表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
日本の定理・下巻  作者: 泉川復跡
【『算額主義』編】第十七章。薔薇を噛む鱒
2/2

17.2.「川流れに逆らって泳ぐ鱒は、沿って泳ぐ同士より獲りやすい」

「よし。先生達の手紙はうち達の友達の後に届いたしね。軽部(かるべ)先生、森坂(もりさか)先生、松山先生など。勿論、特には松澤(まつざわ)先生と城木(しろき)先生だ」、私が二度目で郵便局に行き先生達の手紙を含んだ箱を運んできた。この二度目は結構気軽だった、三倍も重い友達の手紙箱を持って来る一度目より。

「お前が楽しみにし過ぎて俺の代わりに郵便局に行ったんだ。今更お前の懐中時計はまだ光ってないわ」と言った純彦君。

「それに、弾丸を撃たれた腕の筋を調べたいんで、右腕でしか運ばなかったの。降恆ちゃんも撃たれたのに、早速白衣を着て治療を施してる。暇が沢山な私ならなんとかしなきゃ駄目だ」

「やっぱ負けず嫌いだね、あんた」、降恆ちゃんが言って病室に戻った。「夕食を食べたところで早速郵便局に駆け上がったじゃん」

「郵便局はここから遠くないし、私も暗闇で走れるし、ちょっと体内のエネルギーを放出したら悪くないもん」

「食べたばかりで走るなんてお腹に悪いと分かってるでしょ・・・先生達は何を書いた?」

「先生達の抱えた感情だね」と私が答えて先生達の手紙箱を開けた。森坂先生はいつもの姉上らしい言葉を使って、記者達が新聞に述べた私達の評論を感想したり、倉崎さんが良ければ白濱と八田蜜を見学したら嬉しいと述べたりした。軽部先生は赤外線の眼鏡のことを把握して褒める一言を送ったが、交流電流発電機との比較で電線の繋ぎ方の難しさを述べて、まだ真っ直ぐ整っていなかったし、蛍光体の紙との繋ぎ目がまだ緩まっていて赤外化の画面がレンズに最高に写っていなかったし、克服すべきだとも評価した。さすが、私の発明家の職業の『審査官』である軽部先生だね。松山先生は『花火團』の三男子に荒野の蜂蜜のように最初に甘いが最後に苦い言葉を面白く伝えた。特に純彦君に小田原に帰った時幾何学の問題を書いた百枚の絵馬を罰として受けて貰うことだ。どうりで自分の担任教師の手紙を受けた後の純彦君が顔を(しか)めたね。先生自身も吉岡君の大変さを緩めに、自分の魚市場らしい学級の騒ぎを授業の面白さと混ぜ合わせるように収めたのだ。

「ところで、厚喜さんはもう東京に帰った?」と急に聞いた降恆ちゃん。

「うん。先輩は黄昏前帰った。町の警察の馬車に乗らせて貰って籠坂峠を下る向きで、灰玉(はいだま)駅で列車に乗ることに」と純彦君が答えた。

「えっ、あんな数十キロメートルの経路なのに町長に許可して貰った?多分、憲兵達と帰ったね」

 私が返事した。「あの二人の士官は保証人とならなければ、そういう険しい経路を行くのを許可されなかったんじゃないか。しかも県境を越えて険しい峠を下って、安全の為秦野に一日で泊まるって」

「そうだったら、だんま峠に届くまでにまだ夕焼けにならなきゃいけない。この町の役場から彼らが出発した時は少なくとも今から四時間かもしれないよ。山口家の最終列車は9時に運転するのだ」

「灰玉駅に行くならあんたのおとんの列車に乗るはずや。旅館に戻った時、彼が慌ただしゅう荷物整頓して去る前に手を振ったのを見た。『山口ちゃん、沙也香(さやか)ちゃんと越川こしかわ君に僕の別れ言葉を伝えてね』と彼も言った」と智埼ちゃんが言って、厚喜さんの声を真似た。

