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日本の定理・下巻  作者: 泉川復跡
【『算額主義』編】第十七章。薔薇を噛む鱒
1/1

17.1. 院内で誕生日を祝うのはどうだった?

「お誕生日おめでとう、笠人(りゅうと)君」

 それは生まれて初めて一番静かな誕生日のお祝いだった。様々な患者が一緒に休んでいる病室でならしょうがない。笠人君は富士河口湖の病院に入って一日半なのに、記者と問答した後の深夜で手術して貰ったことで、もう早く覚醒を戻してきた。鼓膜を圧迫した腫瘍が取り除かれたし、私達の祝いが無事に聞こえて良かった。覚醒したとは言え、完全に治る訳ではないでしょう。笠人君が祝いを嬉しく受けたとしても、酔っている人とかくるくる回る車に乗っている人のようにまだ目眩をしていて、純彦(じゅんげん)君の約束を守らない恐れがある。

「有難う、皆。病床で誕生日のお土産を貰うって珍しくないけど、俺が初めて経験してなんと変な気分になるかも」

「誰もが患者になって自分の誕生日を迎えたい訳ないじゃん。だが命が滅茶苦茶びっくりなことをしやがってんだ」と言った澁薙(しぶなぎ)君。

「このままじゃジュン君のゲロ塗れの服を洗ってあげられない。まっ、この病院の用務員に任せたら平気」

「僕達はここでもう一週間働くことにした。あんたの具合を面倒してあげる、前のマサちゃんと同じ。今あんた病床を降りたら、調理したり洗濯したりするどころか、真っ直ぐに歩きづらいの」と言った降恆(ふりつね)ちゃん。

「それじゃお前らも一緒に病院の飯を食わないとな。お袋も、弘作(ひろさく)おじさんも、清三茅(きよさぶち)おばさんも食堂を介入せずに、富士河口湖の料理人の腕を楽しんだ方が良い。昨日はあの旅館の美味しいものを自由勝手に食べてただろ」と優しく言った笠人君。

「怖っ、さすが5年2組の委員長の声だな」と感嘆した純彦君。「お前の誕生日だからいかに求めても構わないじゃない?俺達の受け入れる覚悟はお前への素敵なご褒美だと認めて欲しい」

「うん。お袋と皆の親様がこの辺までお越ししたのも、俺の暖かい誕生日のお土産だけでなく、先ほどの旅への素晴らしいご報酬だよ。俺がもう数日掛かって在院中で、皆がこの町にちょっと長く泊まることになる訳」

「一週間で旅館に泊まったら料金が七倍高まってるぞ。更にこの町の旅館は最大20人しか収容出来ないし、一泊二日の旅行向けだ。僕達親ならどうせ貴方達より先に小田原に帰るんだ」、お父様がなんと残念な声で言った。

「どないしてもうちの子供達が青木ヶ原を上手う出てきたやろ。臺灣の森のことみたいに繰り返してもうてとんでものう心配しとったけど、やっぱし結構学んだ訳やな」と言った智埼ちゃんのお母さん。

「大人をなるべく側にしたり、山や森など神聖な場所を謹んだりすべし。実はあのお姉さんのお陰で、あたし達があの言葉を心に刻めたのです、再び。憲兵達も」と返事した智埼(さとざき)ちゃん。

「なんや?お化けに遭ってまた覚えてんとちゃうか。あんたら子供が命を賭ける危険に会って初めて親の言葉を刻むの」と智埼ちゃんのお母さんが喜ばしく叱責した、自分の娘の頭を強く揉みながら。

静代(しずよ)さん、大きい声はご遠慮を」と笠人君のお母さんが注意した。「記者達がこの病院に入ってこなくて良かったね。そういう衝撃的なことがあったら彼らがいかに現場に駆け上がって騒いでしまったのに、ほぼ昨夜から東京に帰った」

