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桜咲イノリ 上等です!  作者: 原田真優
第二章 新チーム始動
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邪悪な意思


 その様子を呆れたように見下ろす小暮。



「総長、そんなに桜咲イノリをつぶしたいなら、少し卑怯ですが手段はありますぜ」

 そして言い放った。


「手段?」

 朝田が顔を上げる。


 小暮がしゃがみ込んだ。そして手にするスマホを広げた。



「あの水着姿を見て思ったんすが、あいつはあいつで、所詮女でしょ? その女の部分を攻撃するんですよ」


「女の部分?」


「所詮女は、顔が命でしょ」


「顔をつぶす……ってことか?」


「そんな大それたことはしないっすよ。だけど、悪い噂ってのは直ぐに出回る。今やインターネットの時代っすからね。つまり精神的に追い詰めりゃ、ノコノコと表は歩けないってことです」

 こうして二人、スマホの画面を覗き込む。



「成る程、嫁にいけねーな、これじゃ」


「でしょ? 今の時代、ケンカが強くとも、世間一般的に、強いって訳じゃない。インターネットで精神力を叩き潰せば、案外勝てる勝負もあるんですって」



 こうして、あたしの知らない所で、邪悪な意思が動いていたなど、当のあたしは、知る由もなかったんだ。




♢♢♢




「よう、イノリ。今日も真っ直ぐ帰宅か。若い女が、そんなんじゃダメだろ。それがおめーの、輝ける青春か?」


 あたしが帰宅すると、家の前で四十歳程のオッサンが挨拶を交わして来た。


 ランニングシャツに派手な短パン、雪駄を乱雑に履きこなす、ダルそうな中年だ。




「……なにが青春だよ? あたしらはあたしらで、青春真っ盛りなの」

 あたしは返す。


「だわな面倒くせー会話は、無用か。……イノリはイノリだもんな」

 そしてオッサンは、何事もなかったように、ウチワをパタパタ扇ぎ出す。


 ……このオッサン……もとい、男はあたしの親父。見た目通り、ヘラヘラした呆れた父親だ。


 職業はギャンブラー。そんなんでウチの家計が成り立ってるんだから、文句も言えないが……



「最近の若い女は、男にべったりで、派手な青春演じてるってのに、ウチの娘は奇特だねぇ」

 飄々と言い放つ親父。


「親父に言われたかないな」

 吐き捨てて玄関に侵入した。



 親父がこんなんだから、ウチはいつでも貧乏なんだ。


 ギャンブラーっても、派手な大勝を続けてる訳じゃない。母さんが必死にやり繰りして、家計を支えてるんだ。


 だからあたしは、『いつか貧乏から脱却してやる』って思っていた。

 男の力に頼らずとも、あたし自身の力で……

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