「慌ててるといえば、自分の豪邸に出来るだけ早く帰って先ほどの写真を現像するでしょう。この町で現像すれば都合が悪いかも」

「だから、先輩達が昨日から帰京してるの。厚喜先輩は笠人君の誕生日を撮るので最後に帰った。現像の道具を持ってなかったし」

武蔵野(むさしの)先輩もね。確か若狭(わかさ)博士と東京大学の管理職に報告したり、直本(なおもと)さんにも教えたりする為だ」

「先輩達がいかにしてもなるべく樹海の中の写真を証拠として新聞に早く載せて貰いたい訳さ」と言った純彦君。「那月さんの亡霊は俺達の企画に不意を打ったことで、俺達が『まだ整ってない覚悟』になって憲兵の疑惑に勝てたんだ」

 笠人君が言った。「夏祭りは全然違っただろ。一週間の経過をさっぱり写して写真集にして数百人の客に配ったなんて。この時代の現像はとんでもなく荷厄介な道具を求めるし、あんなことが出来るには馬車で運んでトイレに仕組むしかなかったよ」

「せやねん。厚喜はんの暗室に入った時、織機ぐらい大きい水槽や、厚喜はん達行った現像の段階を目撃したんや。そやさかい直本先輩と一緒に厚喜はん達のいう通りあのぐらいの手洗い器を作ったわ」

「それのせい、トイレの床がびっしょり濡れたの」とナギちゃんの家で先輩達と話し合う夜に、暗室を建て要らないと主張したね、厚喜さんが。初代の写真家みたいに欠乏感を経験したがったし、外の光を吸収出来る黒い幕、干し竿やケミカルを持って来てた」高橋ちゃん達の手紙を読み掛ける倉崎さんも言い出した。「夜間ですれば、丸端(まるばた)君達が降恆さんに大変叱られてしまうので、昼間でするしかありませんでした。ですから最初の写真には暈けたり黄ばんだり焼けたりする所が散ったのです」

「はい。暗闇が不足な空間で現像出来るなら、灯りと並行して人物を撮らないといけなかったのです。人が顔を灯りに晒されちまったら、写真にただ真っ白な顔しか写らなくてお化けと違いません。先輩達は陰の七割と陽の三割という法則に撮影しましたね」と私が説明した。

「もしかして丸端君達の撮り方によって貴方が赤外線の眼鏡のことを思い付きました?」

「いいえ、それまでじゃありません。夏祭りの閉幕を発表して写真集を貰って自分の色々な姿を見て初めて、第二の企画に関する質問をしたのです。もし誰かが行方不明になったら警察達が肖像画の代わりに写真に頼れると気にしました。今まで肖像画で人探しをしてますから」

「そうですけど、そうしたら誰もが写真機を手に入れないといけないでしょう。丸端君の家みたいな富豪だけが余裕あります」

「だから厚喜さんに会って少年祭を開いた頃、5年2組で撮影が好きな皆にコダックの写真機を与えました。ただ無料じゃないので、少年祭の利益から一部分を支払ったんです。あの催しの利益はどんな大きかったのかも分かりましたね」と言った笠人君。

「夏祭りの三割ぐらいんだ」と純彦君が賛成し、ポケットから赤外線の眼鏡を出した。「どうしても写真は人物の独特さの確実性を高めて人探しの時間を縮むから、俺達の赤外線の眼鏡を細工に出来た。敵を追うか、或いは人を救命しに使えば良い」

 倉崎さんも箪笥から一台を取り出した。「うん、軍事にしか使わない訳じゃありません。これは複数に生産したら、事故や自然災害に巻き込んだ人が生存の可能性が高まります。消防士はこれを好めるようになりますよ」

「青木ヶ原の旅は基本的に人探しで救命の旅だし、こういう眼鏡は必然役に立つのです。但し、暗闇の環境で作戦を施すといったら、これは最強の武器に違いないんで、国の軍事を促進すると望む人達の宝です」と私が言い続けた。

「だったら日本だけでなく他の国もがこの眼鏡に欲しがるんだ。此奴に仕込んだ上級技術は世界を騒然させる十分だ」

「確かに、スミヒコ君。もしテスラ殿がこれを作ったら多分公に通報しない。どんな国でもある発明に欲しがったと、自分の軍隊を優先に装備させる。軍事の極秘は本国を守ったり他国に圧力を掛けたり出来るし、どんな政府でも重んじる対策だ。ある科学者は恐ろしい武器を作っちまったらどんな感情が顔に見えるのか、私が思い浮かべない」、床に散らかしたパズルピースのようにばらばらそうな言葉を私が言った。