「緊急状態となった者がいたんで余計な騒ぎを起こしませんよ、谷子(たにこ)さん。それに子供達の舟が寄港したところ、彼らも随分質問して記事に出来るぐらい答えを受けたのです」と説明したお母様。

「この町より東京への経路はごく大変で事故がいつでも起これるから、早かれに情報を集めて東京に帰るのが最適だ。結局、交通の問題」

「そうですよ、お父様。籠坂峠は小田原からの一番近い道ですけど、登る度にずっと祈るしかありません。神様の保護に頼らなければ、正気のままこの企画を終わらせるのが出来ませんでした。那月(なつき)さんのやったことに感銘してます」と私が言って、倉崎(くらさき)さんに皆の目線を少し向けさせるようにした。

雅實(まさみ)さん、自分のずっと掛けてる懐中時計の中のお守りはもう忘れてしまったの?那月ちゃんだけじゃあるまいし、あのお守りの力も助けましたよ」、倉崎さんがお守りと那月さんのことを別々にするように言った。

「そうですね。確かチサトちゃんも降恆ちゃんもお守りをずっと持ってきてるでしょう」

 降恆ちゃんが銀杏模様のお守りを見せて返事した。「うん。長谷川(はせがわ)ちゃん達の作ったもんだね。あの草原に着いて夏祭りを建てる前に、これを配ってくれた。さすがうち達の手作りの女神。銀杏の花弁が本物がお守りに付いたみたいに刺繍されて人を守り得る訳じゃ」

「細かく作ったお守りの方が持つ人に安泰を、って幼い頃から教わったもん。白濱の民衆はずっと私達を見守ってる。会わなかくてもう12日だ。それからは19日。20日目では学校に戻れる」

「恐らく高橋(たかはし)さん達の手紙がここに届いてます。輸送の困難によって一日掛かるかもしれません」と言った倉崎さん。

「うん、僕もそう思う。ならば、あの手紙が届く前に、松兼(まつかね)君のお誕生日を写真にして貰えない?友達に送って貰うなら、返事するんだ」と言って求めた厚喜(あつき)さん。それは丁度良いじゃない?青木ヶ原の様子を一番期待している私達の白濱と八田蜜の友達は、印刷して世間に配る新聞を待てないし、厚喜さんの森の中の時の写真や、笠人君の院内の誕生日の祝いの写真は彼らに尊くして貰える。安堵の息だけでなく、行ったことのない地への好奇心も、将来のことへの楽しみも齎す。

 こうして、厚喜さんの指導に、男達が笠人君の左で、女達が彼の右で並んだ。一方、写真の主体である笠人君は、八田蜜5年2組の男達や綾瀬(あやせ)ちゃんが作ってあげた四層の茶色のカステラのケーキを持ち上げた。そのケーキは丸ごと一つの学級にも分けて食べられる。薄い黄色のバニラクリームの輪が周り、藤の花弁が散り散りになったような小さな球が薩摩芋と赤キャベツから紫に塗って上に置き、そして誕生日の祝いを書いた看板がキャラメルと牛乳から固結して真中で付いた。夏祭りの料理の組はキャプテンに細工な贈り物を与えた。笠人君も自分の組に誇らしくなったらしい。健康が不足なせいに彼がケーキの一番小さい一部しか食べなかったが、蜂蜜の甘さ・薄荷の清涼さ・栗の歯応えをみっちり味わえるようになってそれで良い。困難な旅の後に遂に砂糖を摂取するなんて本当に元の世界に戻るに限る。

 富士河口湖の病院の副監督である金本清司(かねもとせいじ)は笠人君と倉崎さんの具合を面倒していた。彼自身が笠人君の耳の中の腫瘍を切除した後に、倉崎さんの頭を調べ、彼女の依存症を知り、モルヒネを使うのを許可したが、段々使用時間の幅を伸ばし、依存症による精神不安定になったら鎮静剤をやむを得ず使うのを勧めた。まだ在院中の患者で青木ヶ原を出た直後に再び入院することになったし、倉崎さんが笠人君の隣の病床に寝ると仕組まれた。この小さなケーキの宴会が始まって数分後、金本先生が病室に入って笠人君の耳、目と心拍を検査し、想定外なことを診断した。笠人君の耳小骨がまだ安定している。但し、もう一回大圧力を受けたと割れちまうので、ちゃんと一時休養して耳小骨を自ら回復させると診た。ただどうやって、鼓膜の後ろにあるのに、耳小骨は彼が診断出来たのか?

