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仕事場での出会い→初恋の人の息子さん《前編》

時は流れて石藤家長女スミレ7才&香二 5才秋のとある日曜日――。


 石藤家は家族4人で、ショッピングセンターのおもちゃ売り場に来ていた。


「きょーちゃん、どこか見たいところはありますか?」

「うーん…………。」


 桜が尋ねると、桜の実家、財前寺グループ系列のリボンジャンプ幼稚園の年中になった香二は、夢見るような青い瞳をシパシパさせて少し考え込むと……。


「お絵かきするところ行きたい……」


 ポツリとそう呟いた。


「ああ! お絵かきコーナーですね?いいですよ?」


 桜はおもちゃ売り場の一角にいる紙と画材が備え付けられている場所を見遣り、笑顔で手をポンと叩いたところへ……。


「パパ、ケロケロッピは今、流行っていないんだよ!」 

「え! そうなのか? じゃ、じゃあ、これはどうかな?」


「だから、ちいかわわはもう持ってるの!」


 先に女の子用売り場に行っていたスミレと良二がそんなやり取りをした後、こちらに戻って来た。


「もう、ママ〜! パパ、全然分かってない。 アクアンビーズ選ぶの手伝って〜!」

「いや、面目ない……女の子用のおもちゃ、皆同じに思えてどれがいいとか全然分からないや……」


「あらあら、選手交代した方がいいですかね?」


 頬を膨らますスミレと気まずく頭に手をやっている良二に、桜は苦笑いをした。


「ああ。俺は香二に付き添うよ」

「それでしたら、一緒にお絵かきコーナーに……って、い、いないっ?!!」


「「?!!」」


 一緒にお絵かきコーナーに向かっていた筈の香二の姿が見えず、慌てる桜、目を剥く良二&スミレ。


 ✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽

    

「ふぅっ……(お客さん、全然来ないなぁ……)」


 ショッピングセンターのエレベーター脇の人の流れがほぼ途絶えたスペースで、小嶋紗英は小柄な体を更に縮めて小さくため息をついた。


 休日のささやかな副業として、似顔絵書きの仕事を始めたのだが、客の入りはそれ程思わしいものではなく、昨日は5件、今日は午前中まだ一件も仕事を取れていなかった。


 席から立ち上がり、机の上の似顔絵サンプルの配置を直していると、エレベーターの向こう側に仲のよさそうな家族連れがおもちゃ売り場に入って行くのが見えた。


(幸せそうな家族だなぁ……。ほのちゃんも、今頃子育てで忙しいんだろうな……)


 高校時代のクラスメートにして、同人誌サークルの相方の佐倉(旧姓:須藤)穂乃香とは、先週電話で話したばかりだけど、先月2人目の子、薫くんが産まれたばかりなのに、小学校低学年のお姉ちゃんの舞香ちゃんが赤ちゃん返りで大変と漏らしていた事を思い出し、紗英は苦笑いを浮かべた。


(そして、きっと石藤くんも今頃幸せな家庭を築いているんだろうな……)


 穂乃香と同じく高校時代のクラスメートにして、初恋の相手の事を胸の痛みと共に思い出していた。


(高校の同窓会で、穂乃香ちゃんがせっかく石藤くんとお話しできるチャンスを作ってくれようとしたのに、元カノ香織さんと彼のやり取りに打ちのめされて、勇気が出せなかったなぁ……。


 そしてその後の即売会イベントで、コスプレ姿の石藤くんに彼と知らずに出会っていて、穂乃香ちゃんに、後で石藤くんと銀髪の婚約者さん(後にRJ㈱の社長令嬢にして料理研究家の財前寺さんと知る)がサークルスペースに来てくれていたと知って、ショックを受けたっけ……。)


 アラサーだったあの頃は、早くいい相手を見つけた方がいい。紹介しようか?などと会社の人や親にしつこいぐらいに言われてうんざりしていたけれど、アラフォーの今ではだれも結婚の話題は出さないようになった。


 みんなの腫れ物に触るような気遣いが逆に痛い。


 針の筵のような実家暮らしで、唯一気の休まるのは、猫のモモ太と戯れている時と、絵を描いている時……。


 確かなものが何もない状態で、年だけ取って行って私本当に大丈夫なんだろうか?


 今更ながらに将来への不安がフツフツとわき上がっていたところに……。


「じーっ」


「?!」


 デスクに置かれたサンプルの一つ、猫の似顔絵をジーッと覗き込んでくる黒髪に青い目の坊やと目が合った。



✽あとがき✽


読んで下さり本当にありがとうございます!

今後ともどうかよろしくお願いしますm(_ _)m

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