「なるほど。眼鏡を作る前に躊躇してたのはそれですか」、遂に城木先生の声が出た。倉崎さんはどう驚いたのかとは言うまでもなかった。

 私が懐中時計を掌に置き皆に見せて返事した。「城木先生。もう十日間無沙汰してます。私達をずっと見守っててくれましたね」

 倉崎さんが戸惑って声を掛けた。「その声は貴方の電話からじゃありません。その懐中時計の中には一体・・・」

「こんばんは、倉崎沙也香さん。城木阿波郎(しろきあばろう)と申します。盾が貴方を予め掛けたんです。もっと大きい声で話し掛けても患者達が聞こえませんよ」、『新参者』に仕方なしになった倉崎さんに城木先生が挨拶した。誘拐犯っぽい声質で彼女をよりうっかりさせた。

 純彦君が少し笑って言った。「なんか黒幕でいる人間みたいな声ですな。倉崎姉さんがこの秘密を知る機会はずっと期待してますから」

「倉崎さんを追加すると私達の正体を知る12人目です。但し、そういう12人目の資格を取る前に、ちょっと課題に挑戦して貰います」

「ちょっ、ちょっと待って下さい。まずその懐中時計に何があったのですか?」、倉崎さんが自分を一番当惑させるのを質問した。

「はい、姉さんを待たせないよう、これです。私のお守りの中にしまったもの」と懐中時計の蓋を開けながら私が言った。二枚目のパズルピースをトランプカードのように持って見せ、倉崎さんを御伽話に落ち込むように唖然とさせた。「一枚のパズルピースです。先生の声はここから出てきてます。姉さんが指を一本当てると揺れを感じますよ」

 倉崎さんがこうやって指先に微かにびびった。「電気がした。じゃあそのジグソーはあの電話と同じじゃありませんか?」

 城木先生が答えた。「そうですけど、あの電話より機能が沢山あります。ただ貴方に今から説明したら最低でも二日間掛かるぐらい長い話なので、むしろ私達が施すことをなるべく自ずと把握して貰うように、入試とする挑戦を与えたいと思います」

「さてと、松澤先生が何を封筒に入れたでしょうか?」、倉崎さんにパズルピースを渡したのち、私達の担任の松澤先生の封筒を取り出した。同じ数学教師だが、松山先生が純彦君達を兵士のように厳しく扱い彼らの根性を叩き直す悪戯をする一方、松澤先生が私達女子を魂がある数字と点のように見て世界の定理と数式を仕組む為に私達を自立な個体になるように教育する。つまり、もっと大人らしくなってこの社会が押し付けた法則の正しさと間違いを区別出来るように教える。先生の手紙は四分で折られ、『もう八分待機して開けよ』と書いただけだ。恐らく私の代わりに倉崎さんへの数学問題を含んだようだ。倉崎さんが私達の側になったことを知るかないかも構わず、彼女を単なる学生と前から認めたかもしれない。勿論、ラッシュナトゥール人の末裔として『交差のパズルピース』をも入れたでしょう。もう一つの企画が終了したし、もう一枚のパズルピースも見つかったしね。

「あー、『交差のパズルピース』だ。読むとは00S1」と呼び出した純彦君。

「00S1だとすると、このパズルピースの右側に組み立てられる。そして私達の『返事のパズルピース』も」

 私と純彦君が暗号を送るように言ったところ、倉崎さんがしっかり考えて呟いた。「0と1。Sは下。そして時計回り・・・うん、あたしが分かってますよ、そのジグソーの読み方は」

 私が倉崎さんの肩を叩く前に、こう喜ばしく言った。「ひひっ、そう来なくっちゃ、姉さん。学者の魂がずっとありますから。あの算額問題を解く姉さんの姿を見た時に、私が既にこう認めました」

 倉崎さんがあの算額問題の内容を覚えようとし、少し遠慮して返事した。「まさかね。君と松澤先生に助けて貰わなければ、もう時間掛かって法則が見つからないほどな気配になりましたわ。ルーレットから球を落として56番を得た時、まだ算額は知ったことありません」