 レントゲン殿のお陰様だね。放射線の診断は国の殷賑な都会の病院にしか富豪な患者に応用されなかったのに、放射に興味深い金本先生は大胆にレントゲン殿の発見した頃のようなX線の生成器を作ってみてこの田舎の皆にも診断してあげられた。小萱(こがや)村の伏見(ふしみ)先生は金本先生の面白い放射線発出器を絶賛し、丹澤の森の住民の治療に使うと主張したよ。都会は西洋からの洒落なもの、田舎は手作りの地味なものを使うなんて、対等でしょう。あの装置で笠人君の頭の中がはっきり見えたし、耳小骨も蝸牛も分析出来た。金本先生によると、腫瘍が出来た所の血管が治ったり耳小骨が回復したりするには最低でも二週間掛かることで、笠人君がここの病院で一週間休み小田原に帰ってもう一週間在院しても良いが、籠坂峠も渓谷の道も粗くて険しくて移転中に車輪からの振動を受けたらちゃんと気を付けないといけない。今、笠人君の耳を塞ぐ栓とした丸いガーゼは外の音が低く聞こえるし突然の衝突から防げるし最適なもんだ。

「では渡邊(わたなべ)さんと山口(やまぐち)さんの腕をも見せよう」と金本先生が言って私と降恆ちゃんの右腕での包帯を抜き銃創がどうだったのを調べた。弾丸の穴がゆっくり閉まって渦巻きのようになった。もう新たな筋が生成されているし、ずっと痒くなって少し擦らざるを得なかった。過去の喧嘩から散らかした傷跡どころか、この銃創の『渦巻き』と右目の下の『象牙』だけで私がもっと柄の悪い海賊とか盗賊らしくしなっちまった。女なら必ず傷跡を隠さないとけないから、私達もとにかく前の嫌な出来事が自分の皮膚に残した痕跡を薄くしようとしている。降恆ちゃんなら殴り合いの頃の顔の痣や、お父さんの酷い体罰だった背中の鞭打ち目。智埼ちゃんなら八年前の大火災が肩と腿に散らした母斑や、臺灣の森の虫刺され。

「僕達傷跡が散り散りでしょう。学生時代なのにあんなに多くて大人になったらどうかも思わないわ」と感想した降恆ちゃん。

「漕ぎ手のおじさん達のいう通りだろ。女は多い傷跡が付けば男とか何の相手にも悪い気配なし。しかも上向きな思いを持つ男を相手にすると自分の価値が上昇するじゃん」と澁薙君が『花火團』の三女子に言った。「お前ら僕に出会ってとんでもない運があったよ」

「そうかな、師匠?貴方がその生まれつきの病気にならなければ、女達がどんな酷いことに遭ったのかも気にしなかった訳だね」

「あっちゃ、またの辛辣な言葉だな。嫌なことを受けて初めて誰かの悲劇なことを思い知れる訳じゃない。大したのは思いや選びだ」

「ひひっ、またの偉そうな言葉だね。もしあんたが大きけば僕が屈めて接吻をしなかったのに」と降恆ちゃんが自分の『師匠』を弄り続けた。

「こらっ二人共、俺の誕生日に俺の目の前でそうやっちゃいかんぞ。この先の一週間カップルらしく振る舞うつもり?」

「だから僕達がお前にチサトちゃんの腿を枕にさせてはいけないんだ。あの小舟に乗ってチサトちゃんの腿に赤ちゃんみたいにぐっすり眠ってた。『花火團』の一番強いメンバーのくせに」と澁薙君が弄って笠人君が耳をどれほどきっちり塞がれても嫌な気持ちになった。

