2. 宮殿?
目が覚めたら、天蓋がついてるやたらデカいベッドで寝ていた。
こんなベッド、ベルサイユ宮殿の写真とか漫画の中でしか見た事がない。布団とかシーツの肌触りもシルク?っていう感じでさらっとしていて気持ちがいい。
「……どこだここ? ……っていうか… 私…死んだ? ……よね……?」
目覚める前、私は大学からバイトに向かおうと、地下鉄から降りて地上に向かう階段を昇っていた。
小さい悲鳴が聞こえて斜め上をみたら、小学校1年生くらいの制服を着た女の子が、バランスを崩して後ろに倒れるところだった。咄嗟に手を伸ばしてその子を抱き、そして……そのまま背中から落ちた。
地上に近い場所にいたから、床はかなり下だ。
ヤバイッ!と思った次の瞬間、背中と頭に衝撃を感じて、目の前が暗転した。
確実に死んだと思う…ということは……ここは天国かな…?それとも…病院にいて夢でもみてるのかな?
コンコンと小さいノックの音のあと、重厚そうな観音開きのドアが開けられた。
「失礼します… って!え?お嬢様?!目覚められたのですか?! お、お医者様を呼んできます!!」
とメイド服を着た若い女の子が、叫んでドアから出て行った。
……お嬢様って言ったよね?……私のことか?
私は確実にお嬢様ではない。ふと手を見てみた、小さくて白かった。子供の手だ。夢かな?手をつねってみた。…痛い…。
起き上がって身体をみた。白くて繊細なレースがついたシルクっぽい高級そうなナイトドレスを着ている。そして身体が子供だ。肌の色も欧米人よりも白い。
部屋を見回した。
……うん。宮殿だ。宮殿は見た事ないが、宮殿にあるイメージそのままの部屋だ。ドレッサーがあった。よし、鏡を見てみよう。
足を下ろしたら、真っ白で肌触りの良さそうなふわふわのスリッパがあった。履いた。うん。極上だ。
鏡まで歩いて自分をみてみる。
……いや……誰よこれ。
銀髪で紫眼の10歳くらいの美少女が鏡に写っていた。
私ではないはずだが…
頬を抓る。痛い。鏡の中の美少女が頬をつねって顔を顰めた。
私…別人になったのか?
いや…これは夢の中か?
しかし、抓ると痛いぞ。
もう、訳わからん。
白昼夢か、妄想かな?…と、混乱を極めていると、
「クレアお嬢様!!起きて大丈夫なのですかっ⁈」
と、先ほどのメイドを後ろに従えて、白髪白髭のイケオジが駆け込んできた。