「でもその後分かりましたでしょう。算額は高尚なものじゃなくて、賢人達が絵馬に書いた幾何学の問題の集まりですという」

「ということは、こういうジグソーは空から降る雨みたいなもんじゃなくて恐ろしいほど奇才な人物達が作ったもんですね。でもどうしてこのジグソーを正しく読めるようになりますか?時計回りに読んでもこの四つの辺でどっちから始めるのを迷ってしまうのです」、倉崎さんがやがて学者の魂をしっかり掴んでとても良い質問を挙げた。

 私が笠人君の隣の箪笥の抽斗を開け一枚目のパズルピースを出した。「これは私に夏休みの前から付いてきてる最初のパズルピースです。松澤先生がお守りに入れて贈ってくれたのです。姉さんが持ってるのは二枚目。そっと触れたら金属の滑らかさがしたでしょう。金属性なので電球に当てたら艶やかに見えて、読み方の法則もこれから現れてきます」

 倉崎さんが箪笥の上のランプの灯りを整えてパズルピースに向けた時、最早それの光沢の異変に気付いた。「どんな回しても読む順序もそのまま。光沢は時計の針みたいに一周回転した。ただ、読む順序の逆さまで反時計回りになったのです。10S1だとしたら、1・S・0・1なの」

「渡邊さんもその現象をずっと見てて同じ自問したんですね」と城木先生が声を掛け、私が頷いた。「金属の感じがするけど、実は人工的合金から生成されたのです、倉崎さん。人工的なので私達が合金を構成する金属元素の原子の結合を図案通り支配することが出来ました。そちらの合金の光沢は日光によって回転の方向を交替することになります」

「つまり、朝になったら時計回り、夜になったら反時計回りということですか?なんて不思議な現象ですよ」と返事した倉崎さん。

「その通り。『花火團』にも前から言いましたね、パズルピースが日光で電気を生成することを。晴れにも曇りにも日光に晒した場合、日光の放射線がピースの目印とされた辺から電子を押し始め、電磁場に加えてコイルのように動き出します。日光が消えた場合、エネルギーを保存する為、放射線が不足な人工的光源にしか頼らないし、熱を放出して逆方向の電流を作ったんです」と城木先生が倉崎さんにきっちり解説した。

「このパズルピースは自ら電磁場を作ったんで、ファラデー殿の電気誘導の法則に従うものです。だが夜になったと、熱を出す渦電流を作ります。交流電流の発電機を作った頃、私がその二つの知識を頭に刻まなければなりませんでした」

「城木先生達の科学からしてはそのパズルピースが彼らの頭脳の頂上です。俺達のこの時代の科学で解説したら全て分かり切れるはずがありません。いっそ今あった全ての法則で分かると、もう謎にならない気がするんです」と言った純彦君。

「うん、かなり納得しました。城木先生が解説して下さったことで、鱒達を連想してます。幼い頃、あたしの家族は那月ちゃんの家族と千葉県の森に行きました。少し薄い泉の辺に止まって天幕を張ったのです。あの頃は真夏で鱒などの魚が多く集まるので、あたし達が竹から作った釣り竿を持って来てどっちの家の方が多い魚を獲ったかを勝負してました。釣る間に、水の流れに逆らって泳ぐ鱒が沿って泳ぐ同類と通りすがり合ってまるで水底の交通みたいだと見たのです。ただ、逆らって泳ぐ鱒の方が遅いし、沿って泳ぐのを狙った少女のあたしと那月ちゃんを随分困らせてました。素手で捕まえようとして水の中に落ち込んでしまったこともありましたよ」

「俺達は熊じゃないから、逆らって泳いで卵を産む鱒を獲ってはいけないもんね。逆らって泳ぐ鱒は、沿って泳ぐ同士より獲りやすいだとは言え、獲って食ったら沿って泳ぐ同士に危険を及ぼし、彼奴らの完璧な循環をぶっ壊してしまう」と笠人君が言った。

 降恆ちゃんが意見を挙げた。「そうだけど、逆らって泳ぐ鱒は全部雌という訳じゃないでしょう。ナギちゃんから聞いたと、雄の個体も逆らって泳げるということだ。彼が原崎はらさきおじさんと箱根近くの森に二日間泊まった頃、ある滝を登ろうとする数匹の鱒を獲って焼こうとした。あの数匹には卵がない奴がいたよ。奴らが川上で雌の個体に会おうとしてる可能だ、とナギちゃんが纏めた」