「一番強いじゃないか。耳に厳しい怪我があっても私とチサトちゃんと倉崎姉さんを思いっきり水面上に押して最後に上がったなんて、化け物ほど強かったの。その強さだけは白濱の女子達の心を揺さぶれたよ」と私が言った。

「リュー君の大怪我が知れたら、綾瀬はん、松山(まつやま)はん、日向(ひなた)はんなど自分の幻想の彼氏が戦場で酷い目に遭ったみたいに未練たらしい手紙書くやん。特には綾瀬はん。彼奴はあたしを『恋敵』と見做したさかい、この際には絶対にあたしに何か宣おうとするちゅう訳や」

「夏祭りの料理の組に参加してもう宣っちまったよ、チサト。料理の組の唯一の女性メンバーだ、彼奴は。ただ笠人君が八田蜜に転校して初めて調理し始めた訳じゃない。乱暴時代の降恆ちゃんの一番助手だから彼女の食欲をめっちゃ気になってた」

富貴子(ときこ)ちゃんはあの頃の僕の組の『板前』だった。あの廃校や白濱に籠った頃、彼奴がずっと組の皆を満腹させてくれたよ。リューちゃんの素晴らしい腕を見た時に、同じ調理の趣味を持ったからチサトちゃんに勝てると、自信満々だそうだね」

「じゃあ綾瀬ちゃんが手紙にどの感情を送るかを期待しようか」と声を掛けた笠人君。「女は外見の良い、腕の良い男に惚れやすいから。俺はそういう未成年の恋心にもう慣れてしまったし、綾瀬ちゃんなどからの手紙を普通の手紙みたいに受けたままに」

「白濱の女子達があんたの言葉聞こえたらがっかりしてまうわ」

「がっかりしてもちゃんと大人らしく考えといたよ、彼奴らは。俺を憧れの人と見たら、料理の腕をきっちり鍛えてる綾瀬ちゃんだし、仕立てを習って良い服を縫ってる松山ちゃんだし、お父さんの政治的な仕事を大胆に目指してる日向ちゃんだし、そして花火を敢えて作って上手く打ち上げたサトちゃんもね」と笠人君が返事して智埼ちゃんが少し微笑んだ。

「リュー君の『妻』に資格あるように自分の得意なことを上達させたり、自分のやりたいことを狙ったりするしかあらへん、って彼らがやる気になったんや・・・さて、皆もケーキ早く食べ切って。リュー君の誕生日の祝いはここまででええで、彼ちゃんと休んだ方が」

「これから雰囲気をてっきり静かにしとく。その時、君がちゃんと寝て眠らずに禅の状態になることに。血を脳味噌へ汲み出し、深い息をし、前庭や聴神経に圧を緩めるんだ。暖かいお茶と水は血をすらすら流し、牛乳は耳小骨の回復を促しにカルシウムを補足し、顎が耳にあまり影響しないよう食べ物は決して固くなってはいけない」、金本先生が処方した。食べ物の注意は私の治療のと同じだね。噛む時に顎が動いて耳の中の構造も動き出すので、お粥とか、口に入れると溶ける肉や魚の料理しか食事にしない訳だ。

 祝い後の夜に、小田原からの手紙らが遂に来た。笠人君の愛好家達は案の定、無邪気な愛情を込めて彼の具合をとても気になって尋問の言葉で手紙を満たした。彼らがお土産の代わりに自分の出来たものと一緒の写真を添付し、笠人君に自分がこの間何かをやったのかを報告のように教えた。綾瀬ちゃんは誕生日のケーキを贈ったのは勿論、池澤(いけざわ)君達とケーキの気孔率を上げるように焼き上がって、それで口に入れたとさっぱり分解して甘さを口の中に溢れるとも書いた。どうりでケーキがスフレらしく感じたね。松山ちゃんは新たな袴を縫った、来年の3月の卒業式に向かって。彼女が、智埼ちゃんを師匠、松山先生であるお父さんや、笠人君を自分の将来付き合う男の原型と憧れ、その三人が誇らしくなる為に織物の世界で何かを達成すると目標にした。お父さんに背広を都会の店で買わず手作りするのも彼女のつもりだ。

