!」


しろに手を食い千切られそうになった強盗が、悲鳴を上げながら逃げ出した。

おい血ぃ拭いていけ!

掃除大変なんだよ!


「しろ……ありがとうな」


しろを抱き上げ頭を撫でる。

気持ちよさそうに目を細め、俺の胸に寄り掛かって来る。

何てかわいいのだろう……。

あぁ連れて帰りたい。

ホワイトタイガーって日本で飼えないんだっけ?


そして(本人的には)感動的場面を見ていた冒険者により、ある噂が広がった。

あのナインイレブンという店には、モンスター使いが雇われている、と……。


実はホワイトタイガーだと思われているしろが上位のモンスターだなんて、知らぬは本人ばかりなり。






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