「雄でも雌でも逆らって泳いだと、出産に参加するでしょう。数匹を捕まえても悪くないかもしれないけど、大量なら生態系を無茶苦茶にしてしまいます。あの頃、あたし達がそう教わりましたから」と倉崎さんが感想した。

 城木先生も鱒について評論した。「実は倉崎さんの言う通り、数匹を捕まえても悪い影響が足りません。熊といった鱒が好きな野獣は逆らって泳ぐ鱒を大きな顎で食事にして食物連鎖を守るという証です。部族で毎日を過ごした頃の人間もそういう野獣と違いなかったし、槍などを水に突いたと、逆らっても沿っても鱒が彼らのお腹に入るしかなったんです。大したのは食物連鎖の隷属からどんな風に支配者になることです。支配者になったら食べるか食べないかどうでも良い。それじゃあ、鱒に関して算額問題を倉崎さんに送ったらいかがですか?」

 降恆ちゃんが興味深くなった。「良いじゃない、それは?多分、先生が滝を場面にして二つの鱒の群れが反対方向に泳いで、ある時間後、獲った逆らって泳ぐ個体の最小値或いは最大値を求めるというような問題を出しますね」

 私が少し笑って返事した。「ならそれぞれの群れの平均速度は必要なこととか、群れのそれぞれの個体の速さが何かの法則を守ることとか、釣り竿を使う場合餌を水に突き込む速さは魚の泳ぐ速さに追い付けることとか、などなどを求めるって物理問題に変わっちまうの」

 智埼ちゃんも言った。「しかも逆らって泳ぐ魚の値を求めるっちゅうのんは背徳で数学問題にしたらあかん。でも背徳さを避けるには、確率を使ったらどや?滝を登ると、彼らが思いっきり体を押し張って飛び越える。沿って泳ぐのを釣るつもりやったが飛び越える奴がいきなり餌に引っ掛かってもうたっちゅう場面や。こないしたら少し狡猾じゃ」

「ひひっ、あんたはさ、もうマサちゃんとそっくりじゃないか。『私が悪くない。あの魚がいきなり餌に掛かっただけだ』って言い訳をするつもり?『だからどうして水に落とし返さないか?』って誰かが問い掛けたらどう言うの」とにっこり笑って応えた降恆ちゃん。

 城木先生がまた声を掛けた。「荒野の動物を中心にする算額問題になら、人間などの外力をちゃんと述べない方が良いと思います。鱒なら鱒の群体の生活だけです。外力が参加すれば複雑さがとんでもなく上がって余計になる。算額はたった凝縮な文や鮮明な絵を求める。さもなければ研究者だけが解ける物理問題になってしまいます。数学はゲームによって好まれることで、ゲームに関して考えましょう」

 純彦君が丁度今考えていて意見を挙げた。「鱒らの争い合いはどう?熊に食べられる可能を除いて、雄の奴が先に川上に到着して雌が卵を産む場所を探して他の雄から守らなかればならない。まだ見付けてない奴が同士と争奪したり、見付けた奴が岩とか花弁などを蓋にして保ったりする。もし奪われたら、雌がまだ来てない限り、他の所を探しても良い。雌が来たら、やむを得ず探し終わる。こうしてある時間後、産む場所を守り抜いた個体の総数はこの問題の目的だ」

 城木先生が返事した。「それも良い発想ですね。ただ、互いに争奪したら死なされるまで揉み合うこともありますよ。どうせ受精が終わったら雄も雌も死んでしまって新たな命の循環が始まります。争奪というのは子供の個体が安全に産まれる為に、成長済みの個体が自分を犠牲にしても構わないことです。それでこういうゲームは生き残る為のゲームに過ぎません」

「分かりました。でもこのゲームを実際に遊ぶといえば、限りある人数が制限時間以内で相手の席を取り奪ったり自分の席を守り抜いたりするだけだ、という原則にすべきです。決して傷付け合ってはいけません」と私が言って松澤先生の手紙をやっと開いた。私がまた驚いたわ。この図はいつの間にか生成されたの。

「とうとう開きましたね、渡邊さん。私達の思いを読み抜けたとは松澤先生のことが奇術師過ぎでしょう。多分、鱒は富士河口湖などの山地の名物だし、偶然だと思いませんわ」と城木先生が独り言を言うような声を掛けた。