 日向ちゃんは私達の夏祭りを誰よりも気になったのが、町長のお父さんの名声だけでなく自分の政治界への道標の為もだった。女どころか、男も国に命を捧げる精神が強くなければ政治の仕事は高嶺のものに過ぎないと思う。日向町長もたった一人の子供が娘だったので、自分の子に私達の科学的な企画に進ませると主張し、世襲制度を避けた。なのに、日向ちゃんがお父さんの仕事を将来受け継ぎたいと持続している。彼女がそう書いた、「皆が乗り越えた全部を思い返したと、私が自分の将来を決めた。私の憧れの『花火團』が二つの企画を完成させ様々な傷を負ってしまった。一方、私が四年間やったのはただお父様の名声により傲慢だったり、雅實ちゃんと降恆ちゃんの白濱を騒ぐ大喧嘩に弱い心を持って止めようと介入出来なかったり、小田原や全国の出来事がお父様の仕事に悪く影響するかに余計に悩んだりしたのだ。だから以後、私が君達を何とか守ろうとする。偉そうだが、政治のことにまだ甘い私なら、君達どころか、自分の家にも害を連れ出すと思う。それに、もし政情を把握して多く権力を手に入れたら、いつの間にか君達への化け物に変わってしまうとも心配する。政治は人の心に似て忖度し難いもんだ。特に心で生きがちな私達女、議事堂に入るべきではないと勧められる。いかにしても、生意気にでも、私のお父様を手伝っていく」ったく、君がまず法律をちゃんと学んどいてよ。政治界を司る頭脳達は誰よりも法律を理解したし、数人がそれを自分の利益を得に利用するから、その利用し方を探してゲームのように取り扱って彼らに勝つ。あの謎の組織も例外じゃない。

 それ以外に、高橋ちゃん、長谷川ちゃん、桐谷(きりたに)ちゃん、吉岡(よしおか)君、廣瀬(ひろせ)君、木下(きのした)君、などなどからの手紙だった。『花火團』のみならず倉崎さんや先輩達も無事なのかを教えたがった。そう、夏祭りの煉瓦を一個ずつ積み重ねた皆はあの七つの夜に倉崎さんや先輩達を親族と違いないと見たし、小田原にまた来て欲しいとか、都合が良けば自分の家に訪れると良いとか、この赤外線の眼鏡を掛けてみたいとか、あの敷地の所有権がそろそろうちの学校のものになると楽しみにしているとも書いた。特に、高橋ちゃんと吉岡君が『花火團』を前の十日間の欠席に注意し、次の一週間学校に私達の姿がまだ現れていなければ帳面を貸さない、と冗談で脅かした。あんた達が笠人君に神様みたいに回復して欲しいか。多分、笠人君が委員長を副委員長の吉岡君に仕方なしに渡した後に、あの八田蜜の5年2組が『変人ばかりの教室』の正体に戻って滅茶苦茶になって管理に大変苦戦していた。吉岡君が料理人の叫び声を教わったら楽になったね。