「那月さんを通して松澤先生が『交差のパズルピース』を作ったでしょう。風穴を探す算額問題からみたいな気がします」と私が応えた。

「そうかな。まず倉崎さんにその図を見せて問題を解いて貰ってね」、城木先生が私の予想を確かめるように倉崎さんの算額の挑戦を始めた。この問題は『返事のパズルピース』の答えへ導くという訳だ。

 薔薇を噛む鱒・ある川上はヴィ形で幾何学化される。このヴィ形は川の幅ぐらい3間の長さの正三角形が川上と川の移行、二つの四角形が両側で合同で相称だという、以下の図に描かれる。正三角形をABC、両側の四角形を左からABDE、ACFGと名乗る。川上の壁とするBDとCFはBCより2.5倍長くなり、川上の端とするEDとFGはBCの半分ぐらい長くて並行する。AEとAGは水を初めて流す源である。DEとGFは五つの部分に分け合ったことで、五つの水域を区切る。その五つの部分の中点は産卵穴とし、十個の穴を生成するという。初めに、五匹の雄鱒が滝を越して穴を上手く見付けた。その後、5分毎にもう五匹が到着し、残る穴を見付けり、穴が一つも残らない場合に前に見付けた相手と戦って奪おうとしたりする。穴を守る確率というと、まず水域、次に鱒の抵抗によって確定される。川上にもっと深く入るに従い確率が高まる。そして、穴を見付けた全ての個体が奪いに来る相手と揉み合い確率が5%で増加。なお、その中で四割は予め川に流れた薔薇を噛み穴を塞ぎ確率がもう5%で増加。一時間後、雌が川上に届きこの争奪戦を終えた。確率が少なくとも75%を達したら守り抜くというと、産卵穴を守り抜いた個体数の最大値を求めよ。

 挿絵(By みてみん)

 透明な盾がもう消えた。私の万年筆は書きに、純彦君のそろばんは計算に、手紙箱からの裏地の紙は下書きに倉崎さんが自分の病床に持って行き、自分のランプを整え、箪笥に身を向けて解き始めた。私達の注目は笠人君の病床から彼女の病床へと移転した。正三角形、並行の関係と中点はこの問題の注意すべきものだ。一時間後守り抜いた鱒の最大の数が見つかるように、外から中へとの五つの水域の面積がどの法則に従うのかを気になる。但し、この五つの面積が分かればまずこのヴィ形がいくら大きいかを計算する。BCは3間なので、BDとCFは7.5間、AEとAGは1.5間となる。ABCは正三角形なので、全三角が60度。川上の端がBCと並行した為、角DECと角BGFが120度。BCが同じ辺である二つの台形BCEDとBCFGはなんか平行四辺形のような気がしたが、DEとBCが半分の比例故に単なる台形だし、BDとCFがECとBGより短いとも予想出来た。

 鋏を借りたいと倉崎さんが求めた。直ぐに降恆ちゃんが外に出て道具の倉庫へ走ろうとした。数分後、澁薙君もようやく夜間の割り当てを完成させ鋏を持って来る降恆ちゃんと戻った。鋏を待つ間、倉崎さんが咫で正三角形ABCの辺に基づき、CEとBGの長さを推測した。鋏を持ったら、彼女が手紙を三角形の右辺に折り、C点で小穴を突き、そこから三角形を切り抜いた。三角形が自分の影を下に、階段に上るようにE点とG点までもう二度移動した。CEとBGは三角形の辺の長さの三倍よりうっすらと小さくて凡そ8.2間、と彼女が確認した。こんなに相称な図なら、最後の結果へ導く水域の面積の変遷は辺の増減だけに関係があるわ。ヴィ形の全体の面積を計算するのは必要ない。