 学級委員じゃない友達は、青木ヶ原の旅についての記事への感想を教えた。岸山(きしやま)記者達が書いた記事は今朝こと10月9日の朝の新聞の一面にさっぱり掛かった。私達の半分の真実の証言を述べただけでなく、青木ヶ原の心霊さ、昔の残酷な習慣、恐ろしい御伽話などを自分の文芸に言及して記事を面白くした。青木ヶ原の中の苦戦は善と悪の対面という単純な場面ではなく、人は逃げる為に森と合わせるかと、時代がどんな変遷しても森が本質を変えないか、という二つの質問が答えられるかどうかの試練だ、と彼らが評論した。岸山記者がそう書いた、「青木ヶ原は怖い森だと言われたが、南米や中部アフリカや東南アジアなどの熱帯雨林にでも、露國などの寒帯林にでも、比べたら甘過ぎるだろうと思う。暑さや寒さが明らかに感じられる気候帯の森林は青木ヶ原といった四季が確かに区別した温帯林より大規模で厳しい特色を持つ。青木ヶ原も別の森に異なる訳がないことを私も賛成する。ただ、我々日本人への最も神聖な山である富士山の麓に存在したし、磁性ありの地面もあったし、不気味で疑心暗鬼な感覚を齎し、入る人を迷い困らせ、閉じ込めてしまう。大事なのは人が森の厳しい特性に合わせたり、蛇、熊、猪、鳥、栗鼠らと平和に生きたり出来るかどうかというもんだ。あれは一日二日でやり切ることではなく、後世の為に犠牲とする世代が必要だという訳だ。人はいかにも天然の子で、文明を発達させる前に森で数百万年も生存していた故に、森に簡単に誘惑され、腐って死なされるのである」

 うちの友達の数人がこの評論を読み、楽しくも驚いても不快でも感想した。私も同情するでしょう。岸山記者は私の青木ヶ原への評言を私の名を出さずに述べ、同意し、読者達に彼があの森を嘗めたり神様の登場をただ人の心からの効果にしたりしちまったかなと思わせた。神道の忠誠な信者ならこの記者は自分の信仰を誹謗したり富士山の座がある土地を見下したりすると裁くよ。感性主義で遥か長く生きていると、この理性主義っぽい言葉を読んだなら心に合わせない感覚がよく分かる。「科学は神様を全て凡人に堕ちさせてしまった」ということらしい。

 ただ、ある記者の一人からの目線だけだ。他の記者達はどうかしら?あの夜岸山記者の隣で質問した記者も発言した。彼の名は吉田友成(よしだともなり)。吉田記者はそう書いた、「岸山様の目線を尊敬したとは言え、青木ヶ原のような険しき森に神様の登場は人の意識外に存在したもので、残念ながらその目線を賛成出来ぬ。科学は神聖さを凡庸化してしまうという訳があるまいし、逆に人間が理解し切れない自分の微妙な言語で神聖さをなお一層不思議にするのである。神様が人間に何で信号を伝えるかというと、科学は一つで最も理性的だ。知らない人は畏れ慎み、知っている人は神様の仕組んだ世界と友達を作り、疑っている人は神様の言語と合わせるよう科学の法則を否定しようとする訳だ。若者達の先ほどの旅は神様の存在を否定することがない。神様は私達の目で見れる存在ではないので、神道の哲学通り人間が滅多に通わない場所の万物の中に潜在の力として存在し、人間がふと入ってきた場合、足踏みの振動を受けた上で自ら解放するようだ」

 吉田記者はさすがに岸山記者より随分言葉遣いに丁寧で広い幅の知識を持った学者らしいね。人間の科学の有限性や神道の哲学を使って、西洋の詰め込みっぽい科学の知識が得意でも苦手でも読者達が自分の信仰で彼の記事を気楽に読める。10月2日の深夜で那月さんの亡霊が倉崎さんを連れ出したのはどうなったのか、読者達も自分の感覚でゆっくり思い浮かべる。ただ過激派の人達は神々が何よりも究極な思想で、科学というものを神々と天秤にすれば冒涜に過ぎないとしか認められない。私達になら、神と科学の繋がりは栗園神社のお巫女さんが神楽をあの芝生で踊って以来、興味を掻き立ててくれた。更に絵馬に算額を書いたり、『地へ墜つ星座』の夜に武士の亡霊と戦ったりしたからにも、あの二つの言葉が互いに対立じゃなくて補足すると思い付き、最早次の企画の主題となった訳だよ。

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