 楔に似ている源の地がこの川上を『乙』の水域から二等分に分けた。『甲』の水域は等脚台形、『丙』から『戊』へとは対称性の二つの台形の一方で、『乙』はA点がさっぱり内に入っちまって太いヴィ形に違いない。倉崎さんが三角形を元の所に置き直し、EとGからBCに辿り着く二本の直線をBDとCFと並行するように引き、台形の中の菱形を生成した。意外でなく、二本の直線の終点がBCの中点。これからDEからBCへと各水域がどう膨張したのかを実現する訳だ。次に、角BDEを計算する、BEと余弦定理を通して。三角形BCEの辺故に、BEは\sqrt(8.2^2 + 3^2 - 2*8.2*3*cos(60)) = \sqrt(8.2^2 + 3^2 - 24.6) ≒ 7.2間。よって、角BDEを余弦にすると、(7.5^2 + 1.5^2 - 7.2^2)/(2*7.5*1.5) ≒ 0.312という結果だ。さて『戊』の下底は端よりどう延長した?ECとBGも五等分に分けたところ、『戊』の下底をxとすると、x^2 + (8.2/5)^2 - 2*x*(8.2/5)*cos(60) = 2*1.5^2 - 2*1.5^2*0.312という二次方程式だ。この方程式を解いたら、xは凡そ1.86で、最適にすると1.8に切り捨てるという。要するに、『戊』の下底は端より0.3間で長くて、最適な場合は各水域が自分の下底を0.3間で延ばし、最後の3間に完璧に辿り着いた。

 五つの水域は等しい脚と高さを持つので、面積の変遷が上底と下底にしか頼らない。『戊』、『丁』と『丙』は上底を下底と足すと、3.3、3.9、4.5という等差数列に面積が増加する。一方、『乙』と『甲』は正三角形ABCに同じ積み重ねられる気がしたし、その数列を使う訳にはいかない。この二つの水域に入り込んだ三角形ABCの二分がABとACの中点で分けられないと見えた。但し、『乙』に入り込んだ源の地の先の幅をもとに『乙』の下底が三角形ABCを二分に分けた線分の長さを見付けられる。推測すると、その線分は1.3ぐらいだ。先ほどの数列を使ったままであれば5.1だとは言え、二つの台形が交差したし、その5.1という数字が上がるべきだ。上がる差は推測したばかりの線分の長さこそだ。ということで、4.5から正確な増加値は6.4。『甲』の場合は同じことをするが、二つの台形の交差が別の台形で、上がる差は交差しない場合の5.7を『乙』の下底の余分と足して、5.7 + 1.4*2 = 8.5となる。幾何学の仕事はもう終わり、確率の仕事に任せたね。

 川上にもっと深くあったと、産卵穴が最後まで守って貰う可能性が高まる。確率の増加は水域の面積の減少に従うと見られる。産卵穴を守り抜いた確率を勝率とすると、この勝率は面積の増度の逆数と初めに認める。標準化したら、各水域での勝率は、各水域の面積の増度の逆数と、そういう五つ全部の和との商だ。具体的には、0.287、0.243、0.211、0.148、0.111という勝率の列だ。全部60匹の鱒がこの戦場に入った時、この勝率と、5%という体力による勝率の追加を持った。それに、60匹で四割が薔薇をワインのコルクのように穴を塞ぎ勝率をもう5%で上げたことは、この鱒の群体に2%の希望を与えた。争奪戦の度に、勝率は7%で増える訳だ。これからは一番大事な問題だ。幾つかの水域での勝率は75%以上になれるように、この一時間の争奪戦はどんな風に描くのか?まず、五匹が川上に出て五つの穴を穏便に見付けた。5分後、もう五匹が来て残りの穴を。二回目の5分後、争奪戦が始まった。ということは、争奪戦は12回目の5分後こと一時間を過ごしたら十回経過した。ただ、一個の穴が二回以上奪われることがあるところ、どうやってそれぞれ穴での争奪回数を定めるか?

 最初の10分の後に来た50匹にご依頼をね。50匹を十個の穴全部に分布したら、各穴では五回争い合ったことがあった。各水域での最後の勝率は『初期の勝率+争奪回数×7%』と確定すると、残念ながら75%どころか、65%を何の水域もが達しなかった。そうだったら、一定の穴の数に50匹の大部分を配れば良い。その穴の数をkとしたら、争奪回数は50/kとなる。kを8として四つの水域の場合は、最高でも72.45%にしか届かなかった。kを6として三つの水域の場合は、87%、82.63%、79.43%という三つの勝率が条件を満たした。ということは、一時間の苦戦後、六匹の個体が最後まで生き残り雌を待つことが出来たよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